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三章 天満月くんの笑顔
15.お菓子が好きなワケ
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わざとなのか、真顔が変わらなくてそこから読み取れることはない。
今は私のほうがあせった顔になっていると思う。
でも私をあせらせて何の意味が………あ、そうか。
「きれいな顔」がその場しのぎの発言って気づいてるんだ。
天満月くんを美人だと思ってるのは本音だけど、さっき見つめすぎていた理由とはずれている。
だから、本当の理由を探ってきている…!
だけどここで正直に、「笑顔を見たい」なんて言ったらますます見られなくなってしまいそう。
…流されちゃダメだ。
落ち着きなさい斎藤美紀菜。
相手のペースにのまれず、少しの真実を含ませて、核心は隠すんだ——
「あ、天満月くんが、甘いものを食べている姿が気になったの。だから見ていたの」
「…え」
ぴく、と繊細なまつ毛が動く。
その間に私は一回深呼吸をした。
うるさいドキドキは消えてくれた。
「こんなに毎日食べて、本当にお菓子が大好きなんだなあ、意外だなあって……」
残念ながら食事観察作戦では笑顔は見られなかったけれど。
よくよく考えれば、孤高の王子様が甘党という時点でギャップになってそうだ。
天満月くんはようやく身体を離してくれて、元の位置に収まる。
ふう、と肩の力を抜いたのは、私ではなく四人の妖精さんたちだ。
そういえば接近したところ、みんな見てたんだな…恥ずかしさが戻ってきた……。
原因の彼は涼しい顔して、二切れ目のバウムクーヘンに手をつけようとしている。
そうそう、私も食べたいんだった。
「……いただきますっ」
「甘いものは、好きにならなきゃいけないから好きになった」
——唐突に、そんな台詞が耳に飛び込んだ。
ちょうど口にバウムクーヘンを入れた私は、返事ができないまま固まる。
「俺は感覚的に、二種類の空腹を持ってる。一つは人間全員にある食欲。もう一つは……」
すっ、と天満月くんは人差し指を伸ばした。
それをくいっと少し動かせば、テーブル上のグミが一粒浮いて、ぴゅーんと飛んでいく。
…兎さんの口元へ。
『フゴッ! …プハッ、オイ! 詰マッタラドウスル!』
「こういう、術を使うためのエネルギーがなくなった時に感じる」
苦情は完全スルー。
私も兎さんを心配したかったけれど、完全に話に取り込まれてしまった。
天満月くんには、ゲームキャラみたいなHPとMPがあるらしい…。
「こっちの空腹は、空っぽのままにして死ぬわけじゃない……たぶん。ただ、空腹は空腹だ。そのままにしておくのは気持ち悪いんだよ」
「甘いものじゃないと、満たせないの…?」
「そう。だから好き」
早くも天満月くんは、二切れ目の最後の欠片を口に含んだ。
私は…、何を思っていいのかわからなかった。
ぐるぐるぐるぐる、色んな感情が混ざって整理がつかない。
かわいそう、は違うよね。本人が「好き」って言ってるんだから。
でも唯一確信しているのは——
ただ食べているのを眺めているだけじゃ、この先ずっと彼の笑顔には出会えなさそうだ…ってこと。
今は私のほうがあせった顔になっていると思う。
でも私をあせらせて何の意味が………あ、そうか。
「きれいな顔」がその場しのぎの発言って気づいてるんだ。
天満月くんを美人だと思ってるのは本音だけど、さっき見つめすぎていた理由とはずれている。
だから、本当の理由を探ってきている…!
だけどここで正直に、「笑顔を見たい」なんて言ったらますます見られなくなってしまいそう。
…流されちゃダメだ。
落ち着きなさい斎藤美紀菜。
相手のペースにのまれず、少しの真実を含ませて、核心は隠すんだ——
「あ、天満月くんが、甘いものを食べている姿が気になったの。だから見ていたの」
「…え」
ぴく、と繊細なまつ毛が動く。
その間に私は一回深呼吸をした。
うるさいドキドキは消えてくれた。
「こんなに毎日食べて、本当にお菓子が大好きなんだなあ、意外だなあって……」
残念ながら食事観察作戦では笑顔は見られなかったけれど。
よくよく考えれば、孤高の王子様が甘党という時点でギャップになってそうだ。
天満月くんはようやく身体を離してくれて、元の位置に収まる。
ふう、と肩の力を抜いたのは、私ではなく四人の妖精さんたちだ。
そういえば接近したところ、みんな見てたんだな…恥ずかしさが戻ってきた……。
原因の彼は涼しい顔して、二切れ目のバウムクーヘンに手をつけようとしている。
そうそう、私も食べたいんだった。
「……いただきますっ」
「甘いものは、好きにならなきゃいけないから好きになった」
——唐突に、そんな台詞が耳に飛び込んだ。
ちょうど口にバウムクーヘンを入れた私は、返事ができないまま固まる。
「俺は感覚的に、二種類の空腹を持ってる。一つは人間全員にある食欲。もう一つは……」
すっ、と天満月くんは人差し指を伸ばした。
それをくいっと少し動かせば、テーブル上のグミが一粒浮いて、ぴゅーんと飛んでいく。
…兎さんの口元へ。
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「こういう、術を使うためのエネルギーがなくなった時に感じる」
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私も兎さんを心配したかったけれど、完全に話に取り込まれてしまった。
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「こっちの空腹は、空っぽのままにして死ぬわけじゃない……たぶん。ただ、空腹は空腹だ。そのままにしておくのは気持ち悪いんだよ」
「甘いものじゃないと、満たせないの…?」
「そう。だから好き」
早くも天満月くんは、二切れ目の最後の欠片を口に含んだ。
私は…、何を思っていいのかわからなかった。
ぐるぐるぐるぐる、色んな感情が混ざって整理がつかない。
かわいそう、は違うよね。本人が「好き」って言ってるんだから。
でも唯一確信しているのは——
ただ食べているのを眺めているだけじゃ、この先ずっと彼の笑顔には出会えなさそうだ…ってこと。
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