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ここはどこ?!

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 背にかかるほどの銀糸のような髪は肩口で緩く結ばれ、目はサファイア、いや、アクアマリンみたいな薄い水色。目元は涼やかで綺麗な二重、鼻筋は通っているし、薄めの唇は潤っていてがさついたりしていない。一つ一つのパーツもその配置も完璧で、肌もきめ細かくて4Kのアップにも十分耐えれそうだ。まるでCGで作られた映像を見ているようだった。顔だけじゃない。身体も服の上からでも鍛えられているのがわかるし、それから……

「……あの、何か?」
「……ぁ」

 恥ずかしながら、人間離れした美形にすっかり見惚れてしまっていたらしい。声を掛けられてようやく我に返った。こんな状況なのに現実を見失うなんて、イケメン威力、凄い……

「す、すみません。あまりに綺麗だったので……」
「え?」
「あ、な、なんでもないです!」

 さすがに男の人に対して適切な表現ではなかったかもしれない。それに、美形は自分の容姿を誉められるのを好まないとも聞くし。重ねてすみませんというと、そう恐縮しないで下さい、と微笑まれてしまった。美形の微笑み、尊い……

「はじめまして。私はラーシュ=ア=レニウスです。この森の管理人をしています」

 穏やかな笑みと共に名乗られたけど、あまり聞き慣れない名前だった。ラーシュは北欧系にそんな名前があったような気がするけど……ぼーっとそんなことを考えていたら視線を感じた。そう言えば、私名乗ってなかった!

「あ、あのっ、私は水谷佐那です」
「……ミジュタニシャナ?」
「あ、名前が佐那で、苗字が水谷なので、サナ=ミズタニですね」
「シャナ=ミジュタニさん、でいいですか?」
「…………はい」

 どうやらサ行の発音がお得意ではないらしい。まぁ、昔から英語の先生や外国人から正確に発音されたことは少なかったから慣れているけど。それに……

(本名じゃない方が、いいかも……)

 いくらイケメンでも見知らぬ土地では警戒心も湧くと言うものだ。しかも今の私は足が動かないから、自力で逃げる事も出来なさそうだし。

「気分はいかがですか? どこか痛むところなどは?」
「え? あ、あの……」

 改めて痛みがないか、身体の感覚に集中してみた。

「……特には」

 あの高さから落ちたのに、身体のどこにも痛みはなかった。不思議としか言いようがない。足も包帯でグルグルだけど、痛みは全く感じなかった。感覚がなくなっている可能性もあるけど……

「えっと……あなたが、助けて下さったのですか?」

 記憶にあるのは角の生えた狼もどき追われて、崖から落ちたところまでだ。あの時は墜落死して私の人生終わったと思っていたのだけど……

「そう、ですね。崖から落ちるあなたを見つけて保護したのは私です」
「そうでしたか。あの、助けて下さって、ありがとうございます」

 一瞬間があったけれど、助けてくれたのなら恩人だ。恩人がこんな美形だったなんて僥倖過ぎる。それだけで明日から頑張れそうな気がした。

「あの、それで……ここはどこ、ですか?」

 言葉が通じているし、流ちょうな日本語を話しているから、ここは日本でいいのだろう。あの狼みたいなのも、急に知らない場所に飛ばされたのも理解不能だけど、とにかく家に帰れるのなら細かいことは気にし……

「ここはパリソメニアの一国、アーグ王国の辺境です」
「ぱりしょ……? あーぐ、王国……?」

 いきなり知らない単語が出て来た。しかも一度聞いたくらいでは覚えられない言葉だった。特に前の方。

「パリソメニアです」
「パ、ソメニ、ア……って、どの辺ですか?」

 全く聞いたことがない。そんな国あっただろうか。見た感じアングロサクソン系に見えるけれど、モナコみたいなヨーロッパの小国とか?

「どのあたりと言われましても……この世界全てを称してパリソメニアと言います」
「この世界……って……地球じゃなくて?」
「チキュー?」

 えっと、もしかして通じていない? 日本語達者だけど、母国語みたいに流ちょうに喋っているけど、地球を知らない?

「あの……じゃ、日本は?」
「ニホン、ですか?」
「ええ。あ、ジャパンとかジャポネとも言います」
「ジャパンにジャポネ……聞いたことがありませんね」

 日本を、ジャパンを知らない? それなりに名の知れた国のはずだけど……

(えっと……?)

 私の混乱はますます深まるばかりだった。ラーシュさんは顎に手を当てて何かを考え始めた。そんな仕草も絵になるなぁなんて思ったのは、脳が現状を拒否し始めていたからかもしれない。

「……もしかして、あなたは、ラウロフェルの民なのかもしれませんね」
「ラウロ……の民?」

 またしても知らない単語が出てきた。






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