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卒業後
964 星暦557年 橙の月 08日 新しい伝手(28)
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「ちなみに、東大陸の連中からどうやってあの最新式の毒探知用魔具を入手できたんか、聞いても良いか?」
やっとゆったりと全員が座って息を抜こうとお茶を手にしたところで、ウォレン爺が尋ねてきた。
「ジルダスの裏社会の顔役に紹介状を貰ってケッパッサに行ったら、そこの顔役のおっさんが何やら交易に来た女性に熱を上げているとかって話を聞いたんでね。
美顔用魔具と交換で一つくれた」
しらを切っても良いんだが・・・大して重要なことじゃないし、いいだろう。
特許登録しない理由も聞かれるだろうし。
「そんな物と交換で、自分たちの特産物が売れなくなるような物を渡したのか」
あっけに取られたようにウォレン爺が呟いた。
「どうせ毒探知用魔具で探知できない毒もあるんだろうし、場合によっては安い単純な毒が使えなくなって自分たちの高級で解毒できない毒を買う客が増えると考えたのかもな?
まあ、どちらにせよあそこの土地じゃないとほぼ入手できない素材がないと、完全に複製は出来ないし」
俺たちの造ったのはちょっと嵩張るから、重さは銅に金鍍金にすることである程度誤魔化せたが、女性が腕に付けるには大きすぎて邪魔だろう。
爵位や王宮での閣僚の地位等に就くのは女性よりも男性の方が多いから、毒を盛られる可能性が高いのは男なんで問題ないかもだが。
とは言え、女性だってそれこそ狙った男の婚約者なり後妻の地位を狙って毒を盛られる可能性はあるから、危険性はあるんだがな。
まあ、女性の方が脇が甘い事が多いし、周りで仕えるメイドや侍女の数が多いからそれとなく化粧品とかに毒を混ぜるのもやりやすいくて、食事だけ何とかしても殺される可能性は高いだろうが。
「それで、手の甲に目立つように嵌める形のブレスレットっぽい過敏《アレルギー》体質安全用魔具として売り出すことにしたのか」
「元々、指輪と本体が離れた形にする為に出力も魔術回路も余分に色々と必要になるしね~。
色々削れる上に嵌めているのが目立つから、単に『もしかしたら毒を盛られるかも』ってだけで買えなくなれば、毒殺したがる人にとってもそれ程邪魔にならないかもじゃない?」
シャルロがウォレン爺が持ってきたお土産の菓子の箱を開けながら答えた。
「偉ぶってる政府高官や大貴族を守るよりも、普段の食事やお茶会で困っているような女性や子供を助ける魔具を造る方がやりがいがあるし。
とは言え、俺たちが自分たちで製造まで手伝う羽目になる程切実に欲しがる人間がこれだけ出て来るとは思っていなかったが」
今迄は色々販売前の下調べや根回しで上手い事需要と供給を合わせていたのに、シェフィート商会の誰かが失敗したよな~。
美顔用魔具なんかの時も驚くほど買い手である貴族女性とかに押しまくられたと聞くが、あの時はちゃんとそれを予測していて、話を広げる前にある程度は製造準備をしっかり手配していたんだよな。
魔具そのものを試すために過敏《アレルギー》体質な人が必要だったから、身内の人間だけで済ませられなかったというのも敗因な気がする。
しかも美容なら『準備が出来るまで待ってくださいね』って焦らしても短期間なら然程恨まれないが、命に関わることもある過敏《アレルギー》体質関係だと、待たせている間にうっかり誰かが死んだら家族や友人からもかなり本気で恨まれかねなかったし。
「ちなみに、毒探知用魔具の魔術回路を国に提出せよと言ったらどうなる?」
ウォレン爺が聞いてきた。
「僕たちが貰った東大陸の毒探知用魔具の実物を売ってあげても良いよ~」
にっこり笑いながらシャルロが応じた。
色々と話し合った結果、毒殺がより複雑に、解毒できない形に変容するのは国にとっても良い事じゃないだろうということで、金で入手できないことはない現物はまだしも、魔術回路とそれを造る方法の情報は出さないことに決めたのだ。
どうせ実物だけだったら国の上層部の何人かは持っているんだろうし。
今迄複製に成功していないってことは現物が一つ増えたところで誰か1人の毒味の手間が減るというだけで、大きな影響はないだろう。
「では家の中でこっそり使うだけだとしても、過敏《アレルギー》体質安全用魔具をもっと制限なしに売って貰いたいのだが」
ちゃっかり自分が持ってきた土産の菓子の箱に手を伸ばしながらウォレン爺が食い下がる。
魔術回路を特許登録していないのは既に確認済みなんだろうなぁ。
強制的に魔術回路を召し上げようとしないのは、過敏《アレルギー》体質安全用魔具を必要とする購買層からの反感を気にしてからか、それともシャルロ可愛さ(及び蒼流怖さ)からかな。
「今は忙しいの、見たら分かるでしょ?
冬の社交シーズンが終わる頃になったらひと段落つくと思うから、その頃に5個か10個ぐらいだったらシェフィート商会からこっそり売れるかも知れないから、それまで待って」
ちょっとそっけなくシャルロが応じる。
まあ、お偉いさんなんてしっかりプロの毒味が付いているんだ。
食事がちょっと冷めて不味いぐらい、今迄通りに我慢してもらいたいところだね。
俺たちがこれ以上忙しくなるつもりはない。
やっとゆったりと全員が座って息を抜こうとお茶を手にしたところで、ウォレン爺が尋ねてきた。
「ジルダスの裏社会の顔役に紹介状を貰ってケッパッサに行ったら、そこの顔役のおっさんが何やら交易に来た女性に熱を上げているとかって話を聞いたんでね。
美顔用魔具と交換で一つくれた」
しらを切っても良いんだが・・・大して重要なことじゃないし、いいだろう。
特許登録しない理由も聞かれるだろうし。
「そんな物と交換で、自分たちの特産物が売れなくなるような物を渡したのか」
あっけに取られたようにウォレン爺が呟いた。
「どうせ毒探知用魔具で探知できない毒もあるんだろうし、場合によっては安い単純な毒が使えなくなって自分たちの高級で解毒できない毒を買う客が増えると考えたのかもな?
まあ、どちらにせよあそこの土地じゃないとほぼ入手できない素材がないと、完全に複製は出来ないし」
俺たちの造ったのはちょっと嵩張るから、重さは銅に金鍍金にすることである程度誤魔化せたが、女性が腕に付けるには大きすぎて邪魔だろう。
爵位や王宮での閣僚の地位等に就くのは女性よりも男性の方が多いから、毒を盛られる可能性が高いのは男なんで問題ないかもだが。
とは言え、女性だってそれこそ狙った男の婚約者なり後妻の地位を狙って毒を盛られる可能性はあるから、危険性はあるんだがな。
まあ、女性の方が脇が甘い事が多いし、周りで仕えるメイドや侍女の数が多いからそれとなく化粧品とかに毒を混ぜるのもやりやすいくて、食事だけ何とかしても殺される可能性は高いだろうが。
「それで、手の甲に目立つように嵌める形のブレスレットっぽい過敏《アレルギー》体質安全用魔具として売り出すことにしたのか」
「元々、指輪と本体が離れた形にする為に出力も魔術回路も余分に色々と必要になるしね~。
色々削れる上に嵌めているのが目立つから、単に『もしかしたら毒を盛られるかも』ってだけで買えなくなれば、毒殺したがる人にとってもそれ程邪魔にならないかもじゃない?」
シャルロがウォレン爺が持ってきたお土産の菓子の箱を開けながら答えた。
「偉ぶってる政府高官や大貴族を守るよりも、普段の食事やお茶会で困っているような女性や子供を助ける魔具を造る方がやりがいがあるし。
とは言え、俺たちが自分たちで製造まで手伝う羽目になる程切実に欲しがる人間がこれだけ出て来るとは思っていなかったが」
今迄は色々販売前の下調べや根回しで上手い事需要と供給を合わせていたのに、シェフィート商会の誰かが失敗したよな~。
美顔用魔具なんかの時も驚くほど買い手である貴族女性とかに押しまくられたと聞くが、あの時はちゃんとそれを予測していて、話を広げる前にある程度は製造準備をしっかり手配していたんだよな。
魔具そのものを試すために過敏《アレルギー》体質な人が必要だったから、身内の人間だけで済ませられなかったというのも敗因な気がする。
しかも美容なら『準備が出来るまで待ってくださいね』って焦らしても短期間なら然程恨まれないが、命に関わることもある過敏《アレルギー》体質関係だと、待たせている間にうっかり誰かが死んだら家族や友人からもかなり本気で恨まれかねなかったし。
「ちなみに、毒探知用魔具の魔術回路を国に提出せよと言ったらどうなる?」
ウォレン爺が聞いてきた。
「僕たちが貰った東大陸の毒探知用魔具の実物を売ってあげても良いよ~」
にっこり笑いながらシャルロが応じた。
色々と話し合った結果、毒殺がより複雑に、解毒できない形に変容するのは国にとっても良い事じゃないだろうということで、金で入手できないことはない現物はまだしも、魔術回路とそれを造る方法の情報は出さないことに決めたのだ。
どうせ実物だけだったら国の上層部の何人かは持っているんだろうし。
今迄複製に成功していないってことは現物が一つ増えたところで誰か1人の毒味の手間が減るというだけで、大きな影響はないだろう。
「では家の中でこっそり使うだけだとしても、過敏《アレルギー》体質安全用魔具をもっと制限なしに売って貰いたいのだが」
ちゃっかり自分が持ってきた土産の菓子の箱に手を伸ばしながらウォレン爺が食い下がる。
魔術回路を特許登録していないのは既に確認済みなんだろうなぁ。
強制的に魔術回路を召し上げようとしないのは、過敏《アレルギー》体質安全用魔具を必要とする購買層からの反感を気にしてからか、それともシャルロ可愛さ(及び蒼流怖さ)からかな。
「今は忙しいの、見たら分かるでしょ?
冬の社交シーズンが終わる頃になったらひと段落つくと思うから、その頃に5個か10個ぐらいだったらシェフィート商会からこっそり売れるかも知れないから、それまで待って」
ちょっとそっけなくシャルロが応じる。
まあ、お偉いさんなんてしっかりプロの毒味が付いているんだ。
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俺たちがこれ以上忙しくなるつもりはない。
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