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☆Greed in the mirror☆~物語はここから始まる~
第11話
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ぼんやりしたまま再び藤條家へと戻ってきていた。
帰りの車内では藤條は今朝みたいなことはしてこなかった。
特に何か話すわけでもなく俺と反対側の窓の外を眺めていただけだった。
家に入ると再び腕を掴まれてそのまま藤條の部屋へと向かった。
コイツの部屋は2階にある。
1階だけでもかなり広いが2階も部屋数が分かんないくらいあって、どの部屋がコイツの部屋かなんて分かんない。
俺も今日1日でいろんなことがありすぎで、藤條に引っ張られても抵抗することなくついて行っていた。
ぼんやりと考え事をしていたんだ。
コイツのこと。学校のこと。そして、この家のこと。
この家には他に誰もいないんだろうか?
他のメイドとか、コイツの家族は?
いろんなことが頭を巡る。
部屋に着くと、藤條はピピピっと電子版のようなものを触っていた。
すっげぇ、もしかして鍵とか?
ちょっと感動しちゃった。
今朝は全然気が付かなかった。
部屋に入ると、藤條は上着を乱暴にソファーに投げていた。
そういえば、車に乗ってから今まで、一度も口聞いてないな。
別にいいんだけど……。
ちらりと藤條を見ると、シュッとネクタイも外してそれもソファーへ投げている。
何だ? 何か機嫌が悪いのか?
なぜだかそう思った。
今日1日のコイツの態度を見ていると、今のこの行動がそんな気がしたんだ。
じっと藤條の行動を見ていると、急にこちらを振り返った。
やっぱりなんだか不機嫌そうな顔をしている。
「なっ、なんだよっ」
「…………」
文句を言ってみたけど、何も言わずに睨み付けているかのような藤條の視線に胸がチクリと痛んだ。
あれ?
急に変な気分になった。
この態度。いや、これがいつもの藤條じゃないか。
なのに何でこんなに嫌な気分になるんだ?
笑わないから? 優しくないから?
そんなこと、今までだったら当たり前じゃないか……。
そう思いながらも俺は自分が泣きそうになっていることに気が付いた。
「優希……」
藤條は今度は悲しい顔をしていた。
何でそんな顔をするんだ。
またチクリと胸が痛む。
この痛みは何なんだ。分からない。
悲しそうな顔をしたまま、ゆっくりと藤條が近付いてきた。
俺はその場で動けなくなっていた。
そして藤條は俺をギュッと抱きしめる。
「優希……」
なんだか声が悲しい響きに聞こえて、俺は抵抗できなかった。
抱きしめられたまま、じっとする。
「優希……好きだよ。好きだ……」
藤條は悲しい響きのまま、囁くように話した。
俺はどうしていいか分からなかった。
ずっと嫌だったのに、なぜだか今は抵抗する気にならなかった。
痛いほどに藤條の気持ちが俺の中に流れ込んでくる。
今までこんなに想われたことってあったかな。
俺は、自分でも分からずに藤條の背中に手を回してギュッとシャツを掴んでいた。
なぜだか、突き放す気にはならなかった。
それどころかコイツの想いの強さに応えたいって思ってる自分がいる。
ゆっくりと藤條は俺を離し、俺の肩を掴んでじっと見下ろした。
「優希? キスしていいか?」
真剣な顔で見つめている。
「なっ!? んなこと聞くなよっ!」
俺の顔は真っ赤になってるだろう。
体温が上昇してるのが分かる。
「うん」
藤條は柔らかく笑って頷くと、そのまま顔を近付け、俺の唇にそっと触れた。
今までにない、優しいキス。
唇が触れるだけの。
そして、すぐに離れる。
俺は朝からの藤條の行動を思い出し、今の態度が不思議で思わず驚いた顔をしていた。
そんな俺の顔を見て、再び藤條は優しく笑った。
「優希……大好きだ」
ドクンと心臓が大きく鳴った気がした。
藤條の笑った顔と、優しい声――。
俺の心が震えた。
帰りの車内では藤條は今朝みたいなことはしてこなかった。
特に何か話すわけでもなく俺と反対側の窓の外を眺めていただけだった。
家に入ると再び腕を掴まれてそのまま藤條の部屋へと向かった。
コイツの部屋は2階にある。
1階だけでもかなり広いが2階も部屋数が分かんないくらいあって、どの部屋がコイツの部屋かなんて分かんない。
俺も今日1日でいろんなことがありすぎで、藤條に引っ張られても抵抗することなくついて行っていた。
ぼんやりと考え事をしていたんだ。
コイツのこと。学校のこと。そして、この家のこと。
この家には他に誰もいないんだろうか?
他のメイドとか、コイツの家族は?
いろんなことが頭を巡る。
部屋に着くと、藤條はピピピっと電子版のようなものを触っていた。
すっげぇ、もしかして鍵とか?
ちょっと感動しちゃった。
今朝は全然気が付かなかった。
部屋に入ると、藤條は上着を乱暴にソファーに投げていた。
そういえば、車に乗ってから今まで、一度も口聞いてないな。
別にいいんだけど……。
ちらりと藤條を見ると、シュッとネクタイも外してそれもソファーへ投げている。
何だ? 何か機嫌が悪いのか?
なぜだかそう思った。
今日1日のコイツの態度を見ていると、今のこの行動がそんな気がしたんだ。
じっと藤條の行動を見ていると、急にこちらを振り返った。
やっぱりなんだか不機嫌そうな顔をしている。
「なっ、なんだよっ」
「…………」
文句を言ってみたけど、何も言わずに睨み付けているかのような藤條の視線に胸がチクリと痛んだ。
あれ?
急に変な気分になった。
この態度。いや、これがいつもの藤條じゃないか。
なのに何でこんなに嫌な気分になるんだ?
笑わないから? 優しくないから?
そんなこと、今までだったら当たり前じゃないか……。
そう思いながらも俺は自分が泣きそうになっていることに気が付いた。
「優希……」
藤條は今度は悲しい顔をしていた。
何でそんな顔をするんだ。
またチクリと胸が痛む。
この痛みは何なんだ。分からない。
悲しそうな顔をしたまま、ゆっくりと藤條が近付いてきた。
俺はその場で動けなくなっていた。
そして藤條は俺をギュッと抱きしめる。
「優希……」
なんだか声が悲しい響きに聞こえて、俺は抵抗できなかった。
抱きしめられたまま、じっとする。
「優希……好きだよ。好きだ……」
藤條は悲しい響きのまま、囁くように話した。
俺はどうしていいか分からなかった。
ずっと嫌だったのに、なぜだか今は抵抗する気にならなかった。
痛いほどに藤條の気持ちが俺の中に流れ込んでくる。
今までこんなに想われたことってあったかな。
俺は、自分でも分からずに藤條の背中に手を回してギュッとシャツを掴んでいた。
なぜだか、突き放す気にはならなかった。
それどころかコイツの想いの強さに応えたいって思ってる自分がいる。
ゆっくりと藤條は俺を離し、俺の肩を掴んでじっと見下ろした。
「優希? キスしていいか?」
真剣な顔で見つめている。
「なっ!? んなこと聞くなよっ!」
俺の顔は真っ赤になってるだろう。
体温が上昇してるのが分かる。
「うん」
藤條は柔らかく笑って頷くと、そのまま顔を近付け、俺の唇にそっと触れた。
今までにない、優しいキス。
唇が触れるだけの。
そして、すぐに離れる。
俺は朝からの藤條の行動を思い出し、今の態度が不思議で思わず驚いた顔をしていた。
そんな俺の顔を見て、再び藤條は優しく笑った。
「優希……大好きだ」
ドクンと心臓が大きく鳴った気がした。
藤條の笑った顔と、優しい声――。
俺の心が震えた。
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