あまみつつき君

さんといち

文字の大きさ
13 / 19
三章 天満月くんの笑顔

12.近いようで遠い

しおりを挟む
 「開かずの部屋」を開けてから、数日が経ちました。

 私が教室に入った時、もうその背中があって。

「おはよう、天満月くん」
「はよ」

 声をかければ、短く反応が返ってくる。

 たったこれだけなのに、今日はなんだかいい日になりそうって思うんだから私は単純だ。

 もう、天満月くんが来るかどうかはほとんど心配していない。
 今日みたいに、私より早く来ている日も半分くらいある。

 元サボり魔だけど、学校がすごく嫌いな風には見えないんだよね…。
 余計なお世話なのはわかってるんだけど、引きこもってた期間がもったいないって思っちゃう。

「なあ」

 ドキッ。
 話しかけられて目があった。

 じっと見てたのバレたかな…。

「なに?」
「今日、来る?」
「あ、うん」

 短い質問に、短く答える。

 今のは、「今日の放課後、開かずの部屋に来る?」の略。

 妖精さんと友達になったおかげか、私もあそこを出入りしていいみたい。集まればほぼ必ず、お菓子を食べている。
 妖精さんの盗品ばかり食べているのかと思いきや、天満月くんが買って持ってくることが多かった。おかげで私もお菓子を買うことが増えた。

「学校近くのカフェのテイクアウトメニューにバウムクーヘン見つけた。もう向こうの部屋に置いてあるんだけど」
「だから誘ってくれたの? 気前いいね」
「…まあ、あいつらもあんたがいたほうが楽しそうだし」
「ふふっ…、そういう優しいところも好きだよ」
「はいはい」

 天満月くんは目を伏せて私の発言を受け流す。
 うん、今日の分身チェックはオッケー! …って、初めから本物かどうかはわかってるんだけどね。

 そうなのです、毎日ふざけ半分で告白していたら、天満月くんは私の「好きだよ」に全然動じなくなったのです。

 それが仲良くなっている証ならうれしいけれど。最初の頃の、彼らしくないリアクションを知ってしまっているとちょっと物足りない。
 どうにかしてまた、その涼しい表情をくずせないかなあ……なんて、自分の欲張りにあきれてもいる。

「おーい、天満月~! 数学の予習してあるか~⁉」

 前方から、教室中に聞こえる声がした。
 結城ゆうき瑠衣るいくん…一年三組の、気さくな元気っ子。

「してあるけど…」と、小首をかしげる天満月くん。
「おおっ、さすが! こっち来て教えてくれ‼ 俺たち授業であてられそうなんだけど全員自信ないんだ!」
「ええ……」

 眉を寄せて戸惑った様子。

 でもそんな顔しながら結局は立ち上がった。ほら、やっぱり気前がいい。

 「神様!」「救世主!」「恩人!」と様々な言葉で迎えられながら、天満月くんは前方グループの輪の中に入っていった。

 ついこの間まで、「棒読み不気味くん」でだれも近づきたがらなかったのにね。

 でもこの未来は予想がついていた。

 賢くて、運動神経がよくて、美形なのに、感情が欠落していてこわかったのが以前の天満月くん。

 それが今では、賢くて、運動神経がよくて、美形で、一見不愛想だけど根は優しい天満月くん。
 
そんなのみんなが気づいたら、人気者にならないはずがない。

 今は隣人だけど、いつか…届かない、遠い人になってしまうのかもしれない……そしたら本当にかぐや姫みたいね…。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【3章】GREATEST BOONS ~幼なじみのほのぼのバディがクリエイトスキルで異世界に偉大なる恩恵をもたらします!~

丹斗大巴
児童書・童話
 幼なじみの2人がグレイテストブーンズ(偉大なる恩恵)を生み出しつつ、異世界の7つの秘密を解き明かしながらほのぼの旅をする物語。  異世界に飛ばされて、小学生の年齢まで退行してしまった幼なじみの銀河と美怜。とつじょ不思議な力に目覚め、Greatest Boons(グレイテストブーンズ:偉大なる恩恵)をもたらす新しい生き物たちBoons(ブーンズ)とアイテムを生みだした! 彼らのおかげでサバイバルもトラブルもなんのその! クリエイト系の2人が旅するほのぼの異世界珍道中。  便利な「しおり」機能を使って読み進めることをお勧めします。さらに「お気に入り登録」して頂くと、最新更新のお知らせが届いて便利です! レーティング指定の描写はありませんが、万が一気になる方は、目次※マークをさけてご覧ください。

おっとりドンの童歌

花田 一劫
児童書・童話
いつもおっとりしているドン(道明寺僚) が、通学途中で暴走車に引かれてしまった。 意識を失い気が付くと、この世では見たことのない奇妙な部屋の中。 「どこ。どこ。ここはどこ?」と自問していたら、こっちに雀が近づいて来た。 なんと、その雀は歌をうたい狂ったように踊って(跳ねて)いた。 「チュン。チュン。はあ~。らっせーら。らっせいら。らせらせ、らせーら。」と。 その雀が言うことには、ドンが死んだことを(津軽弁や古いギャグを交えて)伝えに来た者だという。 道明寺が下の世界を覗くと、テレビのドラマで観た昔話の風景のようだった。 その中には、自分と瓜二つのドン助や同級生の瓜二つのハナちゃん、ヤーミ、イート、ヨウカイ、カトッぺがいた。 みんながいる村では、ヌエという妖怪がいた。 ヌエとは、顔は鬼、身体は熊、虎の手や足をもち、何とシッポの先に大蛇の頭がついてあり、人を食べる恐ろしい妖怪のことだった。 ある時、ハナちゃんがヌエに攫われて、ドン助とヤーミがヌエを退治に行くことになるが、天界からドラマを観るように楽しんで鑑賞していた道明寺だったが、道明寺の体は消え、意識はドン助の体と同化していった。 ドン助とヤーミは、ハナちゃんを救出できたのか?恐ろしいヌエは退治できたのか?

左左左右右左左  ~いらないモノ、売ります~

菱沼あゆ
児童書・童話
 菜乃たちの通う中学校にはあるウワサがあった。 『しとしとと雨が降る十三日の金曜日。  旧校舎の地下にヒミツの購買部があらわれる』  大富豪で負けた菜乃は、ひとりで旧校舎の地下に下りるはめになるが――。

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
児童書・童話
 毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 連載時、HOT 1位ありがとうございました! その他、多数投稿しています。 こちらもよろしくお願いします! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

生贄姫の末路 【完結】

松林ナオ
児童書・童話
水の豊かな国の王様と魔物は、はるか昔にある契約を交わしました。 それは、姫を生贄に捧げる代わりに国へ繁栄をもたらすというものです。 水の豊かな国には双子のお姫様がいます。 ひとりは金色の髪をもつ、活発で愛らしい金のお姫様。 もうひとりは銀色の髪をもつ、表情が乏しく物静かな銀のお姫様。 王様が生贄に選んだのは、銀のお姫様でした。

極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。

猫菜こん
児童書・童話
 私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。  だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。 「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」  優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。  ……これは一体どういう状況なんですか!?  静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん  できるだけ目立たないように過ごしたい  湖宮結衣(こみやゆい)  ×  文武両道な学園の王子様  実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?  氷堂秦斗(ひょうどうかなと)  最初は【仮】のはずだった。 「結衣さん……って呼んでもいい?  だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」 「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」 「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、  今もどうしようもないくらい好きなんだ。」  ……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。

14歳で定年ってマジ!? 世界を変えた少年漫画家、再起のノート

谷川 雅
児童書・童話
この世界、子どもがエリート。 “スーパーチャイルド制度”によって、能力のピークは12歳。 そして14歳で、まさかの《定年》。 6歳の星野幸弘は、将来の夢「世界を笑顔にする漫画家」を目指して全力疾走する。 だけど、定年まで残された時間はわずか8年……! ――そして14歳。夢は叶わぬまま、制度に押し流されるように“退場”を迎える。 だが、そんな幸弘の前に現れたのは、 「まちがえた人間」のノートが集まる、不思議な図書室だった。 これは、間違えたままじゃ終われなかった少年たちの“再スタート”の物語。 描けなかった物語の“つづき”は、きっと君の手の中にある。

きたいの悪女は処刑されました

トネリコ
児童書・童話
 悪女は処刑されました。  国は益々栄えました。  おめでとう。おめでとう。  おしまい。

処理中です...