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紫瞳の呪い
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「紫瞳の…呪い?」
殿下の言葉の意味を、俺はすぐに理解出来なかった。紫瞳は王族の証。俺にとっては確かに呪いだが、殿下には誉れでしかない筈だ。
「そうだよ。だっておかしいとは思わないか?同じ両親から生まれてくるのに、瞳の色が違うだけで存在を否定されるなんて」
「…っ」
言わんとしている事がまさに自分の事だったからだろうか、直ぐには言葉が出なかった。それは自分の出自を知ってからずっと思い続けていた事だが、だからと言って紫瞳を持つ殿下が言う事ではないだろう。そもそも、王家には紫瞳しか生まれないという事実は王家の威信を支えているのだ。
「王族は特別な力を持ち、紫瞳もその一つと言われている」
「…はい」
「でも、おかしいと思わないか?普通瞳の色は両親のどちらか、場合によっては祖父母から遺伝するものだろう?」
確かにその通りだが、殿下が何を言わんとしているのか見当がつかない。容易に相槌を打つ事も出来なかった。
「なのに、王家には必ず紫瞳を持つ子が生まれる。一方で、臣籍降下した王子や王女には紫瞳を持つ子が生まれないんだ。必ずね」
殿下の言葉に、俺は息を飲んだ。
「偶然にしてはおかしいと思わないかい?降嫁した王女の嫁ぎ先は、王家と縁の深い公爵家が多い。それでも紫瞳を持つ子は臣下には生まれない。叔父上の元ですらね」
殿下の指摘は俺がずっと疑問に思っていた事でもあった。だが…
「王家に生まれた紫瞳を持たない子、そして…紫瞳を持つ王家以外で生まれた子。どちらもいない者としてその存在を消されてきた。それが呪いでなくて何だと言うんだい?」
「…っ!」
やはり、との想いが胸に広がった。自分の出自を知って以来、ずっと気になっていた事だった。王家だからと言う理由でみなが納得していたが、当事者の俺はそれを信じる事は出来なかった。
「やっぱりアレクも疑っていたんだろう?」
「……」
「更に言えば、父上もアリソンも呪いによって運命をねじ替えられた者だよ」
「…何を…ま、まさか…」
「その通り。父上は先王陛下のお子ではないし、アリソンの両親も私の両親ではないんだよ」
「……で、では…」
「父上は先王陛下の妹のお子だし、アリソンはエリュアール公爵夫妻のお子だ。同じ時期に生まれた紫瞳を持たない王子や王女と入れ替えられた、紫瞳を持つ者だよ」
そういう事か、とようやく合点がいった。国王陛下がどうしてあんなにも先王陛下を恐れているのか、そして王子が一人しかいなかったのに中々王太子に指名されなかったのか。実子でないと、本来その地位に就く立場でなかったと言うなら納得だ。
「お祖父様が未だに愛人を侍らせているのも、正統なる王子を望んでいるからだそうだよ」
「な…」
「先王陛下はお年だし、父上にもお子を作る能力はない。もしこの先紫瞳を持つ子が生まれるとしたら、私かアリソンの子だろう」
なるほど、アリソン王女が処刑にならなかったのはこのせいか、ともう一つの謎がはっきりした。万が一殿下に紫瞳を持つ子が生まれなかった場合、彼女に産ませるために生かしたのだろう。
「反吐が出るよね。幽閉した王女に紫瞳を持つ子を産ませようなんて」
確かに先王陛下の考えそうなことだ。表向きは孫可愛さ故となっているが、実際は王家の威信を保つ事しか考えていないのだから。
「先王陛下には表舞台から去って頂く。これまでの罪を全て背負って頂いてね」
「ですが…」
「既に準備は整っている。ラドン伯のお陰で先王陛下の目を誤魔化す事も出来たしね」
既に準備は整い、後はそれに相応しい舞台を整えるだけだという。どこでどんな形でやるつもりなのか見当もつかない。だが、はっきりしている事がある。それはとても近い未来で、やらない選択肢はないという事だ。
「なぁアレク。王家に、王子に戻る気はあるか?」
殿下の言葉の意味を、俺はすぐに理解出来なかった。紫瞳は王族の証。俺にとっては確かに呪いだが、殿下には誉れでしかない筈だ。
「そうだよ。だっておかしいとは思わないか?同じ両親から生まれてくるのに、瞳の色が違うだけで存在を否定されるなんて」
「…っ」
言わんとしている事がまさに自分の事だったからだろうか、直ぐには言葉が出なかった。それは自分の出自を知ってからずっと思い続けていた事だが、だからと言って紫瞳を持つ殿下が言う事ではないだろう。そもそも、王家には紫瞳しか生まれないという事実は王家の威信を支えているのだ。
「王族は特別な力を持ち、紫瞳もその一つと言われている」
「…はい」
「でも、おかしいと思わないか?普通瞳の色は両親のどちらか、場合によっては祖父母から遺伝するものだろう?」
確かにその通りだが、殿下が何を言わんとしているのか見当がつかない。容易に相槌を打つ事も出来なかった。
「なのに、王家には必ず紫瞳を持つ子が生まれる。一方で、臣籍降下した王子や王女には紫瞳を持つ子が生まれないんだ。必ずね」
殿下の言葉に、俺は息を飲んだ。
「偶然にしてはおかしいと思わないかい?降嫁した王女の嫁ぎ先は、王家と縁の深い公爵家が多い。それでも紫瞳を持つ子は臣下には生まれない。叔父上の元ですらね」
殿下の指摘は俺がずっと疑問に思っていた事でもあった。だが…
「王家に生まれた紫瞳を持たない子、そして…紫瞳を持つ王家以外で生まれた子。どちらもいない者としてその存在を消されてきた。それが呪いでなくて何だと言うんだい?」
「…っ!」
やはり、との想いが胸に広がった。自分の出自を知って以来、ずっと気になっていた事だった。王家だからと言う理由でみなが納得していたが、当事者の俺はそれを信じる事は出来なかった。
「やっぱりアレクも疑っていたんだろう?」
「……」
「更に言えば、父上もアリソンも呪いによって運命をねじ替えられた者だよ」
「…何を…ま、まさか…」
「その通り。父上は先王陛下のお子ではないし、アリソンの両親も私の両親ではないんだよ」
「……で、では…」
「父上は先王陛下の妹のお子だし、アリソンはエリュアール公爵夫妻のお子だ。同じ時期に生まれた紫瞳を持たない王子や王女と入れ替えられた、紫瞳を持つ者だよ」
そういう事か、とようやく合点がいった。国王陛下がどうしてあんなにも先王陛下を恐れているのか、そして王子が一人しかいなかったのに中々王太子に指名されなかったのか。実子でないと、本来その地位に就く立場でなかったと言うなら納得だ。
「お祖父様が未だに愛人を侍らせているのも、正統なる王子を望んでいるからだそうだよ」
「な…」
「先王陛下はお年だし、父上にもお子を作る能力はない。もしこの先紫瞳を持つ子が生まれるとしたら、私かアリソンの子だろう」
なるほど、アリソン王女が処刑にならなかったのはこのせいか、ともう一つの謎がはっきりした。万が一殿下に紫瞳を持つ子が生まれなかった場合、彼女に産ませるために生かしたのだろう。
「反吐が出るよね。幽閉した王女に紫瞳を持つ子を産ませようなんて」
確かに先王陛下の考えそうなことだ。表向きは孫可愛さ故となっているが、実際は王家の威信を保つ事しか考えていないのだから。
「先王陛下には表舞台から去って頂く。これまでの罪を全て背負って頂いてね」
「ですが…」
「既に準備は整っている。ラドン伯のお陰で先王陛下の目を誤魔化す事も出来たしね」
既に準備は整い、後はそれに相応しい舞台を整えるだけだという。どこでどんな形でやるつもりなのか見当もつかない。だが、はっきりしている事がある。それはとても近い未来で、やらない選択肢はないという事だ。
「なぁアレク。王家に、王子に戻る気はあるか?」
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