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卒業後
698 星暦556年 緑の月 29日 久しぶりに船探し(10)
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「取り敢えず、天井の負荷は水で支えるようにした上で、島の上にある物が流れ出さないように歩き回れる程度の空間分だけそっと水をどけてくれる?」
シャルロが蒼流に頼んだ。
何百年か何千年か知らないが海の下で眠っていた神殿(多分)なのだ。
柱がどの程度しっかりしているのか分からないから、下手に水を完全にどけたら柱が折れる可能性があるな。
「出来るだけ物は動かさないように、見て回ろうか。
明日にでもシェイラと一緒に解説してもらいながらもっと詳しく見よう」
アレクが提案した。
「こう言う発掘できない遺跡で見つかった物ってどうなるんだ?
どっか集めて展示している博物館なんてあったっけ?」
売って金になるかは不明だし、何だったら歴史学会に寄付しても良いが、歴史学会に寄贈された発掘品を展示する場所があったか?
単に倉庫に仕舞われるだけだったら売っちまった方が良いだろう。
流石にいつの日か出てくるかも知れない研究者の為に無償で見つけた物を全部寄付する程お人好しじゃあないぞ。
どうせお惚け学者達じゃあ倉庫に入れておいてもそのうち清掃員とか珍しく金に汚い学会員にこっそり売り払われてしまうのだろうし。
「う~ん、国立博物館があるけど展示されるのはよっぽど見栄えがいいか歴史的価値がある物だけだからねぇ。
伯爵領の遺跡だから伯爵に寄付したら本邸とか離れとかで展示するだろうけど、あんまり人の目には触れないだろうね」
シャルロが微妙な顔で答えた。
「・・・考えてみたら、シェイラやハラファ達がやっているような発掘作業で出てきた遺跡品って最終的にはどうなるんだ?」
考古学者たちは鍋や机すらも喜んで舐め尽くすように調べるが、あまり見ごたえがある訳ではないので博物館で展示していあるとは思えない。
というかアファル王国内だけでも複数の遺跡があるのだ。
それらで発掘された品を全部展示しようと思ったらめっちゃ大きな建物が必要になるだろう。
王都にそんな大きな建物を確保する様な資金が歴史学会にあったら学者たちは発掘現場にそれを注ぎ込むだろうし、安くつくようなど田舎に博物館を建てても誰も見に行かないだろうなぁ。
「見栄えが良いのや歴史的価値がある物は国立博物館で展示、それ以外は国立博物館や歴史学会の倉庫に山積みだろうね」
アレクが肩を竦めながら答えた。
・・・金と時間を掛けて調べまくった挙句に倉庫行きとはなんとも微妙だ。
まあ、やっている人間は楽しんでいるし、歴史的知識というのも役に立つ時もあるのかもだが。
考えようによっては数回しか着ない夜会用のドレスを大金を払って次から次へと造らせて下げ渡すのも同じぐらい(というか俺からしたらそれ以上に)意味がない行動だから、口を挟むべきじゃないな。
無駄は人それぞれというやつだ。
ある意味、無駄を楽しむだけの資金を稼ぐのが人間にとっての人生の目標なのかも知れない。
「じゃあ、現実的に考えて俺やシャルロ経由で精霊に頼んでこの遺跡を発掘できる状態に維持するような資金は歴史学会には無いだろうから、よっぽどの発見があるんじゃない限り面白い物は持って帰って家に展示するか売るかだな」
「シェイラに相談してから決めようよ。
是非とも研究したいと思うような何かがあるんだったらちょっとぐらい協力しても良いし」
シャルロが軽く答え、水が引いてきた神殿に向かって船から飛び降りた。
身軽な格好をしているケレナもさっさと飛び降りてシャルロに続く。
アレクは浮遊《レヴィア》の術を使って降りていた。
ぽや~っとしている割にシャルロって意外と運動神経が良いんだよなぁ。
俺も船から飛び降りて皆の後に続く。
それなりに深い位置にあるお蔭か、地面は基本的に砂でおおわれており、海藻やその他諸々の生き物は殆どいなかった。
水をどける際に生き物もどけてくれたのかな?
水が無くなったら砂の中に隠れている魚介類は死んでしまうだろうから、どけておいてもらわないとそのうち腐って臭くなりそうだしな。
俺たちの家の前庭分ぐらいの距離を歩いたところで足元が岩から石畳に変わった。
かなり滑らかで突起も無い。
それだけ丁寧に造ったのか、それとも海底に沈んだ後に海流で削られて滑らかになったのか。
どちらにせよ、歩きやすいのは助かる。
砂に足を取られないように足元に気を付けながら進むと、神殿っぽい建物にたどり着いた。
ケレナの胴ぐらいありそうな太さの柱が2メタ間隔ぐらいに並び、庇を支えている。
その奥に壁があり・・・丁度俺たちが向かっている部分に扉があったっぽい。
意外にも、両開きっぽい扉の片側は残っていた。
沈没船の板とかもそれなりに残っていることを考えると、海底って意外と木が腐らないのかね?
シェイラがいるフォレスタ文明の遺跡なんかでは、生きた大樹はまだしも建物の中の木で出来た扉とか家具とかはほぼ全滅だった。
ハラファ達が居るような洞窟の中で実質密封されて動物が入らない場所以外だと木は長持ちしないようなのだが、水って木を腐らせる要素の一つな癖に水だけだと何故か腐敗を止める効果もあるのかな?
不思議だ。
多分、この扉の片側は島が沈んだ際に水に流されたのだろうが・・・これなら中は色々と残っているかもだな。
とは言え、乾かして地上に持ちだしたらすぐにひび割れて壊れる可能性も高そうだが。
・・・どうなんだろう?
シャルロが蒼流に頼んだ。
何百年か何千年か知らないが海の下で眠っていた神殿(多分)なのだ。
柱がどの程度しっかりしているのか分からないから、下手に水を完全にどけたら柱が折れる可能性があるな。
「出来るだけ物は動かさないように、見て回ろうか。
明日にでもシェイラと一緒に解説してもらいながらもっと詳しく見よう」
アレクが提案した。
「こう言う発掘できない遺跡で見つかった物ってどうなるんだ?
どっか集めて展示している博物館なんてあったっけ?」
売って金になるかは不明だし、何だったら歴史学会に寄付しても良いが、歴史学会に寄贈された発掘品を展示する場所があったか?
単に倉庫に仕舞われるだけだったら売っちまった方が良いだろう。
流石にいつの日か出てくるかも知れない研究者の為に無償で見つけた物を全部寄付する程お人好しじゃあないぞ。
どうせお惚け学者達じゃあ倉庫に入れておいてもそのうち清掃員とか珍しく金に汚い学会員にこっそり売り払われてしまうのだろうし。
「う~ん、国立博物館があるけど展示されるのはよっぽど見栄えがいいか歴史的価値がある物だけだからねぇ。
伯爵領の遺跡だから伯爵に寄付したら本邸とか離れとかで展示するだろうけど、あんまり人の目には触れないだろうね」
シャルロが微妙な顔で答えた。
「・・・考えてみたら、シェイラやハラファ達がやっているような発掘作業で出てきた遺跡品って最終的にはどうなるんだ?」
考古学者たちは鍋や机すらも喜んで舐め尽くすように調べるが、あまり見ごたえがある訳ではないので博物館で展示していあるとは思えない。
というかアファル王国内だけでも複数の遺跡があるのだ。
それらで発掘された品を全部展示しようと思ったらめっちゃ大きな建物が必要になるだろう。
王都にそんな大きな建物を確保する様な資金が歴史学会にあったら学者たちは発掘現場にそれを注ぎ込むだろうし、安くつくようなど田舎に博物館を建てても誰も見に行かないだろうなぁ。
「見栄えが良いのや歴史的価値がある物は国立博物館で展示、それ以外は国立博物館や歴史学会の倉庫に山積みだろうね」
アレクが肩を竦めながら答えた。
・・・金と時間を掛けて調べまくった挙句に倉庫行きとはなんとも微妙だ。
まあ、やっている人間は楽しんでいるし、歴史的知識というのも役に立つ時もあるのかもだが。
考えようによっては数回しか着ない夜会用のドレスを大金を払って次から次へと造らせて下げ渡すのも同じぐらい(というか俺からしたらそれ以上に)意味がない行動だから、口を挟むべきじゃないな。
無駄は人それぞれというやつだ。
ある意味、無駄を楽しむだけの資金を稼ぐのが人間にとっての人生の目標なのかも知れない。
「じゃあ、現実的に考えて俺やシャルロ経由で精霊に頼んでこの遺跡を発掘できる状態に維持するような資金は歴史学会には無いだろうから、よっぽどの発見があるんじゃない限り面白い物は持って帰って家に展示するか売るかだな」
「シェイラに相談してから決めようよ。
是非とも研究したいと思うような何かがあるんだったらちょっとぐらい協力しても良いし」
シャルロが軽く答え、水が引いてきた神殿に向かって船から飛び降りた。
身軽な格好をしているケレナもさっさと飛び降りてシャルロに続く。
アレクは浮遊《レヴィア》の術を使って降りていた。
ぽや~っとしている割にシャルロって意外と運動神経が良いんだよなぁ。
俺も船から飛び降りて皆の後に続く。
それなりに深い位置にあるお蔭か、地面は基本的に砂でおおわれており、海藻やその他諸々の生き物は殆どいなかった。
水をどける際に生き物もどけてくれたのかな?
水が無くなったら砂の中に隠れている魚介類は死んでしまうだろうから、どけておいてもらわないとそのうち腐って臭くなりそうだしな。
俺たちの家の前庭分ぐらいの距離を歩いたところで足元が岩から石畳に変わった。
かなり滑らかで突起も無い。
それだけ丁寧に造ったのか、それとも海底に沈んだ後に海流で削られて滑らかになったのか。
どちらにせよ、歩きやすいのは助かる。
砂に足を取られないように足元に気を付けながら進むと、神殿っぽい建物にたどり着いた。
ケレナの胴ぐらいありそうな太さの柱が2メタ間隔ぐらいに並び、庇を支えている。
その奥に壁があり・・・丁度俺たちが向かっている部分に扉があったっぽい。
意外にも、両開きっぽい扉の片側は残っていた。
沈没船の板とかもそれなりに残っていることを考えると、海底って意外と木が腐らないのかね?
シェイラがいるフォレスタ文明の遺跡なんかでは、生きた大樹はまだしも建物の中の木で出来た扉とか家具とかはほぼ全滅だった。
ハラファ達が居るような洞窟の中で実質密封されて動物が入らない場所以外だと木は長持ちしないようなのだが、水って木を腐らせる要素の一つな癖に水だけだと何故か腐敗を止める効果もあるのかな?
不思議だ。
多分、この扉の片側は島が沈んだ際に水に流されたのだろうが・・・これなら中は色々と残っているかもだな。
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・・・どうなんだろう?
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