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卒業後
330 星暦553年 黄の月 7日 ちょっと趣味に偏った依頼(12)
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「あなた達って仲良しなのね」
巨木は大きいので周辺をしっかりチェックするのに時間が掛るが、取り敢えず見て回って遺跡関連っぽいものを記録してその場所をマークしていくだけなので、今現在の仕事に関しては細心の注意を払う必要は無い。
なのでシェイラと雑談しながら動いていたのだが。
このコメントにはちょっと思わず動きが止りそうになった。
「仲良し?」
『意外』とか、『不思議』とか、『何でか分からん』といったコメントを貰ったことはあったが、『仲良しなのね』は初めてだ。
第一、成人した男三人組に『仲良しね』はないだろう!?
なんとはなしに、子供扱いされたみたいで思わずちょっと憤慨する。
「だって、仕事をするために一緒にパートナーシップを組むというのはそれ程珍しい話じゃ無いけど、態々こんなお金にもならないような変な依頼まで一緒に請けるなんて。
仲が良くって気が合うんじゃ無いと、そんな時まで一緒には行動しないんじゃない?」
何やら気になったらしき傷跡のように見える物を近くから観察しながら、シェイラが答えた。
「気が合わなきゃ仕事を一緒に何てしないだろう?
だけど『仲良し』なんて、まるで子供のお遊びみたいな言い方だな」
シェイラが俺の言葉に振り返って目を丸くした。
「あら。
ごめんね。
別に子供っぽいと言うつもりは無かったのよ?
単に、一緒に働く人と仲良く行動できるなんて良かったわね、と思っただけで」
いや、取り敢えず『仲良く』とか『仲良し』というところからもう離れようよ。
確かに俺たち3人は気が合う。仕事の上でも異なる視点がプラスになっているし、普通に会話をしたり趣味に走る際にもお互い新しい発見を話したり出来るし、一緒にいて楽しいっちゃあ楽しい。
だけど。
『仲良し』って・・・。
まるで、まだ両親が死ぬ前に、近所の子供と一緒に遊んでいたのを母親が『XXちゃんと仲良く出来て良かったわね~』と微笑ましげに言っていたのと同じ感じだぞ。
断じて、大人の男に対して使う言葉じゃ無いと主張したい。
そんな俺の内心には関係なく、シェイラは観察していた物が遺跡に関係ある可能性が高いと結論づけたのか、記録用魔道具を取り出して角度を確認しながら記録し始めた。
「『仲良し』という言葉が嫌なら、『気が合うようで良かったわね』とでも言えば良い?
それはともかく、随分と背景の違う3人なのに、よくぞそこまで気が合うわね?
仕事の上なら、都合がいいから全然生い立ちの違う人間が一緒に働くと言うことはそれなりにあることだけど、自由な時間までも一緒に居られるほど気が合うなんて、珍しいわよ」
自由な時間どころか、家までシェアしているからな。
とは言え、シャルロもアレクも実家に戻っていることも良くあるからそれ程四六時中一緒に居る訳じゃあ無いが。
「却って、生い立ちが全然違うからこそ気が合うんじゃ無いか?
お互いの考え方とかやっていることが珍しいから、一緒に居ると新しい発見がある感じで面白いと言うか?
まあ、発見と言うほどのことは無いにしても、お互いの視点が違うというのは仕事上では良いことだぜ」
記録用魔道具を鞄にしまい、再び動くように身振りしながらシェイラが首を小さくかしげた。
「そんなに視点が違うの?
3人とも魔術学院で同期だった魔術師なのよね?
魔道具の開発をしていると言っていたけど、魔術に関する知識は似たり寄ったりなんじゃ無いの?」
「開発っていうのはどちらかと言えば知識よりも視点や思いつきが重要なんだ。
シャルロは・・・まあ、貴族のお坊ちゃまだからな。魔術学院での日常生活は他の生徒と同じで寮に入って自分でしていたが、それ以外の場所では使用人かあいつの精霊が基本的に何でもしてくれていたんだ。
だから普通の生活でも、『何かを自分でする』という経験が少ないからそういうことを初めてした時に『これって不便!!何とかならない?!』っていう思いつきが多いんだ」
まあ、そうじゃなくても色々と想定外な考え方をすることが多い奴だし。
「アレクは商業の世界に明るいから、商品を開発した時なんかに俺たちが騙されて搾取されてないか心配しなくてすむ。
それに、3人で一緒に作業していると言っても、お互い個人的な用事で必ずしも同じだけ開発作業に関われないこともあるからな。
そういう時のかけた時間とかも記録しておいて良い感じに考えて分配してくれるのもあいつだ」
収益の分配というのは最も揉めやすい点だからな。
その点、俺やシャルロはアレクがやっておいてくれた計算をちらっと確認するだけですむんで、本当に助かっている。
「それに3人の中で一番几帳面なタイプだからな。
開発っていうのは思いつきの次に大切なのは失敗した試みの記録や、今回の開発には直接繋がらなかったもののいつか役に立つかも知れない発見の記録だ。そういうのもあいつがやっておいてくれるんで凄く助かる」
「で、あなたは何に秀でてるの?」
悪戯っぽく笑いながらシェイラが聞いてきた。
「う~ん、おれはそう言う実用的な面ではあまり役に立たないが、魔力や物の構造を視るのが得意だから、その点で役に立っているかな?」
なんか、そう考えると俺が一番貢献度が低い気もする。
まあ、シャルロもアレクも文句を言わないんだから、構わないんだろう。
「ふうん。
魔力を視るのが一番得意なの。
だとしたら、今回の依頼では頑張ってガンガン固定化の術とかが掛っている遺跡関係の物を見つけてね!」
にこやかにシェイラが言った。
「ちなみに、これって何か固定化の術がかかっている?」
何かが埋め込まれているように見える瘤を指しながらシェイラが聞いてきた。
・・・確かに、今回の依頼ではひたすら色々視ていくのが仕事になりそうだな。
巨木は大きいので周辺をしっかりチェックするのに時間が掛るが、取り敢えず見て回って遺跡関連っぽいものを記録してその場所をマークしていくだけなので、今現在の仕事に関しては細心の注意を払う必要は無い。
なのでシェイラと雑談しながら動いていたのだが。
このコメントにはちょっと思わず動きが止りそうになった。
「仲良し?」
『意外』とか、『不思議』とか、『何でか分からん』といったコメントを貰ったことはあったが、『仲良しなのね』は初めてだ。
第一、成人した男三人組に『仲良しね』はないだろう!?
なんとはなしに、子供扱いされたみたいで思わずちょっと憤慨する。
「だって、仕事をするために一緒にパートナーシップを組むというのはそれ程珍しい話じゃ無いけど、態々こんなお金にもならないような変な依頼まで一緒に請けるなんて。
仲が良くって気が合うんじゃ無いと、そんな時まで一緒には行動しないんじゃない?」
何やら気になったらしき傷跡のように見える物を近くから観察しながら、シェイラが答えた。
「気が合わなきゃ仕事を一緒に何てしないだろう?
だけど『仲良し』なんて、まるで子供のお遊びみたいな言い方だな」
シェイラが俺の言葉に振り返って目を丸くした。
「あら。
ごめんね。
別に子供っぽいと言うつもりは無かったのよ?
単に、一緒に働く人と仲良く行動できるなんて良かったわね、と思っただけで」
いや、取り敢えず『仲良く』とか『仲良し』というところからもう離れようよ。
確かに俺たち3人は気が合う。仕事の上でも異なる視点がプラスになっているし、普通に会話をしたり趣味に走る際にもお互い新しい発見を話したり出来るし、一緒にいて楽しいっちゃあ楽しい。
だけど。
『仲良し』って・・・。
まるで、まだ両親が死ぬ前に、近所の子供と一緒に遊んでいたのを母親が『XXちゃんと仲良く出来て良かったわね~』と微笑ましげに言っていたのと同じ感じだぞ。
断じて、大人の男に対して使う言葉じゃ無いと主張したい。
そんな俺の内心には関係なく、シェイラは観察していた物が遺跡に関係ある可能性が高いと結論づけたのか、記録用魔道具を取り出して角度を確認しながら記録し始めた。
「『仲良し』という言葉が嫌なら、『気が合うようで良かったわね』とでも言えば良い?
それはともかく、随分と背景の違う3人なのに、よくぞそこまで気が合うわね?
仕事の上なら、都合がいいから全然生い立ちの違う人間が一緒に働くと言うことはそれなりにあることだけど、自由な時間までも一緒に居られるほど気が合うなんて、珍しいわよ」
自由な時間どころか、家までシェアしているからな。
とは言え、シャルロもアレクも実家に戻っていることも良くあるからそれ程四六時中一緒に居る訳じゃあ無いが。
「却って、生い立ちが全然違うからこそ気が合うんじゃ無いか?
お互いの考え方とかやっていることが珍しいから、一緒に居ると新しい発見がある感じで面白いと言うか?
まあ、発見と言うほどのことは無いにしても、お互いの視点が違うというのは仕事上では良いことだぜ」
記録用魔道具を鞄にしまい、再び動くように身振りしながらシェイラが首を小さくかしげた。
「そんなに視点が違うの?
3人とも魔術学院で同期だった魔術師なのよね?
魔道具の開発をしていると言っていたけど、魔術に関する知識は似たり寄ったりなんじゃ無いの?」
「開発っていうのはどちらかと言えば知識よりも視点や思いつきが重要なんだ。
シャルロは・・・まあ、貴族のお坊ちゃまだからな。魔術学院での日常生活は他の生徒と同じで寮に入って自分でしていたが、それ以外の場所では使用人かあいつの精霊が基本的に何でもしてくれていたんだ。
だから普通の生活でも、『何かを自分でする』という経験が少ないからそういうことを初めてした時に『これって不便!!何とかならない?!』っていう思いつきが多いんだ」
まあ、そうじゃなくても色々と想定外な考え方をすることが多い奴だし。
「アレクは商業の世界に明るいから、商品を開発した時なんかに俺たちが騙されて搾取されてないか心配しなくてすむ。
それに、3人で一緒に作業していると言っても、お互い個人的な用事で必ずしも同じだけ開発作業に関われないこともあるからな。
そういう時のかけた時間とかも記録しておいて良い感じに考えて分配してくれるのもあいつだ」
収益の分配というのは最も揉めやすい点だからな。
その点、俺やシャルロはアレクがやっておいてくれた計算をちらっと確認するだけですむんで、本当に助かっている。
「それに3人の中で一番几帳面なタイプだからな。
開発っていうのは思いつきの次に大切なのは失敗した試みの記録や、今回の開発には直接繋がらなかったもののいつか役に立つかも知れない発見の記録だ。そういうのもあいつがやっておいてくれるんで凄く助かる」
「で、あなたは何に秀でてるの?」
悪戯っぽく笑いながらシェイラが聞いてきた。
「う~ん、おれはそう言う実用的な面ではあまり役に立たないが、魔力や物の構造を視るのが得意だから、その点で役に立っているかな?」
なんか、そう考えると俺が一番貢献度が低い気もする。
まあ、シャルロもアレクも文句を言わないんだから、構わないんだろう。
「ふうん。
魔力を視るのが一番得意なの。
だとしたら、今回の依頼では頑張ってガンガン固定化の術とかが掛っている遺跡関係の物を見つけてね!」
にこやかにシェイラが言った。
「ちなみに、これって何か固定化の術がかかっている?」
何かが埋め込まれているように見える瘤を指しながらシェイラが聞いてきた。
・・・確かに、今回の依頼ではひたすら色々視ていくのが仕事になりそうだな。
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