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卒業後
673 星暦556年 萌黄の月 18日 空滑機改(18)
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「ちょっと・・・禍々しい感じがしないか?」
漆黒の防風結界を前に、思わず感想が漏れた。
アレクがざっと調べたところ本当に軽い布はかなり高額だったため、結界を不可視にする魔術回路を探して組み込んでみたのだが・・・。
一番簡単なのは光を完全に吸収する黒一色の魔術回路だった。
工房で1メタ程度の初期の試作品に使った枠を再利用して黒い防風結界を展開した時はそれ程でもなかったのだが、20メタの巨大結界が真っ黒だと圧迫感があって『禍々しい』という印象になってしまった。
「光を吸収させて黒くしているから、ただの黒塗りな壁や布と違って本当になんか禍々しい感じがするねぇ」
シャルロも顔をしかめながら合意する。
「かといって光を反射させるようにすると眩しいからあれも問題だ」
アレクがため息を吐いた。
光を吸収することで黒になるなら光を全部反射させれば白になるのでは?と試してみたら実質鏡のようになり、外で日が出ている時間帯に展開すると角度によってはかなり眩しくなったのだ。
「しょうがない。
模様を写して見せる魔術回路を使うか。
カーテンでも広げて写したらどうかな?」
壁の一部に隙間があって入れる場所があるのを隠すために結界で壁を模す魔術回路もあったのだが・・・これは残念ながらまだ特許が生きているので特許料を払う必要がある。
勿体ないので既に特許が切れた黒いのを試したのだが・・・流石にあの禍々しさは駄目だろう。
「どうせだったらこないだの熱気球みたいに明るい色にしたらどうかな?」
シャルロが楽しそうに提案した。
「お前の家に明るい色のカーテンがあるならそれでいいけど?
明日にでも持って来てくれよ」
ウチのカーテンはアレクが入手してくれたかなり地味なベージュで統一されている。
シャルロの家だったらそれなりに華やかな可能性は高い。
貴族の家のカーテンって重厚そうなダークレッドとかが多かった気がするが、まだ若いんだしケレナが基本的に家の装飾に関しては主導権を握ったらしいから、女性らしい明るい色のカーテンだってあるだろう。
多分。
「・・・ピンクなんだよねぇ。
ベージュで良いや」
シャルロが微妙な顔をして先ほどの提案を撤回した。
明るい色は好きでも、ピンクは流石にちょっと嫌だったらしい。
「1日程度生地を借りるだけだったら実家の倉庫から持ち出しても問題ないだろう。
何色が良いんだ?」
アレクが軽く笑いながら口を挟んだ。
そうか、シェフィート商会の倉庫の在庫を借りるという手もあったか。
カーテンなんぞ店に置いているのは見たことは無かったが、考えてみたらカーテンは受注制だ。
色のサンプルしか店には出しておく必要がないのだろう。
「取り敢えず赤、黄色、緑、水色を借りられるかな?
ベージュも併せて実験してみて、どれが一番無難か確認してみよう」
シャルロが気を取り直してアレクに頼み込んだ。
色なんてどうでも良いと思うんだけど、まあ何色でも結界に要する魔力は変わらないのだ。
良い印象を与える色の方がお得だろう。
多分。
「離陸するまでに4ミル程度はかかるじゃん?
それなりに注目を集めるだろうし、『買い物はシェフィート商会で!』とでも文字を写しこむか?」
笑いながら提案する。
既存の模様を写し込む結界だったら文字も写し込める。
まあ、文字を書いてしまったら生地が再利用できなくなるかもしれないが・・・広告文字を書いた白地の帯でも上に乗せて写せば良いだろう。
「流石に露骨な広告文句では品が無い。
それよりも、『近日中に西門のグライド・レジャーより貸出予定』とでも書いておいたら客寄せになるかも知れないな」
アレクが軽く笑った後に修正案を挙げた。
グライド・レジャーは俺たちが起業した空滑機《グライダー》の貸し出し事業だ。
運営は人任せにして今ではそれ程関与していないが、少なくともあっちに連絡をすれば俺たちに話が来るから空滑機《グライダー》改を買いたい人がいたら連絡も出来て丁度いいかも知れない。
商業ギルドに売るようになったら『ビジネスは商業ギルドへ!』なんて文言にしてくれって言われそうな気もしないでもないが・・・そうなったら広告料を取るようにしよう。
・・・つうか、ウチで飛ばすのは『西門のグライド・レジャーより貸出』ってしといて、商業ギルドで売る方を好きな文言にすりゃあいいか。
離陸中だけと言えども、あんまり露骨に売り込む文言は遠慮したいところだし、色々要望を聞くのも面倒だ。
「こう言う広告を魔術で宙に浮かせる手法って特許を取れたりしないのかな?
このままだったら結界に模様を写し込む魔術回路の方に全部金がいく気がする」
『魔術回路』じゃなくって『手法』の特許ってあるんだっけ?
【後書き】
アドバルーンの始まり?
そのうちあまり露骨で王都の品性に関わるのは駄目って規制が入ったりw
漆黒の防風結界を前に、思わず感想が漏れた。
アレクがざっと調べたところ本当に軽い布はかなり高額だったため、結界を不可視にする魔術回路を探して組み込んでみたのだが・・・。
一番簡単なのは光を完全に吸収する黒一色の魔術回路だった。
工房で1メタ程度の初期の試作品に使った枠を再利用して黒い防風結界を展開した時はそれ程でもなかったのだが、20メタの巨大結界が真っ黒だと圧迫感があって『禍々しい』という印象になってしまった。
「光を吸収させて黒くしているから、ただの黒塗りな壁や布と違って本当になんか禍々しい感じがするねぇ」
シャルロも顔をしかめながら合意する。
「かといって光を反射させるようにすると眩しいからあれも問題だ」
アレクがため息を吐いた。
光を吸収することで黒になるなら光を全部反射させれば白になるのでは?と試してみたら実質鏡のようになり、外で日が出ている時間帯に展開すると角度によってはかなり眩しくなったのだ。
「しょうがない。
模様を写して見せる魔術回路を使うか。
カーテンでも広げて写したらどうかな?」
壁の一部に隙間があって入れる場所があるのを隠すために結界で壁を模す魔術回路もあったのだが・・・これは残念ながらまだ特許が生きているので特許料を払う必要がある。
勿体ないので既に特許が切れた黒いのを試したのだが・・・流石にあの禍々しさは駄目だろう。
「どうせだったらこないだの熱気球みたいに明るい色にしたらどうかな?」
シャルロが楽しそうに提案した。
「お前の家に明るい色のカーテンがあるならそれでいいけど?
明日にでも持って来てくれよ」
ウチのカーテンはアレクが入手してくれたかなり地味なベージュで統一されている。
シャルロの家だったらそれなりに華やかな可能性は高い。
貴族の家のカーテンって重厚そうなダークレッドとかが多かった気がするが、まだ若いんだしケレナが基本的に家の装飾に関しては主導権を握ったらしいから、女性らしい明るい色のカーテンだってあるだろう。
多分。
「・・・ピンクなんだよねぇ。
ベージュで良いや」
シャルロが微妙な顔をして先ほどの提案を撤回した。
明るい色は好きでも、ピンクは流石にちょっと嫌だったらしい。
「1日程度生地を借りるだけだったら実家の倉庫から持ち出しても問題ないだろう。
何色が良いんだ?」
アレクが軽く笑いながら口を挟んだ。
そうか、シェフィート商会の倉庫の在庫を借りるという手もあったか。
カーテンなんぞ店に置いているのは見たことは無かったが、考えてみたらカーテンは受注制だ。
色のサンプルしか店には出しておく必要がないのだろう。
「取り敢えず赤、黄色、緑、水色を借りられるかな?
ベージュも併せて実験してみて、どれが一番無難か確認してみよう」
シャルロが気を取り直してアレクに頼み込んだ。
色なんてどうでも良いと思うんだけど、まあ何色でも結界に要する魔力は変わらないのだ。
良い印象を与える色の方がお得だろう。
多分。
「離陸するまでに4ミル程度はかかるじゃん?
それなりに注目を集めるだろうし、『買い物はシェフィート商会で!』とでも文字を写しこむか?」
笑いながら提案する。
既存の模様を写し込む結界だったら文字も写し込める。
まあ、文字を書いてしまったら生地が再利用できなくなるかもしれないが・・・広告文字を書いた白地の帯でも上に乗せて写せば良いだろう。
「流石に露骨な広告文句では品が無い。
それよりも、『近日中に西門のグライド・レジャーより貸出予定』とでも書いておいたら客寄せになるかも知れないな」
アレクが軽く笑った後に修正案を挙げた。
グライド・レジャーは俺たちが起業した空滑機《グライダー》の貸し出し事業だ。
運営は人任せにして今ではそれ程関与していないが、少なくともあっちに連絡をすれば俺たちに話が来るから空滑機《グライダー》改を買いたい人がいたら連絡も出来て丁度いいかも知れない。
商業ギルドに売るようになったら『ビジネスは商業ギルドへ!』なんて文言にしてくれって言われそうな気もしないでもないが・・・そうなったら広告料を取るようにしよう。
・・・つうか、ウチで飛ばすのは『西門のグライド・レジャーより貸出』ってしといて、商業ギルドで売る方を好きな文言にすりゃあいいか。
離陸中だけと言えども、あんまり露骨に売り込む文言は遠慮したいところだし、色々要望を聞くのも面倒だ。
「こう言う広告を魔術で宙に浮かせる手法って特許を取れたりしないのかな?
このままだったら結界に模様を写し込む魔術回路の方に全部金がいく気がする」
『魔術回路』じゃなくって『手法』の特許ってあるんだっけ?
【後書き】
アドバルーンの始まり?
そのうちあまり露骨で王都の品性に関わるのは駄目って規制が入ったりw
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