1,042 / 1,309
卒業後
1041 星暦558年 赤の月 27日 音にも色々あり(4)
しおりを挟む
「中々思う様に弱められないねぇ」
シャルロが何度目か分からないぐらい色々造った試作品に大きくバッテンを貼り付けながらため息を吐いた。
色々魔術回路を変えてみては試作品を造り、大声を出したり街から購入したオモチャのトランペット(多分?)を吹き鳴らしてみたりで試すのだが・・・全部音が消えるか、全然消えないか・・・酷い時は音が大きくなったりと言った微妙な結果が多かった。
音が大きくなるのなんてやった事の反対なことをすればいいのでは!?と興奮したのだが結局色々と弄くり回しても音が完全に消えるだけで、それだったら普通に防音結界で音を消す方が簡単だった。
音を消すだけな防音結界だったら既に完成度が高い魔術回路があるし・・・過去に販売制限された歴史が既にあるから、俺たちがそれと同じ機能の魔具を売り出したら販売制限一択だろう。
販売制限されるのは嫌だし、何よりも俺たちの作った魔具を悪事に利用されたなんて後から知りたく無い。
なので是非とも音を耳障りでは無い程度に減らす魔具を作りたいのだが・・・。
中々上手くいかない。
『音も水の流れと同じで波の動きだ。
同じ波を反対向きにぶつければ音は消えるか・・・小さくなるぞ?』
がっかりしたシャルロを見ていられなかったのか、蒼流が現れて何やら助言らしきものをくれた。
「うん?
流れじゃなくて波だと思えば良いんだ??
そう言えば、水面の波って縁に当たって反対向きに波が生じた時ってお互いにぶつかると消えることがあるよね」
俺は蒼流が何を事を言っているのか分からなかったが、シャルロには何か思い当たる点があったらしい。
「波??」
アレクが聞き返す。
「ウィルが音だって水と同じで奔流になって流れている感じがするって言ったじゃん?
蒼流は音を波みたいに扱って、波を打ち消すような魔具を造れば良いって言ってくれたんだよ」
シャルロが成分分析用魔具を造った際に使った大きな桶のような箱を取り出して水をその中に生み出しながら言った。
どうやら口で説明するのではなく見せてくれるらしい。
「こうやると波が出来るじゃない?
これってこのままだったらそれなりの間続く訳」
シャルロがさっと桶の上に手を翳して静めた水面の上を右手でパンっと棒で叩いたら、波が生じて反対側に向かって流れていく。
反対側に当たったら波が何か細かくなって一部は帰ってきている。
・・・桶の壁に当たった波が反射して帰ってくる際に一部の波が消えているか?
「もっと分かりやすくするね」
そう言いつつ、もう一度手を翳して静めた水面に右手で棒を叩いて波を立て、すぐさま左手に棒を持ち換えてタイミングを見計らっていたと思うと棒で水面を叩く。
「おお??
かなりの波が消えたな」
一部は残っているし、水面全体が揺れている感じだが、棒を叩きつけたことによる目立った波がガッツリ減った。
「そうなんだよね~。
池に石を投げ込んで波が出来る時に2つとか3つ石を投げ込むと波が大きくなったり消えたりするんで、子供の頃に色々と試して遊んだんだ~」
シャルロがポンポンと水面を叩いて遊びながら言った。
普通だったら子供が池の傍で遊んでいたら落ちて溺れるんじゃないかと大人が心配しそうなものだが、シャルロだったら却って水の中の方が安全な位だろうからなぁ。
思う存分遊べたのだろう。
それはさておき。
波って同じ高さの反対向きな波が当たると消えるんか。
「音が波って言うのは何とも不思議な考え方だが、取り敢えず音を反射して返すような仕組みを作ったら外に漏れる音が無くなるか減るのか?」
「その可能性があるな。
しかも反射させるとなったらどうせ元の音と同じだけの大きさにはならないだろうし、反射が多少小さくなるようにすれば確実に全部の音を消さない様に出来るんじゃないか?」
アレクが指摘する。
「だな。
音を拡大するような魔術回路で跳ね返す音をしっかり元の音をある程度打ち消すぐらいの大きさにすると良いかな?
ついでに低音と高音の打ち消しを出来るだけ完全に出来たら喜ばれそうだ」
ついでに特定の音とかを完全に消せたら盗聴防止にも使えそうだが・・・まあ、そこは後だな。
早速試作品を造ってみよう!
シャルロが何度目か分からないぐらい色々造った試作品に大きくバッテンを貼り付けながらため息を吐いた。
色々魔術回路を変えてみては試作品を造り、大声を出したり街から購入したオモチャのトランペット(多分?)を吹き鳴らしてみたりで試すのだが・・・全部音が消えるか、全然消えないか・・・酷い時は音が大きくなったりと言った微妙な結果が多かった。
音が大きくなるのなんてやった事の反対なことをすればいいのでは!?と興奮したのだが結局色々と弄くり回しても音が完全に消えるだけで、それだったら普通に防音結界で音を消す方が簡単だった。
音を消すだけな防音結界だったら既に完成度が高い魔術回路があるし・・・過去に販売制限された歴史が既にあるから、俺たちがそれと同じ機能の魔具を売り出したら販売制限一択だろう。
販売制限されるのは嫌だし、何よりも俺たちの作った魔具を悪事に利用されたなんて後から知りたく無い。
なので是非とも音を耳障りでは無い程度に減らす魔具を作りたいのだが・・・。
中々上手くいかない。
『音も水の流れと同じで波の動きだ。
同じ波を反対向きにぶつければ音は消えるか・・・小さくなるぞ?』
がっかりしたシャルロを見ていられなかったのか、蒼流が現れて何やら助言らしきものをくれた。
「うん?
流れじゃなくて波だと思えば良いんだ??
そう言えば、水面の波って縁に当たって反対向きに波が生じた時ってお互いにぶつかると消えることがあるよね」
俺は蒼流が何を事を言っているのか分からなかったが、シャルロには何か思い当たる点があったらしい。
「波??」
アレクが聞き返す。
「ウィルが音だって水と同じで奔流になって流れている感じがするって言ったじゃん?
蒼流は音を波みたいに扱って、波を打ち消すような魔具を造れば良いって言ってくれたんだよ」
シャルロが成分分析用魔具を造った際に使った大きな桶のような箱を取り出して水をその中に生み出しながら言った。
どうやら口で説明するのではなく見せてくれるらしい。
「こうやると波が出来るじゃない?
これってこのままだったらそれなりの間続く訳」
シャルロがさっと桶の上に手を翳して静めた水面の上を右手でパンっと棒で叩いたら、波が生じて反対側に向かって流れていく。
反対側に当たったら波が何か細かくなって一部は帰ってきている。
・・・桶の壁に当たった波が反射して帰ってくる際に一部の波が消えているか?
「もっと分かりやすくするね」
そう言いつつ、もう一度手を翳して静めた水面に右手で棒を叩いて波を立て、すぐさま左手に棒を持ち換えてタイミングを見計らっていたと思うと棒で水面を叩く。
「おお??
かなりの波が消えたな」
一部は残っているし、水面全体が揺れている感じだが、棒を叩きつけたことによる目立った波がガッツリ減った。
「そうなんだよね~。
池に石を投げ込んで波が出来る時に2つとか3つ石を投げ込むと波が大きくなったり消えたりするんで、子供の頃に色々と試して遊んだんだ~」
シャルロがポンポンと水面を叩いて遊びながら言った。
普通だったら子供が池の傍で遊んでいたら落ちて溺れるんじゃないかと大人が心配しそうなものだが、シャルロだったら却って水の中の方が安全な位だろうからなぁ。
思う存分遊べたのだろう。
それはさておき。
波って同じ高さの反対向きな波が当たると消えるんか。
「音が波って言うのは何とも不思議な考え方だが、取り敢えず音を反射して返すような仕組みを作ったら外に漏れる音が無くなるか減るのか?」
「その可能性があるな。
しかも反射させるとなったらどうせ元の音と同じだけの大きさにはならないだろうし、反射が多少小さくなるようにすれば確実に全部の音を消さない様に出来るんじゃないか?」
アレクが指摘する。
「だな。
音を拡大するような魔術回路で跳ね返す音をしっかり元の音をある程度打ち消すぐらいの大きさにすると良いかな?
ついでに低音と高音の打ち消しを出来るだけ完全に出来たら喜ばれそうだ」
ついでに特定の音とかを完全に消せたら盗聴防止にも使えそうだが・・・まあ、そこは後だな。
早速試作品を造ってみよう!
11
あなたにおすすめの小説
死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜
のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、
偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。
水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは――
古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。
村を立て直し、仲間と絆を築きながら、
やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。
辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、
静かに進む策略と復讐の物語。
病弱少年が怪我した小鳥を偶然テイムして、冒険者ギルドの採取系クエストをやらせていたら、知らないうちにLV99になってました。
もう書かないって言ったよね?
ファンタジー
ベッドで寝たきりだった少年が、ある日、家の外で怪我している青い小鳥『ピーちゃん』を助けたことから二人の大冒険の日々が始まった。
ハズレスキル【分解】が超絶当たりだった件~仲間たちから捨てられたけど、拾ったゴミスキルを優良スキルに作り変えて何でも解決する~
名無し
ファンタジー
お前の代わりなんざいくらでもいる。パーティーリーダーからそう宣告され、あっさり捨てられた主人公フォード。彼のスキル【分解】は、所有物を瞬時にバラバラにして持ち運びやすくする程度の効果だと思われていたが、なんとスキルにも適用されるもので、【分解】したスキルなら幾らでも所有できるというチートスキルであった。捨てられているゴミスキルを【分解】することで有用なスキルに作り変えていくうち、彼はなんでも解決屋を開くことを思いつき、底辺冒険者から成り上がっていく。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
悪役令嬢が処刑されたあとの世界で
重田いの
ファンタジー
悪役令嬢が処刑されたあとの世界で、人々の間に静かな困惑が広がる。
魔術師は事態を把握するため使用人に聞き取りを始める。
案外、普段踏まれている側の人々の方が真実を理解しているものである。
俺たちYOEEEEEEE?のに異世界転移したっぽい?
くまの香
ファンタジー
いつもの朝、だったはずが突然地球を襲う謎の現象。27歳引きニートと27歳サラリーマンが貰ったスキル。これ、チートじゃないよね?頑張りたくないニートとどうでもいいサラリーマンが流されながら生きていく話。現実って厳しいね。
生活魔法は万能です
浜柔
ファンタジー
生活魔法は万能だ。何でもできる。だけど何にもできない。
それは何も特別なものではないから。人が歩いたり走ったりしても誰も不思議に思わないだろう。そんな魔法。
――そしてそんな魔法が人より少し上手く使えるだけのぼくは今日、旅に出る。
異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。
もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。
異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。
ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。
残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、
同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、
追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、
清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる