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「…………わかりました。

調べてみましょう」

王太子殿下のこの言葉にイザエルの肩が大きく跳ね、身体の震えが大きくなったのがわかる。
そんな彼女を守るようにリターシャは彼女の横で王太子殿下に疑問を呈した。

「殿下、イザエル様が何かをしたと言うような証拠は何もありません、

まして、その池に毒が落とされたなどと言う証拠も、ナティシア様の証言以外何もないのです。それなのに、伯爵令嬢の身体検査をなさると言うのですか」

リターシャの声に追随するようにグレースからも声が上がる。

「王太子殿下、リターシャ様のおっしゃるとおりでございます。

身内ですが恥ずかしながら義姉はずっと家に閉じこもり、今までも虚偽の発言を繰り返しておりました。これはあまり公にしてはほしくないのですが……特に私に対しては散々ひどいいやがらせを行ってきたのです。

義姉を信じてくださる殿下のお言葉はありがたく感じておりますが、伯爵令嬢の身体検査をされるなど、そのような必要は無いかと思います」


リターシャとグレースの言葉に周囲の客たちも「確かに。令嬢一人の言葉で身体検査をなさるというのは…」「虚偽が今までもあったというのならこれもそうなんじゃないのか」とひそひそと話をはじめた。


「クレンティ嬢、私は決してナティシア嬢をただ信じて検査を行うと言っているわけではないのです。

伯爵令嬢の身の潔白を晴らすためにも、このような機会を逃す手はないだろうと思っています。

今日を逃してしまえば、もし証拠があった場合処分されてしまいます。そして少なからず何らかの疑念が残ってしまうのは否めません。それならば今検査を行い、白か黒かはっきりとさせた方が潔白を示す格好の機会だと思うのです。

残念ながら、今回どちらかが真実だと分かった場合、どちらかを罰せなくてはならないでしょう。

しかし現在お二人が私の婚約者候補として残っている方であるからこそ、この機会を逃すべきではないと考えております」

王太子の発言にその場は静まり返った。

そして「確かにその通りだ」と賛成の空気に一瞬にして変わったのだ。

確かに伯爵家令嬢が公爵家の池に毒を盛ったなどということになれば処罰ものである。
それだけでなく茶会に毒を持ち込んだということであれば、使用目的を確認する必要がある。

逆に伯爵家令嬢が無実であるのなら、令嬢を大勢の前で、ただ手で打ち辱めたということになる。公爵令嬢は非を認めなければならないのだ。


だがこの場を逃せば、もし本当に伯爵令嬢が毒を持っていたとしても、毒は処分されてしまうだろう。

その公正さを見極める為にも今、王太子の采配によって、そのような検査が執り行われるのなら、そうすべきであろうと周りは納得できたのだ。

ここまで言われてしまえばリターシャとグレースもさらに異を唱えることなどできなかった。


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