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11話
しおりを挟む久しぶりに、お兄様に抱っこされて、お部屋に帰ったら、何も知らなかったマーサとジャネットが、オニキスを見て悲鳴を上げて、部屋の隅まで逃げて行っちゃった。
マーサは本当に怖かったみたいで、私達が大丈夫だよって言ったのに、気絶しちゃって。大騒ぎになっちゃって。
こんなに騒いだら、オニキスも怖がってるんじゃないかなって思ったら、日の当たる窓際で、全然気にせず丸くなってて。なんかオーブが居た時みたいだった。
オーブも触られるのを嫌がる猫ちゃんだったけど、オニキスもオーブとそっくり。
家に来る猫ちゃんって、皆んなこうなのかな?私も、もふもふ、ウリウリしてみたいんだけどな。
少しして意識を取り戻したマーサに、オニキスは陛下が寄越してくれた番猫なんだよって、説明してあげたら、"そんな大事な事は先に説明するべきでしょう!!"ってめちゃくちゃお兄様が叱られてた。
私がこんなに叱られたら、悲しくなっちゃうって思ってたのだけど、”すまなかった”ってマーサに頭を下げたお兄様は、マーサに見えない様に、悪戯っぽくペロッて舌を出して見せたの。
でも、頭をあげた時には、物凄く真面目な顔をしていて。それが面白くて、笑うのを我慢するのが、すっごく大変だった。
元気になったマーサとジャネットは、猛然と?この使い方であって居るかしら?
そう、猛然と私のお着替えに取り掛かって、私はお風呂で磨かれて、お肌にも今まで使った事の無い香油をすり込まれ。
綺麗なドレスを着させられたと思ったら、次は結い上げた髪に真珠や小花を髪に編み込んだり、カールしたり。
最後はうっすらお化粧までして、唇にも紅をさして出来上がり。
鏡に映った私は、まるで別人みたい。
マーサとジャネットは、魔法が使えるのかしら?
びっくりしちゃった。
だけど、お迎えに来てくれたお兄様は、大人の男の人って感じで、もっともっと素敵だった。
「リーシャ。とっても綺麗だよ」
「お兄様も、とっても素敵」
二人でニッコリし合ったけど、お兄様の横に並んだら、私は如何にもお子様で、私が婚約者になったって言ったら、皆に笑われちゃいそう。
でも、私の騎士団が出来るまでは、私の能力の事も、お兄様との婚約の事も話しちゃいけないのですって。
私の能力が珍しいからだって、分かってはいるけど、それと婚約の話しがどう関係しているのかは、よく分からない。
どうして?って聞いても、パパとお兄様は困ったお顔で、リーシャの為だよってしか言ってくれないから。
これは、私が子供だから、話しても分からないと思って居るのかな?そうだとしたら、ちょっと悲しいけど、子供なのはどうしようもないから、我慢しなくちゃいけないのよね?
継承のお祝いには、本当に沢山の人達が来てくれて。皆んなニコニコしながら、お兄様にお祝いを言ってくれました。
私はその横で、お兄様が人気者なのが嬉しくて、ずっとニコニコしてたのだけど、あんまり人が多すぎて、途中で目が回ってきちゃった。
「リーシャ?疲れたの?大丈夫?」
「大丈夫。喉が渇いちゃったから、何か飲んできてもいい?」
「僕が取って来るよ」
「ううん。お兄様は今日の主役なんだから、皆さんのお相手をしてあげなくちゃ」
「一人で大丈夫?」
私だって、小っちゃい子供じゃないんだから、飲み物くらい自分で取れる。
なんとなく反抗的な気分になって、大丈夫って言い張っちゃった。
けど、こんな事になるなら、やっぱりお兄様に取って来てもらえば良かった。
オニキスを連れて、飲み物のテーブルに向かった私は、気が付いた時には、見知らぬお姉様達に囲まれていたの。
「貴方がリーシャ嬢」
「はい、そうですけど。お姉さんは何方ですか?」
「ハイム伯爵家の、イザベラよ。そしてこちらは私のお友達」
伯爵家?
伯爵は侯爵より爵位が下だから、私より先に話し掛けちゃ駄目なんじゃないの?
それとも年上なら良いのかしら?
マナーの先生は、そんなお話はしてなかったけど?
「ちょっと。聞いて居るの?」
「ごめんなさい?ちょっと考え事してて」
「考え事?流石、出自が怪しい人間は、遣ることが無礼ね?」
「・・・・・」
確かに私のお母様は、何処の生まれか、誰も知らないけれど、お父様はれっきとした侯爵家の人間なんだけどな。
「貴方の母親は、ただの平民で娼婦だったって話しも有るわよね?そんな賤しい娘が侯爵家に居座ってるなんて、私なら恥ずかしくて耐えられないわ」
「・・・・」
あぁ。そうか。
これが社交界の虐めって、言うものなのね?
「何とか言いなさいよ。平民は耳も悪い訳?平民の分際で、アシン様にべったりくっ付いてるなんて、図々しい」
「そうよ!」
「そうよ!」
うわぁ。
この人達、頭大丈夫かしら?
イザベラさんは伯爵令嬢なのよね?
だとしたらそのお取巻きの爵位って、伯爵以下って事。
確かに私は養女だし、平民の暮らしをしていたことはあるけど、お父様はれっきとしたこの侯爵家の長男。
ただの平民とは違うのに。
「ちょっと!返事くらいしなさいよ!!」
「うわっ!!」
淑女らしからぬ声が出ちゃったけど、仕方ないわよね。
自分より背の高い御令嬢に囲まれて、肩を小突かれたらビックリするもの。
しかも、相手は自分より爵位が下の人。
「あらやだ。みっともない」
「ほんと、平民にはお似合いね」
「濡れたネズミみたい」
クスクス笑ってるけど、良いの?
こんなことして?
私のドレスがジュースでビチャビチャになっちゃったわよ?
「陛下が贈ってくれたドレスが・・・・」
「へっ陛下?嘘つくんじゃないわよ」
あざといやり方だとは思うけど、子供の私が大人に対抗しようとしたら、もっと強い大人の威を借りなくちゃ、どうしたって敵わないもの。
「折角、今日の為に陛下が用意してくれたのに!どうしてこんな酷い事するの?!」
できるだけ大きな声を出したのも、周りの大人に聞かせる為。
小っちゃいからって、馬鹿にしてもらっては困るのよ?
「返事だってする必要あるの?!貴方は伯爵家の人間で、私は侯爵家の娘なのよ!!私が話しかけてないのに、勝手に話しかけて来て、返事をしないからって、陛下が贈ってくれたドレスに、ジュースを掛けるなんてひどいわ!!」
まあ!
なんてことだ。
ざわざわ、ざわざわ
人が集まって来た。
「それは、あんたが勝手に!!」
「私の肩を押したじゃない!!私のお兄様のパーティーなのに、お祝いに来てくれたんじゃないの?!どうしてこんな酷い事をするの?!」
私が大声を出すなんて、この御令嬢たちは思ってもみなかったのだと思う。陰険に陰で私を虐めたら、泣き出して何処へ行くと思ってたんだ。
だけど私は小さい頃から、ゼフィール殿下の婚約内定者としての教育をたっぷり受けていて、社交界でのいじめの対処法も教わって居るの。
先生の教えてくれたことは本当だった。
私の大声に気付いた周りの大人が、取り囲んでヒソヒソしながら様子を伺っています。
あれは、何処の令嬢だ?
ハイム伯爵の御令嬢でしょ?
伯爵が侯爵に?
幾ら軍閥だからって、何を勘違いしているのやら。
ふ・ふ・ふ。
こんな風に取り囲まれたら、逃げられないから、現行犯よ?
「黙りなさいよ!!この平民が!!」
それに焦ったイザベラ嬢が、私の肩を掴んでぐらぐら揺らしてきて。
馬鹿な人。
「痛いっ!!私は平民じゃない!私のお父様は、アシン・ラシールの叔父。エドモンド・ラシールの兄なの!!なのにどうして?!」
リーシャ嬢は、ヨゼフの子供の頃にそっくりだ。
間違いなくヨゼフ様のお子さんなのに、平民って。
あの子達、なにを勘違いしてるのかしら?
しかも、子供相手に暴力をふるうなんて。
そう思うなら止めて下さい。
目が回っちゃう!
リーシャ嬢って、陛下のお気に入りなのよね?
あのドレスも陛下に、贈られたものなんですってよ?
それを台無しにしたのか?
ハイム家はもう終わりだな。
真っ赤になって、わなわな震え出したイザベラ嬢が、右手を振り上げて。
「このっ!!」
「キャッ!」
叩かれる!
そう思った私は、目を閉じて首も竦めて、衝撃に備えたのです。
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