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卒業後
1199 星暦558年 萌黄の月 23日 事務作業(5)
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「へぇぇ、箱の上に鎖を付けてそれで吊り上げて動かしている感じなのか。
うっかり手を離しても落ちないようにこの切り替えスイッチを押さないと反対向きに動かないようにしてあるんだね」
オレファーニ侯爵家の王都屋敷にも使用人が筋肉で動かす昇降機があるとの事なので、今日はそれの構造を見せに貰いに来た。
まあ、主にシャルロが遠慮なく色々と動かしたり頭を突っ込んで調べたりしているのを、俺らが後ろから覗き込んでいる感じだけど。
シャルロなら壊したり使用人の邪魔をしてもほぼ誰も文句を言わないというのもあるけど、何よりも絡繰りの仕組みに対する好奇心の強さはシャルロが一番だからね。
俺やアレクだったらどう動くのか仕組みを一通り見るだけで終わりなのが、シャルロだと普通の動かし方をやってみるだけでなく、想定外な動かし方を試そうとして止められたり、それが出来ないような安全装置の事を教えて貰ったりするんだよね。
こうやって教えられて気付いたが、俺たちの家に設置する昇降機にはそれ程子供の悪戯対策な安全装置は要らないと思うけど、一般に売り出すのだとしたらあった方が良いだろう。
……考えてみたら、いつの日かシャルロ達に子供が出来たらそいつが工房に遊びに来る可能性はあるし、俺たちの話に退屈して家の中の探検に出て昇降機で悪戯をする可能性はかなり高そうだ。
シャルロもケレナも大人しく座って自分に興味も関係もない話を根気よく聞くタイプじゃない。
そう考えると、二人の子供も大人たちが話し合いが終わるまで静かに言われたところに座っている可能性はかなり低いだろう。
オレファーニ家の昇降機も、それこそちびシャルロが徘徊した屋敷にあるのだから、子供の悪戯対策は万全なんだろうな。
「ちなみに、シャルロや他の子どもたちがこれで悪戯をしようとしたりしたことは無いのか?」
昇降機の仕組みについて説明してくれていた使用人に尋ねる。
使用人たちが使う裏側にある仕組みとは言え、子供と言うのは親に禁じられたところにこそ忍び込みたがる生き物だろう。
「かくれんぼで中に入っていてそのまま寝てしまって行方不明で探されることは何度かありましたね。
後は箱の上の鎖に摑まって登りたがったりするお坊ちゃまも時折います。
2階の昇降機の扉を開けて鎖に手を伸ばして、落ちそうになって鎖にぶら下がる羽目になって大騒ぎになったこともあります。
その後に、昇降機の扉の形をこの様に変えました」
キッチンワゴンの上に大型な鍋を乗せても通る大きさなので、昇降機の正面の大きさは1.2メタぐらいある。
その扉の上部に上向きに開いたカバーのようなものが付けられていて、その中に手を入れて押したら開く形になっている。一応上から肘で押せるものの、下から手を伸ばしても開けられない形だ。
ちょっと変わったデザインだなと思っていたのだが、どうやら子供が背伸びして下から手を伸ばしても開けられない様に苦心した結果らしい。
なる程。
2階から落ちる程度だったら余程角度が悪くない限りは骨折程度で済む可能性が高いが、3階から1階まで一気に落ちたら下手をしたら大人でも死んでしまうし、当然子供だったら更に危険だろう。
反射神経が良ければ完全に落ちる前に鎖に摑まって落下を止められるかも知れないが、パニックしていたら大人ですらそんなことを出来るかは分からない。
そう考えると昇降機の扉と言うのは安易に開いてはいけないんだな。
一々鍵をかける形にすると色々と面倒すぎてついついちょっとの間だけってつもりで鍵を開けたままそこを離れて子供が忍び込む結果になりそうだし、そう考えると鍵を無しに子供が開けられない形にするのはこういう工夫が必要か。
「ちなみに、これって重すぎる物を入れすぎてとか、経年劣化でとかで鎖が千切れて昇降機が上から落ちるなんて事故は起きないのか?」
地階にある台所から持って行くときの方が昇降機に乗せる物が重いだろうが、場合によってはそれこそ重い物を乗せて上げて行った挙句に上でブチッと切れることもありそうだが。
「そうですね。
一応定期的に鎖にぐっと体重を掛けて引っ張ることで強度の確認はしていますが、変な音がするようになったのに無理に使っていて昇降機が落ちたという事故の話は他家の使用人から時折聞きます」
顔をしかめながらオレファーニ家の使用人が教えてくれた。
うわぁ。
ちゃんと強度確認して、ヤバそうになったら取り換える資金力がない家は昇降機なんぞ使っちゃいけないんだな。
昔は栄えていたのに、没落して屋敷の設備だけは昔の良い物があるようなところが危ないんだろう。
緊急停止的な機能も付けた方が良いかな?
まあ、普段使わない機能がいざという時にちゃんと役に立つかは微妙な気もするが。
というか、俺たちが造るのは魔具だからなぁ。
没落したら真っ先に魔石を買う金が無くなって、昇降機も使われなくなるかな?
魔石が無かったら手で動かせない様にするべきかもだが、そうすると魔術回路が壊れた時なんかに困るかもだなぁ。
どうするか……。
うっかり手を離しても落ちないようにこの切り替えスイッチを押さないと反対向きに動かないようにしてあるんだね」
オレファーニ侯爵家の王都屋敷にも使用人が筋肉で動かす昇降機があるとの事なので、今日はそれの構造を見せに貰いに来た。
まあ、主にシャルロが遠慮なく色々と動かしたり頭を突っ込んで調べたりしているのを、俺らが後ろから覗き込んでいる感じだけど。
シャルロなら壊したり使用人の邪魔をしてもほぼ誰も文句を言わないというのもあるけど、何よりも絡繰りの仕組みに対する好奇心の強さはシャルロが一番だからね。
俺やアレクだったらどう動くのか仕組みを一通り見るだけで終わりなのが、シャルロだと普通の動かし方をやってみるだけでなく、想定外な動かし方を試そうとして止められたり、それが出来ないような安全装置の事を教えて貰ったりするんだよね。
こうやって教えられて気付いたが、俺たちの家に設置する昇降機にはそれ程子供の悪戯対策な安全装置は要らないと思うけど、一般に売り出すのだとしたらあった方が良いだろう。
……考えてみたら、いつの日かシャルロ達に子供が出来たらそいつが工房に遊びに来る可能性はあるし、俺たちの話に退屈して家の中の探検に出て昇降機で悪戯をする可能性はかなり高そうだ。
シャルロもケレナも大人しく座って自分に興味も関係もない話を根気よく聞くタイプじゃない。
そう考えると、二人の子供も大人たちが話し合いが終わるまで静かに言われたところに座っている可能性はかなり低いだろう。
オレファーニ家の昇降機も、それこそちびシャルロが徘徊した屋敷にあるのだから、子供の悪戯対策は万全なんだろうな。
「ちなみに、シャルロや他の子どもたちがこれで悪戯をしようとしたりしたことは無いのか?」
昇降機の仕組みについて説明してくれていた使用人に尋ねる。
使用人たちが使う裏側にある仕組みとは言え、子供と言うのは親に禁じられたところにこそ忍び込みたがる生き物だろう。
「かくれんぼで中に入っていてそのまま寝てしまって行方不明で探されることは何度かありましたね。
後は箱の上の鎖に摑まって登りたがったりするお坊ちゃまも時折います。
2階の昇降機の扉を開けて鎖に手を伸ばして、落ちそうになって鎖にぶら下がる羽目になって大騒ぎになったこともあります。
その後に、昇降機の扉の形をこの様に変えました」
キッチンワゴンの上に大型な鍋を乗せても通る大きさなので、昇降機の正面の大きさは1.2メタぐらいある。
その扉の上部に上向きに開いたカバーのようなものが付けられていて、その中に手を入れて押したら開く形になっている。一応上から肘で押せるものの、下から手を伸ばしても開けられない形だ。
ちょっと変わったデザインだなと思っていたのだが、どうやら子供が背伸びして下から手を伸ばしても開けられない様に苦心した結果らしい。
なる程。
2階から落ちる程度だったら余程角度が悪くない限りは骨折程度で済む可能性が高いが、3階から1階まで一気に落ちたら下手をしたら大人でも死んでしまうし、当然子供だったら更に危険だろう。
反射神経が良ければ完全に落ちる前に鎖に摑まって落下を止められるかも知れないが、パニックしていたら大人ですらそんなことを出来るかは分からない。
そう考えると昇降機の扉と言うのは安易に開いてはいけないんだな。
一々鍵をかける形にすると色々と面倒すぎてついついちょっとの間だけってつもりで鍵を開けたままそこを離れて子供が忍び込む結果になりそうだし、そう考えると鍵を無しに子供が開けられない形にするのはこういう工夫が必要か。
「ちなみに、これって重すぎる物を入れすぎてとか、経年劣化でとかで鎖が千切れて昇降機が上から落ちるなんて事故は起きないのか?」
地階にある台所から持って行くときの方が昇降機に乗せる物が重いだろうが、場合によってはそれこそ重い物を乗せて上げて行った挙句に上でブチッと切れることもありそうだが。
「そうですね。
一応定期的に鎖にぐっと体重を掛けて引っ張ることで強度の確認はしていますが、変な音がするようになったのに無理に使っていて昇降機が落ちたという事故の話は他家の使用人から時折聞きます」
顔をしかめながらオレファーニ家の使用人が教えてくれた。
うわぁ。
ちゃんと強度確認して、ヤバそうになったら取り換える資金力がない家は昇降機なんぞ使っちゃいけないんだな。
昔は栄えていたのに、没落して屋敷の設備だけは昔の良い物があるようなところが危ないんだろう。
緊急停止的な機能も付けた方が良いかな?
まあ、普段使わない機能がいざという時にちゃんと役に立つかは微妙な気もするが。
というか、俺たちが造るのは魔具だからなぁ。
没落したら真っ先に魔石を買う金が無くなって、昇降機も使われなくなるかな?
魔石が無かったら手で動かせない様にするべきかもだが、そうすると魔術回路が壊れた時なんかに困るかもだなぁ。
どうするか……。
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