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after story ~慧side~

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『この前ね、果穂ちゃんがここに観光に来たんだよ。御家族でね。子どもさんもずいぶん大きくなってたし、本当に…しっかり家族してた』


『果穂ちゃん…幸せなんですね』


『そうだね。きっと…慧君にその姿を見てもらいたかったのかも知れないね。私はこんなに幸せだよって。果穂ちゃん、慧君と話してすごく楽しそうだった。あんな可愛い顔するんだっていうくらい。北海道に来て慧君に元気もらって、今も毎日いろんなこと頑張ってると思うよ。本当に…女は強いよ』


あんこさんの優しい笑い声が響いた。


果穂ちゃんもお母さんになって、ずいぶん表情が柔らかくなってた…


ご家族みんなで買い物してくれて…


その姿を見てたら、こっちまですごく温かい気持ちになった。


自分を真剣に想ってくれてた人が幸せだと、こんなにも嬉しいのか…って。


そう思ったら、俺は雫ちゃんに心配かけたままなんだなって…ちょっと申し訳なく感じた。   


早く安心させたいけど…


それは、結婚という形では無理だから。


せめて今は、目の前の仕事を一生懸命頑張る。


その姿で雫ちゃんに少しでも喜んでもらえたら…って、そう思った。


みんなで話していたら、時間が過ぎるのが早い…


あっという間に夕方なって、親戚のみんなも集まり、あんこさんのバースデーを祝うパーティーが始まった。


カフェの前の広い場所でのバーベキュー。


北海道の新鮮な食材が揃ってる。


じゃがいもやアスパラガス、たくさんの野菜は知り合いの農家さんからのプレゼント。


ホタテやエビ、アワビなどの魚介は鮮魚店、いろいろな部位の豪華なお肉は精肉店から…


あんこさんが数年の間に築いてきた信頼で、最高の食材が無料で集まってきた。


本当に…こんなに誰からも好かれる人は、なかなかいない。


あんこさんの人間味溢れる人柄に、みんな惹かれるんだろう…
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