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鬼教師は救世主?
ベルティーユ様達の登場で、その場の雰囲気は一気に変わりました。エルネスト殿下もアネット様も、さすがにベルティーユ様とその後ろにいるカロン侯爵家、更にはアデレイド様と第二王子殿下に物言いする勇気はなかったようです。
彼らが私に尊大な態度をとるのは、婚約者時代に私が何も言わなかったせいでしょう。あれもどうでもよかったからだったのですが、それが彼らにとんでもない勘違いをさせていたようです。まぁ、王妃様の存在もありましたが。王妃様の実家は我が家と仲が悪く、あちらが煮え湯を飲まされる側だったので、これ幸いと私に八つ当たりしていたのですよね。もうそんな事を気にする必要はないので、今後はやられたらやり返すだけですが。
「エルネスト殿下にメルレ男爵令嬢、こんなところで何をなさっているのです?!」
さて、残されたこの状況をどうしたものかと思案していると、殿下とアネット様を諫める鋭い声が滑り込んできました。
「ヒッ!」
「ア、アゼマ夫人…」
声のする方に視線を向けると、そこにいたのは王族専属のマナー講師のアゼマ伯爵夫人でした。彼女は私のマナーの講師を務めた事もある方で、大変厳しいと有名な方です。既に御年六十を超えますが、その姿勢には一部のスキもなく、闊達さは若かりし頃と少しも衰えていないと言われています。国王陛下すらも彼女には頭が上がらないと言われている方ですが…今はアネット様の教育係だと伺っています。
(正にご愁傷様、ですわね。アゼマ夫人にも、アネット様にも…)
アゼマ夫人にとっては鍛えがいがあるのを通り越して絶望的な教え子でしょうが、アネット様にとってはお得意の泣き落としが全く利かない相手です。それ故に教育係に選ばれたのでしょうが。その厳しさから私も少し苦手意識がありますが…今は彼女の登場に感謝ですわね。
「まぁ、メイクも乱れて何という事でしょう!さぁ、控室に戻りますわよ。そのような姿で人前に出るなど、淑女に有るまじき事です!」
容赦のない言葉に、アネット様は嫌々と頭を振っていますが…それってこの場合、悪手でしかありませんのに…
「いい加減になさいまし。幼児ではないのですよ!」
「きゃあ!」
ピシッと扇がアネット様の手の甲を打つ音が響き、会場内にいる皆様の肩がびくっと震えました。ああ、やはりこうなってしまいましたか…彼女は出来が悪い生徒には体罰も辞さない我が国屈指の鬼教師でもあり、騎士団にいる鬼教官と並ぶ武勇伝を数々お持ちなのです。エルネスト様もよく扇で叩かれていたので、そのせいでしょうか、アネット様の向こうで青い顔をして存在感を消して佇んでいます。彼女に見つからないようにとの防衛本能でしょうか…でも、それだと…
「エルネスト殿下!貴方様がご一緒に居ながら何という体たらくですか!婚約を望んだお方のフォローをするのが殿方の務めでしょう!」
「ひ、ひゃい!」
飛び上がらんばかりにエルネスト様が返事をしました。ああ、気づかれないように…なんて考えるからこうなるのですわ。昔からそういう意気地のないところは、真実の愛に目覚めても変わっていませんのね。
「さぁ、お二人とも参りますわよ!」
アゼマ夫人の号令に、お二人は渋々ながらも控室へと下がっていきました。三人の退場に会場内は緊張感が解ける空気が漂い、私もまたホッと息を吐いたのでした。
彼らが私に尊大な態度をとるのは、婚約者時代に私が何も言わなかったせいでしょう。あれもどうでもよかったからだったのですが、それが彼らにとんでもない勘違いをさせていたようです。まぁ、王妃様の存在もありましたが。王妃様の実家は我が家と仲が悪く、あちらが煮え湯を飲まされる側だったので、これ幸いと私に八つ当たりしていたのですよね。もうそんな事を気にする必要はないので、今後はやられたらやり返すだけですが。
「エルネスト殿下にメルレ男爵令嬢、こんなところで何をなさっているのです?!」
さて、残されたこの状況をどうしたものかと思案していると、殿下とアネット様を諫める鋭い声が滑り込んできました。
「ヒッ!」
「ア、アゼマ夫人…」
声のする方に視線を向けると、そこにいたのは王族専属のマナー講師のアゼマ伯爵夫人でした。彼女は私のマナーの講師を務めた事もある方で、大変厳しいと有名な方です。既に御年六十を超えますが、その姿勢には一部のスキもなく、闊達さは若かりし頃と少しも衰えていないと言われています。国王陛下すらも彼女には頭が上がらないと言われている方ですが…今はアネット様の教育係だと伺っています。
(正にご愁傷様、ですわね。アゼマ夫人にも、アネット様にも…)
アゼマ夫人にとっては鍛えがいがあるのを通り越して絶望的な教え子でしょうが、アネット様にとってはお得意の泣き落としが全く利かない相手です。それ故に教育係に選ばれたのでしょうが。その厳しさから私も少し苦手意識がありますが…今は彼女の登場に感謝ですわね。
「まぁ、メイクも乱れて何という事でしょう!さぁ、控室に戻りますわよ。そのような姿で人前に出るなど、淑女に有るまじき事です!」
容赦のない言葉に、アネット様は嫌々と頭を振っていますが…それってこの場合、悪手でしかありませんのに…
「いい加減になさいまし。幼児ではないのですよ!」
「きゃあ!」
ピシッと扇がアネット様の手の甲を打つ音が響き、会場内にいる皆様の肩がびくっと震えました。ああ、やはりこうなってしまいましたか…彼女は出来が悪い生徒には体罰も辞さない我が国屈指の鬼教師でもあり、騎士団にいる鬼教官と並ぶ武勇伝を数々お持ちなのです。エルネスト様もよく扇で叩かれていたので、そのせいでしょうか、アネット様の向こうで青い顔をして存在感を消して佇んでいます。彼女に見つからないようにとの防衛本能でしょうか…でも、それだと…
「エルネスト殿下!貴方様がご一緒に居ながら何という体たらくですか!婚約を望んだお方のフォローをするのが殿方の務めでしょう!」
「ひ、ひゃい!」
飛び上がらんばかりにエルネスト様が返事をしました。ああ、気づかれないように…なんて考えるからこうなるのですわ。昔からそういう意気地のないところは、真実の愛に目覚めても変わっていませんのね。
「さぁ、お二人とも参りますわよ!」
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