シーフな魔術師

極楽とんぼ

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卒業後

1137 星暦558年 青の月 18日 遊ぼう!(24)

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一通りスヴァンが鉄を精製するのを手伝ったらもう夕方になっていたので剣を鍛えるのは明日にする事になり、俺はざっと鍛冶場の裏で水を拭って皆で夕食を食べる事になっていた食事処に来た。

作業着を着たし清早に汗をかきすぎない様に俺の体を冷やしておく様頼んでいたんだけど、やはり鉄鉱石を溶かしたり叩いたりしているとそれなりに汗が出たので、シャツはスヴァンに換えを借りる羽目になった。

明日は万が一上手くいったらと思って持ってきた作業着を持ってこよう。
帰り用の着替えと今日借りたシャツも。

異国に来て鍛治作業をする事になるとはちょっと想定外だったが、色々と学ぶ事もあったし明日は魔力を注いだ炭を持って行ったら剣を打たせてくれると話がついたので、更に学ぶ事がありそうで楽しみだ。

「それで、さがしていた鍛冶師さんは見つかったの~?」
店に入って先に来ていたアレク達に合流したら、シャルロが聞いてきた。

「おう。
スタルノのところで見た剣を打った婆さんはもう引退したとかで、孫が店の鍛治師を引き継いでいたが。
一緒に作業をさせて貰ったし店番をしていた婆さんにちょくちょく教えて貰えたぜ。
明日は剣を打つ作業も一緒にやらせて貰える予定だ」

考え様によっては、自分では殆ど使わない剣よりも自分が食べる食事を作る包丁を打つのを監督して貰う方が得るものが多いかも知れないが・・・将来的に魔剣を作るための下作業的な学びだと考えたらまずは剣を打った方が良いな。

「へぇぇ?
大アチューラは女性だったんだ?」
セビウス氏が興味深げに聞いてきた。

「ああ。
鍛冶場街の奥の方にある古い鍛冶屋で店番をしていたけど、現役時代は良い剣を打っていたみたいだな。
婆さんが打った剣もまだ幾つかあったから、買わせてくれと頼んだがあれらは顔馴染みな常連客の剣が折れた時用だから駄目だと断られた」
ある意味、大アチューラの剣って知る人ぞ知るって名剣な可能性が高いから、そう言うのに拘る人間に話を持ち掛けられたら高く売れるんだろうに。
まあ、そう言う転売狙い野郎が来るのが嫌で、常連客の折れた昔の剣の代替以外では販売しないって言っているんかも?

死んでるよりはマシだが、引退したなら在庫が増えないって事で大アチューラの剣の希少価値ってこれからどんどん上がって値段も釣り上がりそうだし。

「へぇぇ。
大アチューラの剣が手に入るならそれで色々と説得出来る人が居るんだが・・・販売制限しているなら無理に入手しても逆効果だろうな。
残念だ」
セビウス氏が溜め息を吐きながら言った。

この『説得』って『買収』って意味じゃね??
しっかしあの婆さん、アファル王国でも知られているんだな。

剣馬鹿なスタルノのみの知識って訳じゃあなかったのか。

「シャルロとアレク達はどうだった?
何か良い店を見つけたのか?」
そう言えば、シェイラのお土産用に何か良い小物があったら買いたい。

シェイラはナイフも包丁も要らなそうだからなぁ。
まあ、金細工もそれほど欲しがらないかもだけど。
ある意味、遺跡発掘用の小さな熊手とかスコップとかが一番喜ばれるかもだが、流石にそれに凄腕鍛治師は必要ないだろうからなぁ。

無難に、繊細な金細工でも見かけたら買うかな。
一応木の寄木細工の箱を一つ買ったが、ノルダスの土産もあった方が良いだろう。

「何軒か面白そうな店があったな。
細かい物の細工が得意なのか、貝殻を使った小物も綺麗なのがあったね」
アレクが言った。

「これなんかその貝細工なのよ」
ケレナが耳からぶら下げているピアスを見せてくれた。

へぇぇ。
なんか白をベースにしているけど不思議に七色っぽい光沢があるな。
これならシェイラへの土産に良さそうだ。

「それを売っている店を教えてくれ。
ちなみに、包丁も中々質が良かったぜ。
ドリアーナとパディン夫人用には一丁ずつ買ったが、デルブ夫人に一丁買って帰ったら喜ばれるかも?」

「あ、良いかも。
明日にでもその、ウィルが見つけた凄腕お婆さんの店を教えて!」
シャルロが言ってきた。

ありゃ。
シャルロ達が来るのは良いが、こいつらの相手に忙しくて婆さんが俺やスヴァンを教える暇が無くなったら困るんだが。

・・・大丈夫だよな??

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