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三章 天満月くんの笑顔
12.近いようで遠い
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「開かずの部屋」を開けてから、数日が経ちました。
私が教室に入った時、もうその背中があって。
「おはよう、天満月くん」
「はよ」
声をかければ、短く反応が返ってくる。
たったこれだけなのに、今日はなんだかいい日になりそうって思うんだから私は単純だ。
もう、天満月くんが来るかどうかはほとんど心配していない。
今日みたいに、私より早く来ている日も半分くらいある。
元サボり魔だけど、学校がすごく嫌いな風には見えないんだよね…。
余計なお世話なのはわかってるんだけど、引きこもってた期間がもったいないって思っちゃう。
「なあ」
ドキッ。
話しかけられて目があった。
じっと見てたのバレたかな…。
「なに?」
「今日、来る?」
「あ、うん」
短い質問に、短く答える。
今のは、「今日の放課後、開かずの部屋に来る?」の略。
妖精さんと友達になったおかげか、私もあそこを出入りしていいみたい。集まればほぼ必ず、お菓子を食べている。
妖精さんの盗品ばかり食べているのかと思いきや、天満月くんが買って持ってくることが多かった。おかげで私もお菓子を買うことが増えた。
「学校近くのカフェのテイクアウトメニューにバウムクーヘン見つけた。もう向こうの部屋に置いてあるんだけど」
「だから誘ってくれたの? 気前いいね」
「…まあ、あいつらもあんたがいたほうが楽しそうだし」
「ふふっ…、そういう優しいところも好きだよ」
「はいはい」
天満月くんは目を伏せて私の発言を受け流す。
うん、今日の分身チェックはオッケー! …って、初めから本物かどうかはわかってるんだけどね。
そうなのです、毎日ふざけ半分で告白していたら、天満月くんは私の「好きだよ」に全然動じなくなったのです。
それが仲良くなっている証ならうれしいけれど。最初の頃の、彼らしくないリアクションを知ってしまっているとちょっと物足りない。
どうにかしてまた、その涼しい表情をくずせないかなあ……なんて、自分の欲張りにあきれてもいる。
「おーい、天満月~! 数学の予習してあるか~⁉」
前方から、教室中に聞こえる声がした。
結城瑠衣くん…一年三組の、気さくな元気っ子。
「してあるけど…」と、小首をかしげる天満月くん。
「おおっ、さすが! こっち来て教えてくれ‼ 俺たち授業であてられそうなんだけど全員自信ないんだ!」
「ええ……」
眉を寄せて戸惑った様子。
でもそんな顔しながら結局は立ち上がった。ほら、やっぱり気前がいい。
「神様!」「救世主!」「恩人!」と様々な言葉で迎えられながら、天満月くんは前方グループの輪の中に入っていった。
ついこの間まで、「棒読み不気味くん」でだれも近づきたがらなかったのにね。
でもこの未来は予想がついていた。
賢くて、運動神経がよくて、美形なのに、感情が欠落していてこわかったのが以前の天満月くん。
それが今では、賢くて、運動神経がよくて、美形で、一見不愛想だけど根は優しい天満月くん。
そんなのみんなが気づいたら、人気者にならないはずがない。
今は隣人だけど、いつか…届かない、遠い人になってしまうのかもしれない……そしたら本当にかぐや姫みたいね…。
私が教室に入った時、もうその背中があって。
「おはよう、天満月くん」
「はよ」
声をかければ、短く反応が返ってくる。
たったこれだけなのに、今日はなんだかいい日になりそうって思うんだから私は単純だ。
もう、天満月くんが来るかどうかはほとんど心配していない。
今日みたいに、私より早く来ている日も半分くらいある。
元サボり魔だけど、学校がすごく嫌いな風には見えないんだよね…。
余計なお世話なのはわかってるんだけど、引きこもってた期間がもったいないって思っちゃう。
「なあ」
ドキッ。
話しかけられて目があった。
じっと見てたのバレたかな…。
「なに?」
「今日、来る?」
「あ、うん」
短い質問に、短く答える。
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「学校近くのカフェのテイクアウトメニューにバウムクーヘン見つけた。もう向こうの部屋に置いてあるんだけど」
「だから誘ってくれたの? 気前いいね」
「…まあ、あいつらもあんたがいたほうが楽しそうだし」
「ふふっ…、そういう優しいところも好きだよ」
「はいはい」
天満月くんは目を伏せて私の発言を受け流す。
うん、今日の分身チェックはオッケー! …って、初めから本物かどうかはわかってるんだけどね。
そうなのです、毎日ふざけ半分で告白していたら、天満月くんは私の「好きだよ」に全然動じなくなったのです。
それが仲良くなっている証ならうれしいけれど。最初の頃の、彼らしくないリアクションを知ってしまっているとちょっと物足りない。
どうにかしてまた、その涼しい表情をくずせないかなあ……なんて、自分の欲張りにあきれてもいる。
「おーい、天満月~! 数学の予習してあるか~⁉」
前方から、教室中に聞こえる声がした。
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「してあるけど…」と、小首をかしげる天満月くん。
「おおっ、さすが! こっち来て教えてくれ‼ 俺たち授業であてられそうなんだけど全員自信ないんだ!」
「ええ……」
眉を寄せて戸惑った様子。
でもそんな顔しながら結局は立ち上がった。ほら、やっぱり気前がいい。
「神様!」「救世主!」「恩人!」と様々な言葉で迎えられながら、天満月くんは前方グループの輪の中に入っていった。
ついこの間まで、「棒読み不気味くん」でだれも近づきたがらなかったのにね。
でもこの未来は予想がついていた。
賢くて、運動神経がよくて、美形なのに、感情が欠落していてこわかったのが以前の天満月くん。
それが今では、賢くて、運動神経がよくて、美形で、一見不愛想だけど根は優しい天満月くん。
そんなのみんなが気づいたら、人気者にならないはずがない。
今は隣人だけど、いつか…届かない、遠い人になってしまうのかもしれない……そしたら本当にかぐや姫みたいね…。
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