カタブツ図書館司書は不埒な腰掛け館長に溺れる

白野よつは(白詰よつは)

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■1.それは耐えがたい専属契約

<3>

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 それでも、昼休みを読書に費やせなかったのは、なかなかに痛手だった。
 あと三時間、あと一時間と何度となくソワソワと手首を返して腕時計の時刻を確かめる紗雪の姿は、住吉さんに「あら、もしかしてデート?」と仕事中にも関わらずそう言わせるには十分だったようだし、水城にもだいたい似たようなことを言われた。
 そのたびに紗雪は「あの、田舎から母が遊びに来るんです……」ともっともらしい嘘をついて誤魔化したのだけれど、本当は紗雪の地元はこの界隈より少し離れた地域にあり、通勤するには少し時間がかかることと、実家にTL小説をのさばらせておくわけにはいかないため、図書館の近くにアパートを借りて一人暮らしをしているというわけだった。
 いつでも会いに行ける距離だからこそ、実家にはしばらく帰っていない。六つ歳の離れた兄がいるのだけれど、結婚してお嫁さんと実家で同居していることも少し関係しているように思う。ごくたまにだけれど、もうあの家には自分の居場所はないんだろうな……と思えるときがあって、そんなときはたまらなく誰かに抱かれたくなる。
 だから彼氏すらいたことないじゃん、と自分にツッコミを入れるものの、でも、自分の存在意義というか、誰かに必要とされているという証明がどうしようもなく欲しくなる。
 そのためにはセックスが一番手っ取り早い方法だとは思っていない。それでも、二十六年間、誰にも触れられたり受け入れたりしたことのない身体は、そろそろ我慢の限界に達しつつある。それに、TL小説は紗雪の救いでもあった。物語の中のヒロインになりきっているときだけは、現実を忘れて愛される喜びを間接的ながらも感じられたから。
「……ちょっと読んでから帰っちゃお」
 そういうわけで、我慢も限界に達した紗雪は、本日の業務を滞りなく終えて退勤カードを押すと、真っすぐ部屋には帰らず休憩室に寄ることにした。幸い中には誰もおらず、紗雪は昼休みのときも座った隅の目立たない席に腰を落ち着けると、さっそくバッグの中からオーガニックコットン素材のブックカバーにくるまれたTL小説を取り出した。
 けれど、数ページも読まないうちに、紗雪の耳にふと電話の音が聞こえた。なかなか鳴り止む気配のないそれは、またひっそりとした静謐な空気に戻った図書館内によく響く。
 貸出本の問い合わせか何かだろうか、と開いたページを伏せて急いで電話へ向かう。
「はい、はい、そちらの本でしたら予約することなく借りられますよ。……はは、そうですよね、有名な賞をトリプル受賞した本ですものね、お読みになりたくなるお気持ち、よくわかります。……あ、いえ、とんでもないです。わざわざお電話いただきありがとうございました。はい、はい、お待ちしております。はい、では失礼いたします」
 案の定それは、この本を借りたいけれどどこの図書館でも予約待ちだと言われていて、ダメ元ですぐに借りられるかどうか問い合わせてみた、という人からの電話だった。声の感じからすると六十代より上の世代だと思われる男性は、時間外なのに丁寧に対応してくれてありがとう、じゃあさっそく明日借りに来る、と声を弾ませて電話を切った。
「よし、じゃあ改めて」
 小さく呟くと、紗雪はいそいそと休憩室に引き返す。少々出鼻を挫かれてしまったけれど、でもその本を借りたいという男性の気持ちもよくわかる。紗雪も読んで、すごくいい作品だと思った。まだ冊数に余裕はあるけれど、一応、最後の一冊は取り置きしておいてほしいという旨をメモにして貸出カウンター内側の目立つところに貼っておく。もし自分がカウンターにいないときでも、これでメモを見た職員が対応してくれるだろう。
「――え……」
 けれど、休憩室に入ると、そこにはてっきり帰ったものだとばかり思っていたある人物が、窮屈そうにテーブルの下で足を組み、椅子に背中を持たせかけて本を読んでいた。
 紗雪の小さな驚きの声に、その人がふと顔を上げる。見覚えのある席に、見覚えのあるブックカバー。中身は間違いなく、さっきまで紗雪が読んでいたTL小説だろう。
 瞬間的に身体からサーッと血の気が引いていく紗雪とは反対に、その人――真鍋館長代理は、片手で持った本で口元を隠し、涼しげな目元を冷ややかに歪めた。まるでいいモノを見つけたと言わんばかりの、恐ろしくもひどく引き込まれてしまうような瞳だった。
 瞬きはおろか、息さえ止まってしまっている紗雪に向かって、真鍋はクスクスと喉仏を上下させて笑い声を漏らすと、スッと口元から本を下ろす。
「今日初めて会ったばかりだけど、まさか白坂さんがこんなに恥ずかしい小説を読むなんて思ってもなかったよ。大人しそうな見かけからは想像もできないというか、意外というか……いや、白坂さんのような人だから、人は見かけによらないっていう言葉に説得力が生まれるのかな。まあ、どっちでもいいけど、これ、誰にも知られたくないよね?」
 そして、ひらひらと弄ぶように手の中の本を揺らした。それでも黙っていると――正確に言えば声さえ出せずにいると、真鍋は射貫くように紗雪の目を見つめて言う。
「黙っている代わりに、僕のオモチャになってよ」
「……え?」
 やっと少し声が出たものの、紗雪は言われたことの意味がわからなかった。相当ひどい顔をしているのか、すると真鍋はクスリと笑って一つ一つ説くように言葉を変える。
「ちょうどSEの仕事が一区切りついたところだったんだよ。わりと大きな仕事。でも、画面上の数列ばかり追っていると溜まっちゃうんだよね。君はこの小説のように扱われたい、僕は溜まったものを発散させたい。それに君に彼氏はいないんだってね。僕も特定の彼女は作らない主義だから、これで利害は一致すると思うんだけど」
「そ、れは――決定事項、なんですか……?」
「そうだね。君の仕事ぶりを見ていたけど、パートのころころしたおばさんと、茶髪の若い男性職員以外とはあまり話さないみたいだね。ほかの職員もだろうけど、特にそのふたりかな。知られたくないと思うなら、ここで頷くのが賢い選択だって分かるだろ?」
「っ……」
 一縷の望みをかけて尋ねると、けれど真鍋そう言う。
 まだ職員の名前を覚えてはいないのだろう。それでも、それぞれの特徴から一人は住吉さんで、もう一人は水城のことを言っていると嫌でも分かる。二人とも、本当に紗雪に良くしてくれる人たちだ。よりにもよって、なんでこの二人を出すのだろうか。
 住吉さんは、もしかしたらTL小説に理解を示してくれるかもしれない。過激なラブシーンは随所に散りばめられているけれど、それだけではない、ちゃんとした恋愛小説だ。
 でも、水城のほうはどうだろう。あれは男性が好んで読むジャンルの小説ではないだろうし、ひょっとすると嫌悪感さえ示されてしまうかもしれない。仮にも白坂さんってああ見えてエッチな小説が好きらしいよ、などと触れ回ったりはしないだろうけれど、紗雪はふと、自身の記憶の中にある手のひらを返したように冷たくなった何人かの男性たちの姿が思い出されて、背筋が凍りつくような悪寒を感じずにはいられなかった。
 けして水城に好意を寄せているということではない。よく話しかけてくれるけれど、身の程はわきまえているつもりだ。ただ、職場で話せる人が減ってしまうのは、学生時代から友達と呼べる人がほとんどいなかった紗雪にとって、とても胸が痛むことだった。
 ほかの職員に秘密をバラされてしまうことと、あの二人に敬遠されてしまうことを天秤にかけるには、二人から受ける厚意はあまりにも大きすぎる。もし打ち明ける必要に迫られることがあったら、噂や真鍋からではなく、自分の口で打ち明けたい。
「――わ、わかり……ました」
「そう。いい子だね」
「……」
 真鍋が愉悦に歪ませた目と口元を見ないようにうつむき、紗雪は今にもこぼれ落ちてしまいそうな涙を必死で食い止めながら、思いっきり下唇を噛みしめた。

 *

「あ、あ……ふぅん……んんっ」
 秒針の音すらしない部屋で、紗雪の甘ったるい声だけが断続的に響く。自分でもこんな声が出るなんて思ってもみなかったけれど、それでも真鍋は「まだ足りない」とつまらなさそうに吐き捨て、双丘の頂きを転がしていた舌を歯に変えて軽く甘噛みした。
「い、痛い……っ」
「気持ちいい、でしょ? 嘘をつくとあとでひどいよ? だいぶ溜まってるし、僕、絶倫だから。そうだな、僕が満足するまで何時間かかるだろう。もしかしたら朝になってもやめてあげられないかもしれない。早く終わらせてほしいなら君が煽らなくてどうするの」
「そんなっ……」
「ほら、こんな声を聞いてもらうのも初めてなんだろ? 鳴いて僕を煽ってみせなさい」
「ああっ……」
 甘噛みに加えて反対側の乳首を摘ままれ、ぐっと引っ張り上げられた紗雪は、しわの一つさえない、まっさらなシーツを強く握りしめ、背中をのけぞらせた。乳首からビリビリと全身に駆け巡る電流は、甘苦い痛みを伴って意思とは関係なく紗雪を鳴かせる。
 言葉攻めが好きなのだろうか。真鍋はさっきからずっと、この調子だ。

 あのあと、すぐに図書館をあとにし、高級そうな車で向かったのは、青柳館長が急遽、真鍋のために用意させたというマンションの一室だった。
 青柳の家はもともとこの界隈の大地主だったそうで、マンションもいくつも持っているし、最初は青柳館長の趣味ではじめたという図書館も今では正式に公共施設として認可を与えられ、きちんと司書の資格を持った職員や住吉さんのようなパート数人で日々の運営に携わっている。
 昼間のうちに最低限生活に必要なものは運び込まれたということで、ベッドはまるでホテルのように整っていた。先にシャワーを浴びた真鍋に「君も浴びなさい」と促されて入ったバスルームも隅々まで磨き上げられていて、鏡に映った自分の姿を目にした紗雪は、底知れない不安と恐怖にシャワーに打たれながらその場に蹲り、しばらく両肩を抱いた。
 けれど「まだなのか」と催促され、渋々メイクを落として身体に泡をかける。マンションに行く前にドラッグストアでトラベル用の化粧品を買わされたので、その点では特に過不足はなく、ボディーソープもあるものを使っていいということだった。
 バスルームを出ると、すでに洗濯機が回っていた。脱いだ服の間に隠しておいたはずの下着が探しても見つからなかったので、どうやら催促しに来たときにでも真鍋が勝手に放り込んだらしい。勝手に下着を見られたことよりも、地味な女らしくそれほど凝った下着ではないことをどう思ったのだろうかと思うと、紗雪の胸に羞恥心が込み上げた。
 その洗濯機の上に、純白のバスローブが一着置かれている。どうせすることは一つしかないのだ、これを着て出てこいということだと理解するしかなかった紗雪は、思いのほか滑らかなタオル地素材のそれに一糸まとわぬ姿で袖を通し、リビングへ出ていった。
 ソファーで長い脚をゆったりと組み、ミネラルウォーターのペットボトルに口をつけていた真鍋は、紗雪を見て「なんてひどい顔をしている」と眉間に少々のしわを刻む。
 けれどそれは、これから僕に抱かれるのにどうして喜ばないんだ、という自信の裏返しのように思えてならなかった。現に、言葉や表情とは裏腹に真鍋の目はバスローブ越しに紗雪の裸を視姦しているようだったし、ともすればその目だけで絶頂させられそうだ。
 ややして軽く息を吐きだした真鍋に「ここへ」と呼ばれて横に立つと、真鍋はまず紗雪を自分の太ももの上に跨らせた。徐々に効きはじめたやや強めの空調の風が両足の間を通り抜け、紗雪はあまりの恥ずかしさに無意識に内ももに力を入れる。
 けれど真鍋はそれを許す人ではなかった。ニヤリと口角を吊り上げたかと思うと、組んでいた脚を解き、ぐいぐいと強い力でそれを広げはじめてしまった。当然、紗雪の両足はさらに大きく広げさせられ、きっちり抱き合わせたはずのバスローブの前がはだけていく。
「あ……あ」と抗議の声を漏らしたけれどクスクスと笑われるだけで、どうにもならない。
 すると、それ以前からバスローブの生地で擦れて条件反射的に硬くなってしまっていた紗雪の乳首を一つずつ指で弾いた真鍋は、おもむろにソファーの背もたれに無造作に掛けていたネクタイを手に取った。それを見て何をするつもりなのだと表情を硬く強張らせる紗雪に愉快そうに、けれど「動くな」と声を低くして言った真鍋は、慣れた手つきで紗雪の視界を塞ぎ、取れてしまわないように頭の後ろできつく結んでしまった。
 目の前が完全に暗くなる間際に見えた真鍋の顔は、ひどく愉しそうだった。唇を震わせながらじっと耐えるしかない紗雪の目からは涙がこぼれ、ネクタイに二つの染みを作る。そこに軽く口づけを落とした真鍋は、ゾッとするほど甘美な声で囁く。
「――さあ、たっぷり可愛がってあげるから、こっちにおいで」
 と。
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