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しおりを挟む「殿下、こちらにいらしたのですか?
なかなかお戻りになられなかったので私寂しくなって探しに来てしまいました。
でもこんなところで令嬢と密会だなんて。
だめですよ。いくら彼女が口をきけないと言っても変な勘繰りをする方というのはいるものです。
もしそんな噂がたってしまえば傷つけられるのは彼女なのです。万が一でも殿下と噂がたってしまえば数少ない縁談話もなくなってしまうかもしれませんからね。」
王太子殿下の元へ歩みを進めながら寂しかったと殿下の腕に触れるリターシャ。
その後の言葉はナティシアを気遣うように話してはいるが、見下しているのが言葉の端々から伝わってくる言葉。
ナティシアは表情を変えずに黙って頭を下げた。
何も言い返せないのはわかっていたが、その態度はさらにリターシャをイラつかせた。
さらに言葉を重ねようとした瞬間、殿下に添わせた手に衝撃が走った。
パシッ!!
「で、殿下?」
「クレンティ嬢、許可なく私に触れないで頂きたい。
それから勘違いしていただきたくないのですが、令嬢に私の交友関係を口出しする権利はありません。
本日は茶会の開催を依頼した事もあり、歓談の席を長く設けましたが特別な気持ちがあったわけではない事ははっきりさせておきましょう」
王太子殿下のはっきりとした拒絶の言葉にリターシャは顔を真っ赤に染めた。
「わ、私は殿下の婚約者候補の筆頭として幼い頃から妃教育を受けてまいりました。
そんな私に対してそんな言葉あんまりですわ」
扇子で口元をおさえながら必死で怒りをおさえ、どれだけつらいのか、自分を失えばどうなるかわかってもらおうと訴えかけた。
殿下はリターシャの言葉を聞き、ハッとしたように先ほどの強い言葉ではなく優しい言葉で語りかけた。
「クレンティ嬢……
今まで苦労をさせてしまい申し訳ありませんでした。そのような苦労をしていたことなど知らなかったのです。
ただ、公の話として令嬢が私の婚約者候補となったことも、その筆頭となったこともありません。
母が妃教育として教師を派遣したこともない事は把握しています。
クレンティ公爵には今後そのような事を勝手に行わないことと、二度と婚約者候補の筆頭だったなどと言わないように抗議させて頂きますね」
優しい声から始まった殿下の言葉に、リターシャはてっきり自分の努力を評価し、その大切さを認識してくれるものと思っていた。
それなのに蓋を開けてみれば王家からは認められていないと突きつけられ、父に抗議されるとまで言われてしまった。
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