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三章 天満月くんの笑顔
14.きれいな顔
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「……食べないの?」
「へ?」
放課後のぽかぽかした空気の中で、今日の秘密のお菓子会は開かれた。
天満月くんは妖精さんといる時、教室よりもくだけた雰囲気で言葉数も多い。
だから私はどちらかというと聞き手に回っていたのだけれど、突然直視されて驚いた。
「手、止まってる」
フォークで示された先は、私の手元にあるお皿。
その上の紅茶の香りがするお菓子は、天満月くんが今朝言っていたバウムクーヘンだ。
「え、あ、これから頂くよ」
「俺はもう二切れ目」
「どうぞどうぞ…っていうか、天満月くんが買ってきたんだし」
「そういうことじゃない。…あんたが食べるの遅いって言ってんの」
カタン、とフォークを置いて、天満月くんはほおづえをつく。
のぞきこむような角度の顔は、眉毛がちょっと寄っていた。
「もしかして……バウムクーヘン苦手?」
「ええっ⁉」
予想外の質問に肩がはねる。
思わず同じくお菓子を食べている妖精さんたちを見渡したら、みんな手を止めてどこか不安そうに見上げていた。
…しまったな。
実は、甘いものを食べている時なら笑顔になる瞬間があるんじゃないかって、天満月くんの表情をよくよく観察していたんだ。集中しすぎて不自然になってたみたい。
「全然嫌いじゃないよ! むしろ好き」
「ほんとに?」
「ほんとにほんとに」
「…無理して食べなくてもいいけど。他のお菓子もある…あんたの好み聞いてなくてわるかったな」
うわっ、誤解されてる…さりげなく謝ってくれて優しい…けど、申し訳ないな。
本心でおいしそうだと思ってるけど、何回言っても逆効果になる予感…。
で、でもなー…「笑顔が見たくて眺めてた」なんて言いづらい…!
「無理はしてないっ。そ、そのー…顔、が……」
「顔? 俺の?」
何かついてる? と妖精さんに尋ねる天満月くん。『別ニ?』と烏さんが答えた。
「そうじゃなくて! なんとなく、気になった、っていうか……」
「気になった…?」
「き、きれいな顔、だなー…って……」
「……へえ」
あれ? あれあれ? 私結局、恥ずかしいこと口走ってません⁉
背中に汗を感じた。
その隙に、ぐっと近づいていたんだ——
「意外。そういうこと、思うんだ」
彼の、きれいな顔が…!
「天満月くん…⁉」
私たちはソファで隣り合っていたけれど、間に一人分以上のスペースはあけていた。
それが今、天満月くんが身を乗り出したことで無いものになっている。
近い…彼の目に、私が映っているのが見えるくらい…!
「意外もなにもっ、前に『かぐや姫みたい』って言ったじゃん…! 美人だと思ってなかったら、そんな言葉出てこないよ……」
「かぐや姫、ね……」
なぜかむっとさせてしまった。だけど距離は離してくれない…。
「顔をほめられることは聞き飽きる程あったが、女に例えられたのは斎藤サンが初めて」
「そ、そうなんだ…」
珍しい、名字で呼ばれた。
私には「あんた」が多いし、他の人にも「おい」とか「なあ」とか言って、なかなか名前を口にしないんだよね。
「普段…クラスのやつらにアイドルだか俳優だかの話題振られても、反応薄いよな」
「わ、私、芸能人に詳しくないので…」
えっ、そんなところ見られてたの?
「そういうのは興味ないくせに、俺の顔は違うんだ?」
「へっ」
「身近だから、じっと見てくんの?」
ドキドキ、ドキドキ。顔に熱が集まってくる。
どうしてだろう……天満月くんがイジワルだ…!
「へ?」
放課後のぽかぽかした空気の中で、今日の秘密のお菓子会は開かれた。
天満月くんは妖精さんといる時、教室よりもくだけた雰囲気で言葉数も多い。
だから私はどちらかというと聞き手に回っていたのだけれど、突然直視されて驚いた。
「手、止まってる」
フォークで示された先は、私の手元にあるお皿。
その上の紅茶の香りがするお菓子は、天満月くんが今朝言っていたバウムクーヘンだ。
「え、あ、これから頂くよ」
「俺はもう二切れ目」
「どうぞどうぞ…っていうか、天満月くんが買ってきたんだし」
「そういうことじゃない。…あんたが食べるの遅いって言ってんの」
カタン、とフォークを置いて、天満月くんはほおづえをつく。
のぞきこむような角度の顔は、眉毛がちょっと寄っていた。
「もしかして……バウムクーヘン苦手?」
「ええっ⁉」
予想外の質問に肩がはねる。
思わず同じくお菓子を食べている妖精さんたちを見渡したら、みんな手を止めてどこか不安そうに見上げていた。
…しまったな。
実は、甘いものを食べている時なら笑顔になる瞬間があるんじゃないかって、天満月くんの表情をよくよく観察していたんだ。集中しすぎて不自然になってたみたい。
「全然嫌いじゃないよ! むしろ好き」
「ほんとに?」
「ほんとにほんとに」
「…無理して食べなくてもいいけど。他のお菓子もある…あんたの好み聞いてなくてわるかったな」
うわっ、誤解されてる…さりげなく謝ってくれて優しい…けど、申し訳ないな。
本心でおいしそうだと思ってるけど、何回言っても逆効果になる予感…。
で、でもなー…「笑顔が見たくて眺めてた」なんて言いづらい…!
「無理はしてないっ。そ、そのー…顔、が……」
「顔? 俺の?」
何かついてる? と妖精さんに尋ねる天満月くん。『別ニ?』と烏さんが答えた。
「そうじゃなくて! なんとなく、気になった、っていうか……」
「気になった…?」
「き、きれいな顔、だなー…って……」
「……へえ」
あれ? あれあれ? 私結局、恥ずかしいこと口走ってません⁉
背中に汗を感じた。
その隙に、ぐっと近づいていたんだ——
「意外。そういうこと、思うんだ」
彼の、きれいな顔が…!
「天満月くん…⁉」
私たちはソファで隣り合っていたけれど、間に一人分以上のスペースはあけていた。
それが今、天満月くんが身を乗り出したことで無いものになっている。
近い…彼の目に、私が映っているのが見えるくらい…!
「意外もなにもっ、前に『かぐや姫みたい』って言ったじゃん…! 美人だと思ってなかったら、そんな言葉出てこないよ……」
「かぐや姫、ね……」
なぜかむっとさせてしまった。だけど距離は離してくれない…。
「顔をほめられることは聞き飽きる程あったが、女に例えられたのは斎藤サンが初めて」
「そ、そうなんだ…」
珍しい、名字で呼ばれた。
私には「あんた」が多いし、他の人にも「おい」とか「なあ」とか言って、なかなか名前を口にしないんだよね。
「普段…クラスのやつらにアイドルだか俳優だかの話題振られても、反応薄いよな」
「わ、私、芸能人に詳しくないので…」
えっ、そんなところ見られてたの?
「そういうのは興味ないくせに、俺の顔は違うんだ?」
「へっ」
「身近だから、じっと見てくんの?」
ドキドキ、ドキドキ。顔に熱が集まってくる。
どうしてだろう……天満月くんがイジワルだ…!
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