シーフな魔術師

極楽とんぼ

文字の大きさ
1,201 / 1,309
卒業後

1200 星暦558年 萌黄の月 24日 事務作業(6)

しおりを挟む
 近所の大工のおっさんに手伝ってもらい、先ずは2階のベランダの横に地面までの柱を4本(と補強材)を設置して貰った。

 ちゃんと完成してサイズが分かるまでは家の床や壁に穴を開けたくないからな。
 まずは試作品を庭からベランダに上げる形で作ることにしたのだ。
 一々家の中を出入りするのが面倒なのでついでに梯子をベランダに固定してあるが、これは今回の開発が終わったらちゃんと退ける予定。

 魔術師の家に盗みに入るアホな泥棒はいないと思うが、何も知らないバカの気を引いて、捕まえた泥棒を警備兵に突き出すのは面倒ではある。
 勿論防御結界で俺ら以外の人間が触れられない様になっているが、結界その物へ十分に強い衝撃を与えれば無理やり壊す事も可能だ。
 まあ、その前に俺たちが気付く筈だが。

 それに態々結界で触れられない様になっている梯子なんぞ登らなくても、適当に壁の突っかかりとかを使えば十分に裏仕事に慣れた様な人間なら上に登れるんだけどね。

「これって本番の時は鉄板の箱に変えた方が良いかな? 」
 大工のおっさんについでに作って貰った昇降機用の木箱をコンコンと叩きながらシャルロがちょっと首を傾げる。

「鉄板の方が丈夫だが、もしも中に子供が閉じ込められた状態で階と階の間で昇降機が止まってしまった場合、木材の方が板を何枚か剥して子供を助け出しやすいかも?」
 アレクが指摘する。

「いや、食材を運んでいて何か零したりするかもだから、腐る可能性がある木材よりも鉄の板の方が無難じゃないか?
 一枚の鉄板じゃなくて、3枚ぐらいのを下から補強材で支えた上でネジで固定するような形にしたら、もしもの時に子供を助け出すのも可能だろ」
 それに子供がオシッコしちまった場合でも、木材よりは鉄板の方が綺麗に臭いも残らずに掃除できそうだし。

 木材に尿が沁み込んじまったら、マジで板を取り換えない限り臭いが抜けないだろう。

「確かにね。
 あと、子供が入って悪戯する可能性を排除できないなら、それこそ子供……じゃなくても誰かの体が入り口から入っている状態で昇降機の箱が動かない仕組みも必要だね」
 シャルロが言った。

 あ~。
 流石に昇降機の入り口に寝転がる子供が居るとは思わんが、それこそ中のキッチンワゴンを取り出そうとしている時に上の鎖が切れて箱が突然落下したりしたら、腕を大怪我しかねないな。
 何かを落として拾おうとして体の半分ぐらいを昇降機の中に入れていた時に箱が落ちたりしたら悲劇だ。
 それに子供が何人かで昇降機の入り口付近で飛び跳ねて遊んでいて壊す可能性もあるし。

「扉を開けると、箱の横から棒が出て箱を壁に固定する用な仕組みにしたらどうかな?
 そうしたら扉が開いている間は絶対に箱が落ちないだろう」
 アレクが提案する。

「だったら箱から出るんじゃなくって、壁側から出るようにする方が箱が無駄に重くならなくて良いんじゃないか?」
 多分修理もしやすくなるだろうし。

「そうだね~。
 扉に連動して下からぐっと板か丈夫な棒が出て箱を支える感じにしたら良さそう。
 そこら辺は魔具じゃなくって普通の仕組みで良いよね」
 シャルロが賛成した。

 確かに、普通の構造的な仕組みにすれば、例え設置した家が没落して魔石が無くなって筋肉で昇降機を動かすことになっても安全装置的な機能は残るな。

「そんじゃあ、取り敢えず箱に重量軽減の魔術回路を付けて、後は上に滑車を付けてそれを動かす魔術回路でもそっちに設置するか」
 洗濯用魔具で使ったローラーを動かす魔術回路でも良いかもだな。
 あれはちゃんと特許権が切れているしそれなりに動きに対する魔力消費が少ない。
 まあ、洗濯用魔具だとあまり重量を掛からなかったから、成人男性を持ち上げられるような昇降機には向かないかもだが。

 そうなったら鉱山とかで使っている滑車用の古いのを改造しよう。

「まずは何も入れずに試してみて、重さを足してどうなるか確認して行こうか」
 シャルロが頷きながら魔術回路用の銅線を取り出してきた。

 床板部分に重量軽減の魔術回路を付けた方が良いが、床部分だとそれこそ何かスープとかを零した時に魔術回路が破損しかねないな。
 魔術回路だけ、鉄板の箱にでも入れるかね?

しおりを挟む
感想 50

あなたにおすすめの小説

死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜

のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、 偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。 水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは―― 古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。 村を立て直し、仲間と絆を築きながら、 やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。 辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、 静かに進む策略と復讐の物語。

病弱少年が怪我した小鳥を偶然テイムして、冒険者ギルドの採取系クエストをやらせていたら、知らないうちにLV99になってました。

もう書かないって言ったよね?
ファンタジー
 ベッドで寝たきりだった少年が、ある日、家の外で怪我している青い小鳥『ピーちゃん』を助けたことから二人の大冒険の日々が始まった。

ハズレスキル【分解】が超絶当たりだった件~仲間たちから捨てられたけど、拾ったゴミスキルを優良スキルに作り変えて何でも解決する~

名無し
ファンタジー
お前の代わりなんざいくらでもいる。パーティーリーダーからそう宣告され、あっさり捨てられた主人公フォード。彼のスキル【分解】は、所有物を瞬時にバラバラにして持ち運びやすくする程度の効果だと思われていたが、なんとスキルにも適用されるもので、【分解】したスキルなら幾らでも所有できるというチートスキルであった。捨てられているゴミスキルを【分解】することで有用なスキルに作り変えていくうち、彼はなんでも解決屋を開くことを思いつき、底辺冒険者から成り上がっていく。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

悪役令嬢が処刑されたあとの世界で

重田いの
ファンタジー
悪役令嬢が処刑されたあとの世界で、人々の間に静かな困惑が広がる。 魔術師は事態を把握するため使用人に聞き取りを始める。 案外、普段踏まれている側の人々の方が真実を理解しているものである。

俺たちYOEEEEEEE?のに異世界転移したっぽい?

くまの香
ファンタジー
 いつもの朝、だったはずが突然地球を襲う謎の現象。27歳引きニートと27歳サラリーマンが貰ったスキル。これ、チートじゃないよね?頑張りたくないニートとどうでもいいサラリーマンが流されながら生きていく話。現実って厳しいね。

生活魔法は万能です

浜柔
ファンタジー
 生活魔法は万能だ。何でもできる。だけど何にもできない。  それは何も特別なものではないから。人が歩いたり走ったりしても誰も不思議に思わないだろう。そんな魔法。  ――そしてそんな魔法が人より少し上手く使えるだけのぼくは今日、旅に出る。

異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。

もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。 異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。 ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。 残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、 同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、 追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、 清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……

処理中です...