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第一部 幼年期

第七十四話 シュリのレベルと新発見!?

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 結局あの後、シュリを賛辞する女性陣がヒートアップして時間切れ。
 まあ、すぐに対決というわけでもないだろうしという事で、今後は念話で互いの連携をとりつつ作戦を練り、シャイナにはガナッシュとの繋がりを利用して引き続き探りを入れてもらうという方向性に。
 事態が動きそうになったら、また集まって詳細な計画を詰めることにして、今日のところは解散となった。

 そんな訳で、シュリはシャイナと共に帰還した訳なのだが、ミフィーはまだお茶会から戻っておらず、マチルダとリアはちょうど家に戻っていて不在。
 シャイナも仕事があるということだったので、シュリはお昼寝と称して一人部屋でお留守番する事と相成った。

 久々の一人の時間、という事で、シュリはあんまりまじめに確認していなかった己のステータスを見ておくことにした。
 アナウンスがあるから、スキルを得たり、レベルが上がっている事は分かっていたが、その回数が余りに多いので、スキルの内容を確認する意外はほぼ放置したままだったのだ。
 ガナッシュとの事もあるし、ここで一度、しっかり確認しておいた方がいいだろう。
 MPに余裕があるようなら、魔法の練習もしておきたいし。

 と、いうことで、急に誰かが帰ってきても怪しまれないようにお布団にくるまってお昼寝体制でステータスオープン。
 いつもスルーしていた基本ステータスの辺りに視線を固定したシュリは、いきなりフリーズした。
 あれ、見間違いかな、と小さな手でコシコシと目をこすり、心を落ち着けてからもう一度。
 だが、表示に何の変化もなく、シュリはそっとジュディスに念話で話しかけた。


 『ねぇ、ジュディス?』

 『シュリ様?なんでしょうか??』

 『ジュディスのレベルっていくつくらい?』

 『私のレベル、ですか?私は冒険者ではないのでそんなに高くないですよ?今、レベル8くらいでしょうか。まあ、普通の町民であればごく普通のレベルでしょうけど』

 『そっか、うん。ありがと』


 距離関係なく使える念話って便利だなぁ、とやや現実逃避的に考えつつ、今度はシャイナに繋ぐ。


 『シャイナ?』

 『何かご用がありましたか?よければすぐに伺いますけど??』

 『ううん。いいんだ。ちょっと聞きたいことがあって……』

 『聞きたいこと?何でしょう??』

 『シャイナはレベルいくつ?結構高いんでしょう??』

 『いえいえ。私なんてまだまだ。裏の仕事はそれなりにこなしてますが、冒険者というわけではありませんし、レベルはこの間やっと、20を越えたところです』
 『20を……。そっか。教えてくれてありがとう』


 シャイナとの念話を終え、シュリはもう一度自分のステータスをみる。
 間違いがないように、指さし確認しながらしっかり見直して、それから最後はカレンに話しかけた。


 『カレン……』

 『どうしたんですか?シュリ君、今にも死にそうな声を出して。なにかありました?』

 『カレンは兵士で戦闘職だし、レベルはそれなりに高い、でしょ?高いはず、だよね??』

 『レベル、ですか?そうですね。私は兵士といってもまだ下っ端ですし、現場経験もそれほど豊富なわけではないですが、一般の人に比べれば高いかもしれないですね』

 『そう!レベル100くらい??』

 『100って、英雄でもあるまいし。冗談が上手ですね、シュリ君は。私のレベルはせいぜい30を越えたくらいですよ』

 『さんじゅう……』

 『はい、そのくらいです。まあ、冒険者ならたまには100越えもいるかも知れませんが、そのレベルに到達するのは一握りの特別な人だけと聞きますけど』

 『そっか……ありがと』


 念話を切り、シュリは頭を抱えた。
 三人との会話で世の一般的なレベル帯がどの辺りなのかを再確認し、自分が逸脱した存在だということが再確認できた。

 深呼吸をし、改めてレベルのところの数字を見てみる。
 そこには何度見ても変わらぬ150の数字がある。

 15、ではない。150、なのである。

 冒険者の上位一握りや英雄と呼ばれる存在でやっとレベル100越え。
 ならば、生まれてやっと1年すぎたばかりでレベルが100を軽く越えている自分は何なのか。
 チートで片づけるにはちょっとチートすぎないかと思うのだ。
 正直、ユニークスキルの[年上キラー]だけでも十分チートなのに。

 だが、確かに取得経験値が倍になる称号があったことは覚えているが、それだけでこんなに早くレベルが上がるものだろうか?正直、疑問である。
 なので、シュリはもう一度、改めてスキルと称号を確認してみることにした。

 上からスキルを確認してみたが、スキルには特に問題は無さそうだ。
 続いて称号も確認する。こちらも問題ない。

 それはそうだ。
 スキルと称号に関しては、その内容を確認するため、取得した後は大体目を通してきた。
 そうそう新たなスキルや称号を見逃すわけがないのである。

 うーんと考えながら首を傾げ、不意にあることに気が付いて目を見開く。
 今まで称号が一番下だと思っていたが、まだ下があるのである。
 最初からあったのか、それとも途中から増えたのか、正直定かではないが、気づいたからには確認すべきだろうと、文章をそっとスクロールした。

 そこには、加護、という項目があった、もとい、出来ていた。
 今まで気づいていなかったのだから、シュリにとっては今出来たも同じ事である。
 そして、当然の事ながら、加護と書かれた項目の下には[~の加護]という奴が書かれていた。
 それはガナッシュが持っているという美の女神の加護と同じ様な感じのものなのだろう。
 シュリのそこには、[運命の女神の加護]とばっちりしっかり表記されていた。

 取り急ぎ内容を確認して、ああ、と思う。
 すべての理由はそこにあった。
 シュリがスキルを覚えやすいのも、シュリのレベルの上昇速度が異様なのも。
 その内容は、こう書かれていた。


[運命の女神の加護]運命の女神に愛された者への恩恵。与えられる恩恵は以下の通り。

 ・[運命のルーレット]経験値の取得値が運命のルーレットによって、100倍~100分の1の間で決まる。結果は運により左右される。

 ・[スキル・ゲッター]スキルを覚えるのが非常に容易となる。結果は運によって左右される。

 ・[強運]運が非常に強くなる。

 ・[信仰の祈り]運命の女神と交信が出来る。

 シュリのスキル覚えの良さと、レベルの異常さは、明らかにこの[スキル・ゲッター]と[運命のルーレット]のせいに違いなかった。
 内容的には、一応運頼みの様ではあるが、よく見てほしい。恩恵の一つに[強運]とあるのを。
 運頼みの恩恵の効果が、[強運]の効果の影響で常に高倍率を叩き出した結果が今のシュリなのである。

 しかし、こんな記述がいつからあったのか。
 だがよくよく考えてみれば、結構生まれたてから[スキル・ゲッター]の影響らしきスキル覚えの良さはあった気がする。

 それに、とシュリは思う。
 [運命の女神の加護]取得しました、なんてお知らせは受けた覚えがないぞ、と。

 ならば、最初からあったのか?
 だが、今の今までこんな項目があることには気が付かなかった。
 何度となくステータス画面を確認してきたのに、それもおかしい気がする。
 最近こそおざなりになっていたが、最初の頃はそれなりによーく確認したと思うのだ。それこそ、隅から隅まで。

 うーん、うーんと頭をひねっていたシュリは、[信仰の祈り]という項目に目を留めた。
 そしてぽんと手を叩く。
 分からないなら、加護を与えた本人に直接聞いてみればいい、と。

 シュリはどこまでも素直にそう思い、思ったことをこれまた素直に実行に移した。
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