シーフな魔術師

極楽とんぼ

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卒業後

335 星暦553年 黄の月 10日 ちょっと趣味に偏った依頼(17)

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ウィルの視点に戻っています。


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「ウィル君、樹木霊がいるって本当かい?!?!?」
朝、テントに行ったらツァレスその他諸々に質問攻めになるかもなぁとは思っていたが・・・俺の予想は甘かった。

何と。
朝食を食べている最中に宿に押しかけてきたのだ。
興奮しまくったツァレスと、ちょっと申し訳なさそうなシェイラが。

昨晩の夕食の様子を聞かれたので二人に話していたら、何やら苦笑された。そしてシャルロが何か言いかけたところだったのだが・・・流石にこの乱入は予想していなかったのか、驚きに目を見開いたまま、シャルロの動きが止っている。

「ごめんなさいね、これでも、あのあと宿でツァレスさんに会って樹木霊の話をした時に、すぐさま直行しようとしたのを何とか止めたのよ?」
うわぁ。
下手したら、昨晩の襲撃がありえたのか。
だったら朝食を邪魔されるぐらいは・・・いや、それでも文句を言いたいぞ。
俺は朝はゆったり食べてお茶をノンビリ飲む派なんだ!

不機嫌そうな俺を見て、アレクがツァレスへの対応を買って出てくれた。
「ええ、どうやらあの遺跡で人避け結界に組み込まれていた全ての巨樹に樹木霊がいるようですね。
学会のフォラスタ文明の資料にはそのような前例は載っていませんでしたか?」

「巨樹があったという事例は幾つかあるんだが、何分我々には樹木霊なんて探知出来ないからね。
ベルダ先生も使い魔との契約は大分前に解除したとのことなので、樹木霊は分からないそうだ」
うわぁ。
ベルダ氏の所にも既に行っているのか。

だけど、現在使い魔がいないんだったら、ベルダ氏が新しく幻獣を使い魔にしたらどうかね?

精霊の加護を貰うのはあっちの気分次第でこちらからお願いして出来るもんじゃあないが、使い魔だったら根気よく呼びかければ気まぐれな幻獣がそのうち見つかるだろうに。

シャルロが蒼流を呼び出した。
「幻獣でも良いんですが、今回は僕の精霊を通して話をしてみましょうか。
多分蒼流から呼びかけた方が樹木霊さんたちが対応してくれる可能性が高くなると思うんで。
だけど、人間が興味を持つようなことは殆ど相手には認識されていないと思いますよ?」

だよねぇ。
蒼流ですら、以前のオーパスタ神殿関連の遺跡の場所を教えてくれたけどあの遺跡に暮していた人達のことはろくすっぽ答えられなかったんだから。

樹木霊の存在が発覚した際に何本か廻って話を聞いてみようとしたが、シャルロですら暫く頑張った後に諦めたからなぁ。

◆◆◆◆

「じゃあまず、人寄せ結界は何のために設置されたんだい?」
ツァレスが樹と蒼流に向かって大真面目に尋ねる。
ううむ。
蒼流の呼びかけに答えて、樹木霊が現れているっぽく巨樹の幹が俺たちの傍で明るくなっているので樹木霊がそこにいるようだが、他の人間から見たら変な風景だろうなぁ。

精霊のやり取りというのは人間には聞こえない。
少なくとも、俺には関知できない。
なので退屈そうに蒼流が突っ立っているようにしか見えないのだが・・・。
流石に、『シャルロのお願い』で来ているので、多分ツァレスの言うことをちゃんと理解して、樹木霊に伝えているんだろうなぁ。

が。
蒼流も樹木霊も目に見えた変化がない。

微妙に気まずい沈黙が流れた。
どうせだったら蒼流も樹木霊に対して声を出して話しかけてくれれば良いのに。
気がきかん!

お茶でも淹れに行こうかと考え始めた頃に、やっと蒼流が口を開いた。
「憶えておらぬそうだ」

・・・そんなこったろうと思ったよ。

元々興味があったかどうかだって疑わしいし、流石に数百年も前の話だったら樹木霊にとってだって大分昔の事だろうし。

失望を隠せなかったツァレスだったが、めげなかった。
「じゃあ、ここの人々がいなくなったのは何故か、教えて貰えないか?」

またもや長い沈黙。
「人が減ったからだそうだ」

そりゃあ、遺跡になったからには人間がいなくなったんだろうけどさぁ。

何故減ったか。
子供が生まれなくなったからなのか、流行病か何かで住民が死にすぎたのか、それとも戦争か何かだったのか。
そこら辺が重要なんだけどねぇ。

樹木霊や精霊はそういう彼らにとって『細かいこと』は認識してない可能性が高い。
ツァレス達はシャルロに任せて、俺は遺跡の調査に戻ろうかなぁ・・・。


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唐変木なウィル君は、シェイラも見捨てて遺跡の探検に戻ろうかなんて考えてますw

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