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卒業後
674 星暦556年 萌黄の月 25日 空滑機改(19)
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【前書き】
商業ギルド広報部長の視点からです。
【本文】
>>サイド ダジル・ピタフォロー 商業ギルド広報部長
「今日はどういった話なのかね?
まだ事業を始めて数年なのに、シェフィート商会経由で色々と画期的な魔具を売りに出しているとのご活躍を耳にしている若き事業家からご指名で話が来て、楽しみにしていたのですよ」
態々ブランドに隠れて名前を隠している魔術師3人組の商業担当が、何故広報部長の自分と話したいと言ってきたのか。
自分が直接対応しなければ不味いような厄介な話だったら魔術院かシェフィート商会経由になるだろうから純粋に金になる話だと思うが、魔具や魔術師と広報がどう繋がるのだろうか?
画期的な魔具や精神汚染の呪具に関する話など、シェフィートの3男とその仲間は色々と重要な案件に関わっているから向うからの話し合いの要請があれば時間を取るぐらいはするが、疑問ではある。お陰で朝からちょっとワクワクしていた。
広報が関与する金儲けの話が自分が部のトップである時期に現れれば、更なる昇進も夢では無い。
「実は、ですね。
ギルド外の一般の方の目に留まりやすいちょっと面白い広告の方法を思いついたのですが・・・技術その物は別の魔術師が特許を有している魔術回路を使うのでそのやり方を広めても我々には1銅貨も入ってこないのですよ。
手法に関する特許というのは存在しないとは思いますが、個別契約で商業ギルドと利益共有を合意することは可能だと聞いたのでご相談に参りました」
にこやかにアレク・シェフィートが答えた。
ふむ。
そう言えば、この3人組は魔具の開発をして製造は他に任せ、魔術回路の特許から主たる収入を得ているのだったか。
まあ、新規航路の発見で国から報酬を受け取ったり、パストン島の利権も有しているからあそこからの収入もそのうち入るようになるだろうが。
新しい広告方法ね。
現時点では商業ギルドの広報チラシの下部に印刷する程度で、後は適当な壁にポスターを貼る程度しかない。一般市民の注目を集める新しい手法というのは良いかも知れない。
「利益共有ですか。
ちなみにその広告手法は商業ギルド以外でも真似を出来ますかな?」
他も模倣できる手法で、ギルドだけが利益の一部を分け与えることになると不利である。
新しい手法で追加的に稼いだ利益の一部を分けるのは吝かではないが、他者があっさり追随できる手法ならば利益共有は模倣が起きるまでの短期間になる。
アレク・シェフィートが軽く首を傾げて考え込んだ。
「そうですね・・・ちょっと大掛かりな装置が必要なのですぐには真似はしにくいかと。
まあ、これからギルドに売り込む予定の大掛かりな装置の方を商業ギルドが購入しないことになりましたらどちらにせよ関係ないのですが」
「ほう?
大掛かりな装置を購入しないと使えない広報手段では導入は難しいが」
大掛かりな装置なぞ、そうそう簡単にはギルドで買えないぞ?
時々魔術師というのは現実を分かっていないような魔具を売り込もうとしてくるが、何らかの理由でアレク・シェフィートが暴走しているのか?
「ある意味、アイディアを話したらそれなりに模倣は可能なので先に利益共有という枠組みについて合意を頂いてから詳細を説明したいのですね」
こちらの微妙な反応に動じず、アレク・シェフィートが答える。
「・・・良いでしょう。
もしもその大掛かりな装置をギルドが購入することになり、そちらの提案する新しい広報手段を採用することになった場合、広報手段から得られる収益に関して5年間1割を共有という事でどうですかな?」
流石に模倣が可能な手法に関してギルドだけが利益の一部を外に払う契約をずっと続ける訳にはいかない。
「ギルドの広報に使った場合も外部からの広告依頼に受け取る収益基準に基づいて収益を得たと見做し、それら合計収益の1割ですね?」
アレク・シェフィートが外部からの収入が無い場合の条件を確認する。
「良いでしょう」
正式な契約はしないものの、手を握って合意した。
以前は口頭の合意を『無かった』と主張する人間も居たが、最近は映像を記録出来る魔具が出て来たので握手の合意は正式な契約書類の前段階としてかなり強固な合意として認められるようになった。
お陰で話し合いの段階から一々面倒な書類を用意しないで済むので助かる。
「今度、4人程度の乗客とちょっとした手荷物を乗せて空を飛べる空滑機《グライダー》の改良版を開発しました。
流石に転移門程は速くないので平時の利用は限られるかもしれませんが、転移門が無い街への移動や、転移門から離れた場所での土砂崩れや増水などで足止めされてしまったギルド会員や貴族の方を有償で避難させるのに便利ではないかと思っています。
それで、ですね。
この空滑機《グライダー》改は以前の飛行具に比べて重い為、ちょっとした熱気球に似た魔具を使って離陸するのですが、この離陸用魔具の側面に大きく文字を写し込めるようにしました。
現時点ではその空滑機《グライダー》改の販売や貸し出しに使う予定の我々の事業の連絡先を写し込んでいますが、商業ギルドで空滑機《グライダー》改を購入するのでしたらそちらには商業ギルド関連の広報情報を見せたら中々注目を集めると思われるのですよ」
にこやかにアレク・シェフィートが説明した。
ふむ。
熱気球の様な魔具の横に広報ねぇ。
確かにあれはそれなりに注目を集めるだろう。
土砂崩れで道が不通になった場合に人を運べる手段というのも便利そうだ。
離陸時だけではあまり金にならないかも知れないが・・・ある意味、熱気球の様に商業ギルドなり祭りがある広場なりにその離陸用魔具なり熱気球なりを浮かべることも可能だろう。
「面白そうなアイディアですな。
一度実物を見せてもらいたい」
【後書き】
イマイチ盛り上がりに掛けてますね~。
それなりに画期的な筈なんですけどねぇ。
商業ギルド広報部長の視点からです。
【本文】
>>サイド ダジル・ピタフォロー 商業ギルド広報部長
「今日はどういった話なのかね?
まだ事業を始めて数年なのに、シェフィート商会経由で色々と画期的な魔具を売りに出しているとのご活躍を耳にしている若き事業家からご指名で話が来て、楽しみにしていたのですよ」
態々ブランドに隠れて名前を隠している魔術師3人組の商業担当が、何故広報部長の自分と話したいと言ってきたのか。
自分が直接対応しなければ不味いような厄介な話だったら魔術院かシェフィート商会経由になるだろうから純粋に金になる話だと思うが、魔具や魔術師と広報がどう繋がるのだろうか?
画期的な魔具や精神汚染の呪具に関する話など、シェフィートの3男とその仲間は色々と重要な案件に関わっているから向うからの話し合いの要請があれば時間を取るぐらいはするが、疑問ではある。お陰で朝からちょっとワクワクしていた。
広報が関与する金儲けの話が自分が部のトップである時期に現れれば、更なる昇進も夢では無い。
「実は、ですね。
ギルド外の一般の方の目に留まりやすいちょっと面白い広告の方法を思いついたのですが・・・技術その物は別の魔術師が特許を有している魔術回路を使うのでそのやり方を広めても我々には1銅貨も入ってこないのですよ。
手法に関する特許というのは存在しないとは思いますが、個別契約で商業ギルドと利益共有を合意することは可能だと聞いたのでご相談に参りました」
にこやかにアレク・シェフィートが答えた。
ふむ。
そう言えば、この3人組は魔具の開発をして製造は他に任せ、魔術回路の特許から主たる収入を得ているのだったか。
まあ、新規航路の発見で国から報酬を受け取ったり、パストン島の利権も有しているからあそこからの収入もそのうち入るようになるだろうが。
新しい広告方法ね。
現時点では商業ギルドの広報チラシの下部に印刷する程度で、後は適当な壁にポスターを貼る程度しかない。一般市民の注目を集める新しい手法というのは良いかも知れない。
「利益共有ですか。
ちなみにその広告手法は商業ギルド以外でも真似を出来ますかな?」
他も模倣できる手法で、ギルドだけが利益の一部を分け与えることになると不利である。
新しい手法で追加的に稼いだ利益の一部を分けるのは吝かではないが、他者があっさり追随できる手法ならば利益共有は模倣が起きるまでの短期間になる。
アレク・シェフィートが軽く首を傾げて考え込んだ。
「そうですね・・・ちょっと大掛かりな装置が必要なのですぐには真似はしにくいかと。
まあ、これからギルドに売り込む予定の大掛かりな装置の方を商業ギルドが購入しないことになりましたらどちらにせよ関係ないのですが」
「ほう?
大掛かりな装置を購入しないと使えない広報手段では導入は難しいが」
大掛かりな装置なぞ、そうそう簡単にはギルドで買えないぞ?
時々魔術師というのは現実を分かっていないような魔具を売り込もうとしてくるが、何らかの理由でアレク・シェフィートが暴走しているのか?
「ある意味、アイディアを話したらそれなりに模倣は可能なので先に利益共有という枠組みについて合意を頂いてから詳細を説明したいのですね」
こちらの微妙な反応に動じず、アレク・シェフィートが答える。
「・・・良いでしょう。
もしもその大掛かりな装置をギルドが購入することになり、そちらの提案する新しい広報手段を採用することになった場合、広報手段から得られる収益に関して5年間1割を共有という事でどうですかな?」
流石に模倣が可能な手法に関してギルドだけが利益の一部を外に払う契約をずっと続ける訳にはいかない。
「ギルドの広報に使った場合も外部からの広告依頼に受け取る収益基準に基づいて収益を得たと見做し、それら合計収益の1割ですね?」
アレク・シェフィートが外部からの収入が無い場合の条件を確認する。
「良いでしょう」
正式な契約はしないものの、手を握って合意した。
以前は口頭の合意を『無かった』と主張する人間も居たが、最近は映像を記録出来る魔具が出て来たので握手の合意は正式な契約書類の前段階としてかなり強固な合意として認められるようになった。
お陰で話し合いの段階から一々面倒な書類を用意しないで済むので助かる。
「今度、4人程度の乗客とちょっとした手荷物を乗せて空を飛べる空滑機《グライダー》の改良版を開発しました。
流石に転移門程は速くないので平時の利用は限られるかもしれませんが、転移門が無い街への移動や、転移門から離れた場所での土砂崩れや増水などで足止めされてしまったギルド会員や貴族の方を有償で避難させるのに便利ではないかと思っています。
それで、ですね。
この空滑機《グライダー》改は以前の飛行具に比べて重い為、ちょっとした熱気球に似た魔具を使って離陸するのですが、この離陸用魔具の側面に大きく文字を写し込めるようにしました。
現時点ではその空滑機《グライダー》改の販売や貸し出しに使う予定の我々の事業の連絡先を写し込んでいますが、商業ギルドで空滑機《グライダー》改を購入するのでしたらそちらには商業ギルド関連の広報情報を見せたら中々注目を集めると思われるのですよ」
にこやかにアレク・シェフィートが説明した。
ふむ。
熱気球の様な魔具の横に広報ねぇ。
確かにあれはそれなりに注目を集めるだろう。
土砂崩れで道が不通になった場合に人を運べる手段というのも便利そうだ。
離陸時だけではあまり金にならないかも知れないが・・・ある意味、熱気球の様に商業ギルドなり祭りがある広場なりにその離陸用魔具なり熱気球なりを浮かべることも可能だろう。
「面白そうなアイディアですな。
一度実物を見せてもらいたい」
【後書き】
イマイチ盛り上がりに掛けてますね~。
それなりに画期的な筈なんですけどねぇ。
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