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ウィルバート様の研究
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さて、私達の婚約も無事に発表し、私達は少しずつ交流を深めていきました。彼とは魔術という共通の話題があるので、一緒にいても話題が尽きるという事がりません。交流のお茶会では始終仏頂面だった誰かさんとは雲泥の差です。
「…では、ウィルバート様はラザレ魔石の研究を?」
「はい、イルーゼ様。魔石を使って結界を張れないかと思いまして…」
今日はイルーゼ様とケビン様を招いて、四人でお茶会です。魔術も大好きなイルーゼ様は早速お茶会をしましょうと言われたので、我が家の庭で気兼ねのないお茶会になりました。ウィルバート様がまだ緊張気味ですが、お二人は直ぐにウィルバート様を名前で呼ばれて、お二人も自分達の事は名で呼んで欲しいと言ってきました。ウィルバート様がその距離間の近さにちょっと引き気味ですわ。そんな彼を気遣ってか、話題は直ぐに魔術の話になりました。
「魔石で結界ですか…それは…実現したら凄く便利ですわね」
「そうなのです。今は魔術師が結界を張りますが、どうしても移動の労力が大きいので。転移魔術も使える人は少ないですし」
「そうですわね。でも、魔石でどうやって?」
「今考えているのは、魔石を一定間隔に置き、繋げて結界を敷くやり方です。繋げておけばどこからでも魔力を注げるので移動の手間が減るかと」
「なるほど。確かにそれなら移動が減る分楽になりますわね」
ウィルバート様の研究内容は私も初めて聞いた時には驚きましたわ。理論上は可能ですが、実際に出来るかというと不安要素が幾つもあって、クリアしなければならない課題も多いのです。一方で成功したら凄く有益で便利なのは確定ですわ。
「なるほど…これで街や村を囲えれば、被害も大幅に減らせるな」
「はい。完全には難しくても、小型の魔獣くらいは侵入出来なくなる筈です」
引きこもりの白豚と言われていたウィルバート様ですが、実際にはこのような有益で素晴らしい研究をなさっていたのですね。もしこの結界が実用化されれば、それこそ爵位と勲章ものの大偉業です。魔術が得意だとは伺っていましたが、ここまでとは想定外でしたわ。
「そう言えば、近々クラウス殿下がマイヤー侯爵領の魔獣退治をなさるとか」
「ええっ!? クラウス王子が、ですか?」
ケビン様の情報に私は驚きの声が出てしまいましたわ。だって彼、私の領地の魔獣退治には一度も出たことがなかったのですから。いえ、もしかしたら魔獣退治などしたことはないように思います。
「アルーシャ様の領地には一度も出たことはなかったですわよね?」
「ええ」
「じゃ、今回は初めてなのね。じゃ、マイヤー侯爵令嬢はどうなのかしら? ウィルバート様、彼女は魔獣退治は?」
「彼女が出たことはなかったですね。魔力量も少なくて、危険だからと侯爵が止めていたのもありますし」
「じゃ、これまでは…」
「我が家とマイヤー侯爵家が雇った魔術師が行っていました」
「まぁ…それじゃ、殿下には荷が重いのではなくて?」
イルーゼ様が皆の気持ちを代弁してそう仰り、私達は頷くしか出来ませんでした。どう考えても無謀といいますか…大丈夫には思えませんわ。魔獣は見た目も恐ろしく驚異的な力を持ちますし、弱い者は集団で行動します。一匹が弱いからといって侮ればとんでもない被害を受けるのです。それは討伐に出た者には常識ですが…あのお二人が理解しているかといえば、かなり微妙ですわね。
「でも…クラウス王子の魔術の成績はそれなりによかったですし…何とかなるんじゃありません?」
それが何の意味もなさないと知っていますが、それ以外に言えることがありませんでした。まぁ、マイヤー侯爵家の方も一緒でしょうし、逃げ足だけは早そうなのでご本人は大丈夫でしょうが…彼らのお守役の方々が心配ですわね。
「…では、ウィルバート様はラザレ魔石の研究を?」
「はい、イルーゼ様。魔石を使って結界を張れないかと思いまして…」
今日はイルーゼ様とケビン様を招いて、四人でお茶会です。魔術も大好きなイルーゼ様は早速お茶会をしましょうと言われたので、我が家の庭で気兼ねのないお茶会になりました。ウィルバート様がまだ緊張気味ですが、お二人は直ぐにウィルバート様を名前で呼ばれて、お二人も自分達の事は名で呼んで欲しいと言ってきました。ウィルバート様がその距離間の近さにちょっと引き気味ですわ。そんな彼を気遣ってか、話題は直ぐに魔術の話になりました。
「魔石で結界ですか…それは…実現したら凄く便利ですわね」
「そうなのです。今は魔術師が結界を張りますが、どうしても移動の労力が大きいので。転移魔術も使える人は少ないですし」
「そうですわね。でも、魔石でどうやって?」
「今考えているのは、魔石を一定間隔に置き、繋げて結界を敷くやり方です。繋げておけばどこからでも魔力を注げるので移動の手間が減るかと」
「なるほど。確かにそれなら移動が減る分楽になりますわね」
ウィルバート様の研究内容は私も初めて聞いた時には驚きましたわ。理論上は可能ですが、実際に出来るかというと不安要素が幾つもあって、クリアしなければならない課題も多いのです。一方で成功したら凄く有益で便利なのは確定ですわ。
「なるほど…これで街や村を囲えれば、被害も大幅に減らせるな」
「はい。完全には難しくても、小型の魔獣くらいは侵入出来なくなる筈です」
引きこもりの白豚と言われていたウィルバート様ですが、実際にはこのような有益で素晴らしい研究をなさっていたのですね。もしこの結界が実用化されれば、それこそ爵位と勲章ものの大偉業です。魔術が得意だとは伺っていましたが、ここまでとは想定外でしたわ。
「そう言えば、近々クラウス殿下がマイヤー侯爵領の魔獣退治をなさるとか」
「ええっ!? クラウス王子が、ですか?」
ケビン様の情報に私は驚きの声が出てしまいましたわ。だって彼、私の領地の魔獣退治には一度も出たことがなかったのですから。いえ、もしかしたら魔獣退治などしたことはないように思います。
「アルーシャ様の領地には一度も出たことはなかったですわよね?」
「ええ」
「じゃ、今回は初めてなのね。じゃ、マイヤー侯爵令嬢はどうなのかしら? ウィルバート様、彼女は魔獣退治は?」
「彼女が出たことはなかったですね。魔力量も少なくて、危険だからと侯爵が止めていたのもありますし」
「じゃ、これまでは…」
「我が家とマイヤー侯爵家が雇った魔術師が行っていました」
「まぁ…それじゃ、殿下には荷が重いのではなくて?」
イルーゼ様が皆の気持ちを代弁してそう仰り、私達は頷くしか出来ませんでした。どう考えても無謀といいますか…大丈夫には思えませんわ。魔獣は見た目も恐ろしく驚異的な力を持ちますし、弱い者は集団で行動します。一匹が弱いからといって侮ればとんでもない被害を受けるのです。それは討伐に出た者には常識ですが…あのお二人が理解しているかといえば、かなり微妙ですわね。
「でも…クラウス王子の魔術の成績はそれなりによかったですし…何とかなるんじゃありません?」
それが何の意味もなさないと知っていますが、それ以外に言えることがありませんでした。まぁ、マイヤー侯爵家の方も一緒でしょうし、逃げ足だけは早そうなのでご本人は大丈夫でしょうが…彼らのお守役の方々が心配ですわね。
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