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1章
5話 探検家適正試験
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翌朝10時 都内某所 適正試験会場の真ん中に3人は立っていた
巨大なドームの中に作られた試験会場は普段ライブやコンサート、野球でも使用される場所だった
「凄い…このドーム、野球するとこだよね?ニュースでいつも見るところじゃん。なんで中変わってるんだろ…球場にはとても見えないや…。」
キュアーは初のドームのため目新しさに気を取られていた
「キュアーさんはヒアラさんの精霊として参戦してください。また、本人の意思により公への公表は避けますが、ここでは審査の基準とするため精霊の力を使用してください。」
ドーム全体に響き渡るスピーカーから昨日の受付嬢、アカネの声が聞こえる。実況席みたいなところから見てるみたいだ。見上げるとその横に3人いるので、あれが審査員なのだろう
「ドーズさんも、気を付けてください。あなたの実力は知っていますが、キュアーさんがほんとに精霊だった場合、2対1なので命の危険があります。お互い殺さない程度に本気でお願いします!」
「嬢ちゃん達、俺は全力でぶつかるからよ、そっちも全力で答えてくれると嬉しいぜ。」
「わかった!2対1だから本気にはなれないかもだけど、世紀末おじさんの意思には答えるよ!」
いよいよ始まる…緊張で唾を飲む空気感が少し流れる
「それでは…適正試験、バトル開始!」
会場全体に大きなブザー音が鳴り響く
まずお互い大きく距離を取る
「まずは俺の武器を見せてやる!これが2対1でもやれる理由だ!こい!ツインハンマー!!」
掛け声と同時に入場口からカンカンカンと大きな音を鳴らしながら棺のような箱がでてきた。
中から頭1つ分くらいのハンマーを2個取り出す
「こいつが俺の愛用武器、ツインハンマーだ!!両手に持ったハンマーで全てを薙ぎ倒す!」
「…キュアー!行くよ!」
「分かった!」
サイハイソックスから2本の棒を取り出して走る。ハンマーは大振りなので小回りが利くように連結はしない方がいいはずだ
キュアーも一緒に走り出す
「スキル圧縮…!全強化付与!」
スキル圧縮とは、複数バフのスキルを得たキュアーがいちいち詠唱するのめんどいからと独自で開発した強化スキル?のようなものである
「キュアー!ありがとう!はぁっ!」
筋力、俊敏性、耐久性、運を全て上昇。状態異常無効その他諸々…とにかく全部らしい。
「!?おいおい!なんだそれ!くそっ!」
合わせ技の奇襲を叩き込むがそれを何とか避けるドーズ。
しかし顔を上げると投げられた棒が奇襲をかけてくる
「おいおい!武器を投げるな!」
体勢を整える間もなく襲ってきた棒をハンマーで弾いたドーズ…だが
「おじさん…私よりヒアラ見るなんて…嫉妬しちゃうな。」
いつの間にか後ろに回り込んでいたキュアーの渾身の蹴りがドーズの後頭部にめり込む
「がぁっ!」
ドーズは壁際まで蹴り飛ばされ大きな音と共に壁にめり込んだ
「…やったかな?」
「それフラグね」
棒を拾いキュアーと合流するとドーズが飛んだ先を見る。
土煙が上がっていてよく見えない。
よく目をこらそうと少し前に出た。その瞬間ーー
「ヒアラ!危ない!!」
キュアーに後ろから襟を引っ張られる。私の視界に入ってきたのは…ハンマー。
紙一重で眼球の寸前を横に通り過ぎたハンマーは再び土煙の中に戻って行った
真横から!?飛んできた?なんで横から?いつの間に!?
「ふぅ…今のが当たらないか…やっぱり嬢ちゃん達、普通じゃないな」
土煙の中からドーズの声が聞こえる
ゆっくりと歩いてきたドーズは…全く傷ついていなかった
「嘘でしょ~?前の人もだけどなんでこう男の人は硬いのかなぁ!」
「それはな…スキルだよ、スキル:頑丈」
「あー、なるほど。」
ゆっくりと迫りながら余裕を見せるドーズ。体の汚れをはたきこちらを見据える
「今度は…こっちのターンでいいか?」
さっきまでとオーラが違う、奇襲をかけたから上手く決まってただけでこれからは本気だということが何も言わずとも体で感じた
「来るよ!」
キュアーの掛け声で再度仕掛ける2人
「今度は上手くいくかなぁ!?」
ドーズも勢いよく走り出しヒアラにハンマーを繰り出す
「大振り!当たらないよ!」
スライディングでハンマーを避け立ち上がった瞬間、ぐるっと回転し裏拳のように繰り出されたハンマーが右肩に叩き込まれる
「きゃあああ!!」
バフにより打撃耐性があるため軽傷で済んだがそれでもかなり飛ばされた。ズキズキとした痛みが染み渡る
「ヒアラをこれ以上やらせない!」
今度は正面から突っ込むキュアー
ドーズはふたつのハンマーを頭上に大きく振りかぶる
「その動き、封じさせてもらうぜ!スキル:強震激!!」
地面に勢いよく振り下ろされたハンマーはその点を中心に大きな地震を起こした
「範囲広い!…けど!効かないよ!」
地震が届く前に大きく飛んだキュアーはムーンサルトからキックを繰り出す
「…それを待ってたんだ!空中なら避けられねぇよなぁ!くらえっ!」
そう言ってドーズはハンマーを…投げた
「えぇ!?投げるのぉ!?」
キックの体制だったので正面から飛んでくるハンマーを何とか蹴り飛ばすキュアーだが、今度は背後からの打撃を食らう
「!?なんで…っ!?」
「キュアー!その人のハンマー!後ろから来たやつは投げる瞬間消えてる!あとブーメランみたいに戻っていく性能があるみたい!」
落ちたキュアーの背後からハンマーが飛ぶのを見ていたが、明らかに何も無いところから出ていた。それに最初私を襲ったハンマーや今の攻撃…間違いなく何かしらのスキルを使ってるはずだ
「キュアー、1度落ち着こう。あの人、分かりやすくスキルを大声で叫んでるように見えて決め手の一撃になるスキルは無詠唱で仕込んでると思う。だから手元に集中してハンマーが無かったらお互いでフォローしあうって感じでいこう。」
「…そうだね、正直世紀末おじさんに殺気が無いせいでかえってこの攻撃が読めないんだよね。」
薄々感じてはいたけど…ドーズさん。強い!
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「審査員、どう見ますか?あの2人は。」
実況席から観戦している4人は手元の書類に要所要所チェックをしながら2人について語っていた
「うん。ヒアラさんの方は身体能力がすごいね。正直まだ探索者にもなってない田舎者とは思えないな。この後の天啓の検査で何が適性か次第で化けるんじゃないかな」
「そうね。今はキュアーさんに引っ張ってもらってるようにも見えますがそれぞれの役割をしっかり分ければかなりの連携が取れると思いますわ。」
「では、そのキュアーさんは?」
「結局最初のあれはなんだったのかね、ヒアラさんにものすごい量のバフを一瞬でかけてたが」
「ちょっと分かりませんね。」
「一般的な、スキルを体から放つという形より、空間に展開したスキルを両手で圧縮して放った…みたいな表現だと分かりやすいのかしらね?」
「どちらにせよ…無詠唱でそれはとても人間技では無いな」
「…では彼女を精霊と認めると?」
「ふむ、それはなんとも言えんな。確かにとてつもないが、決定打がない。我々が知ってる精霊では無いことは確かだが、あと一手欲しい。」
「そうですね…見せてくれるといいですが…ドーズさんに頑張ってもらいましょう」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「ヒアラ上!」
キュアーの掛け声に合わせて避ける
「キュアー右後ろ!」
キュアーも走りながら攻撃と回避を続けている
「近距離に持ち込めばすぐハンマーを戻されたり肉弾戦で耐えられる…でも遠距離も隙がない…か」
改めて言葉にするとバランスの取れた攻撃だ。攻守にわたってかなり練度がある。
「そりゃそうよ。なんせ俺はハンマーの天啓だからな!」
「ハンマー!?強そう!」
キュアーは久しぶりにかなり手応えのある戦いでテンションがかなり上がっていた
(キュアー!ちょっと作戦!天啓ならこの強さも頷ける…けどここまでの戦いでドーズさんの隙…見つけた気がする!)
テレパシーは一度繋いだ相手となら、キュアーからじゃなくても自由にやり取りができる。
(多分私も考えてること同じだと思う。でもそうなるとさすがに換装するしかないかなぁ)
(この際やむを得ないよ。それに試験内容も精霊の力を見せるってことだったし、どうせなら思い切りやっちゃおう!)
(分かった!ヒアラは仕掛けて!私もすぐ行きたいけど、せっかくなら不意をついて隙を作りたいからもう少し合わせながら様子見るね!)
「おいおい!さっきから避けるばかりで何もしてこねぇなぁ!天啓って聞いてビビったか?それともまだ何かあるのかぁ!?」
「正解は後者…!負けるわけにはいかないんですよ!」
両手に持った2本の棒を連結させて一撃を大きく振りかぶり突っ込む
「はっ!力比べってか!?そんなただの棒で何ができるってんだ!!」
「はぁああ!!」
高く飛び上がり全体重を乗せた一撃を放つ
しかしドーズはその一撃をものともせずに弾き返す
「うあぁ!」
弾かれたヒアラにドーズは追い打ちをかけようとハンマーを投げる体勢に振りかぶる
「おら!まずはヒアラちゃんからリタイアしてもらうぜ…」
しかしその瞬間妙な違和感を感じる
ん?ヒアラの嬢ちゃんのこの違和感はなんだ?次の攻撃が来るのにわざと大袈裟に飛ばされて受け身すらとる気がないような…
まさか!!
「そのまさかだよっ!!」
今度はかなり下段から滑り込んできたキュアーがドーズの下を完全にとる。
「くぅ!だが!まだ見えてる!」
投げの体勢を崩す事が出来ないと判断したドーズは反対の手に持っていたハンマーをその場で離しキュアーに向かって落とす
「これならどうだ!」
キュアーも滑り込んできた状態で体勢が悪い!ハンマーを避けることが出来ず頭上に落ちる…その瞬間
「ここ!この瞬間だ!」
ヒアラは光に包まれ胞子でハンマーを弾く
「なにぃ!?」
「まさかの展開は…1度じゃないからっ!」
精霊になったキュアーは完全に体勢を整えドーズの真下から腹部に手を当てる
「精霊武術!三式!発勁ー!!」
腹部に当てられた両手から強烈な発勁を繰り出し、それをまともに食らったドーズは上空10メートルくらいまで跳ね上がった
「がはっ…!」
スキル:頑丈は外からの攻撃を軽減するスキル…それに対して内部に効く発勁を撃つとは…やるじゃねぇか…俺の…負けだ…。
ドーズは空中で意識を失った
「キュアー!やりすぎじゃない!?」
「大丈夫!ほらっ」
落ちてきたドーズは地面に直撃する寸前にふわっと下からの浮力で勢いを殺しゆっくりと落ちた
「ほらねっ!」
キュアーは人間体に戻っておりボロボロの服をはたきながら笑った
「勝負あり!ヒアラさん、キュアーさん、ご苦労様でした。これにて試験は終わります。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「ドーズさん、大丈夫ですか?」
「うっ、あぁ、大丈夫だ。ヒールしてくれたのか?体の痛みが消えてるな」
「キュアーが。」
「おぉ、嬢ちゃんか、ありがとな。…それにしても嬢ちゃん、最後の一撃はすごかったな。思わず気絶しちまったぜ。」
頭を抱えながらドーズは起き上がりキュアーを賞賛する
「へへっ!ありがとう!でもおじさんも強かった!天啓ってほんとに強いんだね」
「いや、俺は天啓が最近発覚して鍛えてる途中だから正直まだまだなんだよ」
「えっ!あんなに強かったのに!」
「うーん、そうだな、まず昨日の部署の中では天啓持ちが俺とアカネさんしかいなかったから実力は上の方だったが、探索者の中だとかなり下の方だぞ」
「え!?受付嬢さん、アカネさんって天啓持ちなんですか!?」
「呼びました?」
後ろの方から声が聞こえ、アカネと審査員の3人が歩いてきていた
「私が本来の試験官。剣聖の天啓、アカネです。」
け、剣聖ーーー!?!?めちゃくちゃかっこいいぃぃぃぃイイ!!
「安心してくださいっ!私は試験官をしなかったのでヒアラさん達にとっては受付嬢ですから!」
「あ…そうですか。よかったです…。」
「あっ、そういえば!試験の結果でしたが!合格でーす!」
「え!?思ってたよりあっさりですね!?」
「まぁ、探索者なんて沢山いるに越したことないですから、意外とあっさりなんですよ~。」
私たちの頑張りはなんだったのか…
「はは…ありがとうございます。」
「やったねヒアラ!!」
「ほんとにね…キュアーの精霊武術とか初めて見たよ、あれすごいね」
「え?精霊武術三式!ってやつ?あれその場で考えた適当な技だよ~へへへ、あんな技ありません!」
まさかの展開…あんな土壇場でそんなことする余裕があったなんて…やっぱりキュアーは強いと改めて感じた
「とりあえず終わった!合格だ!疲れたー!!」
やっと終わった…ドーズさん強かったけど何とか合格出来てよかった!やっとホテル代が無料になる~!!
「あっ、正式採用はまた探検課に戻って山のような書類にサインを貰ってからになりますので、よろしくお願いします。」
「え゛」
受付嬢アカネは悪魔のような笑みでにっこりと微笑んだ
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「あれ?なんか忘れてる?…まぁいっか!!」
なんだか試験会場で試験が終わった後に合流する約束とかあった気がしたけど完全に忘れてアカネ達と帰ったヒアラ達であった
「俺の事はっ!?」
誰もいなくなった試験会場でずっと待ってたノノがいた事は言うまでもない
巨大なドームの中に作られた試験会場は普段ライブやコンサート、野球でも使用される場所だった
「凄い…このドーム、野球するとこだよね?ニュースでいつも見るところじゃん。なんで中変わってるんだろ…球場にはとても見えないや…。」
キュアーは初のドームのため目新しさに気を取られていた
「キュアーさんはヒアラさんの精霊として参戦してください。また、本人の意思により公への公表は避けますが、ここでは審査の基準とするため精霊の力を使用してください。」
ドーム全体に響き渡るスピーカーから昨日の受付嬢、アカネの声が聞こえる。実況席みたいなところから見てるみたいだ。見上げるとその横に3人いるので、あれが審査員なのだろう
「ドーズさんも、気を付けてください。あなたの実力は知っていますが、キュアーさんがほんとに精霊だった場合、2対1なので命の危険があります。お互い殺さない程度に本気でお願いします!」
「嬢ちゃん達、俺は全力でぶつかるからよ、そっちも全力で答えてくれると嬉しいぜ。」
「わかった!2対1だから本気にはなれないかもだけど、世紀末おじさんの意思には答えるよ!」
いよいよ始まる…緊張で唾を飲む空気感が少し流れる
「それでは…適正試験、バトル開始!」
会場全体に大きなブザー音が鳴り響く
まずお互い大きく距離を取る
「まずは俺の武器を見せてやる!これが2対1でもやれる理由だ!こい!ツインハンマー!!」
掛け声と同時に入場口からカンカンカンと大きな音を鳴らしながら棺のような箱がでてきた。
中から頭1つ分くらいのハンマーを2個取り出す
「こいつが俺の愛用武器、ツインハンマーだ!!両手に持ったハンマーで全てを薙ぎ倒す!」
「…キュアー!行くよ!」
「分かった!」
サイハイソックスから2本の棒を取り出して走る。ハンマーは大振りなので小回りが利くように連結はしない方がいいはずだ
キュアーも一緒に走り出す
「スキル圧縮…!全強化付与!」
スキル圧縮とは、複数バフのスキルを得たキュアーがいちいち詠唱するのめんどいからと独自で開発した強化スキル?のようなものである
「キュアー!ありがとう!はぁっ!」
筋力、俊敏性、耐久性、運を全て上昇。状態異常無効その他諸々…とにかく全部らしい。
「!?おいおい!なんだそれ!くそっ!」
合わせ技の奇襲を叩き込むがそれを何とか避けるドーズ。
しかし顔を上げると投げられた棒が奇襲をかけてくる
「おいおい!武器を投げるな!」
体勢を整える間もなく襲ってきた棒をハンマーで弾いたドーズ…だが
「おじさん…私よりヒアラ見るなんて…嫉妬しちゃうな。」
いつの間にか後ろに回り込んでいたキュアーの渾身の蹴りがドーズの後頭部にめり込む
「がぁっ!」
ドーズは壁際まで蹴り飛ばされ大きな音と共に壁にめり込んだ
「…やったかな?」
「それフラグね」
棒を拾いキュアーと合流するとドーズが飛んだ先を見る。
土煙が上がっていてよく見えない。
よく目をこらそうと少し前に出た。その瞬間ーー
「ヒアラ!危ない!!」
キュアーに後ろから襟を引っ張られる。私の視界に入ってきたのは…ハンマー。
紙一重で眼球の寸前を横に通り過ぎたハンマーは再び土煙の中に戻って行った
真横から!?飛んできた?なんで横から?いつの間に!?
「ふぅ…今のが当たらないか…やっぱり嬢ちゃん達、普通じゃないな」
土煙の中からドーズの声が聞こえる
ゆっくりと歩いてきたドーズは…全く傷ついていなかった
「嘘でしょ~?前の人もだけどなんでこう男の人は硬いのかなぁ!」
「それはな…スキルだよ、スキル:頑丈」
「あー、なるほど。」
ゆっくりと迫りながら余裕を見せるドーズ。体の汚れをはたきこちらを見据える
「今度は…こっちのターンでいいか?」
さっきまでとオーラが違う、奇襲をかけたから上手く決まってただけでこれからは本気だということが何も言わずとも体で感じた
「来るよ!」
キュアーの掛け声で再度仕掛ける2人
「今度は上手くいくかなぁ!?」
ドーズも勢いよく走り出しヒアラにハンマーを繰り出す
「大振り!当たらないよ!」
スライディングでハンマーを避け立ち上がった瞬間、ぐるっと回転し裏拳のように繰り出されたハンマーが右肩に叩き込まれる
「きゃあああ!!」
バフにより打撃耐性があるため軽傷で済んだがそれでもかなり飛ばされた。ズキズキとした痛みが染み渡る
「ヒアラをこれ以上やらせない!」
今度は正面から突っ込むキュアー
ドーズはふたつのハンマーを頭上に大きく振りかぶる
「その動き、封じさせてもらうぜ!スキル:強震激!!」
地面に勢いよく振り下ろされたハンマーはその点を中心に大きな地震を起こした
「範囲広い!…けど!効かないよ!」
地震が届く前に大きく飛んだキュアーはムーンサルトからキックを繰り出す
「…それを待ってたんだ!空中なら避けられねぇよなぁ!くらえっ!」
そう言ってドーズはハンマーを…投げた
「えぇ!?投げるのぉ!?」
キックの体制だったので正面から飛んでくるハンマーを何とか蹴り飛ばすキュアーだが、今度は背後からの打撃を食らう
「!?なんで…っ!?」
「キュアー!その人のハンマー!後ろから来たやつは投げる瞬間消えてる!あとブーメランみたいに戻っていく性能があるみたい!」
落ちたキュアーの背後からハンマーが飛ぶのを見ていたが、明らかに何も無いところから出ていた。それに最初私を襲ったハンマーや今の攻撃…間違いなく何かしらのスキルを使ってるはずだ
「キュアー、1度落ち着こう。あの人、分かりやすくスキルを大声で叫んでるように見えて決め手の一撃になるスキルは無詠唱で仕込んでると思う。だから手元に集中してハンマーが無かったらお互いでフォローしあうって感じでいこう。」
「…そうだね、正直世紀末おじさんに殺気が無いせいでかえってこの攻撃が読めないんだよね。」
薄々感じてはいたけど…ドーズさん。強い!
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「審査員、どう見ますか?あの2人は。」
実況席から観戦している4人は手元の書類に要所要所チェックをしながら2人について語っていた
「うん。ヒアラさんの方は身体能力がすごいね。正直まだ探索者にもなってない田舎者とは思えないな。この後の天啓の検査で何が適性か次第で化けるんじゃないかな」
「そうね。今はキュアーさんに引っ張ってもらってるようにも見えますがそれぞれの役割をしっかり分ければかなりの連携が取れると思いますわ。」
「では、そのキュアーさんは?」
「結局最初のあれはなんだったのかね、ヒアラさんにものすごい量のバフを一瞬でかけてたが」
「ちょっと分かりませんね。」
「一般的な、スキルを体から放つという形より、空間に展開したスキルを両手で圧縮して放った…みたいな表現だと分かりやすいのかしらね?」
「どちらにせよ…無詠唱でそれはとても人間技では無いな」
「…では彼女を精霊と認めると?」
「ふむ、それはなんとも言えんな。確かにとてつもないが、決定打がない。我々が知ってる精霊では無いことは確かだが、あと一手欲しい。」
「そうですね…見せてくれるといいですが…ドーズさんに頑張ってもらいましょう」
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「ヒアラ上!」
キュアーの掛け声に合わせて避ける
「キュアー右後ろ!」
キュアーも走りながら攻撃と回避を続けている
「近距離に持ち込めばすぐハンマーを戻されたり肉弾戦で耐えられる…でも遠距離も隙がない…か」
改めて言葉にするとバランスの取れた攻撃だ。攻守にわたってかなり練度がある。
「そりゃそうよ。なんせ俺はハンマーの天啓だからな!」
「ハンマー!?強そう!」
キュアーは久しぶりにかなり手応えのある戦いでテンションがかなり上がっていた
(キュアー!ちょっと作戦!天啓ならこの強さも頷ける…けどここまでの戦いでドーズさんの隙…見つけた気がする!)
テレパシーは一度繋いだ相手となら、キュアーからじゃなくても自由にやり取りができる。
(多分私も考えてること同じだと思う。でもそうなるとさすがに換装するしかないかなぁ)
(この際やむを得ないよ。それに試験内容も精霊の力を見せるってことだったし、どうせなら思い切りやっちゃおう!)
(分かった!ヒアラは仕掛けて!私もすぐ行きたいけど、せっかくなら不意をついて隙を作りたいからもう少し合わせながら様子見るね!)
「おいおい!さっきから避けるばかりで何もしてこねぇなぁ!天啓って聞いてビビったか?それともまだ何かあるのかぁ!?」
「正解は後者…!負けるわけにはいかないんですよ!」
両手に持った2本の棒を連結させて一撃を大きく振りかぶり突っ込む
「はっ!力比べってか!?そんなただの棒で何ができるってんだ!!」
「はぁああ!!」
高く飛び上がり全体重を乗せた一撃を放つ
しかしドーズはその一撃をものともせずに弾き返す
「うあぁ!」
弾かれたヒアラにドーズは追い打ちをかけようとハンマーを投げる体勢に振りかぶる
「おら!まずはヒアラちゃんからリタイアしてもらうぜ…」
しかしその瞬間妙な違和感を感じる
ん?ヒアラの嬢ちゃんのこの違和感はなんだ?次の攻撃が来るのにわざと大袈裟に飛ばされて受け身すらとる気がないような…
まさか!!
「そのまさかだよっ!!」
今度はかなり下段から滑り込んできたキュアーがドーズの下を完全にとる。
「くぅ!だが!まだ見えてる!」
投げの体勢を崩す事が出来ないと判断したドーズは反対の手に持っていたハンマーをその場で離しキュアーに向かって落とす
「これならどうだ!」
キュアーも滑り込んできた状態で体勢が悪い!ハンマーを避けることが出来ず頭上に落ちる…その瞬間
「ここ!この瞬間だ!」
ヒアラは光に包まれ胞子でハンマーを弾く
「なにぃ!?」
「まさかの展開は…1度じゃないからっ!」
精霊になったキュアーは完全に体勢を整えドーズの真下から腹部に手を当てる
「精霊武術!三式!発勁ー!!」
腹部に当てられた両手から強烈な発勁を繰り出し、それをまともに食らったドーズは上空10メートルくらいまで跳ね上がった
「がはっ…!」
スキル:頑丈は外からの攻撃を軽減するスキル…それに対して内部に効く発勁を撃つとは…やるじゃねぇか…俺の…負けだ…。
ドーズは空中で意識を失った
「キュアー!やりすぎじゃない!?」
「大丈夫!ほらっ」
落ちてきたドーズは地面に直撃する寸前にふわっと下からの浮力で勢いを殺しゆっくりと落ちた
「ほらねっ!」
キュアーは人間体に戻っておりボロボロの服をはたきながら笑った
「勝負あり!ヒアラさん、キュアーさん、ご苦労様でした。これにて試験は終わります。
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「ドーズさん、大丈夫ですか?」
「うっ、あぁ、大丈夫だ。ヒールしてくれたのか?体の痛みが消えてるな」
「キュアーが。」
「おぉ、嬢ちゃんか、ありがとな。…それにしても嬢ちゃん、最後の一撃はすごかったな。思わず気絶しちまったぜ。」
頭を抱えながらドーズは起き上がりキュアーを賞賛する
「へへっ!ありがとう!でもおじさんも強かった!天啓ってほんとに強いんだね」
「いや、俺は天啓が最近発覚して鍛えてる途中だから正直まだまだなんだよ」
「えっ!あんなに強かったのに!」
「うーん、そうだな、まず昨日の部署の中では天啓持ちが俺とアカネさんしかいなかったから実力は上の方だったが、探索者の中だとかなり下の方だぞ」
「え!?受付嬢さん、アカネさんって天啓持ちなんですか!?」
「呼びました?」
後ろの方から声が聞こえ、アカネと審査員の3人が歩いてきていた
「私が本来の試験官。剣聖の天啓、アカネです。」
け、剣聖ーーー!?!?めちゃくちゃかっこいいぃぃぃぃイイ!!
「安心してくださいっ!私は試験官をしなかったのでヒアラさん達にとっては受付嬢ですから!」
「あ…そうですか。よかったです…。」
「あっ、そういえば!試験の結果でしたが!合格でーす!」
「え!?思ってたよりあっさりですね!?」
「まぁ、探索者なんて沢山いるに越したことないですから、意外とあっさりなんですよ~。」
私たちの頑張りはなんだったのか…
「はは…ありがとうございます。」
「やったねヒアラ!!」
「ほんとにね…キュアーの精霊武術とか初めて見たよ、あれすごいね」
「え?精霊武術三式!ってやつ?あれその場で考えた適当な技だよ~へへへ、あんな技ありません!」
まさかの展開…あんな土壇場でそんなことする余裕があったなんて…やっぱりキュアーは強いと改めて感じた
「とりあえず終わった!合格だ!疲れたー!!」
やっと終わった…ドーズさん強かったけど何とか合格出来てよかった!やっとホテル代が無料になる~!!
「あっ、正式採用はまた探検課に戻って山のような書類にサインを貰ってからになりますので、よろしくお願いします。」
「え゛」
受付嬢アカネは悪魔のような笑みでにっこりと微笑んだ
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「あれ?なんか忘れてる?…まぁいっか!!」
なんだか試験会場で試験が終わった後に合流する約束とかあった気がしたけど完全に忘れてアカネ達と帰ったヒアラ達であった
「俺の事はっ!?」
誰もいなくなった試験会場でずっと待ってたノノがいた事は言うまでもない
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