12 / 17
11話
しおりを挟む久しぶりに、お兄様に抱っこされて、お部屋に帰ったら、何も知らなかったマーサとジャネットが、オニキスを見て悲鳴を上げて、部屋の隅まで逃げて行っちゃった。
マーサは本当に怖かったみたいで、私達が大丈夫だよって言ったのに、気絶しちゃって。大騒ぎになっちゃって。
こんなに騒いだら、オニキスも怖がってるんじゃないかなって思ったら、日の当たる窓際で、全然気にせず丸くなってて。なんかオーブが居た時みたいだった。
オーブも触られるのを嫌がる猫ちゃんだったけど、オニキスもオーブとそっくり。
家に来る猫ちゃんって、皆んなこうなのかな?私も、もふもふ、ウリウリしてみたいんだけどな。
少しして意識を取り戻したマーサに、オニキスは陛下が寄越してくれた番猫なんだよって、説明してあげたら、"そんな大事な事は先に説明するべきでしょう!!"ってめちゃくちゃお兄様が叱られてた。
私がこんなに叱られたら、悲しくなっちゃうって思ってたのだけど、”すまなかった”ってマーサに頭を下げたお兄様は、マーサに見えない様に、悪戯っぽくペロッて舌を出して見せたの。
でも、頭をあげた時には、物凄く真面目な顔をしていて。それが面白くて、笑うのを我慢するのが、すっごく大変だった。
元気になったマーサとジャネットは、猛然と?この使い方であって居るかしら?
そう、猛然と私のお着替えに取り掛かって、私はお風呂で磨かれて、お肌にも今まで使った事の無い香油をすり込まれ。
綺麗なドレスを着させられたと思ったら、次は結い上げた髪に真珠や小花を髪に編み込んだり、カールしたり。
最後はうっすらお化粧までして、唇にも紅をさして出来上がり。
鏡に映った私は、まるで別人みたい。
マーサとジャネットは、魔法が使えるのかしら?
びっくりしちゃった。
だけど、お迎えに来てくれたお兄様は、大人の男の人って感じで、もっともっと素敵だった。
「リーシャ。とっても綺麗だよ」
「お兄様も、とっても素敵」
二人でニッコリし合ったけど、お兄様の横に並んだら、私は如何にもお子様で、私が婚約者になったって言ったら、皆に笑われちゃいそう。
でも、私の騎士団が出来るまでは、私の能力の事も、お兄様との婚約の事も話しちゃいけないのですって。
私の能力が珍しいからだって、分かってはいるけど、それと婚約の話しがどう関係しているのかは、よく分からない。
どうして?って聞いても、パパとお兄様は困ったお顔で、リーシャの為だよってしか言ってくれないから。
これは、私が子供だから、話しても分からないと思って居るのかな?そうだとしたら、ちょっと悲しいけど、子供なのはどうしようもないから、我慢しなくちゃいけないのよね?
継承のお祝いには、本当に沢山の人達が来てくれて。皆んなニコニコしながら、お兄様にお祝いを言ってくれました。
私はその横で、お兄様が人気者なのが嬉しくて、ずっとニコニコしてたのだけど、あんまり人が多すぎて、途中で目が回ってきちゃった。
「リーシャ?疲れたの?大丈夫?」
「大丈夫。喉が渇いちゃったから、何か飲んできてもいい?」
「僕が取って来るよ」
「ううん。お兄様は今日の主役なんだから、皆さんのお相手をしてあげなくちゃ」
「一人で大丈夫?」
私だって、小っちゃい子供じゃないんだから、飲み物くらい自分で取れる。
なんとなく反抗的な気分になって、大丈夫って言い張っちゃった。
けど、こんな事になるなら、やっぱりお兄様に取って来てもらえば良かった。
オニキスを連れて、飲み物のテーブルに向かった私は、気が付いた時には、見知らぬお姉様達に囲まれていたの。
「貴方がリーシャ嬢」
「はい、そうですけど。お姉さんは何方ですか?」
「ハイム伯爵家の、イザベラよ。そしてこちらは私のお友達」
伯爵家?
伯爵は侯爵より爵位が下だから、私より先に話し掛けちゃ駄目なんじゃないの?
それとも年上なら良いのかしら?
マナーの先生は、そんなお話はしてなかったけど?
「ちょっと。聞いて居るの?」
「ごめんなさい?ちょっと考え事してて」
「考え事?流石、出自が怪しい人間は、遣ることが無礼ね?」
「・・・・・」
確かに私のお母様は、何処の生まれか、誰も知らないけれど、お父様はれっきとした侯爵家の人間なんだけどな。
「貴方の母親は、ただの平民で娼婦だったって話しも有るわよね?そんな賤しい娘が侯爵家に居座ってるなんて、私なら恥ずかしくて耐えられないわ」
「・・・・」
あぁ。そうか。
これが社交界の虐めって、言うものなのね?
「何とか言いなさいよ。平民は耳も悪い訳?平民の分際で、アシン様にべったりくっ付いてるなんて、図々しい」
「そうよ!」
「そうよ!」
うわぁ。
この人達、頭大丈夫かしら?
イザベラさんは伯爵令嬢なのよね?
だとしたらそのお取巻きの爵位って、伯爵以下って事。
確かに私は養女だし、平民の暮らしをしていたことはあるけど、お父様はれっきとしたこの侯爵家の長男。
ただの平民とは違うのに。
「ちょっと!返事くらいしなさいよ!!」
「うわっ!!」
淑女らしからぬ声が出ちゃったけど、仕方ないわよね。
自分より背の高い御令嬢に囲まれて、肩を小突かれたらビックリするもの。
しかも、相手は自分より爵位が下の人。
「あらやだ。みっともない」
「ほんと、平民にはお似合いね」
「濡れたネズミみたい」
クスクス笑ってるけど、良いの?
こんなことして?
私のドレスがジュースでビチャビチャになっちゃったわよ?
「陛下が贈ってくれたドレスが・・・・」
「へっ陛下?嘘つくんじゃないわよ」
あざといやり方だとは思うけど、子供の私が大人に対抗しようとしたら、もっと強い大人の威を借りなくちゃ、どうしたって敵わないもの。
「折角、今日の為に陛下が用意してくれたのに!どうしてこんな酷い事するの?!」
できるだけ大きな声を出したのも、周りの大人に聞かせる為。
小っちゃいからって、馬鹿にしてもらっては困るのよ?
「返事だってする必要あるの?!貴方は伯爵家の人間で、私は侯爵家の娘なのよ!!私が話しかけてないのに、勝手に話しかけて来て、返事をしないからって、陛下が贈ってくれたドレスに、ジュースを掛けるなんてひどいわ!!」
まあ!
なんてことだ。
ざわざわ、ざわざわ
人が集まって来た。
「それは、あんたが勝手に!!」
「私の肩を押したじゃない!!私のお兄様のパーティーなのに、お祝いに来てくれたんじゃないの?!どうしてこんな酷い事をするの?!」
私が大声を出すなんて、この御令嬢たちは思ってもみなかったのだと思う。陰険に陰で私を虐めたら、泣き出して何処へ行くと思ってたんだ。
だけど私は小さい頃から、ゼフィール殿下の婚約内定者としての教育をたっぷり受けていて、社交界でのいじめの対処法も教わって居るの。
先生の教えてくれたことは本当だった。
私の大声に気付いた周りの大人が、取り囲んでヒソヒソしながら様子を伺っています。
あれは、何処の令嬢だ?
ハイム伯爵の御令嬢でしょ?
伯爵が侯爵に?
幾ら軍閥だからって、何を勘違いしているのやら。
ふ・ふ・ふ。
こんな風に取り囲まれたら、逃げられないから、現行犯よ?
「黙りなさいよ!!この平民が!!」
それに焦ったイザベラ嬢が、私の肩を掴んでぐらぐら揺らしてきて。
馬鹿な人。
「痛いっ!!私は平民じゃない!私のお父様は、アシン・ラシールの叔父。エドモンド・ラシールの兄なの!!なのにどうして?!」
リーシャ嬢は、ヨゼフの子供の頃にそっくりだ。
間違いなくヨゼフ様のお子さんなのに、平民って。
あの子達、なにを勘違いしてるのかしら?
しかも、子供相手に暴力をふるうなんて。
そう思うなら止めて下さい。
目が回っちゃう!
リーシャ嬢って、陛下のお気に入りなのよね?
あのドレスも陛下に、贈られたものなんですってよ?
それを台無しにしたのか?
ハイム家はもう終わりだな。
真っ赤になって、わなわな震え出したイザベラ嬢が、右手を振り上げて。
「このっ!!」
「キャッ!」
叩かれる!
そう思った私は、目を閉じて首も竦めて、衝撃に備えたのです。
10
あなたにおすすめの小説
幼い頃に、大きくなったら結婚しようと約束した人は、英雄になりました。きっと彼はもう、わたしとの約束なんて覚えていない
ラム猫
恋愛
幼い頃に、セレフィアはシルヴァードと出会った。お互いがまだ世間を知らない中、二人は王城のパーティーで時折顔を合わせ、交流を深める。そしてある日、シルヴァードから「大きくなったら結婚しよう」と言われ、セレフィアはそれを喜んで受け入れた。
その後、十年以上彼と再会することはなかった。
三年間続いていた戦争が終わり、シルヴァードが王国を勝利に導いた英雄として帰ってきた。彼の隣には、聖女の姿が。彼は自分との約束をとっくに忘れているだろうと、セレフィアはその場を離れた。
しかし治療師として働いているセレフィアは、彼の後遺症治療のために彼と対面することになる。余計なことは言わず、ただ彼の治療をすることだけを考えていた。が、やけに彼との距離が近い。
それどころか、シルヴァードはセレフィアに甘く迫ってくる。これは治療者に対する依存に違いないのだが……。
「シルフィード様。全てをおひとりで抱え込もうとなさらないでください。わたしが、傍にいます」
「お願い、セレフィア。……君が傍にいてくれたら、僕はまともでいられる」
※糖度高め、勘違いが激しめ、主人公は鈍感です。ヒーローがとにかく拗れています。苦手な方はご注意ください。
※『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。
行き遅れにされた女騎士団長はやんごとなきお方に愛される
めもぐあい
恋愛
「ババアは、早く辞めたらいいのにな。辞めれる要素がないから無理か? ギャハハ」
ーーおーい。しっかり本人に聞こえてますからねー。今度の遠征の時、覚えてろよ!!
テレーズ・リヴィエ、31歳。騎士団の第4師団長で、テイム担当の魔物の騎士。
『テレーズを陰日向になって守る会』なる組織を、他の師団長達が作っていたらしく、お陰で恋愛経験0。
新人訓練に潜入していた、王弟のマクシムに外堀を埋められ、いつの間にか女性騎士団の団長に祭り上げられ、マクシムとは公認の仲に。
アラサー女騎士が、いつの間にかやんごとなきお方に愛されている話。
死に戻ったら、私だけ幼児化していた件について
えくれあ
恋愛
セラフィーナは6歳の時に王太子となるアルバートとの婚約が決まって以降、ずっと王家のために身を粉にして努力を続けてきたつもりだった。
しかしながら、いつしか悪女と呼ばれるようになり、18歳の時にアルバートから婚約解消を告げられてしまう。
その後、死を迎えたはずのセラフィーナは、目を覚ますと2年前に戻っていた。だが、周囲の人間はセラフィーナが死ぬ2年前の姿と相違ないのに、セラフィーナだけは同じ年齢だったはずのアルバートより10歳も幼い6歳の姿だった。
死を迎える前と同じこともあれば、年齢が異なるが故に違うこともある。
戸惑いを覚えながらも、死んでしまったためにできなかったことを今度こそ、とセラフィーナは心に誓うのだった。
女王は若き美貌の夫に離婚を申し出る
小西あまね
恋愛
「喜べ!やっと離婚できそうだぞ!」「……は?」
政略結婚して9年目、32歳の女王陛下は22歳の王配陛下に笑顔で告げた。
9年前の約束を叶えるために……。
豪胆果断だがどこか天然な女王と、彼女を敬愛してやまない美貌の若き王配のすれ違い離婚騒動。
「月と雪と温泉と ~幼馴染みの天然王子と最強魔術師~」の王子の姉の話ですが、独立した話で、作風も違います。
本作は小説家になろうにも投稿しています。
兄みたいな騎士団長の愛が実は重すぎでした
鳥花風星
恋愛
代々騎士団寮の寮母を務める家に生まれたレティシアは、若くして騎士団の一つである「群青の騎士団」の寮母になり、
幼少の頃から仲の良い騎士団長のアスールは、そんなレティシアを陰からずっと見守っていた。レティシアにとってアスールは兄のような存在だが、次第に兄としてだけではない思いを持ちはじめてしまう。
アスールにとってもレティシアは妹のような存在というだけではないようで……。兄としてしか思われていないと思っているアスールはレティシアへの思いを拗らせながらどんどん膨らませていく。
すれ違う恋心、アスールとライバルの心理戦。拗らせ溺愛が激しい、じれじれだけどハッピーエンドです。
☆他投稿サイトにも掲載しています。
☆番外編はアスールの同僚ノアールがメインの話になっています。
二度目の初恋は、穏やかな伯爵と
柴田はつみ
恋愛
交通事故に遭い、気がつけば18歳のアランと出会う前の自分に戻っていた伯爵令嬢リーシャン。
冷酷で傲慢な伯爵アランとの不和な結婚生活を経験した彼女は、今度こそ彼とは関わらないと固く誓う。しかし運命のいたずらか、リーシャンは再びアランと出会ってしまう。
理想の男性(ヒト)は、お祖父さま
たつみ
恋愛
月代結奈は、ある日突然、見知らぬ場所に立っていた。
そこで行われていたのは「正妃選びの儀」正妃に側室?
王太子はまったく好みじゃない。
彼女は「これは夢だ」と思い、とっとと「正妃」を辞退してその場から去る。
彼女が思いこんだ「夢設定」の流れの中、帰った屋敷は超アウェイ。
そんな中、現れたまさしく「理想の男性」なんと、それは彼女のお祖父さまだった!
彼女を正妃にするのを諦めない王太子と側近魔術師サイラスの企み。
そんな2人から彼女守ろうとする理想の男性、お祖父さま。
恋愛よりも家族愛を優先する彼女の日常に否応なく訪れる試練。
この世界で彼女がくだす決断と、肝心な恋愛の結末は?
◇◇◇◇◇設定はあくまでも「貴族風」なので、現実の貴族社会などとは異なります。
本物の貴族社会ではこんなこと通用しない、ということも多々あります。
R-Kingdom_1
他サイトでも掲載しています。
竜人のつがいへの執着は次元の壁を越える
たま
恋愛
次元を超えつがいに恋焦がれるストーカー竜人リュートさんと、うっかりリュートのいる異世界へ落っこちた女子高生結の絆されストーリー
その後、ふとした喧嘩らか、自分達が壮大な計画の歯車の1つだったことを知る。
そして今、最後の歯車はまずは世界の幸せの為に動く!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる