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リターシャに対する評価が上がっていく中、動き出したものがいた。

「イザエル様!

大変申し訳ありません。

義姉がなんということを……

言葉が話せない、貴族の常識を知らないなど言い訳にもなりません。

私が代わって謝罪させていただきますわ。

ほら、お義姉様もしっかりと謝ってください」

突然イザエルとリターシャの前に立ち、話し始めたグレース。

その瞳には涙がたまっていた。

「妹に謝罪をさせるだなんて」「彼女は社交界デビューもさせてもらえなかったと聞いたわ。きっと常識がなく親も手を焼いたから社交界デビューをさせなかったのね」

そんな声があちこちから聞こえ始めた。

頬を叩かれ黙って小さく肩を震わせながら俯く伯爵令嬢、それをかばうように立つ公爵令嬢、義姉の代わりに謝罪をし義姉に謝罪を促す義妹。

この状況だけを見れば心優しい友達想いの公爵令嬢と常識を心得ている義妹のようだ。


しかし王太子にはどうしてもナティシアが理不尽な暴力をふるったとは思えなかった。


この騒動が起こる前の池の事も気になるところ。



「ナティシア嬢、あの令嬢を叩いた理由がおありですか」

王太子がナティシアに問いかけた瞬間、ざわついていた空間はスッと静まり返った。

ナティシアはノートを取り出し、ペンを走らせ差し出した。

王太子は了承を取り、皆が聞こえるよう内容を読み上げた。

「『あの令嬢が池に毒を垂らし、魚たちの命を奪おうとしたのです』

確かに私たちが席を外し観察していた池で泳いでいた魚たちが、その数分後には様子が異なり虫の息となっていました。これに関しては私だけでなく護衛も確認していること。

ただそれがあの令嬢の仕業であり、毒だと断言できるのはどうしてですか?もしかしてなにか証拠でもあるのですか?」

流れ出る涙を必死に堪えながらナティシアは再度ノートにペンを走らせた。

『あの方のドレスの中に毒の瓶が隠されているそうです。調べてみて頂けませんか。もしなにもなければ私を罰してください。だからどうかお願いいたします』



どうしてナティシアはイザエルが犯人だとわかったのか。まだ池に毒が入れられたともわからない状況でナティシアだけは確信しているような態度。

しかも毒の瓶がドレスの中にあるとまで断言している。

だがナティシアの言う通り瓶がドレスの中にある場合、それを探すためには身体検査をしなければならなくなる。

検査をしてしまって、これがナティシアの勘違いだった場合、ナティシアは厳しい処罰の対象となってしまう。

だが今を逃せば、もし本当にイザエルが毒瓶を持っていた場合間違いなく処分されてしまい、証拠は残らないだろう。

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