カタブツ図書館司書は不埒な腰掛け館長に溺れる

白野よつは(白詰よつは)

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■6.それは0距離にする甘魔法

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 そんな自分に対して紗雪は、つくづく現金だなと思う。真鍋は〝オモチャ〟を取り返したいだけだのだとわかってはいるのだけれど、ほんの少し水城に対して嫉妬……のようなものが見え隠れしただけで、たまらなく嬉しくなってしまうのだから。
「――そうか、断ってくれたのか。よかった……」
 けれど真鍋の相づちは紗雪の想像を超えたものだった。心底安心したというように吐き出されたその言葉と、ふいに首筋に押し付けられた真鍋の熱い唇に思考が追いつかない。
『君に本気で好きになられるのは困るが、君は僕のオモチャなんだから、ほかの男に見向きもしないのは当然だ』なんて言われるのかと思っていたのだけれど、真鍋の性格を考えると、むしろそんな台詞がありありと浮かんでいたのだけれど、どうやら違うらしい。
 どうしてそんなことを言うのだろうと、紗雪はぱちぱちと目を瞬かせる。
 髪を切ったのは、いろいろと自分に気合いを入れるためでもあったけれど、真鍋に失恋することを見越してのものでもあった。
 もうすぐ真鍋は〝ひたちのもり図書館〟からいなくなる。それは変えられない。きっと気持ちを伝えても真鍋は迷惑がるだけだろうから、いっそ先に切ってしまえばいい――と。そう思ってのことだった。
 住吉さんや水城は、そのもう一つの理由に気づいていたのか、気づいていても何も言わずにいてくれたのかはわからない。けれど、髪を切ってすっきりすれば、真鍋がいなくなったあと、そう時間をかけずに住吉さんに笑って失恋話をすることもできるだろうし、早く元の生活にも戻れるだろうと思ったのだ。それは、真鍋がいなくても早く平気になりたいという、紗雪のたっての願いでもあったし、一種の願掛けでもあった。
 けれど真鍋は今、それを根底から覆そうかという台詞を吐き出した。
「え? ど、どういうことですか……?」
 想像していた結末から逸れはじめていることに、当然、紗雪は困惑を隠せなかった。
「バカか君は。こう言ったらわかるか? ……僕のほうこそ、君が好きだ」
 すると真鍋は、首筋に、ちゅっ、ちゅっ、と口づけを落としながら、器用にそんなことを言う。にわかには信じられずに思いっきり目を瞠る紗雪を窓の鏡越しに見つめながら、真鍋はもう一方の手もワンピースの背中から入れ、直に紗雪の体を抱きしめる。
「大事にしたいのに、この性格だからいつも嫌われるんだ。だから、本当に欲しいと思った人は僕のところに落ちてきてはくれない。要するに、この歳になっても小学生並みの愛情表現しかできないんだよ、僕は。好きだから、いじめてしまう。そのせいで嫌われる。そのうち、いかにも優しげなほかの男に取られて終わりだ。ずっとその繰り返しだった。それでもいいと思ってきた。……でも、君だけは、そうはいかなかった」
「……」
「初めてだったんだ、一目惚れだなんて。だからあの日、偶然休憩室に置いてあった本の中身を見て、その持ち主が君だとわかって、あんな提案を持ち出した。酷いことをした。散々君を傷つけた。でも、賭けてみたかったんだよ、あの小説の中の主人公たちに。身体の関係から入っても、気持ちが追いつき通じ合う……君なら気づいてくれるんじゃないかと思ったんだ。素直にならなければ手遅れになることをわかっていながら、脅すような真似をして君を手に入れようとしたのは、そんな僕の情けない理由からなんだ」
 ……本当にすまないことをした。でも、こんな僕を好きだと言ってくれて嬉しい。
 紗雪の体をきつく抱きしめながら、真鍋は呻くように言う。その一言だけで、今まで彼がどれほど自分の不甲斐なさを悔い、けれど、どうすることもできなかったのかが伝わってくるようで、紗雪はそっと、自分を抱きしめる真鍋の腕にワンピース越しに触れる。
 真鍋が自分を好きだなんて、まして一目惚れだなんて、なかなか信じられる気がしない。でも、触れた真鍋の腕も少し震えていて、それがかえって紗雪の頭の中でパチ、パチとパズルのピースを嵌めていくようだった。
 今まで、苦しかったり切なかったりするのは、自分ばかりだと思っていた。けれど、真鍋のほうこそ常に感じていたのかもしれない。うまく言葉や態度で示せないもどかしさ。好きなのに嫌われるような態度を取ってしまう焦りや葛藤。――変わりたくても変われない自分に対する憤り。
 それは、形こそ違えど、紗雪も同じだった。
 この人を変えてあげたい。紗雪は思う。
 首筋に顔を押し付けるようにして俯く真鍋の頭に、そっと自分の頭をもたせ掛ける。完璧な人だとばかり思ってきたけれど……どうしよう、すごく可愛い。すごく愛しい。
 紗雪のその仕草にピクリと反応した真鍋は、それでも許しを請うようにさらに紗雪の首筋に顔を埋めた。そこから熱いくらいの想いが浸透してくるようで、紗雪は真鍋の頭に自分の頭を摺り寄せる。すると「……許してくれるのか?」と弱々しげな声がした。ふ、と笑ってしまいながらも「はい」と答えれば、真鍋も「ふ」と笑い返し、また首筋にキスを落とされながら「ありがとう」と甘く囁かれた。
「ん……っ」
 やがて、ちゅっ、と音を立てて唇を離した真鍋は、つと顔を上げ、すでに恍惚とした表情になっている紗雪を鏡越しに見つめながら、君は大きな勘違いをしているね、と言う。
 紗雪の息はすでに上がりかけていて、思考も濁りがちだ。そんな紗雪の顎に優しく手をかけ、やや上向き加減で正面から窓越しに自分と向き合わされると、今、自分がどれほど体に力が入らない状態になっているのかがよくわかって、ひどく恥ずかしかった。けれど真鍋は、肩で紗雪の後頭部を支えると、窓に映る紗雪の目をしっかり見つめて言う。
「君はさっき、自分がブスだから目隠しをするし手も拘束するんじゃないかと言ったけれど、それは違う。窓に映る自分をよく見てみなさい。どうしてこんなに綺麗な女性をブスだと言えるんだ? 滑らかな白い肌も、豊満な胸も、華奢な肩や折れてしまいそうに細い腰も、僕は一目見た瞬間から煽られっぱなしだというのに、君は自分の何を見ている?」
「あ……ん、ふ……ん」
 言葉で言うのと同じ部分を撫でられ、くすぐられ、爪で甘く引っかかれ、紗雪の口からはこらえきれずに甘い声が漏れていく。頭はもう、ほとんどまともに働いていない。真鍋が身体をまさぐる手を止めようとする手にも力が入らず、ただ添えるだけだ。
 そうして甘い疼きを植え付けていく合間にも、真鍋の言葉は止まらない。
「君が同性から敬遠されがちなのは、彼女たちが君に醜い嫉妬しているからなんじゃないのか? 君が綺麗で可愛いから、男はみんな君に夢中になる。それじゃあ、モブの彼女たちは永遠に出番がない。君は地味に徹していても十分に人目を引くからね。面白くないんだよ。だから子供じみた嫌がらせをして君から自信を奪い、精神的に追い詰めるんだ。そうやって彼女たちは優越感を得る。――なんて醜いんだと思わないか? ブスなのは、妬ましい嫉妬しかできず、君と真っ当に勝負しようとしない彼女たちのほうだ」
「あ、っ……んんッ! ……ま、真鍋さん、どこを触って――」
 真鍋の手がするりと下腹部に伸びてきたので、さすがに焦った紗雪は真鍋の腕を必死に掴む。さっき、朝から出かけていたと言ったはずだ。シャワーも浴びずにそんなところを触られたら、かなわない。
「そんな女なんかに負けるんじゃない。君は、心も身体も美しい」
「ぅんんっ……ふ、はあっ……あっ、ああっ……」
 けれど、その甲斐虚しく真鍋の手は下へ下へと伸び、内ももをなぞってショーツに触れると、あっさりと脇から中への侵入を果たす。自分でも自分の身体が恥ずかしくなるほど濡れているそこに抵抗なく指を挿入した真鍋に、そんな力強い言葉をもらいながらじゅくじゅくと掻き回されると、もう声に抑えなんて利くわけがない。
 しばらく触れられていなかった興奮も相まって、紗雪は立っているのも覚束なく、部屋に入ってすぐに上着を脱ぎ捨て、ワイシャツ姿になっている真鍋に必死にしがみつくしかなかった。
「ああ、もうこんなに……。指で一回イクか? 中途半端なままじゃ君もつらいだろう?」
 仰け反るようにして身体を震わせる紗雪を厚い胸板で支えながら、真鍋は余裕綽々と反対の手も予測不能に動かしはじめる。真鍋のほうだってスラックスの中が切なく疼いているくせに、硬さも大きさも先ほどまでの比ではないくせに、どうしてそう、意地悪なことを言うのだろうか。
 どうやら真鍋は、すっかり元に戻ってしまったらしい。さっきまではあんなに可愛く、守ってあげたいほどに愛おしかったのに、もうその影はどこにもない。
 今はただ、獲物を前にした獣のようだ。
「ああっ、あ……っ、そこ、ぃや……」
「嫌なもんか。きつすぎるくらいに締め付けてくるのに、このまま抜いてもいいのか?」
「いや……っ、あっ、はぁっ……で、でも、もう立っていられません……」
「ああ、そうだろうね。足が震えてる。なんて可愛いんだろう、紗雪は」
 そのくせ、紗雪の中を遊ぶようにかき混ぜながら、頭ではしっかりと冷静に状況分析なんかしたりして……。言われなくても、紗雪が一番わかっている。与えられる快感に従順に喘ぐことしかできないながらも、改めて真鍋の意地悪さに感心させられるばかりだ。
「……真鍋さんの意地悪……」
「うん、すまない。こういう性格なんだ、許してくれたら嬉しい」
「……ひどい人です」
「はは。それもわかってる」
「……んあっ! いや、やだ……っ、一人でイきたくない……っ」
 実際にそれを声に出すと、途端に真鍋の指の動きが激しくなった。クイ、と鈎針のようにして中のイイトコロを擦る指は長く硬く、本気で指だけでイかせようとしているのがよくわかる。
 一人は恥ずかしい。ましてどんどん乱れていく自分を見ながらの絶頂なんて、羞恥心に耐えられるわけがない。けれどそこに乳首を弄る手や耳朶に寄せられる唇が重なれば、陥落も時間の問題だったと言える。
「いいよ、見せて。僕にはただのご褒美だから」
「あっ、ああっ――」
 そう甘く囁く声が引き金となり、紗雪は、真鍋と、窓の鏡越しに一部始終を見ている自分の前でビクビクと腰を震わせてしまう。はぁ、はぁ……と息を荒くしながら鏡越しに真鍋をキッと睨むものの、その顔はあまりにも迫力がなく、どうしようもなかった。
「僕は、君に夢中になりすぎている自分の顔を見られるのが恥ずかしいんだ。手首を縛るのは、君に触れられるだけで抑えが利かなくなりそうで怖から。前まではセックスを楽しむための延長線上でそういうことを相手に求めてきたけれど、君だけは違う。顔を見られるのも無理だし、触れられるのも恥ずかしい。でも、先に紗雪が鏡の自分も見ている前でイったからね。今なら僕も、自分の恥ずかしい顔を見せられそうだよ」
「それ、どんな屁理屈ですか……」
「でも実際、そうなんだ。嫌いになったかい?」
「いえ、自分でも呆れるくらい、あなたが好きです……」
 はは、それはよかった。そう言って真鍋は満足そうに笑い、紗雪に唇を寄せる。
「ん……っ」
 そうして当たり前のように受け入れたキスは、今までしたどのキスよりも濃密で、蜜のように甘く、充溢感や多幸感に溢れていて。ああ、思いが通じ合っても、もうすぐこの人は図書館からいなくなってしまうんだな……と一抹の寂しさを覚えながらも、夢中で唇や舌を貪り合ってしまうほど、気持ちのいいものだった。
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