君の視線の向かう先は。

勇黄

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関係ない。

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土曜日、僕は緊張しながら
まぁくんと駅で待ち合わせした。















何を着ていこう…。
さんざん迷っていろいろ着てみて。













白のビッグシルエットのパーカーと
黒のダメージスキニー
白のスニーカーにした。



















初デートの前の女子のように
美容院にも行って。
















ま、ちょうど行くタイミングだったし。
なんてのは言い訳に他ならないし
そもそもデートですらないのに
そんなことおかしいよね、なんて
少し自嘲気味に駅までの道を歩いた。




















駅が見えてくると改札口の横に
まぁくんが立っているのが見える。
















カッコいい。めちゃくちゃカッコいい。













白Tにグレーのロングカーディガン
黒のスキニーに黒のバッシュ。

















僕の足は知らずに駆け出していた。

















「くーちゃん!おはよ!」













まぁくんは手をふってくれる。














「まぁくん!待たせてごめんね…」















「いや。今来たとこだよ。
走んなくてよかったのに。
ふふ。……じゃ、行こうか。」















まぁくんの手が僕の頭を撫でる。
















「あれ?くーちゃん髪切った?」













(そんなことも気づいてくれるなんて…)

















うん!と顔を赤くして頷いた
僕は幸せ一色だった。

















それぞれICカードを使い改札をくぐる。


















2駅電車に乗り、歩きながら
たわいもない話をして
10分ぐらいだろうか。
















「あ、あそこが大和やまとんちだよ。」















まぁくんが指差す先には
立派な玄関の大きな家があった。














「え?これ?」















「大きなお宅だろ?
俺も最初来たときびっくりした!」















インターフォンを鳴らすと
玄関から顔をのぞかせるやまちゃん。















真仁まひとさん、くりっと!
ちわっすー!どうぞどうぞ!」
















「おう!弟くん、大和やまとは?」















まぁくんは靴を脱ぎながら聞いている。















「今、ジュース用意してますっすー!」















やまちゃんはにこやかに言い
まぁくんが頷く。















「これ、ご家族でお召し上がりください。
うちの母からです。」
















僕はちょっと緊張して
やまちゃんに母親から持たされた
菓子折を渡した。


















「ども。ご丁寧に。お母さんに
お礼を伝えて。ありがとな、くりっと!」




















僕もやっと笑顔が出た。

















真仁まひとさん、くりっとと
兄貴の部屋で待っててくださいっす。」
















「わかったよ。くーちゃん、行こ。」


















ぼーっとしている僕の手を
まぁくんは握って
自分ちみたいにずんずんと
広い家の中を進む。
















「まぁくん、よくここに
来てるんだ、ね?」

















「あー、よく奈那美ななみと4人で
ここで勉強したりしてるからな。
図書館より落ち着くんだよ。
ここんち静かだしさ。」














「そ、そうなんだ…。奈那美ななみ
そんなこと全然言わなかった…。」













「そう?…あ、ここだよ。」













ドアを開け部屋に入ると
ダイニングにあるような
机と椅子が置いてある部屋で
奥にもドアがあって…。














その中は寝室のようで
これまた大きなベッドが見えていた。















「くりっとのお母さんにいただいた
お菓子美味しそうだったから
持ってきたっす。」















そう言ってやまちゃんが来て
すぐあとにやまちゃんのお兄さんも
入ってきた。















「よ!真仁まひと!あ、紅李翔くりとくんはじめまして。
お菓子ありがとうございます。
皇保きみやすの兄の皇教きみのりです。
奈那美ななみちゃんにはうちの彼女共々
お世話になってて。

なるほど!奈那美ななみちゃんに
似てるなぁ!よろしくね。」















そう言い差し出してくる
その手を僕は緊張して握る。















榊紅李翔さかきくりとです。
奈那美ななみがお世話になってます。
よろしくお願いします。」












「はは!可愛いな!
うちの弟とはえらい違いだ!」













「ちょっと兄貴、なんでだよぉ!」













俺も可愛いでしょ?と
兄にすがりつくやまちゃん。













(仲、いいんだな。)












そう思い微笑むと
まぁくんの手が僕の頭の上に
乗せられた。













「くーちゃん、座ろう。」













うん、と頷きまぁくんの横の
席に腰かける。
















お菓子とジュースが配られて
一息つき、まぁくんと皇教きみのりさんが
楽しそうに話しているのを
僕は飽くことなく眺めていた。






















「ねぇ、くりっと。俺の部屋見てみる?」













やまちゃんがそう言うので
見せてもらうことにした。















「じゃあ、兄貴俺ら
部屋行ってくるわ~」














「おう!」













「ふふ…。くーちゃん迷子に
ならないでね!」
 













僕が不安そうにしてたからだろうか。
まぁくんが笑う。













「俺、ついてますから大丈夫っすよー!
真仁まひとさん、くりっとのことになると
過保護っすよね~」















やまちゃんがからかうような
声を出した。















「そりゃ奈那美ななみちゃんの弟だから
可愛いよな、真仁まひと。」
















皇教きみのりさんがそう言うとまぁくんは
まぁな、と照れたように返す。














(やっぱそうだよね…。)















僕は勝手に不機嫌になって
やまちゃんの手をひいた。













「やまちゃん、いこ。」






























やまちゃんの部屋は
お兄さんの部屋と対照的に
8畳ぐらいの部屋に
(それでも僕の部屋よりだいぶ広いけど)
ベッドと机と本棚があるくらいの
簡素なものだった。
















「やまちゃ、ん?」














「あは、驚いた?俺の部屋も
だだっ広いと思っただろ?
………実は俺、愛人の子なんだよね。」













「アイジンノコ…?」
















「ははは!くりっとには
想像もつかないかな。
俺の母親は俺が5歳のとき
病気で死んで。親父の妾だったからさ。
俺は本宅に引き取られた。

兄貴は可愛がってくれるけど
本妻さんはね。やっぱ嫌みたいで。
区別されてる。俺は広い部屋
いらないから別にいいけどね。

親はほとんど家にいない。

この広い家、ほぼ兄貴と
2人みたいなもんだ。」














「そうなんだ…。
………ねぇ、やまちゃん。あれ、なに?」
















やまちゃんはちょっと
びっくりしたように僕を見る。


















「今の話…。なんとも思わない、の?」















「え?」














「………くりっとみたいな反応初めてだ。」

















「そう…?どれだけ家庭環境が
よくてもひねくれちゃう人も
いるし、劣悪な環境で育っても
とても誠実な人もいる。

やまちゃんは優しいし
おもしろいし頭もいいし
素敵な人じゃん。

どんな生い立ちだって
やまちゃんはやまちゃんだから。

関係ない。お兄さんと仲すごく
いいのが伝わったよ。
いいお兄さんだね!」
















「くりっと…。」














「ねぇーそれよりあれなに?」












「……………。紅李翔くりとありがとう。
………。あ、それね。海月だよ。」















「くら、 げ…。綺麗だねぇ!」
















部屋にある水槽に白いものが
プカリプカリと浮遊している。
















「わぁぁ…」














僕は夢中で海月を見つめる。














「また、見に来ていい?」













「ああ、大歓迎だよ。」













やまちゃんは優しく笑った。
 

























皇教きみのりさんの部屋へ戻ろうと
廊下にでて部屋の前まで来た時
中からの話し声が聞こえる。
















「……じゃあ、あのとき、
奈那美ななみちゃんと最後まで
いけなかったのか…。
せっかくお膳立てしたのに…。」
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