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契約の報告と報酬
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副団長が戻ってきた事で、急遽話し合いの場が持たれた。リアムは未成年だから話に加わるのは早いと母が言ったため、公爵夫人がだったら私とお菓子を食べましょう!と嬉々としてリアムを連れて行った。昔の息子を見ているようだととても楽しそうだった。
「すみません、ミュッセ伯爵。急にお呼び立てしてしまって」
「いいわよ、こっちもちょうど手が空いたところだったから。それに、そろそろリアムの為に王都に行く予定だったもの」
そう、リアムの学園入学は来年だけど、今は学校見学が行われる時期だ。領地から子女が王都に出てきて入学したい学園を見て回るし、私の時もそうだった。
「そう言って頂けると助かります。では…」
そう言って副団長がこれまでの経緯を母に説明した。知っている事も多かったけれど、知らない事も少しだけあった。驚いたのはこの件には王弟殿下のエリュアール公爵の夫人が絡んでいた一方、公爵自身は全くノータッチだった事だった。夫人はラドン伯の娘で、夫のエリュアール公爵が王位に興味を示さない事を歯がゆく思っていたとかで、今回の不正にも積極的に加わっていたという。息子のクラヴィス殿も父と同じく何も知らなかったらしい。
「それじゃ、エリュアール公爵家は…」、
「公爵とクラヴィス殿は関係していないにしても、全くお咎めなしにはならないでしょう…こちらはまだはっきり決まっていませんが…」
なるほど、公爵とクラヴィス殿は王位継承権をお持ちだから、処分するにも慎重にならざるを得ないのだろう。アリソン王女殿下がああなってしまい、王位継承権を持つのは王太子殿下と王弟殿下、クラヴィス殿の三人で、それ以降は王家からかなり離れた家になる。それは王家にとって望ましくないだろう。
「そして、こちらが報酬です」
差し出された書類は、以前交わした契約書の倍の金額が記されていて、私だけでなく母も息を飲んだのが伝わった。税収一年分の筈が三倍に増額されていた。
「こんなには頂けませんわ」
そうきっぱりと告げたのは母だった。母は程々を重視し過分な事を嫌う性格だから、そう言うのは予想されたが、副団長も引かなかった。
「この増額は守り切れなかった事に対しての賠償も含まれております。慰謝料だと思って頂ければと。この件は王太子殿下も了承なさっております」
予め拒否されるのを予想してか、副団長は王太子殿下の名を出してきた。確かに王太子殿下の名が出されれば、それに否を唱えるのは難しいだろう。相手によるけど。
「慰謝料?」
母の眉が上がって、視線が鋭くなった。早くも戦闘モードに入っている気が…する。
「ええ。申し訳ありません。実は…エリアーヌ嬢の純潔を奪う事になってしまいました」
「な…!副団長!それは…」
「エリー!」
思わず声を上げた私を制すように、母が鋭く私の名を呼んだため、私はその先の言葉を飲み込んだ。こんな時の母は逆らえない何かがあるのだ。
「そう、純潔を…相手は貴方かしら?」
「はい」
副団長がはっきりと肯定すると、母の纏う空気が冷たくなった気がする。ほのかな笑顔を浮かべているけど、それが薄ら寒い。怒ると怖いのだ、この人は…
「それに、彼女には一生消えない禁呪が掛かっています」
「禁呪?」
「はい。私の命令に逆らえない禁呪です」
ぴくり…と母のこめかみから音がしたのは気のせいだろうか…
「なるほど…エリーの純潔を奪った上で、自分の言いなりになるような怪しい術を掛けたと。そういう事かしら?」
「お、お母様、違うんです!これは事情があって…」
「エリー、黙りなさい。親の許可もなく純潔を失うだなんて、どういう事かしら?
「そ、それには事情があって…」
「事情?事情もへったくれもないわよ、この青二才が!何が娘さんはお守りします、よ!大口叩いたくせによくもうちの娘に手を出したわね!しかもその対価が高々二年分の税収ですって?馬鹿にするのもいい加減になさいな!」
ああ、やっぱり…予想通り母が爆発した。
「すみません、ミュッセ伯爵。急にお呼び立てしてしまって」
「いいわよ、こっちもちょうど手が空いたところだったから。それに、そろそろリアムの為に王都に行く予定だったもの」
そう、リアムの学園入学は来年だけど、今は学校見学が行われる時期だ。領地から子女が王都に出てきて入学したい学園を見て回るし、私の時もそうだった。
「そう言って頂けると助かります。では…」
そう言って副団長がこれまでの経緯を母に説明した。知っている事も多かったけれど、知らない事も少しだけあった。驚いたのはこの件には王弟殿下のエリュアール公爵の夫人が絡んでいた一方、公爵自身は全くノータッチだった事だった。夫人はラドン伯の娘で、夫のエリュアール公爵が王位に興味を示さない事を歯がゆく思っていたとかで、今回の不正にも積極的に加わっていたという。息子のクラヴィス殿も父と同じく何も知らなかったらしい。
「それじゃ、エリュアール公爵家は…」、
「公爵とクラヴィス殿は関係していないにしても、全くお咎めなしにはならないでしょう…こちらはまだはっきり決まっていませんが…」
なるほど、公爵とクラヴィス殿は王位継承権をお持ちだから、処分するにも慎重にならざるを得ないのだろう。アリソン王女殿下がああなってしまい、王位継承権を持つのは王太子殿下と王弟殿下、クラヴィス殿の三人で、それ以降は王家からかなり離れた家になる。それは王家にとって望ましくないだろう。
「そして、こちらが報酬です」
差し出された書類は、以前交わした契約書の倍の金額が記されていて、私だけでなく母も息を飲んだのが伝わった。税収一年分の筈が三倍に増額されていた。
「こんなには頂けませんわ」
そうきっぱりと告げたのは母だった。母は程々を重視し過分な事を嫌う性格だから、そう言うのは予想されたが、副団長も引かなかった。
「この増額は守り切れなかった事に対しての賠償も含まれております。慰謝料だと思って頂ければと。この件は王太子殿下も了承なさっております」
予め拒否されるのを予想してか、副団長は王太子殿下の名を出してきた。確かに王太子殿下の名が出されれば、それに否を唱えるのは難しいだろう。相手によるけど。
「慰謝料?」
母の眉が上がって、視線が鋭くなった。早くも戦闘モードに入っている気が…する。
「ええ。申し訳ありません。実は…エリアーヌ嬢の純潔を奪う事になってしまいました」
「な…!副団長!それは…」
「エリー!」
思わず声を上げた私を制すように、母が鋭く私の名を呼んだため、私はその先の言葉を飲み込んだ。こんな時の母は逆らえない何かがあるのだ。
「そう、純潔を…相手は貴方かしら?」
「はい」
副団長がはっきりと肯定すると、母の纏う空気が冷たくなった気がする。ほのかな笑顔を浮かべているけど、それが薄ら寒い。怒ると怖いのだ、この人は…
「それに、彼女には一生消えない禁呪が掛かっています」
「禁呪?」
「はい。私の命令に逆らえない禁呪です」
ぴくり…と母のこめかみから音がしたのは気のせいだろうか…
「なるほど…エリーの純潔を奪った上で、自分の言いなりになるような怪しい術を掛けたと。そういう事かしら?」
「お、お母様、違うんです!これは事情があって…」
「エリー、黙りなさい。親の許可もなく純潔を失うだなんて、どういう事かしら?
「そ、それには事情があって…」
「事情?事情もへったくれもないわよ、この青二才が!何が娘さんはお守りします、よ!大口叩いたくせによくもうちの娘に手を出したわね!しかもその対価が高々二年分の税収ですって?馬鹿にするのもいい加減になさいな!」
ああ、やっぱり…予想通り母が爆発した。
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