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脅迫がバレました
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「…と言う訳、です…」
結局、奴の鬼気迫る雰囲気に負けて洗いざらい吐かされた。さすがは副騎士団長、笑顔に殺気を滲ませられると一般人には対抗出来ないし、尋問も上手過ぎて躱し切れなかった…脅迫されているのは私なのに、何だか加害者みたいな気分だ。そして逆らえなかった自分が悔しい…
「……そうか」
残してあった脅迫状も没収されてしまい、何だか身包みはがされた気分だ。仕事が早いし的確過ぎてぐうの音も出ない…くそう、やっぱり首席だけはある、と認めざるを得なかった。
「そういう訳なので、夜会の件はお断りします。あと、求婚も…」
そうなのだ、全ての元凶は目の前の天敵で、実行犯は彼を慕うご令嬢たちで、その動機は嫉妬だ。それを回避するのに適度な距離を取って頂けると有難いし、何なら専属文官も変わって欲しい。例えばエミール様と交代なんかもいいかもしれない。美青年と美少年となれば、市井で流行っている男性同士の恋愛のネタになって喜ばれるだろうし、全て丸く収まるんじゃないだろうか。
「…わかった。そういう事なら直ぐに婚約する。上司命令だ」
「…………は?」
えっと、何か物凄~くアリエナイ事を言われた気がしたんだけど?
「ちょっと待って下さい!どうしてそうなるんですか?!」
脅迫されているからそうならない程度の適切な距離を…と提案したのに、帰ってきたのは真逆のものだった。こいつ、もしかして私に死ねっていうのか?そうなのか?
「お前が素直に俺の求婚を受けないからだ。だったら命令するしかないだろう」
「……え?」
あれ、さっきまでの笑顔はどこ行った?目の前にいるのはうんざりした表情を隠しもせず、何なら盛大に面倒だ…と言わんばかりにため息をついている男だった。普段とはあまりの違いに、悪い夢を見ているようで現実感がない。
「えっと、どう、いう…」
「言った通りだ。お前と婚約をする。これは決定事項で拒否は許さない。拒否すると言うなら…」
「まさか、家族を盾にする気じゃないでしょうね!」
この前の会話が直ぐに頭をよぎって、口に出てしまった。言ってからしまった!と思うも遅かった。目の前のイケメンは邪悪な笑みを浮かべたけど…それもかっこいいってどういう事だ?
「へぇ…昨日の会話、やっぱり聞いてたんだ」
「え…あ、あの…」
にやり、という表現がぴったりの、イケメンに相応しくない表情で奴がそう言った。
(や、やっぱりって…私が聞き耳立てたの、気付いて…た?)
厳冬の川に放り込まれた気分だ。何かを言い返そうとしたけれど、図星だったせいか直ぐに言葉が出てこない。
「だったら話が早い。そういう事だから悪く思うなよ。これも仕事なんでな」
「な…そんな、勝手に…」
「ああ、心配するな。別に命までは取るつもりはないから」
命まではって…それって、死なない程度までが範囲内、って事?
「事が上手く運んだらそれ相応の謝礼はしよう。そうだな、実家の借金と一年分の領地の税分…それとお前の弟の学費、寮費込みでどうだ?」
それは、破格すぎる程に破格な条件だった。私が…一生かけても稼げない額だ。
(こうなったら…悪魔にだって魂、売ってやろうじゃないの…!)
私の心は決まった。どうせ拒否権はない。それでも母と弟と領地のためなら魂売っても悔いはない。けど…
「…文書…いえ、公文書で今の条件を取り交わすのが条件です。団長の立ち合い付きで」
「……さすがは才女と名高いミュッセ嬢だな」
「茶化さないで下さい。副団長の事、これっぽっちも信用していませんので。信用出来る方立ち合いの上で、文書で確約頂けないのであればお断りします」
「…普通はっきり信用出来ないっていうか?大したもんだな…第一、断れる立場じゃないんだけど?」
「……」
悔しいかな、全くその通りで、私は忌々しく思いながらも奴を睨みつけるしか出来なかった。でも、そう簡単に頭を下げたくもなかった。出来る限り譲りたくないし、対等でいたかった。
「はは、面白いな、お前さん。いいよ、その条件飲んでやろう。ただ、立会人は団長じゃない」
「団長以外の方?その方は信用出来るのですか?」
「ああ、団長よりも身分も地位も上だ」
「…い、一体、どなたが…」
「その夜会で会わせてやるよ」
団長より身分も地位も上って…公爵家の誰か、なのだろうか…夜会にも出た事がない私は、貴族の事も詳しくないだけに、その相手が誰なのか、想像もつかなかった。
結局、奴の鬼気迫る雰囲気に負けて洗いざらい吐かされた。さすがは副騎士団長、笑顔に殺気を滲ませられると一般人には対抗出来ないし、尋問も上手過ぎて躱し切れなかった…脅迫されているのは私なのに、何だか加害者みたいな気分だ。そして逆らえなかった自分が悔しい…
「……そうか」
残してあった脅迫状も没収されてしまい、何だか身包みはがされた気分だ。仕事が早いし的確過ぎてぐうの音も出ない…くそう、やっぱり首席だけはある、と認めざるを得なかった。
「そういう訳なので、夜会の件はお断りします。あと、求婚も…」
そうなのだ、全ての元凶は目の前の天敵で、実行犯は彼を慕うご令嬢たちで、その動機は嫉妬だ。それを回避するのに適度な距離を取って頂けると有難いし、何なら専属文官も変わって欲しい。例えばエミール様と交代なんかもいいかもしれない。美青年と美少年となれば、市井で流行っている男性同士の恋愛のネタになって喜ばれるだろうし、全て丸く収まるんじゃないだろうか。
「…わかった。そういう事なら直ぐに婚約する。上司命令だ」
「…………は?」
えっと、何か物凄~くアリエナイ事を言われた気がしたんだけど?
「ちょっと待って下さい!どうしてそうなるんですか?!」
脅迫されているからそうならない程度の適切な距離を…と提案したのに、帰ってきたのは真逆のものだった。こいつ、もしかして私に死ねっていうのか?そうなのか?
「お前が素直に俺の求婚を受けないからだ。だったら命令するしかないだろう」
「……え?」
あれ、さっきまでの笑顔はどこ行った?目の前にいるのはうんざりした表情を隠しもせず、何なら盛大に面倒だ…と言わんばかりにため息をついている男だった。普段とはあまりの違いに、悪い夢を見ているようで現実感がない。
「えっと、どう、いう…」
「言った通りだ。お前と婚約をする。これは決定事項で拒否は許さない。拒否すると言うなら…」
「まさか、家族を盾にする気じゃないでしょうね!」
この前の会話が直ぐに頭をよぎって、口に出てしまった。言ってからしまった!と思うも遅かった。目の前のイケメンは邪悪な笑みを浮かべたけど…それもかっこいいってどういう事だ?
「へぇ…昨日の会話、やっぱり聞いてたんだ」
「え…あ、あの…」
にやり、という表現がぴったりの、イケメンに相応しくない表情で奴がそう言った。
(や、やっぱりって…私が聞き耳立てたの、気付いて…た?)
厳冬の川に放り込まれた気分だ。何かを言い返そうとしたけれど、図星だったせいか直ぐに言葉が出てこない。
「だったら話が早い。そういう事だから悪く思うなよ。これも仕事なんでな」
「な…そんな、勝手に…」
「ああ、心配するな。別に命までは取るつもりはないから」
命まではって…それって、死なない程度までが範囲内、って事?
「事が上手く運んだらそれ相応の謝礼はしよう。そうだな、実家の借金と一年分の領地の税分…それとお前の弟の学費、寮費込みでどうだ?」
それは、破格すぎる程に破格な条件だった。私が…一生かけても稼げない額だ。
(こうなったら…悪魔にだって魂、売ってやろうじゃないの…!)
私の心は決まった。どうせ拒否権はない。それでも母と弟と領地のためなら魂売っても悔いはない。けど…
「…文書…いえ、公文書で今の条件を取り交わすのが条件です。団長の立ち合い付きで」
「……さすがは才女と名高いミュッセ嬢だな」
「茶化さないで下さい。副団長の事、これっぽっちも信用していませんので。信用出来る方立ち合いの上で、文書で確約頂けないのであればお断りします」
「…普通はっきり信用出来ないっていうか?大したもんだな…第一、断れる立場じゃないんだけど?」
「……」
悔しいかな、全くその通りで、私は忌々しく思いながらも奴を睨みつけるしか出来なかった。でも、そう簡単に頭を下げたくもなかった。出来る限り譲りたくないし、対等でいたかった。
「はは、面白いな、お前さん。いいよ、その条件飲んでやろう。ただ、立会人は団長じゃない」
「団長以外の方?その方は信用出来るのですか?」
「ああ、団長よりも身分も地位も上だ」
「…い、一体、どなたが…」
「その夜会で会わせてやるよ」
団長より身分も地位も上って…公爵家の誰か、なのだろうか…夜会にも出た事がない私は、貴族の事も詳しくないだけに、その相手が誰なのか、想像もつかなかった。
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