カタブツ図書館司書は不埒な腰掛け館長に溺れる

白野よつは(白詰よつは)

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■6.それは0距離にする甘魔法

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 ――と。
「真鍋さん」
「なん……んっ⁉」
 その瞬間、紗雪は体が勝手に動き、はっと気づいたときには真鍋の唇を自分の唇で塞いでいた。自分で取った行動に驚いて目を見開くと、超至近距離で真鍋も目を瞠っている。
 まるで時間が止まったかのような沈黙。当の紗雪でさえ自分が今、何をしたのか状況が把握できない空白が、一瞬か数瞬か、その場に静かに横たわった。
「な、何をするんだ……っ」
 そんな中、先に唇を話したのは真鍋のほうだった。肩を掴まれ強い力で引き剥がされた紗雪は、けれどそんな真鍋を真っすぐに見つめて思いを吐き出していく。
「でも、こうしないと黙ってくれないじゃないですか。私は今日、ここに乗り込むためにこんな格好で来たんです。浮いた話の一つもない私のことを心配した母が、義理の姉と相談して私に内緒で結婚相談所に申し込んで、パーティーがあるから行ってみないかって。でも私は真鍋さんのことが好きだからっ! どうしてもほかの男の人に会う気にはなれなかったから! だから精いっぱい着飾って、自分で自分に魔法をかけて、パーティーには参加しないことと、相談所も退会させてほしいって言うために、ここに……っ」
「……じゃあ、用事というのは」
「そうです。今言ったこと、そのままです。どうして真鍋さんが会場の近くにいたのかはわかりませんけど、そのあとは真鍋さんに会いに行くつもりだったんです。館長が復帰なされば、真鍋さんとはそれっきりになってしまうことは十分わかっているつもりだったんですけど……だから何も言わないつもりだったんですけど、やっぱり無理で……」
「……」
「だけど、それがこんなに大勢の前で告うことになるなんて……」
 言いながら、今さら猛烈な恥ずかしさが込み上げ、言葉尻は消え入りそうなほどに萎んでいった。今にもスタッフに食って掛かろうかという勢いだった真鍋をどうにかして止めたい一心で勝手に体が動いた結果が公開キスだった手前、もうとっくに恥ずかしいも何もない状況下なのだろうけれど。
 でも、沸点まで到達した熱が徐々に引き、正気が戻ってくると、その反動は思ったよりずっとずっと大きなものだった。ソワソワと周囲に目を走らせながら、紗雪の胸はもう今すぐこの場から逃げ出してしまいたい気持ちでいっぱいだ。
「そうか……」
「ん⁉ んっ……うっ……んんッ」
 すると、小さく呟いた真鍋が、何を思ったのかお返しだと言わんばかりに紗雪の唇を塞いできた。驚いて目を瞠り、必死に真鍋を押し戻そうとするけれど、唇を押し当てるだけのキスだった紗雪とは違って、真鍋のキスは人前でしてもいいキスのレベルを優に超えたものだった。
 大勢の人が見ているのに、しかもすぐそばには男性スタッフもいるというのに、真鍋のキスは紗雪の口内を執拗に舌でねぶり、いやらしく歯列をなぞり、否が応にも首筋や胸の先端、下腹部など敏感な部分をゾワゾワと反応させていく。
 くちゅくちゅ、と唾液が絡み合う音や真鍋の蠢く舌に翻弄されているうちに、きつく閉じていた紗雪の瞼に力が入らなくなってくるのは必至だった。ぐっと寄せていた眉根もいつの間にかその力を緩めていて、やっと唇を離してもらったときには、紗雪はもう自分が他人に見せてもいい顔をしている自信が、ひとかけらもなかった。
「あ……はぁ……」
 久しぶりのキスは、当然、紗雪の思考回路や理性を麻痺させる。絡み合いすぎてどちらのものとも判然としない唾液が光る紗雪の唇を親指でぐっと拭った真鍋は、蕩けきった顔の紗雪を一瞥すると、ただ呆然と見ているしかなかったスタッフに品のいい笑みを添え、
「そういうことなので、この子は僕が引き取ります。お騒がせして申し訳ありませんでした。退会の費用や会場に混乱をきたした代償は、すべて僕のほうで請け負いますので、この名刺の電話番号に遠慮なく連絡してください。それでは」
 まだなお呆然としたまま「あ、はあ……」としか言えないスタッフに名刺を渡すと、今度は紗雪の体を引き寄せ、肩を抱き、悠然と会場をあとにしたのだった。

 *

 そうして連れてこられた先は、見るからに高級そうな佇まいのホテルの一室だった。一泊いくらするのかはわからないけれど、夏休みで地方客が多く空いている部屋が少ないと受付に言われると、どこでもいいから泊まれる部屋を、と間髪入れずに真鍋が言い、それでしたら、と案内されたのが高層階の部屋だった。
 階下には眩いばかりの夜景が望め、遠く電波塔が光を放っているのが見える。窓辺ではそんな都会の夜を一望でき、紗雪は今、真鍋に背中から抱きしめられる格好でそこに立っていた。――のだけれど。
「あ、あの、真鍋さん。目隠しと手は……」
「必要ない。もう我慢しすぎておかしくなってるんだ、このまま抱かせてくれ」
「でも私、今日は朝から出かけてて、汗臭――んっ……!」
「それは僕も同じだ。急に得意先から呼び出しがあってね。会場の近くで君を見つけた頃は、やっと仕事が片付いて帰ろうとしていたところだったんだ」
 真鍋の手がワンピースの背中から侵入し、脇腹をなぞって胸のふくらみに触れると、紗雪はたまらず唇からわずかに声を漏らしてしまった。先ほどのキスで身体には十分に熱が灯っている。触られるだけで敏感に反応してしまうのは致し方なかった。
 しかも真鍋は、当然のように目隠しも手首を括ることもしないと言う。本来それは当たり前のことなのだろうけれど、とかく紗雪と真鍋との間では今までになかったことで、紗雪は背後から侵入してくる真鍋の手に身を委ねつつありながらも、当惑してしまう。
 女になるときでさえ自分のスタンスを曲げなかった真鍋が、今日は一体、どうしたというのだろう。SEの仕事が急に忙しくなったのは、紗雪も前から知っていた。太ももに当たる真鍋のソレがすでに大きくなっているのを感じると、その間、ほかの女性で息抜きをする暇もなかったのだろうこともわかる。――でも。
「真鍋さん、でも……。真鍋さんは、感じている顔を見るのは好きじゃないんですよね? 自分の顔を見られるのも好きじゃないし、目隠しをして手首を拘束するのは、私がブスだから、ブスが感じる顔を見たくないし、ベタベタ触られるのも嫌だからだと……」
 紗雪は、どうしても聞かずにはいられなかった。水城のおかげで自尊心も自信もついてきたし、今日は頑張って自分を着飾ってもみたけれど、当の真鍋を前にすると、聞くに聞けずにいたことが、つい口からこぼれてしまった。
 もしそれが紗雪の推測通りだとするなら、きっと真鍋は途中で萎えてしまうだろう。それは上手に煽れない自分の責任だと紗雪は思う。それならいっそ、いつも通りに抱かれたほうが、どれほどいいだろうか。
「は? 誰が君をブスだと言ったんだ。誰だ、言ってみなさい」
 しかし真鍋は、とたんに語気を鋭くすると、鏡のようになって自分たちの姿が映し出される窓越しに、目に憤りの色を浮かべて紗雪を見据えた。ワンピースの中に侵入した手はそのままに、じっと動きを止めて紗雪の言葉を待っている。
「……だ、誰にというわけではないですけど、昔から私、同性によく思われなくて……。学生時代は、たまに好意を寄せてくれる人もいましたけど、返事を考えている間に、みんな手のひらを返したように冷たくなって素っ気なくなってしまうんです」
 仕方なしに、紗雪はおずおずと口を開く。
 まだグジグジと膿を持ったまま、おそらくずっと治らないだろう傷を自分で抉ることに胸の痛みが伴うけれど、真鍋の剣幕に押されてしまって、うまくはぐらかすことができない。それに、どう足掻いたところで真鍋にはすぐにバレてしまうだろう。
 それならいっそ、自分の口で言ったほうがいい。
「……きっと、告白を真に受けて一人前に悩むブスの姿を見て楽しむのが目的だったんだと思います。もしOKの返事をしたら付き合わなきゃならないし、適当に遊んで捨てるにしても、私が男の人だったら抱けないですよ、ブスなんて。こんな性格だから、同性にはイライラされるんだってことも、わかってます。ひたちのもり図書館は前に勤めていた図書館からの転職なんですけど、前の図書館では陰口とか、根も葉もない噂とか、ロッカーの中身が更衣室に散らばっていたりとか、陰湿なこともけっこうあって……」
「それで?」
「耐えられなくて退職して、青柳館長に拾ってもらうまでは、派遣の仕事を。でも、小さい頃から、だいたいそんな感じなんです。気の置けない人なんて、住吉さんくらいです。だから、心配した母が義理の姉――兄がいるんですけど、そのお嫁さんから結婚相談所の話を聞いて登録したんだと思います。もちろん母や義理の姉の気持ちは嬉しかったです。でも、まるで私をあの家から追い出そうとしているように思えてしまうこともあって、そんな自分が嫌で……。最初にきちんと断ればよかったんですけど、小さい頃からたくさん心配をかけてきたので、母に対してなかなか強く出られなかったんです」
「だったら、どうして今日は?」
 問われて、紗雪は反射的に下唇を噛みしめた。
 どうして今日は、親の善意を欺くようなことをした? どうしてそういう気になった? と問う真鍋の視線は鋭く、また、ともすれば水城との間にあったことすべてを知っている上で聞いているようにも思えて、紗雪はすぐには口を開けない。
 水城とは誓って何もない。けれど、彼に背中を押されてここまで来たことを説明するには、そうなるに至った経緯を話さなければならないだろう。そうなると、真鍋の機嫌はますます悪くなると思われる。
 さっき、パーティー会場の受付に向かおうとしたときの、我を忘れたような剣幕を思い出して、紗雪の口は堅く閉じられてしまう。
「そ、それは……」
 正直に言うに越したことはないはずだ。でも、なかなか次が出てこなかった。
「嫌いではないのなら、僕が怖いのか? ずっと震えて怯えている」
 すると真鍋は、どうしたらいいのかわからない、というように切なげに微苦笑して唐突にそう言ってきた。ふいに落とされた脈絡のない問いかけに紗雪が思わず「え?」と聞き返すと、真鍋は「僕のせいなのはわかっているけど、君はいつもそうだ……」と、さらに切なげに瞳を揺らす。
 真鍋に言われて、紗雪はそういえばずっと震えていたことに気づく。
 怖くも、ましてや嫌いでもなく、単に自分の傷を抉ることや、会場に乗り込むに至った心境の変化をどう説明したら理解してもらえるだろうかと考えあぐねていたからなのだけれど、真鍋にはもしかしたら、怖がられていると感じてもおかしくない態度だったかもしれない。
「違うんです。水城さんに背中を押してもらって、今日はこんな格好なので……それをどう説明したらいいか、わからなかっただけなんです」
「……水城に?」
 慌てて弁明すると、再び真鍋の眼光が鋭くなる。
 この人はどこまで知っているんだろうと紗雪は思う。ここ最近は特に、同じ図書館内にいてもほとんど専門図書棟から出てこない日々が続いていたのに、水城の名前に対する反応は、やはりほかとは違うように思う。
「どういうことだ?」
「あの、誤解しないで聞いてほしいんですけど……その、告白、をされて。でも、それと同時に真鍋さんのことが好きだってことにも気づいて。いろいろ良くしてもらったんですけど、昨日、きちんとその返事をしたんです。私をここまで変えてくれたのは水城さんですから、そんな彼から〝変わった〟って言ってもらって、そうか、私は変わったんだなって自信がついて。だ、だから、自分の気持ちは曲げられないって腹が据わって……」
 再度、鋭く聞かれて、しどろもどろになりながら答える。
 どう説明したらいいかと考えあぐねていたけれど、いざ言ってしまえば驚くほど胸の内がすっきりして、いつの間にか体の震えも自然に止まっていた。
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