冤罪で異界に流刑されたのでスローライフを目指してみた

灰銀猫

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人目を避ける集落

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 時間がかかるかと思っていたが、予想以上に早くに手がかりが見つかった。もっとも、それが俺だとの確証はないし、人違いかもしれない。顔に傷があるのと、年が似たようなものだというくらいしか共通点はないのだ。人違いだったらがっかりしそうだから、期待しないでおこう。そう思うが心は急くばかりだった。

 翌朝、俺はその顔に傷のある男がいるという集落に向かった。マスターから俺の名を出せば、その集落の人も話くらいは聞いてくれるだろうと言った。どうも人目を避けて暮らしている者たちの集まりらしく、余所者にはかなり冷たいのだという。

 二時間ほど歩いただろうか。獣道のような道を歩くと、木々の間に人が暮らしているらしい木製の小屋が見えた。多分、ギギラの街に行く途中で見つけたあの集落だろう。森の中にひっそりと佇む様は、確かに人を拒んでいるようにも感じた。気のせいかもしれないけど。

「止まれ! 何者だ?」

 もう少しで集落というところで、顔の下半分を隠した男に声をかけられた。目しか見えないが警戒の色が濃い。マスターが言っていたことは本当らしい。

「俺はルーク。旅人だ。兄を探しているんだが、ここで似た人物を見かけたとギギラのアンザさんから聞いたんだ」

 とりあえずアンザさんの名前を出してみた。少しだけ警戒が弱まった気がした。

「兄?」
「ああ。二人いる。一人は水色の髪のライリーって男で、もう一人は青緑の髪に顔に傷があるルーカスって男だ。ここに顔に傷がある男がいると聞いたんだ」
「顔に傷が……」

 警戒と疑いの色が濃い男だったが、傷があることに反応した。兄さんのことは最初から期待していなかったが、俺の身体の可能性がありそうで少し緊張してきた。

「もし兄だったとしてどうする? 連れて帰る気か?」

 あ~もしかしてこれって、これで連れて帰ると言ったら会わせて貰えないんだろうか。連れて帰るとか、そういう次元じゃないんだけど。まずは会わなきゃ話にならないし。

「無事でいるか確かめたいだけだ。帰りたくないって言うなら、それでも構わない」
「本当にか?」
「帰りたくねぇからここにいるんだろう? 連れて帰ってまたいなくなるんだったら意味がない。それに連れて帰る場所もないしな」

 そう言うと男は無言で俺をじっと見た。どう答えるか悩んでいるんだろう。だがそれも俺の本心だった。

「もし兄さんで、ここにいたいならそれでいい。俺はもう一人の兄さんを探しに行くだけだ」
「もう一人?」
「ああ。もう死んでしまったと聞いている。でも、死体が見つかっていないからな。まだ諦めたくないんだ」

 ダメならダメでも構わなかった。実際、魔術を使えばいくらでも入り込めるし、住人を暫くの間眠らせる事だって出来るのだ。それをしないのはこの世界の情報を集めるというもう一つの目的のためだ。それには人から話を聞くのが一番だからだ。

「もし顔を見て別人だったら直ぐに帰る。俺だって暇じゃないんだ」

 こりゃあ、どうやら無理っぽいな。そう思って最後にそう言ってみた。この集落全体に眠りの魔術をかけて……と算段していたところで、男が口を開いた。

「いいだろう。案内する」
「え? いいのか?」
「いいのかも何も、それを望んでいるのだろう? それに早くしないと日が暮れる。暗くなる前にギギラの街に戻らないと危険だろう」
「あ、ああ」

 何だか意表を突かれてしまった上に、心配までされてしまった。怪しい奴だが悪い奴じゃないのかもしれない。俺は警戒しながらもその男の後ろをついて行った。

「ここだ」

 集落から二十分ほど歩いただろうか。森を進むと小さな小屋が見えた。こんなところに住んでいる奴がいるのかと驚きだ。魔獣の危険性を考えれば、単独で済むのはよほど腕が立つ奴か魔術師くらいだろうに。

「俺が案内できるのはここまでだ」
「あ、ああ。ありがとう」
「この道をまっすぐ進めば集落だ。道を間違えるなよ」
「ああ。助かったよ」

 礼を言い終える前に男はさっさと背中を向けて去っていった。

「さてと。行ってみるか」

 目の前にある粗末な家は、屋根の一部が崩れて人が住むのに適しているとは言い難かった。ここに俺がいるとしたら、中身がブルードラゴンだろうか。ブルードラゴン、しかも人語を話すくらいなら、もっとましな家に住みそうな気がする。
 目を閉じて周囲を探った。結界らしいものもないし、魔術の気配もない。それでも念のため、防御魔術を展開して、俺は小屋に向かった。




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