転生少女は元に戻りたい

余暇善伽

文字の大きさ
16 / 56

第15話

しおりを挟む
カインがカルセオラリアへ出立して一ヶ月。
 情勢については逐一ボルドーが教えてくれるが、第三国を挟んでの睨み合いだけで結局大きな動きは無いままもうすぐ帰ってきそうだとのこと。
 その間、僕達の生活に普段より静かになった以外の大きな変化は無く、似たような毎日が過ぎていった。
 「う~ん、勝てないなぁ」
 ワーナーにもらった氷嚢でタンコブを冷やしながら頭を捻る。
 いくら打ち合いとは言え、木剣を振り回してる以上こういう事故はつきものだ。ただ、最近は特に増えた気がする。僕がうまく集中できてないのかもしれない。
 「ごめんね、大丈夫だった?」
 「大丈夫大丈夫、ワーナー先生も大丈夫だって言ってたし」
 ロバートが心配そうに聞いてくるが、所詮はタンコブで回復魔法による治療も必要ないと言われた。
 ワーナーは治療できる怪我には治療で対応し、あまり回復魔法は使わない主義らしい。回復魔法は使いすぎると倦怠感が出るのだとか。聞いてみると初日に僕達を襲っていた倦怠感も回復魔法によるものだったと思われるそうだ。
 「どうせ暑いから氷で涼みたかっただけだろ」
 「仁こそ集中できないならそよ風で涼んでたら?」
 仁は当然のように地面に埋まっている。渡されたメニュー表には、しっかり集中して焦らないこととまで注意書きまでされていた。
 「仁も煩いし、そろそろ再開しようか。今日こそ一本取りたいし」
 「うん、まだまだ一本はあげないけどね」
 結局一本も取れないまま今日も時間が過ぎて行き、修行が終わると勉強をして、それも終わると食事と入浴があって、ロバートが部屋に遊びに来る。
 「~♪」
 今日のロバートはやけに機嫌が良く、鼻歌混じりで部屋に入ってきた。
 「今日はやけに機嫌が良いね、何かあったの?」
 「えへへ、実はねぇ~」
 よくぞ聞いてくれましたと言わんばかりの表情で勿体ぶる。よほど嬉しい事があったのだろう。
 「今度、お兄様が学校の夏休みで帰ってくるんだ。それにお姉様もボクの誕生日パーティの為に帰ってきてくれるんだって」
 上機嫌だった理由はこれらしい。お兄様とお姉様と言えば僕達が来る前のロバート様の主な話し相手だったはず。
 「それはよかったね、それで二人はいつ帰って来られるの?」
 「再来週の金曜日帰ってくるんだって、楽しみだな~」
 部屋の隅に掛けられたカレンダー見ながら言う。以前出かけた時にカレンダーを買ってもらって分かったのだが、この世界でも一年は十ニか月だし、一か月は約三十日だし一週間は七日らしい。
 そんなロバートとは対照的に、仁は一人でカインに渡された魔導教本を読み耽っている。
 「ねぇ仁、ロバートの話聞いてるの」
 「あ?聞いてる聞いてる、姉兄が帰ってくるし誕生日が近いんだろ?」
 ちっとも興味なさそうだった割に一応聞いてはいたらしい。
 「そう言えば誕生日パーティもあるんだっけ?それはいつなの?」
 「誕生日パーティは再来週の日曜日だよ。それでね、二人にお願いがあるんだ」
 ロバートが急に改まってこちらを向き直す。
 「二人にもボクの誕生日パーティに参加してもらいたいんだ」
 「僕達に参加して欲しいって誕生日パーティに?」
 「むしろ良いのか、俺たちなんかが参加して?」
 「うん、二人にはお世話になってるから」
 それにと何かを言いかけて口籠る。一体どうしたのだろうか?
 「でも俺たち正装持ってないから普段着で出ることになるぞ?」
 「あ、その辺は大丈夫。お母様とボルドーに話しておいたから用立ててくれてるはずだよ」
 アメリアとボルドーに話しておいたって事は誰かのお下がりかな?と言うかちょっと待ってよ…
 「パーティの正装って、もしかして僕はドレスを着ることになるの?」
 「そりゃそうなるだろうな」
 「大丈夫、メイドたちが着せてくれるし、アスカならきっと似合うよ」
 ロバートが気遣ってくれるが、違うそうじゃない。僕としてはドレスが似合ってもらっても困るんだ。
 「ぼ、僕は普段着じゃダメかな?」
 「お前はドレスコードって言葉を知らないのか?摘み出されるかそうでなきゃ注目の的になるぞ」
 仁からダメ出しされる。クソ、他人事だからって好き勝手言ってくれる。
 「恥ずかしがらなくても大丈夫だよ、僕の誕生日パーティだからそんなに大勢が来るわけでもないし」
 問題はそういう事ではないんだけど、当然ロバートが分かってくれるはずはない。まぁ分かられても困るが。
 結局断りきれないまま流されていくのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

男女比1対5000世界で俺はどうすれバインダー…

アルファカッター
ファンタジー
ひょんな事から男女比1対5000の世界に移動した学生の忠野タケル。 そこで生活していく内に色々なトラブルや問題に巻き込まれながら生活していくものがたりである!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

神々に見捨てられし者、自力で最強へ

九頭七尾
ファンタジー
三大貴族の一角、アルベール家の長子として生まれた少年、ライズ。だが「祝福の儀」で何の天職も授かることができなかった彼は、『神々に見捨てられた者』と蔑まれ、一族を追放されてしまう。 「天職なし。最高じゃないか」 しかし彼は逆にこの状況を喜んだ。というのも、実はこの世界は、前世で彼がやり込んでいたゲーム【グランドワールド】にそっくりだったのだ。 天職を取得せずにゲームを始める「超ハードモード」こそが最強になれる道だと知るライズは、前世の知識を活かして成り上がっていく。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

【第2章完結】最強な精霊王に転生しました。のんびりライフを送りたかったのに、問題にばかり巻き込まれるのはなんで?

山咲莉亜
ファンタジー
 ある日、高校二年生だった桜井渚は魔法を扱うことができ、世界最強とされる精霊王に転生した。家族で海に遊びに行ったが遊んでいる最中に溺れた幼い弟を助け、代わりに自分が死んでしまったのだ。  だけど正直、俺は精霊王の立場に興味はない。精霊らしく、のんびり気楽に生きてみせるよ。  趣味の寝ることと読書だけをしてマイペースに生きるつもりだったナギサだが、優しく仲間思いな性格が災いして次々とトラブルに巻き込まれていく。果たしてナギサはそれらを乗り越えていくことができるのか。そして彼の行動原理とは……?  ロマンス、コメディ、シリアス───これは物語が進むにつれて露わになるナギサの闇やトラブルを共に乗り越えていく仲間達の物語。 ※HOT男性ランキング最高6位でした。ありがとうございました!

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

処理中です...