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第6話
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「うっ…た、食べ過ぎた…」
「俺は完全なおもちゃ扱いに疲れたぜ…」
食堂に着いた僕達を待っていたのは、城に住み込みで働いているらしい人達からの熱い歓迎だった。ある人は弟妹みたいだと言い、ある人は自分の子供の様だといい、食堂のおばちゃんはもっと食べろと食事を推し勧めてきた。
「お城じゃ~お二人くらいの年齢の方は珍しいですからね~」
先を行くシアンが苦笑しながら教えてくれる。
「そう言えば次は何処に行くか聞いてなかったんですけど、今は何処に向かってるんですか?」
「お庭ですよ~、この時間帯カインさんはいつもお庭にいらっしゃいますので~、きっとそこで修行が始まると思いますよ~」
「いよいよ魔法が使えるんだな…」
仁が感慨深そうに呟く。散々ガラクタを集めたり、親を心配させたり、挙句人を巻き込んでおかしな世界に来てまで得た機会なんだ、しっかり噛み締めて、そしてついでに反省して欲しい。
その後、しばらくシアンに先導されて歩くと急に開けた場所に出てきた。
「ここがお庭ですよ~」
そう言うシアンの向こうでは、確かにカインが数人の騎士に稽古を付けているようだ。数人にまとめて掛かられているのに、あっという間に全員をのしてしまう。
「お前たち剣先ばかり見過ぎだ!だから足元を掬われるだろ。何度も同じ事言わせるなよ」
普段は優しそうなカインが厳しい口調で叱る。やはり、こう言うことには本気なのだろう。僕達につける修行というのも厳しいものになるのかもしれない。
「カインさ~ん、二人をお連れしました~」
「おう分かった!」
意外によく通るシアンの声に返事をすると、カインは他の騎士たちにテキパキと指示を出してからこちらに駆け寄ってくる。
「どうだ、しっかり飯は食ったか?」
「それはもう食べ過ぎるくらいには食べました」
僕の様子を見てカインが笑う。
「いいさ、お前たちくらいのうちは食べるのも修行だからな。しっかり食べてしっかり動けよ」
「それより早く魔法の修行を付けてくれよ。もう待ちきれないぜ」
「ほう、随分なやる気じゃないか。だが、始める前に一つ忠告しておくことがある」
カインは急に神妙な面持ちになってこちらを見る。
「いいか?魔法はな、便利だし強力だがその分簡単に人の命を奪う。使い方を間違うから奪うんじゃない、正しく使うからこそ人の命を奪うんだ。これは剣や槍なんかの武器でも一緒だな」
仁が命という単語にピクリと反応する。この手の話題は仁へのNGワードなのだ。仕方ないので仁の手をそっと握ってやると、小さく震えていたのが収まる。
「だがな、それを恐れたら騎士はやっていけない。騎士は人の命を奪うことで大切な物を守るのが仕事なんだ。だからこそ、力の扱い方を間違ってはいけない。そのことは忘れないでくれ」
カインの真面目な話が終わる。そうだよね、力の使い方を教える以上、この手の議題は避けては通れないはずだ。
結局、どんな力も誰かを傷つける宿命にあるのだ。何かを守ると言う結果で隠しているだけで、その事実は曲げることはできない。
「そ、それでも…俺は力が欲しいです。もう何も失わないように」
仁にしては珍しく声が震えている。それでもここは仁自身が乗り越えなきゃいけないことだろう。
「よく言った、お前は特に村のことがあるからな。失うことを知っている者は優しく強くなれる」
カインは満足げだ。理由はともかく仁の迫真さが伝わったのだろう。
「アスカ、お前はどうだ?」
僕に話が振られる。そうか、ここは記憶喪失の振りをしないといけないところか。
「ぼ、僕は何を失ったのかも覚えてないです。ですが、せっかく助けてもらった命なら誰かを助けるために生きたいです」
とりあえず話を合わせるが、騙してるようで心が痛む。でも、実際は誰かを助けるなんて大変なことができる人間では無いとしても、その気持ちだけは忘れたくないのは本心だ。
「そうか。よし、お前たちになら剣と魔法を教えても大丈夫だろう」
そう言うとカインは腰の巾着袋から二つの石を取り出して僕と仁にそれぞれ手渡す。
「うおっ、なんかメッチャ吸われる⁉︎」
「そう?僕は何も感じないけど」
仁は大袈裟な反応を取るけど、僕にはただの石にしか感じない。
「ジンは感じられたか。その石は蓄魔石、周囲の魔力を吸収して保存しようとする石なんだ。つまり今吸われてるのが魔力だな」
カインが種明かしする。つまり感じられる仁が普通で僕が鈍いってこと?
「まずはその体内の魔力を操ることができる様になることがスタート地点だ」
「これが…魔力…」
念願の魔力とのご対面に仁が恍惚の表情を浮かべる。でも、僕には吸われてる感覚なんてないので何の事だかよく分からない。
「アスカ、魔力は心臓に近いほど多いから胸元に蓄魔石を当ててみろ」
カインに言われて胸元に石を当ててみる。
「うひゃ!」
初めての感覚におかしな声が出ちゃった。なんか薄皮を延々引っ張られ続ける様な痛いのかくすぐったいのかよく分からない感覚だった。
「なんか引っ張られる感覚があっただろう?それが魔力だ。まずはそれを自在に操れるようになってもらう」
そう言うと石は危ないからと回収される。今のが魔力と言われても、離したらすぐに分からなくなったんだけどどうやって引っ張り出せばいいんだろう?
「ジンは才能があるから体系的な方法で修行してもらう。アスカはそれじゃ難しそうだから体感的に学んでもらう。厳しい訓練になるが着いてこいよ」
こうして僕と仁の修行は始まったのだった。
「俺は完全なおもちゃ扱いに疲れたぜ…」
食堂に着いた僕達を待っていたのは、城に住み込みで働いているらしい人達からの熱い歓迎だった。ある人は弟妹みたいだと言い、ある人は自分の子供の様だといい、食堂のおばちゃんはもっと食べろと食事を推し勧めてきた。
「お城じゃ~お二人くらいの年齢の方は珍しいですからね~」
先を行くシアンが苦笑しながら教えてくれる。
「そう言えば次は何処に行くか聞いてなかったんですけど、今は何処に向かってるんですか?」
「お庭ですよ~、この時間帯カインさんはいつもお庭にいらっしゃいますので~、きっとそこで修行が始まると思いますよ~」
「いよいよ魔法が使えるんだな…」
仁が感慨深そうに呟く。散々ガラクタを集めたり、親を心配させたり、挙句人を巻き込んでおかしな世界に来てまで得た機会なんだ、しっかり噛み締めて、そしてついでに反省して欲しい。
その後、しばらくシアンに先導されて歩くと急に開けた場所に出てきた。
「ここがお庭ですよ~」
そう言うシアンの向こうでは、確かにカインが数人の騎士に稽古を付けているようだ。数人にまとめて掛かられているのに、あっという間に全員をのしてしまう。
「お前たち剣先ばかり見過ぎだ!だから足元を掬われるだろ。何度も同じ事言わせるなよ」
普段は優しそうなカインが厳しい口調で叱る。やはり、こう言うことには本気なのだろう。僕達につける修行というのも厳しいものになるのかもしれない。
「カインさ~ん、二人をお連れしました~」
「おう分かった!」
意外によく通るシアンの声に返事をすると、カインは他の騎士たちにテキパキと指示を出してからこちらに駆け寄ってくる。
「どうだ、しっかり飯は食ったか?」
「それはもう食べ過ぎるくらいには食べました」
僕の様子を見てカインが笑う。
「いいさ、お前たちくらいのうちは食べるのも修行だからな。しっかり食べてしっかり動けよ」
「それより早く魔法の修行を付けてくれよ。もう待ちきれないぜ」
「ほう、随分なやる気じゃないか。だが、始める前に一つ忠告しておくことがある」
カインは急に神妙な面持ちになってこちらを見る。
「いいか?魔法はな、便利だし強力だがその分簡単に人の命を奪う。使い方を間違うから奪うんじゃない、正しく使うからこそ人の命を奪うんだ。これは剣や槍なんかの武器でも一緒だな」
仁が命という単語にピクリと反応する。この手の話題は仁へのNGワードなのだ。仕方ないので仁の手をそっと握ってやると、小さく震えていたのが収まる。
「だがな、それを恐れたら騎士はやっていけない。騎士は人の命を奪うことで大切な物を守るのが仕事なんだ。だからこそ、力の扱い方を間違ってはいけない。そのことは忘れないでくれ」
カインの真面目な話が終わる。そうだよね、力の使い方を教える以上、この手の議題は避けては通れないはずだ。
結局、どんな力も誰かを傷つける宿命にあるのだ。何かを守ると言う結果で隠しているだけで、その事実は曲げることはできない。
「そ、それでも…俺は力が欲しいです。もう何も失わないように」
仁にしては珍しく声が震えている。それでもここは仁自身が乗り越えなきゃいけないことだろう。
「よく言った、お前は特に村のことがあるからな。失うことを知っている者は優しく強くなれる」
カインは満足げだ。理由はともかく仁の迫真さが伝わったのだろう。
「アスカ、お前はどうだ?」
僕に話が振られる。そうか、ここは記憶喪失の振りをしないといけないところか。
「ぼ、僕は何を失ったのかも覚えてないです。ですが、せっかく助けてもらった命なら誰かを助けるために生きたいです」
とりあえず話を合わせるが、騙してるようで心が痛む。でも、実際は誰かを助けるなんて大変なことができる人間では無いとしても、その気持ちだけは忘れたくないのは本心だ。
「そうか。よし、お前たちになら剣と魔法を教えても大丈夫だろう」
そう言うとカインは腰の巾着袋から二つの石を取り出して僕と仁にそれぞれ手渡す。
「うおっ、なんかメッチャ吸われる⁉︎」
「そう?僕は何も感じないけど」
仁は大袈裟な反応を取るけど、僕にはただの石にしか感じない。
「ジンは感じられたか。その石は蓄魔石、周囲の魔力を吸収して保存しようとする石なんだ。つまり今吸われてるのが魔力だな」
カインが種明かしする。つまり感じられる仁が普通で僕が鈍いってこと?
「まずはその体内の魔力を操ることができる様になることがスタート地点だ」
「これが…魔力…」
念願の魔力とのご対面に仁が恍惚の表情を浮かべる。でも、僕には吸われてる感覚なんてないので何の事だかよく分からない。
「アスカ、魔力は心臓に近いほど多いから胸元に蓄魔石を当ててみろ」
カインに言われて胸元に石を当ててみる。
「うひゃ!」
初めての感覚におかしな声が出ちゃった。なんか薄皮を延々引っ張られ続ける様な痛いのかくすぐったいのかよく分からない感覚だった。
「なんか引っ張られる感覚があっただろう?それが魔力だ。まずはそれを自在に操れるようになってもらう」
そう言うと石は危ないからと回収される。今のが魔力と言われても、離したらすぐに分からなくなったんだけどどうやって引っ張り出せばいいんだろう?
「ジンは才能があるから体系的な方法で修行してもらう。アスカはそれじゃ難しそうだから体感的に学んでもらう。厳しい訓練になるが着いてこいよ」
こうして僕と仁の修行は始まったのだった。
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