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二章

「ダンジョン合宿と謎の石像」その④

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「スカーレット、ここからは俺がやる、休んでていいぞ」
「役に立つことができず、申し訳ありません」
「いやいや、これ以上ないぐらい役に立ってるぞ」

 今は戦闘中なので眼前のワーウルフから視線を逸らせないが、後ろのスカーレットがブンブン尻尾を振って喜んでいるのはなんとなく分かった。
 それからスカーレットは邪魔にならないようにクリスが居る場所まで後退した。

「じゃあこっからは俺が相手だ。お前がどのぐらい強いか、見せてもらおうか」

 このワーウルフ、すぐに襲い掛かってこないし、凄く慎重な奴だ。超人パワーの恐ろしさが感覚的に分かってて、攻めあぐねているのかも。

「来ないなら、こっちから行くぜ」

 横薙ぎに斧を振り、斬撃の如く衝撃波を飛ばした。
 ワーウルフはジャンプして躱すが、それは計画通りの動きだ。宙に居て動きが取れないワーウルフに、連続して衝撃波を繰り出す。
 やはりイメージが大切だ。はっきり強くイメージすることで思った通りの衝撃波が出る。てかどれか当たるだろ。下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる戦法だ。
 運よく一撃目が直撃し、ワーウルフは後方に吹き飛ぶ。だが空中で体勢を立て直し上手く着地するとすぐに突撃してくる。
 俺もダッシュして間合いを詰め、先に斧を斜め上から振り抜く。しかし簡単に躱され、斧は勢いのまま地面に激突し、大きく長く深い地割れを作り出した。
 近付けさせないように連続して斧を振り回すが、ワーウルフは攻撃を躱しながら稲妻の如くジグザグに動き、あっという間に後ろへと回り込む。だがそれもテンプレの戦い方で予想通りだ。
 強くてスピードに自信がある奴って、すぐに後ろに回り込むんだよな。だから速い動きに対応できなくても、オタク知識の先読みで、ビビッて硬くならなければそこそこ上手く戦える。
 長い柄の先を片手で持って上半身をひねり、後ろにいるワーウルフ目掛けて斧を横薙ぎに振り抜く。
 ワーウルフはジャンプして回避したが逃げ遅れ、斧は左足を膝の辺りから切り落とした。

「惜しい、足だけか。でもこれで今までみたいに速く動けないだろ」

 切断された足は煙を出して消滅したので、こいつも魔造モンスターだ。なので切り口からは血とかは出ていない。
 ワーウルフは前のめりになり両手を地面について三足歩行に構えた。

「まだまだやる気は十分のようだな」

 全身の毛を逆立て一気に魔力を上げたワーウルフは口を大きく開き、凄まじいブリザードを吐き出す。
 視界を奪うこともできるが、レベルの低い冒険者が直撃を食らったら一瞬で凍り付きそうだ。

「残念だけど、そういう技は格下にしか通じないんだよ」

 斧を連続で大振りして衝撃波を飛ばし、ブリザードを消滅させてワーウルフを後方へ吹き飛ばす。
 ここで猛ダッシュして間合いを詰め斬りかかる。だがワーウルフは軽やかに跳ねるような動きで回避した。

「足が一本無くても、けっこう動き回れるんだな。でもこれならどうだ」

 衝撃波を飛ばすと同時に斧を振り切って地面に叩きつけ地割れを作り出す。
 ワーウルフは衝撃波を簡単に躱すが、俺は連続して同じ攻撃を繰り返し大きく長くて深い地割れをそこら中に作り出し、足場を奪っていく。

「もらったぁ‼」

 横薙ぎに繰り出した衝撃波をワーウルフは斜め上にジャンプして回避したが、そこから着地できる足場は一つしかない。全ては計画通り。こっちも大ジャンプして間合いを詰め、宙にいるワーウルフ目掛け斧を振り抜く。
 直撃とともに胴体を真っ二つに切り裂き、また簡単に討伐する事に成功した。
 ワーウルフは煙を出し消滅し、その場に原料の小さな石を残す。
 しかしまたノーダメージで勝ってしまったが、こいつら本当は強いんだろうな。試練という仕事をまっとうさせてあげられなくて申し訳ない。
 そしてフィールドにモンスターが居なくなると仕掛けが発動し、下への階段が現れる。

「ご主人、お疲れ様でした。これはご主人がお持ちになりますか?」

 スカーレットは地面に刺さっていたリザードマンの三又の槍を持って近付いてきた。

「そうだな、武器として使えそうだし俺の鞄に入れておくよ」

 収納する前に鑑定眼で値段を見る。そしたら買取価格が金貨五枚だった。
 金貨一枚が三万円の価値観だから十五万円かよ、こりゃ思いのほかいい物だ。自分の店で売る時は更に高く値を付けれる。ホンとこういうのありがたい。

「ご主人様、石を拾ってきたのにゃ。これはたぶんオパールにゃ」
「へぇ~、あいつらの原料はオパールか。色彩が複雑な感じで凄いけど、けっこう小さいな」

 青を基調とした石に緑やその他の色がいっぱい入っているが、指先程度の大きさしかない。
 ペンダントにしたら丁度いい大きさだけど、鑑定眼では、リザードマンの方は買取価格が金貨二枚で少し大きいワーウルフの方は金貨三枚だ。
 基本的に買取価格は足元を見られて低いのが常識で、店の売値は倍かそれ以上とかが当たり前だよな。
 てかこの間、父さんに頼んで古いゲーム売りに行ってもらったら、買取五十円とか言われて、結局売るの止めたもん。自販機でジュースすら買えないっての。でも店で売ってるのネットで見たら千円以上とかになってるし、ホンと商売は鬼畜だ。まあ売れなきゃ在庫ばかり増えていってマイナスが大きくなるから、たまに売れた時に回収するためなんだろうけど。
 なので値段は店側の自由だから、このオパールを装飾品にして売れば凄く儲けが大きい。勿論、売れればの話だけど。売れ残っても俺の場合はタダで手に入れた物だし、それほど痛くはない。

「確かオパールは、大きなものや種類によっては高い値が付くはずです。特に化石と一体化したものはトンでもない値段になると思います」
「なるほど。色々とあるんだな。もっと原料について勉強しないとな」
「はい。私もご主人のお役に立てるように、もっと勉強します」 
「クリスチーナも勉強いっぱいするのにゃ」
「無駄だから止めておけ。何故ならお前はバカだからだ」
「にゃっ⁉ スカーレットちゃん酷いのにゃ」
「酷くない。無駄なものは無駄だ。その事実は覆せない」
「だろうな」
「にゃにゃっ⁉ ご主人様まで。クリスチーナはすぐに忘れちゃうけど勉強するのにゃ」
「忘れるのかよっ‼ やっぱ全然ダメじゃん」
「にゃん?」

 デジャブーーーーーーっ‼ またこれだよ。

「にゃん、じゃねぇよ」

 同じツッコミ入れるのも疲れるっての。

「ご主人、バカ猫は放っておいて行きましょう。それとも連戦になりましたから、少し休みますか?」
「体はまだ疲れてないし、このまま進もう」
「御意」
「はいにゃー」

 でも精神的には疲れてるけどな。あと腹も減ってきたし、最後のドラゴン倒したぐらいに飯の時間にしよう。





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