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二章

「ダンジョン合宿と謎の石像」その⑥

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 その場は洞窟系のダンジョンで、直径二十メートル程の円い空間だ。モンスターなどの気配はない。ただ石碑と奥に進む通路がある。
 石碑には『この先の迷宮を超えし者、最後の試練の挑戦者とする』と記されていた。
 ここにきて迷宮かよ。やっと終わりかと思ったけど、まだまだ先は長そうだ。まあゲットできるのが最強の剣だし簡単じゃないよな。
 当初の目的通りダンジョン合宿にもなるから良しとしよう。ただ最後まで試練をクリアして、実はハズレでした、とかは止めてほしいところだ。

「少し気が抜けたな。ちょっと休憩しようか」
「御意」
「はいにゃ。さっそくご飯の用意をするのにゃ」

 ここで長めの休憩を取り、ご飯を食べたりした。
 この後はいつも通りの軽いノリで迷宮に挑戦したが、本当に合宿&試練となる。
 洞窟系ダンジョンは可なり大きく複雑に入り組んでおり、基本的に下層に向かうが、たまに上に下に行ったりを繰り返す。更に下級から上級までのモンスターがエンカウントしまくり、簡単には前に進めない。そのかわりここのモンスターは魔造なので大量の原料をゲットできた。

 地下なので時間の経過が正確に分からないが、俺たちはこのダンジョンで二泊した。
 そしてやっと最下層と思われる場所に辿り着く。何故ならそこは、広く天井が高いバトルフィールドで、奥に巨大なドラゴン像があるからだ。
 ここまで長かった。ちょっと試練を舐めすぎていた。トラップが少なかったのが救いだけど、自分がチートの訳あり超人じゃなかったら、きっと辿り着けてない。いったいどんだけのモンスターを倒したことか。
 上級の冒険者パーティーでも簡単にはクリアできないはずだ。それに辿り着けても、俺の倍以上は時間がかかると思う。
 ステイタスを確認したら、商人のレベルが四つ上がって早くも20になっていた。
 スカーレットは三つ上がりレベル25になった。
 一番気になる魔法少女クリスチーナのレベルだが、なんとか二つだけ上がり3になっている。
 上がりやすい最初の段階で、これだけ戦って二つしか上がらないとか最上級職恐ろしすぎる。そしてガチャへの道が険しすぎだ。
 苦労してガチャを発動しても、どうせノーマルガチャはハズレばかりなのは分かってますけどね。
 既にガチャ課金には騙され慣れてるから、本当はそこまで期待はしていないんだよ。まあノーマルガチャはだけど。

「遂にここまで来ましたね、ご主人」
「あぁ、長かったからダレてたけど、ドラゴン見たらテンション上がってきたよ」
「クリスチーナは頑張って応援するのにゃ」
「応援するのはいいけど、ドラゴンがどこまで強いか分からないから、通路の方で隠れてろよ」
「御意」
「はいにゃ。邪魔にならないようにするのは得意なのにゃ」
「えっ、初耳なんですけど」
「にゃん?」
「そのにゃんを止めろバカ猫っ‼」

 スカーレットはジャンプして長身のクリスの頭を殴ると同時にツッコミを入れた。

「ふにゃんっ⁉ スカーレットちゃん怖いのにゃ」
「ご主人のやる気が失せる、バカは黙ってろ」
「ご主人様の邪魔になるのは駄目なのにゃ。クリスチーナは全力でお喋りを我慢するのにゃ」
「あの、俺もう行っていいかな……」
「戦いの前に騒いで申し訳ありません」
「いってらっしゃいませなのにゃ」

 すっかりテンションが下がった俺は一人でバトルフィールドに足を踏み入れる。石像の上に魔法陣が現れ、七色に光る雫が召喚されてドラゴンの石化が解かれた。
 そのドラゴンは約七メートルの巨大さで、赤とオレンジのツートンカラーだ。体の色から炎系だと思われる。
 最後の試練だけあり流石に凄まじい魔力を感じる。こりゃ遊んでいると何が起こるか分からない。
 ドラゴンの目は赤く光っておりバーサーカー状態で、すぐに戦闘開始となる。凄まじい雄叫びを上げ翼を広げたドラゴンは一気に天井近くまで飛び上がった。

「デカいな……」

 まだ距離があるのに見上げた時の迫力が半端ない。
 てかドラゴンさんカッケーっす。アニメでよくあるように人間の姿に変身できたら仲間にしたいぐらいだ。
 まず先制したのはドラゴンだ。瞬時に魔力が高まると、眼前に魔力の塊である大きな炎の玉が作り出される。それは勿論、通常サイズより遥かにデカいファイアーボールだ。
 ドラゴンは上空よりそのファイアーボールを弾丸の如く猛スピードで撃ち放つ。俺も既に大剣に魔力を纏わせており、強く振って斬撃を上空へ飛ばす。
 迫りくるファイアーボールと斬撃が激突すると大爆発を引き起こす。
 爆煙が互いの視界を奪うがこの隙に連続して三発の斬撃をドラゴンがいた辺りに繰り出す。
 だがドラゴンの方もファイアーボールを撃っていたようで、また中間地点で激突して大爆発する。

「やるなドラゴン」

 あのタイミングですぐに攻撃を仕掛けるとは、今までの奴らとはちょっと違う。
 その場に居たら危ないので煙の中を猛ダッシュして、ドラゴンの側面が見えるだろう位置に移動する。しかしドラゴンは俺の位置を正確に見極め突撃していた。
 眼前の爆煙の中に巨大な影が見えたかと思った瞬間、煙を蹴散らしドラゴンの顔が現れる。
 これは流石にビビった。鋭い牙が並んだ大きな口を全開に開けて、ドラゴンは俺を食おうとした。
 だが爆煙のおかげで狙いが少しずれていたので、運よくギリギリで回避できた。というより、驚いて後ろにコケて助かっただけだ。
 狙いを外したドラゴンはそのまま猛スピードで行き過ぎる。

「あっぶねぇ~、こいつスゲー戦い慣れてる」

 すぐに立ち上がりドラゴンが飛んで行った方に斬撃を繰り出す。
 でもそこにドラゴンの姿はなく、斬撃は煙を切り裂いただけでフィールド奥の壁に激突して意味なく爆発した。
 この時、ドラゴンはその巨躯に似つかわしくない速さで飛んで旋回し、俺の後ろへと回り込み燃え盛る炎を吐き出す。
 回避できないと思った俺はその場で大剣を振りまくり、魔力を纏わせた斬撃ではなく普通の衝撃波を繰り出した。
 前方の迫りくる炎は衝撃波で上手くかき消されダメージを負うことはなかった。しかしこの隙にドラゴンは側に降り立ち、鋭く大きい爪が生えた足で攻撃してくる。
 素早く大剣を打ち込み巨大な爪を受け止める。超人じゃなかったら壁の方まで吹き飛ばされてる凄まじいパワーだ。
 攻撃を止められたドラゴンは、俺が反撃する前に上空へと飛び上がり逃げた。
 ドラゴンは巨大なので当然その翼も大きく、飛び上がる時に翼が起こす風圧は強烈で、後方に飛ばされそうになった。だが踏ん張って大剣に魔力を纏わせて斬撃を繰り出す。その斬撃はドラゴンの腹に命中して爆発する。
 やっと攻撃が当たったが、ドラゴンはほとんどダメージを負っておらずファイアーボールを放って反撃してきた。

「流石最終試練、簡単にはいかないか」

 斬撃を繰り出すのに慣れてきていた俺は、そのクソデカファイアーボールも斬撃を放って爆発させて防いだ。
 この時また爆煙が広がり視界が閉ざされる。
 その煙を利用してドラゴンが間合いを詰めているのが気配で分かった。
 次の瞬間、太くて長いドラゴンの尻尾が鞭のようにしなり、煙を吹き飛ばし眼前に現れた。
 大剣を振っても間に合わないと判断し、思い切って剣を手放し両手で突っ張りを打つようにして尻尾に対抗する。
 両手で上手く巨大な尻尾を受け止めると踏ん張っていた足元の地面が陥没したが、なんとかぶっ飛ばされずに耐え抜いた。

「次は俺のターンだ‼」

 不用意に近付いたことを後悔させてやる。

「ジャイアントスイングだコノヤロー‼」

 逃がさないようにすぐ尻尾を強く掴み、自分の体を横回転させてドラゴンの巨躯を持ち上げグルグルと振り回す。
 人間がこの光景を見たら驚くだろうな。七メートルのドラゴン相手だし怪力とかいうレベルを超えてるもん。
 それから調子に乗って十回転ぐらいした後、力一杯ドラゴンを壁に向かって投げ放つ。
 回避できずに壁に激突したドラゴンは力なく地面に崩れ落ちる。といっても少し動きを止めたぐらいで大きなダメージは負っていない。
 大剣を拾う前にウエストポーチの魔法空間から三又の槍を取り出し、陸上競技の槍投げの如くドラゴン目掛けて投げ放つ。
 放たれた矢のように槍は高速で飛んでいき、ドラゴンの腹に深く突き刺さる。
 ドラゴンは叫びを上げ、すぐに動けないでいる。間違いなく大ダメージを負ったはずだ。ここで一気に決めてやるぜ。
 間合いを詰めた時に攻撃されないように、大剣を拾うとまずは斬撃を繰り出す。更に数歩踏み込んでもう一撃、斬撃を放つ。
 斬撃は二発とも見事に命中して爆発する。それから猛ダッシュして煙を突っ切りドラゴンの眼前まで迫る。

「これでフィニッシュだっ‼」

 魔力を纏わせた大剣を大きく振りかぶり、超人パワー全開でドラゴンの体を深く斬りつけた。その瞬間ドラゴンのライフはゼロになり、ボンっと大きな音と大量の煙を出し消滅した。

「終わった……のか……」

 これで試練とやらは終わりだよな。
 本当に最強の剣が手に入るのかな。そもそも貰っていいのだろうか。で、どうなるのこれから。ドラゴンの原料が聖剣か何かってことか?





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