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お客様のために
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『ありがとう…助かったよ。迷惑かけたね』
そう言って、私から財布を受け取った。
私がその場を去ろうとした時、
『ちょっと待って…』
工藤様は私の腕を優しく掴んだ。
『ど、どうかされましたか?』
正直、私はその突然の行動に驚いた。
いつも物静かで穏やかそうに見える工藤様の目が、少し攻撃的だったから。
ちょっと怖い。
だけど、その全体からかもし出される恐ろしい程の色っぽさに私はその場から動けなくなった。
『君、松下 一花さんだよね?』
松下 一花(まつした いちか)。
確かに、私の名前。
名前を言われたことに不審な顔をしてしまったのか、工藤様が私の胸元を指さして、
『ネームプレート…』
と、つぶやいた。
『あ、はい。松下です』
そっか、ネームプレートを見たからか…
どぎまぎしてる自分に気づきながらも、なかなか冷静さを取り戻せずにいた。
こんなのコンシェルジュ失格だよ。
腕を掴んだまま、工藤様が私に近づいて小さな声で囁いた。
『…君に、お願いがあるんだ』
眼鏡の中の瞳がずっと私をとらえて離さない。
勝手に心臓がドキドキし出した。
『ど、どんなお願い…でしょうか?』
『松下さんに、いろいろ聞きたい』
『な、何をでしょうか?』
『…全部』
ぜ、全部って、何?
工藤様、距離、ち、近いよ…
それから何秒くらい経ったかな?
工藤様は、私からゆっくり離れてこう言った。
『次回作。ホテルを舞台にしたミステリーを書こうと思ってて。松下さんから、ホテルのこといろいろ聞きたいなって』
あ…
ホテルのこと。
それを聞いて、ちょっと拍子抜けしたような、ホッとしたような…変な感情になってしまった。
そう言って、私から財布を受け取った。
私がその場を去ろうとした時、
『ちょっと待って…』
工藤様は私の腕を優しく掴んだ。
『ど、どうかされましたか?』
正直、私はその突然の行動に驚いた。
いつも物静かで穏やかそうに見える工藤様の目が、少し攻撃的だったから。
ちょっと怖い。
だけど、その全体からかもし出される恐ろしい程の色っぽさに私はその場から動けなくなった。
『君、松下 一花さんだよね?』
松下 一花(まつした いちか)。
確かに、私の名前。
名前を言われたことに不審な顔をしてしまったのか、工藤様が私の胸元を指さして、
『ネームプレート…』
と、つぶやいた。
『あ、はい。松下です』
そっか、ネームプレートを見たからか…
どぎまぎしてる自分に気づきながらも、なかなか冷静さを取り戻せずにいた。
こんなのコンシェルジュ失格だよ。
腕を掴んだまま、工藤様が私に近づいて小さな声で囁いた。
『…君に、お願いがあるんだ』
眼鏡の中の瞳がずっと私をとらえて離さない。
勝手に心臓がドキドキし出した。
『ど、どんなお願い…でしょうか?』
『松下さんに、いろいろ聞きたい』
『な、何をでしょうか?』
『…全部』
ぜ、全部って、何?
工藤様、距離、ち、近いよ…
それから何秒くらい経ったかな?
工藤様は、私からゆっくり離れてこう言った。
『次回作。ホテルを舞台にしたミステリーを書こうと思ってて。松下さんから、ホテルのこといろいろ聞きたいなって』
あ…
ホテルのこと。
それを聞いて、ちょっと拍子抜けしたような、ホッとしたような…変な感情になってしまった。
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