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卒業後
979 星暦557年 桃の月 11日 家族(?)サービス期間(3)
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「じゃあ、行きましょう!」
宿で朝食を食べ、発掘現場で何やら色々とツァレスや他のメンバーに必要作業の確認や未提出な報告書の進捗状態について話し合っていたシェイラだが、昼食前に全て終わったのかランチ用のサンドイッチを詰めたバスケットを手に声をかけてきた。
「持つよ。
どこかピクニックに良い様な場所があるのか?」
防寒用結界の暖め効果を高めれば今の時期でもそれなりにピクニックを楽しめるが、流石に冷たい地面に座ると尻が冷えるぞ?
折り畳み式の椅子を持っているようには見えないが、何か丁度いい切り株でもあるのだろうか?
虫が多い夏だったら森の中の切り株に座って休んだり食事をしたりなんて言うのも危険すぎて嫌だが、今の時期だったらまあ良いだろう。
とは言え、一応の為に持ってきた携帯式虫除け結界の魔具はしっかり動かしておくつもりだが。
・・・防寒用結界と虫除け結界って同時に起動させても問題がないのか、確認していないが。
しっかり心眼《サイト》で魔力の流れを確認して、二つの魔術回路が変な風に干渉しあって誤作動しているとか無効化されているとかがないかを見張っておかないと。
防寒用結界は無効化されていたらまあ自分で寒いので分かるだろうし、歩き回るから寒さを感じないのだったら別に無効化されていても構わないが、虫除け結界はきっちり起動していてくれないと困る。
「勿論よ!
泉脇の理想的な場所なの。
昔はどんな感じだったか知らないけど、食べた後に周囲を確認してくれる?
この森だったら昔から水源や大樹の状態がほぼ同じ状態で維持されてきた可能性があるからね。
何かそう言う維持用の仕組みがあるかも?」
シェイラがウキウキと森の中を進みながら言った。
全然迷いが無い足振りだ。
森の散策に慣れているんだなぁ。
「シェイラも王都生まれの王都育ちなんだろ?
随分と森に馴染んでいる感じだな」
似たり寄ったりな生まれな筈のアレクはラフェーンが使い魔になってほぼ毎日郊外に遠乗りに出るようになるまでは生粋の都会派で森の中は俺と同じぐらい苦手だったぞ。
今でも歩いて森に入ろうとはしないし。
それに対してシェイラはなんかこう、このまま森の中で喜んでキャンプしそうな雰囲気だ。
流石に動物を捕まえて捌くところまではいかないと期待したいが。
・・・今の時期だったら動物もあまり出てこないよな?
冬籠りの準備に失敗した熊でも彷徨いていない限り。
あれ?
でも鹿とか狸とか狐って冬に間何をしているんだ?
死んでいるわけでも冬眠している訳でもないんだから、どっかにいるのか?
熊以外だったら人間に襲い掛かることは無いだろうが・・・護身用にアスカに側にいてもらうべきか?
土竜《ジャイアント・モール》なアスカなら熊でも撃退出来る。
多分。
「ちゃんと発掘出来るだけの遺跡が残っている場所って基本的に辺鄙な場所が多いからね。
周辺を探す為に歩き回るから森や野原も岩山も慣れたわ。
特にこの森は暇さえあれば歩き回っているし」
シェイラが答える。
こないだの沈んだ島みたいなのはちょっと極端だが、ずっと昔から人が住んでいる場所だったら遺跡として価値を認められる程古くなる前に単なる時代遅れな建物って感じで壊されて建て直されちまうから都市部に遺跡はないんだろうな。
そうなると発掘調査が出来るような遺跡は基本的に人里離れた場所になる。
ここのフォレスタ文明の遺跡は人避けの結界がほぼ無傷に残っていたから迷いの森って事で残されたから都市の近くでも遺跡が残っていたが、それはある意味奇跡的だったんだろう。
「ちなみに、この森に出る動物って人間を襲う様なのはいないのか?
冬になって餌が減るから獰猛になったりしたら危険そうだが」
アスカを喚んで護衛と手伝いを頼んでも良いが、折角だったら俺で手に負える範囲だったら俺が手伝いたいからなぁ。
「大丈夫よ。
ここは大型の獣は獣避けがあるのか寄りつかないのよねぇ。
熊どころか鹿も居ないのは中々便利だから、獣避けの術が見つかったら是非複製出来ないか調べて欲しいって領主様にも言われてるのよ」
シェイラがズンズンと進みながら言った。
へぇぇ。
鹿も邪魔ものなんだ?
「狼とか野犬は?
あれらは必ずしも大きくは無いけど、群れれば危険だと聞くが」
「見ないわね~。
誰かが襲われたって話も聞かないし、大丈夫でしょう」
シェイラが肩を竦める。
まあ、狼程度だったら想定外に出てきても防寒用結界の防御機能で短時間なら何とかなるか。
術で何とか出来そうに無かったら清早に頼めば追い払ってくれるだろ。
考えてみたら迷いの森なんて結界が壊れるまでは人間が来ない動物にとっては楽園だっただろうに、大型の動物が居ないっていうのは意外だな。
フォレスタ文明って自然と共生するタイプの文明だった印象だが、大きな動物は邪魔ってことで排除していたんかね?
ちょっと印象が変わるな。
まあ、危険な動物が近所にいたら困るだろうが、
女子供に危害を与える動物は、飼い慣らせないんだったら殺すか追い払うかするのは当然って言えば当然だが、勝手な想像だが何とはなしに大樹に住むような民だったら動物も思うように操れるのかと思っていた。
まあ、操った結果が追い出しだと考えるのもありだが。
取り敢えず。
安心して昼食を食べて散策を楽しもう。
ついでに大型獣避けの術を探す、と。
宿で朝食を食べ、発掘現場で何やら色々とツァレスや他のメンバーに必要作業の確認や未提出な報告書の進捗状態について話し合っていたシェイラだが、昼食前に全て終わったのかランチ用のサンドイッチを詰めたバスケットを手に声をかけてきた。
「持つよ。
どこかピクニックに良い様な場所があるのか?」
防寒用結界の暖め効果を高めれば今の時期でもそれなりにピクニックを楽しめるが、流石に冷たい地面に座ると尻が冷えるぞ?
折り畳み式の椅子を持っているようには見えないが、何か丁度いい切り株でもあるのだろうか?
虫が多い夏だったら森の中の切り株に座って休んだり食事をしたりなんて言うのも危険すぎて嫌だが、今の時期だったらまあ良いだろう。
とは言え、一応の為に持ってきた携帯式虫除け結界の魔具はしっかり動かしておくつもりだが。
・・・防寒用結界と虫除け結界って同時に起動させても問題がないのか、確認していないが。
しっかり心眼《サイト》で魔力の流れを確認して、二つの魔術回路が変な風に干渉しあって誤作動しているとか無効化されているとかがないかを見張っておかないと。
防寒用結界は無効化されていたらまあ自分で寒いので分かるだろうし、歩き回るから寒さを感じないのだったら別に無効化されていても構わないが、虫除け結界はきっちり起動していてくれないと困る。
「勿論よ!
泉脇の理想的な場所なの。
昔はどんな感じだったか知らないけど、食べた後に周囲を確認してくれる?
この森だったら昔から水源や大樹の状態がほぼ同じ状態で維持されてきた可能性があるからね。
何かそう言う維持用の仕組みがあるかも?」
シェイラがウキウキと森の中を進みながら言った。
全然迷いが無い足振りだ。
森の散策に慣れているんだなぁ。
「シェイラも王都生まれの王都育ちなんだろ?
随分と森に馴染んでいる感じだな」
似たり寄ったりな生まれな筈のアレクはラフェーンが使い魔になってほぼ毎日郊外に遠乗りに出るようになるまでは生粋の都会派で森の中は俺と同じぐらい苦手だったぞ。
今でも歩いて森に入ろうとはしないし。
それに対してシェイラはなんかこう、このまま森の中で喜んでキャンプしそうな雰囲気だ。
流石に動物を捕まえて捌くところまではいかないと期待したいが。
・・・今の時期だったら動物もあまり出てこないよな?
冬籠りの準備に失敗した熊でも彷徨いていない限り。
あれ?
でも鹿とか狸とか狐って冬に間何をしているんだ?
死んでいるわけでも冬眠している訳でもないんだから、どっかにいるのか?
熊以外だったら人間に襲い掛かることは無いだろうが・・・護身用にアスカに側にいてもらうべきか?
土竜《ジャイアント・モール》なアスカなら熊でも撃退出来る。
多分。
「ちゃんと発掘出来るだけの遺跡が残っている場所って基本的に辺鄙な場所が多いからね。
周辺を探す為に歩き回るから森や野原も岩山も慣れたわ。
特にこの森は暇さえあれば歩き回っているし」
シェイラが答える。
こないだの沈んだ島みたいなのはちょっと極端だが、ずっと昔から人が住んでいる場所だったら遺跡として価値を認められる程古くなる前に単なる時代遅れな建物って感じで壊されて建て直されちまうから都市部に遺跡はないんだろうな。
そうなると発掘調査が出来るような遺跡は基本的に人里離れた場所になる。
ここのフォレスタ文明の遺跡は人避けの結界がほぼ無傷に残っていたから迷いの森って事で残されたから都市の近くでも遺跡が残っていたが、それはある意味奇跡的だったんだろう。
「ちなみに、この森に出る動物って人間を襲う様なのはいないのか?
冬になって餌が減るから獰猛になったりしたら危険そうだが」
アスカを喚んで護衛と手伝いを頼んでも良いが、折角だったら俺で手に負える範囲だったら俺が手伝いたいからなぁ。
「大丈夫よ。
ここは大型の獣は獣避けがあるのか寄りつかないのよねぇ。
熊どころか鹿も居ないのは中々便利だから、獣避けの術が見つかったら是非複製出来ないか調べて欲しいって領主様にも言われてるのよ」
シェイラがズンズンと進みながら言った。
へぇぇ。
鹿も邪魔ものなんだ?
「狼とか野犬は?
あれらは必ずしも大きくは無いけど、群れれば危険だと聞くが」
「見ないわね~。
誰かが襲われたって話も聞かないし、大丈夫でしょう」
シェイラが肩を竦める。
まあ、狼程度だったら想定外に出てきても防寒用結界の防御機能で短時間なら何とかなるか。
術で何とか出来そうに無かったら清早に頼めば追い払ってくれるだろ。
考えてみたら迷いの森なんて結界が壊れるまでは人間が来ない動物にとっては楽園だっただろうに、大型の動物が居ないっていうのは意外だな。
フォレスタ文明って自然と共生するタイプの文明だった印象だが、大きな動物は邪魔ってことで排除していたんかね?
ちょっと印象が変わるな。
まあ、危険な動物が近所にいたら困るだろうが、
女子供に危害を与える動物は、飼い慣らせないんだったら殺すか追い払うかするのは当然って言えば当然だが、勝手な想像だが何とはなしに大樹に住むような民だったら動物も思うように操れるのかと思っていた。
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取り敢えず。
安心して昼食を食べて散策を楽しもう。
ついでに大型獣避けの術を探す、と。
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