1,033 / 1,309
卒業後
1032 星暦558年 赤の月 11日 ちょっと想定外な流れ(7)
しおりを挟む
パーティや娼館や愛人の元へ通うのに忙しい金持ちは昼よりも夜の方が留守なことが多いので、寝室にお邪魔するのも夜の方が都合がいい事が多い。
まあ、お邪魔している間に住民が帰ってきてもぽんっと首の後ろ辺りに一撃入れればそれで静かになるんだけどね。
もしくはちょっとした薬を沁み込ませた布で鼻を覆うとか。
寝ている場合だったら静かにしていれば大抵は起きないし。
社交界に余り出ない高位文官な貴族とかは、朝から王宮へ出仕するので夜も真面な時間にベッドに入って寝ている事が多い。しかも深酒していない上にちょくちょく政敵に狙われるのか眠りが浅いタイプも居て、そう言うのはお邪魔すると目覚めることもある。
そんな面倒そうなのは盗賊《シーフ》時代でも余程のことが無い限り請けなかったし、そう言う奴のところは本人が居ない昼にお邪魔する方がまだ安全だった。
ブラグナル男爵家の人間は借金漬けで本来は金持ちじゃあ無い筈なんだが、当然のごとく誰も家にいなかった。
というか、『流されやすくて弱いけど良い人っぽく見えたのよ~』とシェイラの友人の従姉妹が騙された時に言ったらしいが、夜な夜な遊び歩くってやっぱ『良い人』じゃあないんじゃないか?
第一、金がないのだ。
遊び歩くんじゃなくて真面目に働けよ。
領地で代官として働く才能がないなら、王宮で文官として働け。
下位文官だったらさして有能じゃなくてもそれなりに金は貰えるぜ?
夜な夜な出歩いて娼館とかで金を落としていないだけでも収支的には大幅にプラスだろうし。
まあ、それはともかく。
意外にも、次男が寝室として使っている部屋にも脅迫関連の手紙は無かった。
ここは両親の家で、こいつは次男なんだから長男よりも更にここに住む資格が無い筈なのに、もしかして書斎の主として君臨しているのかね??
もっとも、男爵も嫡男も全然仕事をしないのだったら書斎が次男の領域になるのかもだが。
ちゃんと働かない貴族からは、マジで領地を剥奪する制度でも作るべきじゃないかね?
国にとってもその方が税収が増えそうだし、領民にとっても無駄遣いされなくて助かると思うんだが。
まあ、誰も無駄遣いしないと王都の娼館マダムとかパーティ用の食材やドレスを造る業者が困るかも?
そんな事を考えながら次男の部屋を調べ終わり、一応長男の部屋も覗いてみる。
こちらにも隠し金庫も引き出しも無い。
次男の部屋には少なくとも床板の下の隠し場所に宝石や金貨がある程度隠してあったんだけどな。
長男はマジで全然資産も金も持っていないのだろうか?
貴族は基本的にツケで買い物をするから現金を持ち歩く必要は余りないが、それでもある程度の個人的な資産を持っておかないと不味くないのかね?
個人の資金が無いってことは、『いい儲け話』も親の金を家令にでも命じて払わせたのか?
だとしたら、何度も騙されている息子の投資関連の新しい支払いを一律拒否しろって親が家令に言いつければ良かったのに。
もしかしたら、長男がこれ以上勝手に『いい儲け話』に金を出さない様に次男が金を持たせない様に変えたのかも?
それに合意しちまう長男もどうなのかと思うが。
マジでしっかりした女性を妻に貰わないと、結局家の財産も自分の資産も全て弟に取られることになるだろうに。
まあ、脅迫なんて事に手を染め始めたのだ。
家その物がそのうち潰される可能性は高いか。
ブラグナル男爵の寝室には多少の宝石や金貨が隠されていたが、笑えることに次男の隠し資産よりも少なかった。
貴族の次男て部屋住みってことで嫡男が跡取りを生むまで飼い殺しにされるかなり悲惨な存在な筈なのに、家の中で一番財産を持っているって・・・。
何とも言えないこの家族間の関係に考えを馳せながら書斎へ向かい、隠し金庫とその他の隠し場所を探す。
普通の金庫には真面そうな領地関係の書類が入っていた。
ついでに長男とその婚約者との婚約に関連する契約書類も。
どうも借金のかたに結婚を合意したようだが、ずるずると引き延ばしているらしい。
商家の娘と結婚するのが嫌だとか言う以前に、『婚約者がいるけど解消に向けて頑張っているんだ』と言う方が『妻がいるけど愛は無いんだ』と言うよりもお人好しな女を釣りやすいということで結婚を遅らせているのかな?
そろそろ結婚の準備を始めないのかという催促の手紙を、なんだかんだと理由を付けて次男がいなしているようだ。
隠し金庫にはちょっとした裏帳簿と金貨が少量。
どちらも同じ筆跡だったから次男が管理しているのだろう。
で。
立派そうな書斎机の天板の裏を抉って作られた収納場所にはそこそこの枚数の手紙があった。
シェイラの友人の従姉妹が書いた手紙らしきもの(少なくとも文末のイニシャルは言われていたものと一致した)はあっさり見つかった。
他にも何通か似たり寄ったりなちょっとお花畑な女性からのラブレターっぽい手紙もしまってある。
ざっと読んだところ、別にそれ程不味い事は書いていないんだから、脅されても『結婚に悩んでいる人の相談に乗っていただけです』で言い抜けられそうなのが多かったが・・・男に惚れたという弱みがあると本人的に思っていると、脅された時もビシッと言い返せないんだろうなぁ。
まあ、それはともかく。
ちょっと不味いんじゃね??と思う手紙も含まれていたんだが。
どうすっかね。
まあ、お邪魔している間に住民が帰ってきてもぽんっと首の後ろ辺りに一撃入れればそれで静かになるんだけどね。
もしくはちょっとした薬を沁み込ませた布で鼻を覆うとか。
寝ている場合だったら静かにしていれば大抵は起きないし。
社交界に余り出ない高位文官な貴族とかは、朝から王宮へ出仕するので夜も真面な時間にベッドに入って寝ている事が多い。しかも深酒していない上にちょくちょく政敵に狙われるのか眠りが浅いタイプも居て、そう言うのはお邪魔すると目覚めることもある。
そんな面倒そうなのは盗賊《シーフ》時代でも余程のことが無い限り請けなかったし、そう言う奴のところは本人が居ない昼にお邪魔する方がまだ安全だった。
ブラグナル男爵家の人間は借金漬けで本来は金持ちじゃあ無い筈なんだが、当然のごとく誰も家にいなかった。
というか、『流されやすくて弱いけど良い人っぽく見えたのよ~』とシェイラの友人の従姉妹が騙された時に言ったらしいが、夜な夜な遊び歩くってやっぱ『良い人』じゃあないんじゃないか?
第一、金がないのだ。
遊び歩くんじゃなくて真面目に働けよ。
領地で代官として働く才能がないなら、王宮で文官として働け。
下位文官だったらさして有能じゃなくてもそれなりに金は貰えるぜ?
夜な夜な出歩いて娼館とかで金を落としていないだけでも収支的には大幅にプラスだろうし。
まあ、それはともかく。
意外にも、次男が寝室として使っている部屋にも脅迫関連の手紙は無かった。
ここは両親の家で、こいつは次男なんだから長男よりも更にここに住む資格が無い筈なのに、もしかして書斎の主として君臨しているのかね??
もっとも、男爵も嫡男も全然仕事をしないのだったら書斎が次男の領域になるのかもだが。
ちゃんと働かない貴族からは、マジで領地を剥奪する制度でも作るべきじゃないかね?
国にとってもその方が税収が増えそうだし、領民にとっても無駄遣いされなくて助かると思うんだが。
まあ、誰も無駄遣いしないと王都の娼館マダムとかパーティ用の食材やドレスを造る業者が困るかも?
そんな事を考えながら次男の部屋を調べ終わり、一応長男の部屋も覗いてみる。
こちらにも隠し金庫も引き出しも無い。
次男の部屋には少なくとも床板の下の隠し場所に宝石や金貨がある程度隠してあったんだけどな。
長男はマジで全然資産も金も持っていないのだろうか?
貴族は基本的にツケで買い物をするから現金を持ち歩く必要は余りないが、それでもある程度の個人的な資産を持っておかないと不味くないのかね?
個人の資金が無いってことは、『いい儲け話』も親の金を家令にでも命じて払わせたのか?
だとしたら、何度も騙されている息子の投資関連の新しい支払いを一律拒否しろって親が家令に言いつければ良かったのに。
もしかしたら、長男がこれ以上勝手に『いい儲け話』に金を出さない様に次男が金を持たせない様に変えたのかも?
それに合意しちまう長男もどうなのかと思うが。
マジでしっかりした女性を妻に貰わないと、結局家の財産も自分の資産も全て弟に取られることになるだろうに。
まあ、脅迫なんて事に手を染め始めたのだ。
家その物がそのうち潰される可能性は高いか。
ブラグナル男爵の寝室には多少の宝石や金貨が隠されていたが、笑えることに次男の隠し資産よりも少なかった。
貴族の次男て部屋住みってことで嫡男が跡取りを生むまで飼い殺しにされるかなり悲惨な存在な筈なのに、家の中で一番財産を持っているって・・・。
何とも言えないこの家族間の関係に考えを馳せながら書斎へ向かい、隠し金庫とその他の隠し場所を探す。
普通の金庫には真面そうな領地関係の書類が入っていた。
ついでに長男とその婚約者との婚約に関連する契約書類も。
どうも借金のかたに結婚を合意したようだが、ずるずると引き延ばしているらしい。
商家の娘と結婚するのが嫌だとか言う以前に、『婚約者がいるけど解消に向けて頑張っているんだ』と言う方が『妻がいるけど愛は無いんだ』と言うよりもお人好しな女を釣りやすいということで結婚を遅らせているのかな?
そろそろ結婚の準備を始めないのかという催促の手紙を、なんだかんだと理由を付けて次男がいなしているようだ。
隠し金庫にはちょっとした裏帳簿と金貨が少量。
どちらも同じ筆跡だったから次男が管理しているのだろう。
で。
立派そうな書斎机の天板の裏を抉って作られた収納場所にはそこそこの枚数の手紙があった。
シェイラの友人の従姉妹が書いた手紙らしきもの(少なくとも文末のイニシャルは言われていたものと一致した)はあっさり見つかった。
他にも何通か似たり寄ったりなちょっとお花畑な女性からのラブレターっぽい手紙もしまってある。
ざっと読んだところ、別にそれ程不味い事は書いていないんだから、脅されても『結婚に悩んでいる人の相談に乗っていただけです』で言い抜けられそうなのが多かったが・・・男に惚れたという弱みがあると本人的に思っていると、脅された時もビシッと言い返せないんだろうなぁ。
まあ、それはともかく。
ちょっと不味いんじゃね??と思う手紙も含まれていたんだが。
どうすっかね。
10
あなたにおすすめの小説
死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜
のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、
偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。
水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは――
古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。
村を立て直し、仲間と絆を築きながら、
やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。
辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、
静かに進む策略と復讐の物語。
病弱少年が怪我した小鳥を偶然テイムして、冒険者ギルドの採取系クエストをやらせていたら、知らないうちにLV99になってました。
もう書かないって言ったよね?
ファンタジー
ベッドで寝たきりだった少年が、ある日、家の外で怪我している青い小鳥『ピーちゃん』を助けたことから二人の大冒険の日々が始まった。
ハズレスキル【分解】が超絶当たりだった件~仲間たちから捨てられたけど、拾ったゴミスキルを優良スキルに作り変えて何でも解決する~
名無し
ファンタジー
お前の代わりなんざいくらでもいる。パーティーリーダーからそう宣告され、あっさり捨てられた主人公フォード。彼のスキル【分解】は、所有物を瞬時にバラバラにして持ち運びやすくする程度の効果だと思われていたが、なんとスキルにも適用されるもので、【分解】したスキルなら幾らでも所有できるというチートスキルであった。捨てられているゴミスキルを【分解】することで有用なスキルに作り変えていくうち、彼はなんでも解決屋を開くことを思いつき、底辺冒険者から成り上がっていく。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
悪役令嬢が処刑されたあとの世界で
重田いの
ファンタジー
悪役令嬢が処刑されたあとの世界で、人々の間に静かな困惑が広がる。
魔術師は事態を把握するため使用人に聞き取りを始める。
案外、普段踏まれている側の人々の方が真実を理解しているものである。
俺たちYOEEEEEEE?のに異世界転移したっぽい?
くまの香
ファンタジー
いつもの朝、だったはずが突然地球を襲う謎の現象。27歳引きニートと27歳サラリーマンが貰ったスキル。これ、チートじゃないよね?頑張りたくないニートとどうでもいいサラリーマンが流されながら生きていく話。現実って厳しいね。
生活魔法は万能です
浜柔
ファンタジー
生活魔法は万能だ。何でもできる。だけど何にもできない。
それは何も特別なものではないから。人が歩いたり走ったりしても誰も不思議に思わないだろう。そんな魔法。
――そしてそんな魔法が人より少し上手く使えるだけのぼくは今日、旅に出る。
異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。
もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。
異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。
ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。
残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、
同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、
追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、
清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる