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卒業後
962 星暦557年 橙の月 07日 新しい伝手(26)
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>>>サイド ウォレン・ガズラート
「シェフィート商会から面白い魔具が発売されたのだが・・・こっそり魔術回路を盗んで複製できないかな?」
内務大臣に昼食に誘われて行ったところ、王家の血も引いているせいで絶対に毒味を欠かさないこの男が珍しく毒味の男を連れずに部屋に入ってきた。
まあ、ドリアーナだったら個室で出す食事は全て身内で調理から給仕まで賄うので、ほぼ危険はないのだが。
内務大臣の左手に嵌められた手の甲を覆うようなブレスレットに目が惹かれる。
ここ数日で噂が流れ始めていたが、早速入手したのか。
目的の為には手段を選ばぬ男だが・・・どうやって入手したのだろうか?
「シェフィート商会と言えば・・・シャルロ・オレファーニ達の発明では?」
シャルロの発明を盗むのは気が引けるし、色々と便利なウィルの反感を食らって仕事を請けて貰えなくなるのも痛い。
「だが、これは素晴らしいのだよ。
体質的に過敏《アレルギー》反応する食材だけでなく、毒まで分かるからこれさえつけていれば特殊な毒味も必要なしに好きなだけ食べられる!」
嬉しそうに内務大臣が給仕が持ってきたスープに手を伸ばしながら言った。
そう言えば、この男は幾つかのキノコ類に体質が合わないとかで、毒味に関しても同じ体質の人間を見つけて高額で雇わねばならず、色々と苦労していると聞いた。
「・・・毒探知用魔具、なんですかの?」
毒探知用魔具は国が独占製造していると以前シャルロ達に教えたことがある筈だが。
「過敏《アレルギー》体質安全用魔具という名目で、特定の食材を食べると体調を崩す貴族夫人やそう言った子供がいる家に広げていっているから、今さら毒探知用魔具であると言って国が召し上げるのは難しいな。
妻がチェルナ子爵夫人のお茶会で話を聞いて入手する様手配してくれたのだが、製造数がまだ限られているからということで過敏《アレルギー》体質の人間を優先すると言われたそうだ。
実際に私が食材で反応するのを見せるまで買わせてくれなかったから、王族用に入手するのも面倒そうだ」
嬉しそうに暖かいスープを食する合間に内務大臣が教えてくれた。
なるほど。
毒探知用魔具ではないと言い張る路線で売り出しているのか。
「ちなみに、それを解体して魔術回路を解析するのは?」
この男の事だ。
自分の所に話を持って来る前に試しているだろう。
「溶接されているので、無理に解体したら機能が失われるのはほぼ確実、魔術回路を解析できるかは五分五分かそれ以下の可能性だと言われた。
ちなみに、効果を試す程度の短時間な貸し出し以上な他者への貸与や譲渡はしないと購入時に誓約させられたぞ」
食べ終わったスープの皿にスプーンを置きながら内務大臣が答えた。
随分と念入りにやっているようだ。
誓約契約なんて安くはないのだが・・・まあ、国に召し上げられるよりは自分たちの所で珍しい過敏体質に困っている金持ち相手に売る方が儲かるのは確実だろうが。
それに、ある意味生産した魔具を選んで狙われる地位についた人間の毒味用に取られるよりも、体質のせいで毎日の食事にも危険が伴う人に売る方が意味がある魔具の使い方だと思っている可能性もある。
チェルリーナのように一応薬として流通する薬物を過剰投与された際に反応するのかは是非とも知りたいところだが。
「現存の毒探知用魔具と比べると、精度はどのような感じですかな?」
「東大陸からの『とっておき』だったらほぼ同じなようだ。あれの方が目立たなくて使い勝手が良いが・・・なんと言っても数が手に入らんからな。
これを国内で製造できるならば大きいぞ」
東大陸からごく稀に入手できる毒探知用魔具は目立たない指輪と、腕に嵌めるアームガードっぽいブレスレットなので魔具を身に着けている事すら分からぬ優れものなのだが、入手が難しすぎて数が揃わない。
金を摘んでも東大陸から購入できないので、金さえ払えば買えないものは無いと豪語するザルカ共和国経由で買おうとする人間が数年に一度出てくるものの、大抵は模造品で直ぐに壊れたり、数種類の毒しか判別できなかったりで意味がない物が多い。
せめて王族と政府高官だけでもなんとかなる数が欲しかったところなのだが・・・そう言えば、先月暫くシャルロが王都にいなかった。
その時期に東大陸に行っていたのか?
あの毒探知用魔具はそんじょそこらの伝手では入手できるようなものではない筈だが・・・。
もしかして、蒼流の力でも貸したのか?
下手に他国の地形や地質を変えてしまうと色々と問題が起きる可能性も高いのだが。
アレク・シェフィートが居て、そんな目立つことをやらせるとは思えないが、今度一度確認した方が良さそうだ。
「しかし、その手の甲を覆うデザインでは目立ちすぎて問題なのでは?
製造できる数が限られていると知られているのに、何の体質的問題も無い人間が身に着けていたら顰蹙を買いそうだ」
内務大臣が肩を竦めた。
「公的な晩餐会ならまだしも、家族や親しい者との食事やお茶で毒味が不要なだけでも十分価値はあるぞ?」
「・・・今度、シャルロ・オレファーニの方に話を聞きに行ってみましょう。
それなりに融通は利かせてくれるとは思いますが、堂々と彼らが苦労して開発した技術を盗むと精霊の怒りを買うかも知れませんからの」
精度が高く、簡単に使える毒探知用魔具の有用性は良く分かるが・・・シャルロに嫌われるのは避けたい。
「シェフィート商会から面白い魔具が発売されたのだが・・・こっそり魔術回路を盗んで複製できないかな?」
内務大臣に昼食に誘われて行ったところ、王家の血も引いているせいで絶対に毒味を欠かさないこの男が珍しく毒味の男を連れずに部屋に入ってきた。
まあ、ドリアーナだったら個室で出す食事は全て身内で調理から給仕まで賄うので、ほぼ危険はないのだが。
内務大臣の左手に嵌められた手の甲を覆うようなブレスレットに目が惹かれる。
ここ数日で噂が流れ始めていたが、早速入手したのか。
目的の為には手段を選ばぬ男だが・・・どうやって入手したのだろうか?
「シェフィート商会と言えば・・・シャルロ・オレファーニ達の発明では?」
シャルロの発明を盗むのは気が引けるし、色々と便利なウィルの反感を食らって仕事を請けて貰えなくなるのも痛い。
「だが、これは素晴らしいのだよ。
体質的に過敏《アレルギー》反応する食材だけでなく、毒まで分かるからこれさえつけていれば特殊な毒味も必要なしに好きなだけ食べられる!」
嬉しそうに内務大臣が給仕が持ってきたスープに手を伸ばしながら言った。
そう言えば、この男は幾つかのキノコ類に体質が合わないとかで、毒味に関しても同じ体質の人間を見つけて高額で雇わねばならず、色々と苦労していると聞いた。
「・・・毒探知用魔具、なんですかの?」
毒探知用魔具は国が独占製造していると以前シャルロ達に教えたことがある筈だが。
「過敏《アレルギー》体質安全用魔具という名目で、特定の食材を食べると体調を崩す貴族夫人やそう言った子供がいる家に広げていっているから、今さら毒探知用魔具であると言って国が召し上げるのは難しいな。
妻がチェルナ子爵夫人のお茶会で話を聞いて入手する様手配してくれたのだが、製造数がまだ限られているからということで過敏《アレルギー》体質の人間を優先すると言われたそうだ。
実際に私が食材で反応するのを見せるまで買わせてくれなかったから、王族用に入手するのも面倒そうだ」
嬉しそうに暖かいスープを食する合間に内務大臣が教えてくれた。
なるほど。
毒探知用魔具ではないと言い張る路線で売り出しているのか。
「ちなみに、それを解体して魔術回路を解析するのは?」
この男の事だ。
自分の所に話を持って来る前に試しているだろう。
「溶接されているので、無理に解体したら機能が失われるのはほぼ確実、魔術回路を解析できるかは五分五分かそれ以下の可能性だと言われた。
ちなみに、効果を試す程度の短時間な貸し出し以上な他者への貸与や譲渡はしないと購入時に誓約させられたぞ」
食べ終わったスープの皿にスプーンを置きながら内務大臣が答えた。
随分と念入りにやっているようだ。
誓約契約なんて安くはないのだが・・・まあ、国に召し上げられるよりは自分たちの所で珍しい過敏体質に困っている金持ち相手に売る方が儲かるのは確実だろうが。
それに、ある意味生産した魔具を選んで狙われる地位についた人間の毒味用に取られるよりも、体質のせいで毎日の食事にも危険が伴う人に売る方が意味がある魔具の使い方だと思っている可能性もある。
チェルリーナのように一応薬として流通する薬物を過剰投与された際に反応するのかは是非とも知りたいところだが。
「現存の毒探知用魔具と比べると、精度はどのような感じですかな?」
「東大陸からの『とっておき』だったらほぼ同じなようだ。あれの方が目立たなくて使い勝手が良いが・・・なんと言っても数が手に入らんからな。
これを国内で製造できるならば大きいぞ」
東大陸からごく稀に入手できる毒探知用魔具は目立たない指輪と、腕に嵌めるアームガードっぽいブレスレットなので魔具を身に着けている事すら分からぬ優れものなのだが、入手が難しすぎて数が揃わない。
金を摘んでも東大陸から購入できないので、金さえ払えば買えないものは無いと豪語するザルカ共和国経由で買おうとする人間が数年に一度出てくるものの、大抵は模造品で直ぐに壊れたり、数種類の毒しか判別できなかったりで意味がない物が多い。
せめて王族と政府高官だけでもなんとかなる数が欲しかったところなのだが・・・そう言えば、先月暫くシャルロが王都にいなかった。
その時期に東大陸に行っていたのか?
あの毒探知用魔具はそんじょそこらの伝手では入手できるようなものではない筈だが・・・。
もしかして、蒼流の力でも貸したのか?
下手に他国の地形や地質を変えてしまうと色々と問題が起きる可能性も高いのだが。
アレク・シェフィートが居て、そんな目立つことをやらせるとは思えないが、今度一度確認した方が良さそうだ。
「しかし、その手の甲を覆うデザインでは目立ちすぎて問題なのでは?
製造できる数が限られていると知られているのに、何の体質的問題も無い人間が身に着けていたら顰蹙を買いそうだ」
内務大臣が肩を竦めた。
「公的な晩餐会ならまだしも、家族や親しい者との食事やお茶で毒味が不要なだけでも十分価値はあるぞ?」
「・・・今度、シャルロ・オレファーニの方に話を聞きに行ってみましょう。
それなりに融通は利かせてくれるとは思いますが、堂々と彼らが苦労して開発した技術を盗むと精霊の怒りを買うかも知れませんからの」
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