うちのお猫様は、私に冷たい

こむぎダック

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15話

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「リーシャ様。少しよろしいですか?」

「あなた達は・・・教養クラス1年生の・・・ナターシャさんと、マリエルさんでしたかしら?」

「はい!」

「名前を憶えて下さっているなんて、感激です!!」

 覚えていますとも。
 入学前、”身の安全の為には、周囲に居る者が、どこの誰なのか把握していることが重要だ!” とかオブシディアン卿に言われて、生徒名簿と大量の姿絵を照らし合わせながら、暗記させられて、それが学年が上がる度、毎年なのよ?

 毎晩夢にまで出て来るのに、忘れるなんて出来ないわよ。

「それで、何か御用なの?」

「あ・・あの!このあと、わっ私達とお茶しませんか?」

「お茶?」

 学院内での一年生の茶会の実践は、来学期からと記憶してたけど、変わったのかしら?
 
「実は。今日私達のクラスの女子生徒で、親睦会を開く事になったんです」

「それで、帰りにみんなで街のカフェに行くのですけど。リーシャ様もご一緒にいかがかと思いまして、お声を掛けさせていただいたのです」

「でも、私は学年もクラスが違うわよ?」

 クラスの親睦会に、年上でクラスも違う私が混ざるのってどうなのかしら?

「そうなんですけど」

「リーシャ様の通われる、魔道クラスは女の子が少ないですよね?」

「えぇ。そうね」

「それに、同じ学年の女子は、平民だと聞いています。ですから貴族同士でないと、お話しできない事も有るのではないかと思って」

 あぁ。この子達はあれね。
 貴族至上主義の親御さんに育てられたのね。
 
 2人ともお父君は軍閥で
 確か・・・第一王子の派閥の方だった筈。

 お父君から、私に取り入る様に言われたのかしら?

 でも、このキラキラした瞳は、疚しい事はなさそうだし、本人達は良い事をしている積りなんだろうけど・・・・。

 ハッキリ言って面倒臭いわ。
 
 ラシール家は代々中立を保って来た家だし、学院内で平民に対する差別的な発言をする処も好きになれない。

 まぁ。この子達は、社交の実践マナーを学びに来ている御令嬢だから、仕方が無いのかも知れないわね。

 なんと言っても入学したての子供だもの、目くじらを立てる事も無いか。

「お誘いどうもありがとう」

 ちょっと微笑んであげただけで、こんなに喜ぶなんて。可愛らしいわ。

「新入生の貴女たちは知らなくて当然の事なのだけど、私は護衛の方の都合もあるし、予定が沢山あって、急なお出掛けは出来ないのよ?」

「そうなんですか?」

「今日も放課後は王宮に行かなければならないの。そうね・・・レイン卿、次に予定が空いているのは、いつだったかしら?」

「新規では半年後になります。あとはキャンセル待ちです」

「まあ!」

「そんなにお忙しいのですね!」

 驚いている新入生に、やれやれと首を振って見せたのだけれど、わざとらしく見えていないかしら?

「折角誘ってくれたのに、ごめんなさいね。次からは前もって誘ってくれるかしら?そうすれば、予定を調整できる事も有ると思の」

「はい。気を付けます」

「お忙しいのに、お時間を頂いてありがとうございます!」

 ぺこぺこと何度も頭を下げながら、去っていく姿に胸が痛むわね。

「リーシャ様。本当に予定を調整して差し上げるお積りですか?」

「私の卒業までに、一度くらいは良いのじゃないかしら」

「面倒なのでしょう?」

「そうね・・・でも早い内なら、私もちょっとは楽だし」

 本当は予定なんて、一日に一件しか入れない様にしているから、時間がない訳じゃなのよね。でも、私は面倒な事は好きじゃないし。自分の時間が取れないと、クサクサしてきちゃうの。

 パパとアシンは、お父様にそっくりだって、笑って許してくれるけど、侯爵家の令嬢としても、癒し手としても、こんな事ではいけないよなあ。とは思って居るのよ?

 これはパパとアシン。他の誰にも言って居ないのだけれど、癒し手の能力が発現してから、全てでは無いけれど、相手の気持ちや気分が分かる様になってしまって。一度に沢山の人と接すると疲れちゃうのよね。

 成人してアシンと結婚したら、侯爵の妻として、お茶会とかパーティーとかに出席しなくちゃいけないのだと思うと、本当に気が重い。

 いっその事、パパと領地に帰ってそのまま引きこもっちゃおうかな?
 アシンは怒るかも知れないけど、パパは喜んでくれそうよね?

 はぁ~。
 駄目よね。
 癒し手のお勤めも有るし、陛下が許して下さらないわ。

「では団長と相談してみます」

「レイン。団長が許すとは思えないけど」

「だけど、リーシャ様だってあと1年とちょっとで成人されるのだから、少しくらい好きにさせてあげても良いと思う」

「でも、あの団長だよ?」

「キャサリン。団長は上司だけど、私達が仕えて居るのはリーシャ様じゃないか。主の望みを叶えて差し上げる事を、優先するべきだと私は思う」

「そのリーシャ様に期待させて、がっかりさせてしまうのもどうかと思うよ?」

「2人とも、もういいわ。オブシディアン卿がどういう人なのかは、私も分かって居ます。それにあの子達と、どうしてもお茶したい訳ではないから、オブシディアン卿の指示通りにして貰って良いのよ」

「リーシャ様がそう仰るなら」

 二人は顔を見交わして居るけど、そんなに気を使わなくていいのに。

 私の行動に対する難関は、陛下とアシンだけじゃないのよね。
 騎士団設立の時から、騎士さん達の入れ替えは何度かあったけど、団長はずっとオブシディアン卿のまま。

 堅物で不愛想で無口で。
 何年たっても笑った顔なんて一度も見たことが無くて、アシンと同い年だなんて信じられない。

 まるで、全然懐いてくれなかった、オーブやオニキスを見て居るみたい。

 だけど誰より強くて信頼できる人。

 定期的に神殿に通っていた時にあった2度の襲撃も、オブシディアン卿が居てくれたから、私もジャネットも無事でいられたの。

 あの時はジャネットも彼の強さに興奮していたけど、私もちょっと、かっこいいなって思ったのよね。

 ジャネットが大好きな恋愛小説なら、その後二人は恋に落ちて・・・って事になるのだろうけど、彼みたいに会話が成り立たない男性ひとと、恋愛できる女性なんているのかしら?

 そもそも、彼って独身なの?
 アシンと同い年で貴族なら、とっくに婚約とか、結婚していてもおかしくない年齢よね?

 パパはオブシディアン卿の、出自が分からないのだと言っていたから、平民出身なんだとしても、平民の人達は結婚が早い人も多いって聞くから、やっぱり結婚していてもおかしくないと思う。

 でも団長として公爵邸に来てから、長い休暇を取った事も、数えるくらいしかなかった様な・・・。

 いけない!
 そんな事じゃ、家族が崩壊してしまうわ!
 奥さんがいるなら、夫婦の時間はちゃんと取らなきゃ駄目よ。

 いくら物分かりの良い奥さんだって、こんなに放って置かれたら、愛想を付かされてしまう。

 きっと面倒臭がられてしまうと思うけど、一度事実関係をはっきりさせて、それなりの対応をしなくちゃいけないわ!

「ねぇ。オブシディアン卿って結婚してるの?」

「へぇ?」

「なんですか?いきなり」

「オブシディアン卿って、長期休暇を取った記憶が無いの。もし奥さんがいるなら、改善するべきかな?って思って」

「あ~びっくりした」

「そういう事ですか」

 なんでビックリするのかしら?
 変な事言ったとは思わないけど。

「リーシャ様。実は私達も、その辺りの事は全く分からないのです」

「なんで?上司と部下ってそういう話はしないの?」

「いえ。普通は奥さんの惚気とか、お子様自慢、孫自慢を耳に蓋をしたくなるくらい、聞かせられるものなのですが」

「私達は団に配属されて、まだ1年ほどでしかないのですが、団長はご自分の事を全くお話にならないんです。と言うか会話そのものが成り立たない感じ?」

「あ・・・それはよく分かる」

「ですよね!ただ結婚指輪を付けていないのは知っています」

「だけど、騎士は剣を握るから、指輪を指に嵌めない事も多いので、独身かどうか判断できません」

「なるほど・・・じゃあ、本人に聞いてみる」

「えっ?」

「だめなの?」

「ダメではないと思いますけど・・・・ねぇ」

「あの団長ですから、まともな返事が返って来るとは、思わない方が宜しいかと」

「そうよね・・・でも何も取って食われる訳じゃないでしょ?一応聞いてみるわ」

 不愛想なのは、私達にだけじゃなかったのね。こんな感じで、部下との意思疎通が出来ているのかしら?
 
 私よりずっと大人なんだから、その辺の所はちゃんとしているのだろうけど。

 オブシディアン卿って、本当に変わった人なのね。

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