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国王主催の舞踏会
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「ええ?舞踏会に出るんですか?」
それから程なくして、公爵家に呼び出された私は舞踏会に出る様に言われた。
「そうよ。今回の舞踏会は陛下主催で、陛下の誕生と即位十年を祝うものなの」
そう言われてしまうと否やとも言えなかった。今回の参加資格はデビュタントを終えた者に限られているらしく、リアムが参加出来なかった。楽しみにしていたのに…何なら私の代わりに出てくれてもいいのにと思ったけれど、そういう訳にもいかない。
「ドレスは準備してあるわ。前日に迎えをやるわね」
公爵夫人が嬉しそうにそう言ったけれど、いつの間にドレスを準備していたのだろう。でも、この機会を逃す方じゃないわね。
(まさか副団長とお揃いのドレスって事は…ないわよね?いや、それよりも母と公爵夫人とお揃い、とか?)
そんな私の懸念は、幸いにも杞憂に終わった。舞踏会の前日、仕事を終えた私は騎士団を出たところで公爵家の馬車に捕まり、そのまま連れて来られて侍女さん達の湯あみとマッサージの洗礼を受け…今日を迎えた。
そして翌日、私は再び朝から磨き上げられた後、濃緑のドレスに着替えさせられた。上質な生地にシンプルなデザインで、身体のラインが出るのはもうお約束だ。
「だってせっかくスタイルがいいんだもの。本当は普段からこういうのを着て欲しいのに!」
息子しかいない公爵夫人は私を着飾らせるのが楽しいらしくそう言ったけど、そんな事をしたら男性に絡まれるので勘弁して欲しい。それでなくても今の職場は男性ばかり、しかも私は婚約を白紙にしたばかりなのだ。私を恨んでいる人もいるし、そんな危険を増すような真似は出来なかった。本当なら今日だって出席したくないし、ドレスももっと地味なものにしたいのだ。ドレスを用意してもらったので文句を言うなんて出来ないけど。
(副団長も来る、わよね…)
王太子殿下の影で何かと側に置かれている彼なら、護衛として参加していそうな気がした。いや、副騎士団長としてもブーランジェ伯爵としても、彼が出ない選択肢はないだろう。どんな顔をして会えば…と思う一方で、会いたい自分もいて、恋とは何て厄介なのだろうと思わずにはいられなかった。
今回はエスコートなしでの出席も可なので、私は母と一緒に出席した。とは言っても、公爵邸から公爵夫人ご夫妻だけでなく、公爵家の次期当主である長男ご夫妻も一緒だったので居場所に困るような事はなさそうに思えた。
会場は正に豪華絢爛で、最近副団長の屋敷や公爵家を見慣れた私だったけれど、その煌びやかさはそれ以上だった。会場内を埋め尽くす参加者の華やかさと熱気は想像以上で、自分が酷く場違いな気さえしてきた。前に出た夜会などとは比べ物にならない程に豪奢だ。
慣れない空間に呑み込まれそうな感覚さえしてきたけれど、母は平然としていた。王妃様の侍女をしていたと聞くし、このような場には慣れているのだろうか。まぁ、あの性格なのでそれがなくても堂々としていそうだけど。それにしても…
「お母様、何だか様子が…」
会場に入ってから違和感があったのだけど、その理由がようやくわかった。参加する貴族が思ったより少ない割に護衛騎士が…多いのだ。何だかピリピリした感じがする。
「ああ、今日はあの爺だけでなく、隣国の国王夫妻も出席されているからよ」
「隣国の…?それって…」
「ジュディの母国よ」
ジュディって…王妃様のことだ。ということはフランクール王国のことだ。あの国は我が国の隣にある大国で、我が国の倍の領土を持ち、全ての面において我が国よりも上だ。王妃様は確か第六王女で側妃腹だったから冷遇されていて、追いやられるように我が国に留学してきたと聞く。その時に陛下がお見初めになったとも。何年か前に義母に当たる正妃とその息子で異母兄の王太子が不正で王籍をはく奪されて、新たに国王になったのは同腹の兄君だった筈…
「さぁ。わざわざあっちの国王まで呼んで、何が起きるのかしらね」
母が楽しそうに笑い、公爵夫人も母に倣うように笑みを浮かべた。
それから程なくして、公爵家に呼び出された私は舞踏会に出る様に言われた。
「そうよ。今回の舞踏会は陛下主催で、陛下の誕生と即位十年を祝うものなの」
そう言われてしまうと否やとも言えなかった。今回の参加資格はデビュタントを終えた者に限られているらしく、リアムが参加出来なかった。楽しみにしていたのに…何なら私の代わりに出てくれてもいいのにと思ったけれど、そういう訳にもいかない。
「ドレスは準備してあるわ。前日に迎えをやるわね」
公爵夫人が嬉しそうにそう言ったけれど、いつの間にドレスを準備していたのだろう。でも、この機会を逃す方じゃないわね。
(まさか副団長とお揃いのドレスって事は…ないわよね?いや、それよりも母と公爵夫人とお揃い、とか?)
そんな私の懸念は、幸いにも杞憂に終わった。舞踏会の前日、仕事を終えた私は騎士団を出たところで公爵家の馬車に捕まり、そのまま連れて来られて侍女さん達の湯あみとマッサージの洗礼を受け…今日を迎えた。
そして翌日、私は再び朝から磨き上げられた後、濃緑のドレスに着替えさせられた。上質な生地にシンプルなデザインで、身体のラインが出るのはもうお約束だ。
「だってせっかくスタイルがいいんだもの。本当は普段からこういうのを着て欲しいのに!」
息子しかいない公爵夫人は私を着飾らせるのが楽しいらしくそう言ったけど、そんな事をしたら男性に絡まれるので勘弁して欲しい。それでなくても今の職場は男性ばかり、しかも私は婚約を白紙にしたばかりなのだ。私を恨んでいる人もいるし、そんな危険を増すような真似は出来なかった。本当なら今日だって出席したくないし、ドレスももっと地味なものにしたいのだ。ドレスを用意してもらったので文句を言うなんて出来ないけど。
(副団長も来る、わよね…)
王太子殿下の影で何かと側に置かれている彼なら、護衛として参加していそうな気がした。いや、副騎士団長としてもブーランジェ伯爵としても、彼が出ない選択肢はないだろう。どんな顔をして会えば…と思う一方で、会いたい自分もいて、恋とは何て厄介なのだろうと思わずにはいられなかった。
今回はエスコートなしでの出席も可なので、私は母と一緒に出席した。とは言っても、公爵邸から公爵夫人ご夫妻だけでなく、公爵家の次期当主である長男ご夫妻も一緒だったので居場所に困るような事はなさそうに思えた。
会場は正に豪華絢爛で、最近副団長の屋敷や公爵家を見慣れた私だったけれど、その煌びやかさはそれ以上だった。会場内を埋め尽くす参加者の華やかさと熱気は想像以上で、自分が酷く場違いな気さえしてきた。前に出た夜会などとは比べ物にならない程に豪奢だ。
慣れない空間に呑み込まれそうな感覚さえしてきたけれど、母は平然としていた。王妃様の侍女をしていたと聞くし、このような場には慣れているのだろうか。まぁ、あの性格なのでそれがなくても堂々としていそうだけど。それにしても…
「お母様、何だか様子が…」
会場に入ってから違和感があったのだけど、その理由がようやくわかった。参加する貴族が思ったより少ない割に護衛騎士が…多いのだ。何だかピリピリした感じがする。
「ああ、今日はあの爺だけでなく、隣国の国王夫妻も出席されているからよ」
「隣国の…?それって…」
「ジュディの母国よ」
ジュディって…王妃様のことだ。ということはフランクール王国のことだ。あの国は我が国の隣にある大国で、我が国の倍の領土を持ち、全ての面において我が国よりも上だ。王妃様は確か第六王女で側妃腹だったから冷遇されていて、追いやられるように我が国に留学してきたと聞く。その時に陛下がお見初めになったとも。何年か前に義母に当たる正妃とその息子で異母兄の王太子が不正で王籍をはく奪されて、新たに国王になったのは同腹の兄君だった筈…
「さぁ。わざわざあっちの国王まで呼んで、何が起きるのかしらね」
母が楽しそうに笑い、公爵夫人も母に倣うように笑みを浮かべた。
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