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卒業後
312 星暦553年 緑の月 14日 でっち上げの容疑(12)
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「目の下に隈が出来ているぞ」
いらん事を指摘した長を恨めしげに睨む。
分かっているよ、隈が出来ている事なんて。
というか、寝不足と心眼《サイト》の使いすぎで、ここ数日は慢性的に頭が痛い。
外部的に隈しか見えていない事の方が、ある意味不満だ。
別に周囲に何かをして欲しいわけでは無い。
だが、俺はこんなに大変な思いをしているんだ!!!というのを分かってもらいたい思いに時折とりつかれる。
とは言え、そんな理不尽な不満を口にする訳にはいかないので、ため息をついて長のコメントを流がした。
「どこにもそれらしい国印付きの書類が見つからないんですよ。
ギルドに調べて貰った別宅も全て改めて捜索したのに。
他に公爵の名義で借りているところとか、本当に無いんですか?」
ここ数日は睡眠時間もギリギリまで削ってファルータ公爵家の名義になっている家屋の家捜しを決行してきた。
まずは王都の本邸と別邸2つ。
それらに無かったので領都の屋敷。
そこにも無かったのでファルータ公爵領の主要都市にあった残りの別邸3つも。
別荘まで探す時間があるか不明だったので、公爵本人が足を運んだという話の無かった別荘は盗賊《シーフ》ギルドに頼んで家捜しして貰ったが、何も出てこなかった。
公爵が頻繁に訪れるという別荘も片っ端から調べたもののそれらしき文書が見つからず、しょうが無いのでギルドに頼んだ別荘も改めて探してみたものの、やはり何も出てこなかった。
転移門がある街へやそちらを使ったが、不便なところにある別荘などは空滑機で移動した。
疲れが溜まっていたので、飛んでいる間にうたた寝して何度転落しそうになったことか・・・。
なのに何も出てこなかった。
結局、ファルータ公爵は他国と結びつくこと無く、単なる嫌がらせとして今回の行動を起こしていて証拠書類なんて最初から無いのかもしれない。
だが。
公爵の方が一歩上手で、単に俺が書類を見つけられてないだけなのかも知れないと思うと、ノンビリ眠ってもいられない。
「時間が限られているからな。
もしかしたら我々が見つけ出せなかったファルータ公爵の隠し家がある可能性は否定できない。
だが、考えようによってはファルータ公爵の隠し方が巧みなのかもしれんぞ。
金庫や引き出しの二重底に重要な書類を仕舞うのが一番安全な隠し場所とは限らないのは、お前だって分かっているだろう?」
グラスにワインを注ぎながら長が答えた。
確かに。
普通の書類だったら、他の通常書類に紛れ込ませていたら絶対に見つけられないだろう。
国を代表するような大貴族なのだ。
領地も大きく、通常業務の書類も膨大な量だった。当然のことながら、金庫に保管されていた書類以外は目を通していない。
・・・考えてみたら、金庫や隠し場所に入っていた書類は、重要ではあるものの見つかったら問題になるような物は1つも無かった。
大貴族が1つも後ろ暗い事が無いなんて、あり得ない。
と言うことは、やはり公爵は重要な書類を隠すのが上手いのかも知れない。
だが、今回は国印付きの書類なのだ。
あれだったら心眼に映るはずなのに。
魔力を俺の心眼から完全に隠蔽するのは不可能だ。
とは言え、国印の特徴を心眼《サイト》から隠すのは・・・可能だな。
・・・となると、ファルータ公爵の持っている魔道具や魔術本を全て調べる必要があるか。
「もう一度、王都の屋敷を探してみます・・・」
「おう。
ちなみに、ハートネット殿の名義で貸し出された家屋の捜索は終わったぞ」
長がピラリと紙を取り上げて見せた。
国印がついている。
「ガルカ王国から、政変後にハートネット殿をアファル王国の宰相に任命することを約束する書類だ」
「まじっすか。
と言うことは、絶対にファルータ公爵も何か貰っているはずですよね」
学院長が宰相になりたいかというのは非常に疑問だが、悪事の証拠としてはこれ以上の物はないだろう。
「これはよく調べれば偽物だと分かる偽造文書とすり替えておいたから、ファルータ公爵に関する証拠文書が見つからなくてもハートネット殿に害は及ばないとは思う。
とは言え、南方の要ともなる大貴族が南側の隣国と繋がっているなんていうのは危険すぎるからな。
頑張って探してくれ」
にやりと笑いながら長がワインを口にした。
うが~~!!
頑張って探したんだよ、これでも!!
いらん事を指摘した長を恨めしげに睨む。
分かっているよ、隈が出来ている事なんて。
というか、寝不足と心眼《サイト》の使いすぎで、ここ数日は慢性的に頭が痛い。
外部的に隈しか見えていない事の方が、ある意味不満だ。
別に周囲に何かをして欲しいわけでは無い。
だが、俺はこんなに大変な思いをしているんだ!!!というのを分かってもらいたい思いに時折とりつかれる。
とは言え、そんな理不尽な不満を口にする訳にはいかないので、ため息をついて長のコメントを流がした。
「どこにもそれらしい国印付きの書類が見つからないんですよ。
ギルドに調べて貰った別宅も全て改めて捜索したのに。
他に公爵の名義で借りているところとか、本当に無いんですか?」
ここ数日は睡眠時間もギリギリまで削ってファルータ公爵家の名義になっている家屋の家捜しを決行してきた。
まずは王都の本邸と別邸2つ。
それらに無かったので領都の屋敷。
そこにも無かったのでファルータ公爵領の主要都市にあった残りの別邸3つも。
別荘まで探す時間があるか不明だったので、公爵本人が足を運んだという話の無かった別荘は盗賊《シーフ》ギルドに頼んで家捜しして貰ったが、何も出てこなかった。
公爵が頻繁に訪れるという別荘も片っ端から調べたもののそれらしき文書が見つからず、しょうが無いのでギルドに頼んだ別荘も改めて探してみたものの、やはり何も出てこなかった。
転移門がある街へやそちらを使ったが、不便なところにある別荘などは空滑機で移動した。
疲れが溜まっていたので、飛んでいる間にうたた寝して何度転落しそうになったことか・・・。
なのに何も出てこなかった。
結局、ファルータ公爵は他国と結びつくこと無く、単なる嫌がらせとして今回の行動を起こしていて証拠書類なんて最初から無いのかもしれない。
だが。
公爵の方が一歩上手で、単に俺が書類を見つけられてないだけなのかも知れないと思うと、ノンビリ眠ってもいられない。
「時間が限られているからな。
もしかしたら我々が見つけ出せなかったファルータ公爵の隠し家がある可能性は否定できない。
だが、考えようによってはファルータ公爵の隠し方が巧みなのかもしれんぞ。
金庫や引き出しの二重底に重要な書類を仕舞うのが一番安全な隠し場所とは限らないのは、お前だって分かっているだろう?」
グラスにワインを注ぎながら長が答えた。
確かに。
普通の書類だったら、他の通常書類に紛れ込ませていたら絶対に見つけられないだろう。
国を代表するような大貴族なのだ。
領地も大きく、通常業務の書類も膨大な量だった。当然のことながら、金庫に保管されていた書類以外は目を通していない。
・・・考えてみたら、金庫や隠し場所に入っていた書類は、重要ではあるものの見つかったら問題になるような物は1つも無かった。
大貴族が1つも後ろ暗い事が無いなんて、あり得ない。
と言うことは、やはり公爵は重要な書類を隠すのが上手いのかも知れない。
だが、今回は国印付きの書類なのだ。
あれだったら心眼に映るはずなのに。
魔力を俺の心眼から完全に隠蔽するのは不可能だ。
とは言え、国印の特徴を心眼《サイト》から隠すのは・・・可能だな。
・・・となると、ファルータ公爵の持っている魔道具や魔術本を全て調べる必要があるか。
「もう一度、王都の屋敷を探してみます・・・」
「おう。
ちなみに、ハートネット殿の名義で貸し出された家屋の捜索は終わったぞ」
長がピラリと紙を取り上げて見せた。
国印がついている。
「ガルカ王国から、政変後にハートネット殿をアファル王国の宰相に任命することを約束する書類だ」
「まじっすか。
と言うことは、絶対にファルータ公爵も何か貰っているはずですよね」
学院長が宰相になりたいかというのは非常に疑問だが、悪事の証拠としてはこれ以上の物はないだろう。
「これはよく調べれば偽物だと分かる偽造文書とすり替えておいたから、ファルータ公爵に関する証拠文書が見つからなくてもハートネット殿に害は及ばないとは思う。
とは言え、南方の要ともなる大貴族が南側の隣国と繋がっているなんていうのは危険すぎるからな。
頑張って探してくれ」
にやりと笑いながら長がワインを口にした。
うが~~!!
頑張って探したんだよ、これでも!!
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