シーフな魔術師

極楽とんぼ

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卒業後

864 星暦557年 翠の月 21日 水除け(3)

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「結界で一定範囲の水を排除する感じにするなら、靴にもそんな滑り止め兼カバーを付けたらどうかな?」
はっきり言って俺にとって商業ギルドや貴族の馬車止めがどうなろうと、どうでも良い。

「靴の底に滑り止めを嵌めるような形の水除けの魔具を造って靴の中に水が入らない様にして、その範囲から半径1メタメートル以内は水が地表から跳ね上がらない様に水平にも結界を展開する形にしたら足への泥跳ねも防げるし、応用すれば馬にも使えるかな?」
アレクが付け加える。

「結界で水を排除したら泥も排除出来るかな?
雨の時ならまだしも、降った後に問題になるのは水っぽい泥だよね」
シャルロが口を挟む。
お、鋭い指摘だね。

「ちなみに馬の脚に滑り止めなんて付けられるのか?」
人間の靴の底に滑り止めっぽい魔具を嵌めるのは可能だと思うが、馬って靴を履いてないよな?
蹄に滑り止めなんて固定できるのか?

「・・・蹄に直接固定するのは難しいか。
足先は帰ってから洗うことにして、足首にベルトで巻き付けるような形で固定するかな?
考えてみたら歩くのならまだしも、早足や駈歩した場合に半径1メタメートルで足りるかは微妙だな。
まあ、泥まみれな地表の上を走り回るのは泥が跳ねなくても滑りやすくて危険だから、どちらにせよ速度は上げない方がいいか」
アレクがちょっと考え込む。

「滑って転んだら馬が怪我するかも知れないから、普通に歩くのよりも早くしたら泥だらけになるぐらいの方が良いんじゃない?」
シャルロが提案する。

泥まみれで滑りやすい地面の上で走る事自体が馬鹿な行為だと思うが、雨でずっと閉じ込められていたらストレスが溜まってがっつり走りたくなるか?
だが、水除けの魔具が出来たら雨の中でも出かけられる筈だから、止んだ時に走り回らなくてもいいだろう。

まあ、毎日歩くだけで走れないと馬が苛立つかもしれないが。

「考えてみたら上の方の雨除けも、馬をカバーするサイズじゃないといけないんだろ?
かなり大きくなるな」
つうか、馬は諦めて後から拭いたら良いんじゃないかという気もするが・・・馬も濡れたら風邪をひくのかな?

「防寒・防御用結界をちょっと変えて水を排除する形にしたら全部なんとかならないかな?
水たまりに踏み込んだ時の分までちゃんと機能するかは分からないけど」
シャルロがちょっと首を傾げながら言った。

あれも矢を射られても1、2回なら何とかなる程度にはなっているから、水滴も同じく弾く様にするのは可能だ。
弾く対象を水だけにしたら魔力の消費を抑えられるようになるかも知れないが・・・水だけ弾く様にしたら、泥水や泥がどうなるかは確かに要検討だな。

水たまりを踏んだ場合にどうなるかも気になるし。
水たまり全体の水を押し払おうとするとしたらかなり魔力を消費しそうだ。

「取り敢えず水滴サイズの物まではじく様にして、雨の中で歩いたり突っ立ったり水たまりに踏み込んだりしてどうなるか試してみるか。
その後徐々に条件を絞り込んで魔力消費量を減らせばいい」
アレクが立ち上がって工房の奥に行きながら提案する。

防寒・防御用結界は今でも時折手を加えて魔力消費量の調整を頼まれることがあるから試作品がある筈。
今日は晴れているけど、如雨露でも使って水をかけてみるか。

「あの結界って暖かさと攻撃された時の防御用だったから、足の裏って範囲設定に入ってないんじゃないか?
そうなると水たまりその物は足首ぐらいからははじくにしても、靴の底からの水の沁み込みは防げないよな」
俺が最近履くような靴は靴底に穴が開いていたりはしないが、それでも完全に防水じゃあない。水たまりや雨の中を歩いている際に靴の中まで快適な状態を保とうと思ったら、結界の範囲指定をどうにかしないとだな。

足の長さなんて人によって違うから、体に付ける防寒・防御用結界で足の裏までをきっちり結界の範囲に入れるとなると中々面倒な条件設定が必要になりそうだな・・・。


【後書き】
靴の中が濡れた『足が長いんですね~』で許して貰え・・・無いでしょうねぇ。

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