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卒業後
1056 星暦558年 紫の月 18日 音にも色々あり(19)
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「トランペッター代わりの魔具はまあ軍人が持ち歩けるサイズにすればいいからそれ程工夫しなくても良いだろう。
それより、一般用の非常音声の魔具もトランペットの音を使うか、女性の悲鳴でも使うか、どうする?」
アレクが黒板に書きつけながら言った。
「・・・女性の悲鳴って場合によっては他の人が却って逃げるかも?
特に他の女性とか従業員はとばっちりを受けたら困るからってことで聞こえても知らぬふりする可能性が高いって聞いたよ?」
シャルロが指摘する。
一人や二人が助けに来ても、確かにどっかの貴族のお坊ちゃまだったりしたら目撃したこと自体を握りつぶされて黙っているように脅されそうだよなぁ。
もっと沢山人が集まれば、握りつぶせなくなるんだが。
「じゃあ悲鳴じゃなくって、『火事だ!!』とでも声を上げさせたらどうかな?
甲高い女性と軍曹みたいな男性の声を両方記録して使えばそれなりに音の通りも良いんじゃないか?」
やはり甲高い女性の声はかなり通るからな。
非常時の音声発生器として使うなら、魔具で防音されていない普通の部屋で襲われた時に使う可能性もあるんだから、そうなると甲高い女性の声の方が遠くまで響くかも知れない。
「確かに悲鳴だったら何か危険があるのかと逃げる人間も、火事だと聞いたら消火活動をしなければと少なくとも様子を見に来る可能性は高いな。
だが・・・騒ぎになって迷惑じゃないか?」
アレクがちょっと首を傾げる。
「そんな、誰かが襲われるような杜撰な警備状況で人を招く方が悪いんだから、ちょっとぐらい騒ぎになったっていいじゃん。
なんだったら発煙筒も一緒に付けておくか?
扉の下から煙が出てたらもっと早く人が駆けつけるぞ」
ガキの頃に逃げる時なんかに使った発煙筒にはそれなりに小さくて持ち歩きしやすいのもあった。
煙が出ている時間は短かったが、一気にもやっとでるから部屋の場所を知らせるのに使えるんじゃないか?
密室で煙が外に出なかった場合でも煙くて人を襲う気が薄れるかもだし。
「女性がパーティとかお茶会で持ち運べるバッグは凄く小さいから、あまり物は入らないよ?
発煙筒はこんなのもありますよって一緒に見せる程度で別売りで良いんじゃない?」シャルロが現実的な問題を指摘した。
確かに?
とは言え、女性のスカートの中にでも吊るせば幾らでも物を持てるんじゃないかと思うんだが、座る時に不便かな?
下手に手から奪い取られるかもしれないバッグの中よりも最後まで身に付けているだろう服の中の方がいざという時に手が届いて良いと思うんだけどね。
まあ、考えてみたら発煙筒は使い捨てだから、魔具と一緒にしちゃったら発煙筒を使った後に困るか。
「取り敢えず、大きな音声を記録して流す魔具を造るということで良いか。
軍用は何通りかの音が必要で、民間用は単に持ち歩ける小さなサイズで『火事だ!』と大音量で騒げばいいと」
アレクが話し合いの内容を纏める。
「こないだ会った楽団の・・・キルスだっけ、に女性のオペラ歌手か誰かに思いっきり通るけど歌っている訳じゃあない声で『火事よ!!』って叫んでも貰えないか聞いてみるか?
男性はあのゲルバーグ軍曹で良いかな?
どうせ軍用の魔具の改善用にまだ何回か会う約束をしているし」
あのゲルバーグ軍曹の声はマジで良く通るし、なんかこう、聞いて従わなきゃって思わせる何かがあるんだよな。
まあ、あのおっさんだったら実際に火事の場面に遭遇したら『火事だ!』って叫ぶんじゃなくって何とか部隊はどこそこから水を取ってこいとか、何それ部隊は誰それに連絡しろとかもっと現実的な対応を指示しそうな気もするが。
「そうだね~。
一応それ程長い間声を上げてなくても人が来るだろうから、魔石も比較的安い奴でも済むだろうし、考えてみたらこれって夜会とかじゃなくても普通に街を歩いている人がちょっと危険な地域を通らなきゃいけない場合なんかにも護身用に持っていたら良いかもね」
シャルロが言った。
「確かにそうだな。
悪戯に使われたら苦情ががっつり来そうだが」
アレクがちょっと顔をしかめながら言った。
確かに、夜中なんかに嫌がらせに近所でこれを起動させて屋根の上にでも放り上げられたら迷惑極まりないな。
「一回に出る音声の長さは盗聴防止用のに付けた非常用音声の半分ぐらいにしておこうぜ。
火事って騒げばそれなりに直ぐに人目が集まるから、襲われた場合だったらそれで襲ってきた人間が逃げるか・・・襲撃の狙い通り殺すなり引ったくるなりして決着がつくだろう。
延々と音が出ていたら、悪戯として音量を出した状態でどっかに投げ込まれたりした場合なんかに迷惑過ぎる」
屋根の上なんかに投げられて、それをどけるために家人が屋根から落ちて大怪我なんぞしたら困るし。
いや、路地から投げて乗せられる屋根程度だったらそれ程高さは無いか?
まあどちらにせよ、短時間の方が魔石の消耗が少ないし、費用が安くなるのに越したことは無いだろう。
それより、一般用の非常音声の魔具もトランペットの音を使うか、女性の悲鳴でも使うか、どうする?」
アレクが黒板に書きつけながら言った。
「・・・女性の悲鳴って場合によっては他の人が却って逃げるかも?
特に他の女性とか従業員はとばっちりを受けたら困るからってことで聞こえても知らぬふりする可能性が高いって聞いたよ?」
シャルロが指摘する。
一人や二人が助けに来ても、確かにどっかの貴族のお坊ちゃまだったりしたら目撃したこと自体を握りつぶされて黙っているように脅されそうだよなぁ。
もっと沢山人が集まれば、握りつぶせなくなるんだが。
「じゃあ悲鳴じゃなくって、『火事だ!!』とでも声を上げさせたらどうかな?
甲高い女性と軍曹みたいな男性の声を両方記録して使えばそれなりに音の通りも良いんじゃないか?」
やはり甲高い女性の声はかなり通るからな。
非常時の音声発生器として使うなら、魔具で防音されていない普通の部屋で襲われた時に使う可能性もあるんだから、そうなると甲高い女性の声の方が遠くまで響くかも知れない。
「確かに悲鳴だったら何か危険があるのかと逃げる人間も、火事だと聞いたら消火活動をしなければと少なくとも様子を見に来る可能性は高いな。
だが・・・騒ぎになって迷惑じゃないか?」
アレクがちょっと首を傾げる。
「そんな、誰かが襲われるような杜撰な警備状況で人を招く方が悪いんだから、ちょっとぐらい騒ぎになったっていいじゃん。
なんだったら発煙筒も一緒に付けておくか?
扉の下から煙が出てたらもっと早く人が駆けつけるぞ」
ガキの頃に逃げる時なんかに使った発煙筒にはそれなりに小さくて持ち歩きしやすいのもあった。
煙が出ている時間は短かったが、一気にもやっとでるから部屋の場所を知らせるのに使えるんじゃないか?
密室で煙が外に出なかった場合でも煙くて人を襲う気が薄れるかもだし。
「女性がパーティとかお茶会で持ち運べるバッグは凄く小さいから、あまり物は入らないよ?
発煙筒はこんなのもありますよって一緒に見せる程度で別売りで良いんじゃない?」シャルロが現実的な問題を指摘した。
確かに?
とは言え、女性のスカートの中にでも吊るせば幾らでも物を持てるんじゃないかと思うんだが、座る時に不便かな?
下手に手から奪い取られるかもしれないバッグの中よりも最後まで身に付けているだろう服の中の方がいざという時に手が届いて良いと思うんだけどね。
まあ、考えてみたら発煙筒は使い捨てだから、魔具と一緒にしちゃったら発煙筒を使った後に困るか。
「取り敢えず、大きな音声を記録して流す魔具を造るということで良いか。
軍用は何通りかの音が必要で、民間用は単に持ち歩ける小さなサイズで『火事だ!』と大音量で騒げばいいと」
アレクが話し合いの内容を纏める。
「こないだ会った楽団の・・・キルスだっけ、に女性のオペラ歌手か誰かに思いっきり通るけど歌っている訳じゃあない声で『火事よ!!』って叫んでも貰えないか聞いてみるか?
男性はあのゲルバーグ軍曹で良いかな?
どうせ軍用の魔具の改善用にまだ何回か会う約束をしているし」
あのゲルバーグ軍曹の声はマジで良く通るし、なんかこう、聞いて従わなきゃって思わせる何かがあるんだよな。
まあ、あのおっさんだったら実際に火事の場面に遭遇したら『火事だ!』って叫ぶんじゃなくって何とか部隊はどこそこから水を取ってこいとか、何それ部隊は誰それに連絡しろとかもっと現実的な対応を指示しそうな気もするが。
「そうだね~。
一応それ程長い間声を上げてなくても人が来るだろうから、魔石も比較的安い奴でも済むだろうし、考えてみたらこれって夜会とかじゃなくても普通に街を歩いている人がちょっと危険な地域を通らなきゃいけない場合なんかにも護身用に持っていたら良いかもね」
シャルロが言った。
「確かにそうだな。
悪戯に使われたら苦情ががっつり来そうだが」
アレクがちょっと顔をしかめながら言った。
確かに、夜中なんかに嫌がらせに近所でこれを起動させて屋根の上にでも放り上げられたら迷惑極まりないな。
「一回に出る音声の長さは盗聴防止用のに付けた非常用音声の半分ぐらいにしておこうぜ。
火事って騒げばそれなりに直ぐに人目が集まるから、襲われた場合だったらそれで襲ってきた人間が逃げるか・・・襲撃の狙い通り殺すなり引ったくるなりして決着がつくだろう。
延々と音が出ていたら、悪戯として音量を出した状態でどっかに投げ込まれたりした場合なんかに迷惑過ぎる」
屋根の上なんかに投げられて、それをどけるために家人が屋根から落ちて大怪我なんぞしたら困るし。
いや、路地から投げて乗せられる屋根程度だったらそれ程高さは無いか?
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