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閑話 無辜の人々
水曜日は凄惨で、美しく。
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「あの子は置いていくわよ。だって、婚約者がいるのだもの」
――甘い蜜のような毒だった。
言葉に色がついているとしたら、きっと紫色だった。蠱毒のようにテラテラとした煙の色。
女はサガルに毒を流し込む。胸を広げ、媚態を晒す。淫乱な女の性そのものが、幼い子供をいたぶるように目を細めている。
「お前はここで干からびたまま、一生を終える。きっとあの子はお前のことなど捨てて、人生を謳歌するのでしょうね」
そんなとも、嘘だとも言えなかった。ただ、愛を知らないサガルは茫然と立ち尽くしたまま、﨟たけた女の言葉に囚われた。
美しい女だった。美という指標をよく知らないサガルでも、これが美だと感じるぐらいには。
「わたくしならば、救うことが出来るわ。だって、私はこの世でもっとも高貴な人間なのだもの」
救えると言う。
母だと名乗る女が。救うとはどういうことなのか、その時のサガルにはよく分かってはいなかった。
ただ、言葉の印象からどこか温かみを感じた。
手を重ね、救いを乞う。
カルディアと一緒にいたい。ギスランという婚約者と別れて欲しい。ずっと本を読んであげるから、側にいてくれないだろうか。そうつらつらと語っていた。
顔を上げた時、サガルは後悔した。慈愛に満ちていたはずの女の顔が、淫猥な色気を醸し出していたからだ。
「そう。ならば、お前にして欲しいことがあるのよ。――グランディオス様」
唇が塞がれた。あらゆる体液を舐められた。
グランディオス様、グランディオス様と知らない男の名前で呼ばれる。
サガルは全てが終わったあとに、グランディオスが自分の父であり、体を暴いたのが母であることを知った。
涙は出なかった。出たところでどうしようもない現実は変わらない。
変わらないことを嘆くことは出来なかった。それ以上に壮絶なことがあとに続いたからだ。
ぐったりと疲れた体を起き上がらせる。久しぶりにセックス以外で体力を使った。
リスト率いる軍と乱闘になったあと、地下から連行された。連れてこられた部屋は小綺麗だが外から鍵がかけられている。
しばらくぼうっとしていた。横になっているうちに眠り込んでしまったらしい。背中に違和感がある。昔の嫌な夢を見ていた。思い出したくもない悪夢だ。サガルが何も知らなかった、無垢だった頃のこと。
あのあと外に出され、術を施されたあと、様々な人間に会いに行った。微笑むだけでよかったことも多かったが、なかには関係を持つことになる者もいた。美しい、美しいと口癖のようにいう奴らを相手にした。怖気が走ったが、拒むことは許されなかった。
しばらく憂鬱に浸っているとリストがやってきた。赤髪が眠り目を擦るサガルを醒ます。
「なぜ、あんなことをした? 馬鹿げている」
「リストだって分かっているくせに、聞くんだ」
「……お前、どうして王妃を殺そうとした? あの人は国王陛下のものだ。傷をつければ、出てくるに決まっているだろう」
「……ああ、そっちを怒っているの? 僕がカルディアを閉じ込めたことかと思っていた」
「そっちもだが。俺が怒ることではないだろう。カルディアに怒ってもらえ。だが、王妃の一件は看過できない。軍人としても、宰相の息子としても、だ」
リストはある意味堅実だ。きちんと自分の分を弁えている。役割も分かっている。たとえ、どんなにあの女が淫婦であろうとも、王妃という役割を与えられている限り、守るというスタンスを取る。
憎らしいほど賢明な従兄弟は、眉を吊り上げ怒りを向けて来た。
「僕は前から殺したい殺したいいつか殺すと思っていたけどね」
「それでも、思いとどまるべきだった。演技が得意なお前ならば出来たことだろう?」
「褥の中でならば、出来たかもね。……冗談だよ」
下世話な揶揄は、リストがもっとも嫌いとするところだ。煙に巻くならば、これが一番だった。
「陛下に僕のことを報告せずにいていいの?」
「報告はした。お前は次期国王候補でもある微妙な立場なんだ。立ち振る舞いには気をつけろ」
「……僕を王様にしようとなんてしないでくれると助かるけれど」
そうこぼしたサガルを黙殺し、リストは素知らぬ顔で退室していった。一人っきりの室内は静かで冷たい。暗い洞窟の中に閉じ込められているような感覚がして身震いする。
ーーああ、どこかで、私はこんな寒さを経験したような気がする。
寒いのは嫌だと、毛布を着て横たわる。しばらくすると、ゆりかごにいるように眠気が襲ってきた。
政治的な問答は苦手だった。
サガルとカルディアが閉じ込められていた塔の本棚には古びた本がたくさんあった。そのなかに貴族の名簿もあった。暇だったサガルはそれをすり潰すほど読んだが、昔の紳士録で今の貴族の衰退が分かるわけではない。戦争に乗じて乗っ取られたり、お取り潰しになったところもあり、覚えるのに神経をすり減らした。それに、政治情勢が絡むと十数年を塔で過ごしたサガルには複雑過ぎた。
戦争反対、賛成。増税反対、賛成。死刑の廃止の是非、貴族の特権を廃止することの是非。なにより、階級の廃止に賛成か否か。それが人間関係と絡まり合い、ぐちゃぐちゃになっている。しかも刻一刻と変わるのだ。
外に出て社交をする、となったとき一番困ったのはその絡んだ糸のように入り組んだ貴族社会に適応できなかった事だ。
政治の話に不慣れなサガルを揶揄して、トヴァイス・イーストンは嫌味を放った。
「サガル王子はとてもお優しい方だ。階級を目では見ない。美しき平等を表した法律のようだ」
男らしい顔には嘲りが浮かんでいた。まず顔と名前、立場が一致しないならば政治の話は出来ない。貴族の見分けも出来ないならば、貧民や平民と同じ扱いということではないのか? と高貴な瞳が尋ねていた。
サガルは慄いた。そもそも、自分が王子だということも塔を出て初めて知ったのだ。
階級というものは、童話のなかにしかないと思い込んでいた。
大きなシャンデリア、きらびやかなドレス、体に身につける宝石達。それを当然だと享受出来る立場にいたなんて薄汚い子供に察することは出来なかった。
トヴァイスは上手く返すことが出来ないサガルに呆れたようで、もう二度と夜会で親しげに話題を振ってくることはなくなった。
辺境伯の息子として名の知れた彼は、国王からも評価されていた。次代の宰相にと秘密裏に要請さえあったという。それをすげなく断ったという社交界の専らな噂だった。
サガルは彼に猛烈な嫉妬心を抱いた。塔から出て、一度たりともサガルは国王に会ったことがなかった。その姿は伝え聞くだけで明確な姿を描けなかった。なのに、血の繋がらない他人のトヴァイスが認められ、寵愛を受けている。
憎らしかった。その余裕や油断をかき消したかった。努力を重ね、くだらないサロンや社交場にも足を運び、経験を積み重ねた。
塔の外は目まぐるしい。本を読んだり、読み聞かせることはしなくていい。大勢の人間の名前や特徴を覚えて、世の中の仕組みを覚えなくてはならない。サガルの世界は一度に膨張し、目まぐるしく変化した。それを吸収する忙しさに、塔にいた頃のゆとりや寂しさは死んでいった。
サガルはもはや塔にいるカルディアを思い出すこともなくなっていた。
そんな日々のなか、王妃主催でサガルの誕生日会が開かれた。一度は決別したトヴァイス・イーストンも呼ばれた。王宮の中庭で行われた華々しい誕生日会で、サガルは今度こそ認められるためにトヴァイスに挨拶をした。
トヴァイスは最初こそおざなりに挨拶をしてきたが、同じ辺境伯の息子であるノアの話題を振ると過剰とも言えるほど反応を返した。
「知っているのですか、あの粗忽者を」
「一度会ったことがあるだけだけど。彼とは仲がいいらしいね。あまり社交的な性格ではないと聞き及んでいるのだけど」
「……家同士の繋がりは思ったよりも強固なものでして。それに、あれでいてノアは信心深い面もあります」
「そうなんだ。そうだ、次の収穫祭、僕も出向いてもいいかな?」
収穫祭はイーストン領にとって、大きな意味を持つ。女神カルディアを讃える祭りでもあるからだ。
トヴァイスは思案するように瞼を下げた。いい感触だと思った、その時だった。
「兄様! サガル兄様!」
大声でサガルを呼ぶ声が聞こえた。声の元を探るように視線をあげると、三階のギャラリーの窓から小さな体が顔を出していた。
カルディアだった。汚らしい格好でぶんぶんとサガルに手を振っていた。
トヴァイスは夢から覚めるようにその姿を捉えると、皮肉げに笑ってみせた。
「いい妹様をお持ちですね」
かあっと全身が羞恥で赤くなる。上手く取り繕っていたのに、所詮は塔に住んでいた穴熊と何ら変わりないと言わんばりだった。カルディアのたった一言が、これまでのサガルの努力に泥を塗った。
何度も子どもらしい高い声で名前を呼ばれる。頚椎にぞわぞわと痺れが走る。嫌悪感が膨れあがり、窓からカルディアを突き落としたくなった。
カルディアはギスランという婚約者がいる。笑顔を浮かべ、サガルを祝福してもすぐにいなくなってしまう。それなのに、サガルの邪魔をするのか。あの場所にずっといてはくれないくせに。醜い大人の手に触られるのも、気に入られようと媚びへつらうのも、カルディアのせいなのに。
トヴァイスは馬鹿にしたように鼻を鳴らすと慇懃な礼を崩さずに誕生日会から姿を消した。
失敗は明らかだった。サガルの努力は何の意味もなかった。トヴァイスに一目を置かれれば、この先の活動だって楽になったはずだった。サガルの名前を呼ぶ、カルディアの声で全てが泡と消えた。
――父様に会えるかもしれなかったのに……!
誕生日会が終わり、廊下でカルディアがサガルに話しかけてきた。それを全部無視した。居ないもののように扱った。
サガルは誕生日会で苦汁を舐めた。トヴァイスに見限られ、散々な陰口を叩かれたのだ。誕生日どころではなくなった。サガルが繋げるはずだった商談も二、三駄目になってしまった。
カルディアのせいとしか思えなかった。
サガルは今でも思う。
そのままカルディアのせいだと決めつけて、避けていればよかったのではないかと。
そうすれば、カルディアの誕生日に人は死ななかったのではないか。
「こりゃあ凄い! 過去も未来も現在も、ありとあらゆる情報がここに集まってますね」
蘭王の喧しい声に眉をひそめる。頭痛がずっとしていた。夢の中なのに、と思いながらも重たい頭を手で支える。
さっきまで見ていたのはサガルの話だったか、それとも、蘭王とフィリップの話だったか。ギスランとヴィクターの話だった?
とにかく、頭が痛い。ここに来てはいけないと、誰かが警鐘を鳴らしているようだった。
「危険を冒して、お姫さんの頭の中に来た甲斐がありますよ! それで、次はなにを見ます? 為替の動きが知れるものがいいのですが」
煩わしい蘭王に構わず辺りを見渡す。透明な箱のような場所だ。扉には、いくつも映像が映っていた。鏡面のようで、小さくカルディアの顔が反射して見える。
鏡面に映し出される映像は過去のものもあれば、現在、未来のものまであった。死に神に会いに行くまでの土の下で見たものに見た目はそっくりだ。
夢は記憶の継ぎ接ぎという。その影響だろうと一人納得した。
「夢見って本当にあるんですねえ。お姫さんのこの頭の中さえ分かれば人生上手く行くでしょうね。そのぐらい、価値のあるものですよ、これ」
「……お前、夢の中でもうるさいのね」
「ふふ、興奮してるだけですよ。それに、俺は家じゃあ大人しい男そのものでね。商人として、気張っているだけです」
「へえ、そう。……どうせ、夢なのだから、寛いだら? 夢のこと、起きて覚えていないでしょうし」
「そうですか? ならば、遠慮なく」
蘭王の纏う雰囲気が、不穏なものに変化する。退廃的で、どろりとした毒を思わせる。
いつのまにか蘭王は煙管を口にあてていた。夢のなかの蘭王は現実の彼を忠実に再現しているようだ。ゆったりと長い息を吐き出すと、甘い臭いが鼻に付く。
夢のくせに妙に現実感があった。
「助かった。あの喋りはたるくていけない。胡散臭くてお前を口説けぬしな」
「……口説く?」
あくせくと商人のように振舞っていた蘭王はいなかった。仮面の向こう側から、野心に燃える瞳を見た。ゆったりと口元は微笑んでいるのに、やけに挑発的だ。この顔をした男は好ましい。野心的な性根を隠そうともしていない。
「この国を出て、俺の妻になれ。どこでも好きなところに連れて行ってやる。海を越えた先や願うならば本国にでも」
「……どうして、私が」
「利用価値があるからだ。この能力はどんな女よりも都合がいい」
「夢のことに、よく言うわ。こんなの全てデタラメよ」
鏡の向こうで、ギスランが誰かの話している。腕が六本ある少年だった。
こんなものが現実のはずがない。
「いいや? 少なくとも俺とフィリップの会話は本物だった。一言一句違わない。惜しむらくはこの記憶を正確に現に持ち運べないことだが……。まあいい。やりようはいくらでもある」
「私を妻にする理由はないでしょう」
「お前の能力に惚れた。抱きたい。それでは駄目か?」
蘭王の言葉は強烈だが、中身がない。抱きたいと言いながら利用したいと言っている。
この男は一度肌を味わったら、要らないと捨てるような男だと思う。
リストやギスランとはまるきり違う。でも、どうしてこんな時にリストやギスランの顔が頭をちらつくのだろう?
分からないことに蓋をするように胸に手をあてる。どくどくと心臓の音が聞こえた。
「本音とは思えないもの」
「偽らざる本音だとも。俺は男だぞ? 女を欲するのは普通だ。お前の婚約者は、禁欲に励んでいるようだがな。何度も同衾して処女であるとは驚きだ」
「なっ……! なんでそれを!?」
「今、ばれた。分かりやすい女だ。そのようでは酷い男に弄ばれ、いいように捨てられる」
ふうっと煙を浴びせかけられる。苛立ちまぎれに煙を手を振り霧散させた。
なぜこんな奴に遊ばれると予言されなくてはならないんだ。自分の身ならば守れる。
「お前は酷い男そうだものね。避けることにするわ」
「おや、この俺を味あわずとも良いと? 殊勝なことだ。愛人程度に扱っても構わんと言うのに。俺はお前に心底興味が湧いている。体が疼くなら相手してやるのもやぶさかではない」
「一生そんなことはないわよ」
にやにやと野卑な笑みに頬が引き攣る。この男のペースに完全にのせられていた。経験の差だろうか、完全に遊ばれている。
「それは寂しいなあ。これでも、いい男であると自負しているのだが?」
「……お前は、まだいいわ。でも、商人のお前は嫌い。騒がしいし、無遠慮だわ」
「俺とてあれを好いているわけではない。だが、ああいう道化を好む奴らは多いからなあ。ほら、先程見たサガルのように、見世物を好む残虐さを人は持っているものだ」
いつそんなものを見た?
思い出せない。記憶の混同が著しい。適当に頷くと、蘭王は見透かす様に笑った。
「人を馬鹿にするのは楽しいだろう? それに、ケチをつけるのもたまらない愉悦だ。他人と自分の差異を見つけ、貶す。俺も好きだ。そういう奴らから金を毟り取るのが」
どきりとした。他人を批判して、悦にいる。そんな経験をしたことがないとは言えなかった。だって、他人を見下すのは楽しい。優越感を抱くのは、気分がいい。
「道化を演じるあれも、俺だ。二面性だけは受け入れて貰わなくては。商人は存外、大変な職業でな」
ふと蘭王が思い出したように目を光らせる。
「……そういえば、先程、テウだったか? そいつと喋っていたあの男、俺にはトデルフィ公爵に見えたが。なぜリストと名乗ったのだろうな? あの貴族も俺と同じ二面性を?」
「……さっき? そんなことを喋っていたかしら……?」
たたらを踏みそうになる。夢のせいか、記憶が途切れ途切れにしか思い出せない。
「水色の髪の先が、赤く色付いて綺麗だった。幻覚を使ったのか、歳も分不相応なほど若返っていたな。なぜ、そんなことをする必要が?」
「……なぜ? それは……。私にはわからないわ」
「分からないのか? だが、トデルフィ公爵とは既知のはずだろう?」
「私が……?」
トデルフィ公爵とは誰のことだったか。それすら判然としない。頭がうまく回らないのだ。それに強烈な喉の渇きのせいで、足の感覚がない。
「……なにやらさっきからぼうっとしているな。お前が夢見を知らないという理由はこれか? 無意識にこの場所を拒絶しているのか?」
蘭王はカルディアに意味ありげな視線を向けた。だが、その視線の意味さえ、生温い頭はよく分からない。
「まあ、いい。次を見てみるとしよう。ここは楽しい。俺はここが気に入った。毎日でも入り浸りたいぐらいだ」
「次からお前の出番なんてないわよ」
最悪な夢だ。
頭痛がさらに激しくなる。意識が混同していく。目の前が揺れて、頭から足元に倒れこむ。ぐわんぐわんと視界が揺れている。蘭王の姿はもう見えない。目の前が真っ暗だ。
――お腹が空いた。
幼い頃の自分が、部屋に横たわっていた。
お腹を空かせてサガルの帰りを待っている。
――甘い蜜のような毒だった。
言葉に色がついているとしたら、きっと紫色だった。蠱毒のようにテラテラとした煙の色。
女はサガルに毒を流し込む。胸を広げ、媚態を晒す。淫乱な女の性そのものが、幼い子供をいたぶるように目を細めている。
「お前はここで干からびたまま、一生を終える。きっとあの子はお前のことなど捨てて、人生を謳歌するのでしょうね」
そんなとも、嘘だとも言えなかった。ただ、愛を知らないサガルは茫然と立ち尽くしたまま、﨟たけた女の言葉に囚われた。
美しい女だった。美という指標をよく知らないサガルでも、これが美だと感じるぐらいには。
「わたくしならば、救うことが出来るわ。だって、私はこの世でもっとも高貴な人間なのだもの」
救えると言う。
母だと名乗る女が。救うとはどういうことなのか、その時のサガルにはよく分かってはいなかった。
ただ、言葉の印象からどこか温かみを感じた。
手を重ね、救いを乞う。
カルディアと一緒にいたい。ギスランという婚約者と別れて欲しい。ずっと本を読んであげるから、側にいてくれないだろうか。そうつらつらと語っていた。
顔を上げた時、サガルは後悔した。慈愛に満ちていたはずの女の顔が、淫猥な色気を醸し出していたからだ。
「そう。ならば、お前にして欲しいことがあるのよ。――グランディオス様」
唇が塞がれた。あらゆる体液を舐められた。
グランディオス様、グランディオス様と知らない男の名前で呼ばれる。
サガルは全てが終わったあとに、グランディオスが自分の父であり、体を暴いたのが母であることを知った。
涙は出なかった。出たところでどうしようもない現実は変わらない。
変わらないことを嘆くことは出来なかった。それ以上に壮絶なことがあとに続いたからだ。
ぐったりと疲れた体を起き上がらせる。久しぶりにセックス以外で体力を使った。
リスト率いる軍と乱闘になったあと、地下から連行された。連れてこられた部屋は小綺麗だが外から鍵がかけられている。
しばらくぼうっとしていた。横になっているうちに眠り込んでしまったらしい。背中に違和感がある。昔の嫌な夢を見ていた。思い出したくもない悪夢だ。サガルが何も知らなかった、無垢だった頃のこと。
あのあと外に出され、術を施されたあと、様々な人間に会いに行った。微笑むだけでよかったことも多かったが、なかには関係を持つことになる者もいた。美しい、美しいと口癖のようにいう奴らを相手にした。怖気が走ったが、拒むことは許されなかった。
しばらく憂鬱に浸っているとリストがやってきた。赤髪が眠り目を擦るサガルを醒ます。
「なぜ、あんなことをした? 馬鹿げている」
「リストだって分かっているくせに、聞くんだ」
「……お前、どうして王妃を殺そうとした? あの人は国王陛下のものだ。傷をつければ、出てくるに決まっているだろう」
「……ああ、そっちを怒っているの? 僕がカルディアを閉じ込めたことかと思っていた」
「そっちもだが。俺が怒ることではないだろう。カルディアに怒ってもらえ。だが、王妃の一件は看過できない。軍人としても、宰相の息子としても、だ」
リストはある意味堅実だ。きちんと自分の分を弁えている。役割も分かっている。たとえ、どんなにあの女が淫婦であろうとも、王妃という役割を与えられている限り、守るというスタンスを取る。
憎らしいほど賢明な従兄弟は、眉を吊り上げ怒りを向けて来た。
「僕は前から殺したい殺したいいつか殺すと思っていたけどね」
「それでも、思いとどまるべきだった。演技が得意なお前ならば出来たことだろう?」
「褥の中でならば、出来たかもね。……冗談だよ」
下世話な揶揄は、リストがもっとも嫌いとするところだ。煙に巻くならば、これが一番だった。
「陛下に僕のことを報告せずにいていいの?」
「報告はした。お前は次期国王候補でもある微妙な立場なんだ。立ち振る舞いには気をつけろ」
「……僕を王様にしようとなんてしないでくれると助かるけれど」
そうこぼしたサガルを黙殺し、リストは素知らぬ顔で退室していった。一人っきりの室内は静かで冷たい。暗い洞窟の中に閉じ込められているような感覚がして身震いする。
ーーああ、どこかで、私はこんな寒さを経験したような気がする。
寒いのは嫌だと、毛布を着て横たわる。しばらくすると、ゆりかごにいるように眠気が襲ってきた。
政治的な問答は苦手だった。
サガルとカルディアが閉じ込められていた塔の本棚には古びた本がたくさんあった。そのなかに貴族の名簿もあった。暇だったサガルはそれをすり潰すほど読んだが、昔の紳士録で今の貴族の衰退が分かるわけではない。戦争に乗じて乗っ取られたり、お取り潰しになったところもあり、覚えるのに神経をすり減らした。それに、政治情勢が絡むと十数年を塔で過ごしたサガルには複雑過ぎた。
戦争反対、賛成。増税反対、賛成。死刑の廃止の是非、貴族の特権を廃止することの是非。なにより、階級の廃止に賛成か否か。それが人間関係と絡まり合い、ぐちゃぐちゃになっている。しかも刻一刻と変わるのだ。
外に出て社交をする、となったとき一番困ったのはその絡んだ糸のように入り組んだ貴族社会に適応できなかった事だ。
政治の話に不慣れなサガルを揶揄して、トヴァイス・イーストンは嫌味を放った。
「サガル王子はとてもお優しい方だ。階級を目では見ない。美しき平等を表した法律のようだ」
男らしい顔には嘲りが浮かんでいた。まず顔と名前、立場が一致しないならば政治の話は出来ない。貴族の見分けも出来ないならば、貧民や平民と同じ扱いということではないのか? と高貴な瞳が尋ねていた。
サガルは慄いた。そもそも、自分が王子だということも塔を出て初めて知ったのだ。
階級というものは、童話のなかにしかないと思い込んでいた。
大きなシャンデリア、きらびやかなドレス、体に身につける宝石達。それを当然だと享受出来る立場にいたなんて薄汚い子供に察することは出来なかった。
トヴァイスは上手く返すことが出来ないサガルに呆れたようで、もう二度と夜会で親しげに話題を振ってくることはなくなった。
辺境伯の息子として名の知れた彼は、国王からも評価されていた。次代の宰相にと秘密裏に要請さえあったという。それをすげなく断ったという社交界の専らな噂だった。
サガルは彼に猛烈な嫉妬心を抱いた。塔から出て、一度たりともサガルは国王に会ったことがなかった。その姿は伝え聞くだけで明確な姿を描けなかった。なのに、血の繋がらない他人のトヴァイスが認められ、寵愛を受けている。
憎らしかった。その余裕や油断をかき消したかった。努力を重ね、くだらないサロンや社交場にも足を運び、経験を積み重ねた。
塔の外は目まぐるしい。本を読んだり、読み聞かせることはしなくていい。大勢の人間の名前や特徴を覚えて、世の中の仕組みを覚えなくてはならない。サガルの世界は一度に膨張し、目まぐるしく変化した。それを吸収する忙しさに、塔にいた頃のゆとりや寂しさは死んでいった。
サガルはもはや塔にいるカルディアを思い出すこともなくなっていた。
そんな日々のなか、王妃主催でサガルの誕生日会が開かれた。一度は決別したトヴァイス・イーストンも呼ばれた。王宮の中庭で行われた華々しい誕生日会で、サガルは今度こそ認められるためにトヴァイスに挨拶をした。
トヴァイスは最初こそおざなりに挨拶をしてきたが、同じ辺境伯の息子であるノアの話題を振ると過剰とも言えるほど反応を返した。
「知っているのですか、あの粗忽者を」
「一度会ったことがあるだけだけど。彼とは仲がいいらしいね。あまり社交的な性格ではないと聞き及んでいるのだけど」
「……家同士の繋がりは思ったよりも強固なものでして。それに、あれでいてノアは信心深い面もあります」
「そうなんだ。そうだ、次の収穫祭、僕も出向いてもいいかな?」
収穫祭はイーストン領にとって、大きな意味を持つ。女神カルディアを讃える祭りでもあるからだ。
トヴァイスは思案するように瞼を下げた。いい感触だと思った、その時だった。
「兄様! サガル兄様!」
大声でサガルを呼ぶ声が聞こえた。声の元を探るように視線をあげると、三階のギャラリーの窓から小さな体が顔を出していた。
カルディアだった。汚らしい格好でぶんぶんとサガルに手を振っていた。
トヴァイスは夢から覚めるようにその姿を捉えると、皮肉げに笑ってみせた。
「いい妹様をお持ちですね」
かあっと全身が羞恥で赤くなる。上手く取り繕っていたのに、所詮は塔に住んでいた穴熊と何ら変わりないと言わんばりだった。カルディアのたった一言が、これまでのサガルの努力に泥を塗った。
何度も子どもらしい高い声で名前を呼ばれる。頚椎にぞわぞわと痺れが走る。嫌悪感が膨れあがり、窓からカルディアを突き落としたくなった。
カルディアはギスランという婚約者がいる。笑顔を浮かべ、サガルを祝福してもすぐにいなくなってしまう。それなのに、サガルの邪魔をするのか。あの場所にずっといてはくれないくせに。醜い大人の手に触られるのも、気に入られようと媚びへつらうのも、カルディアのせいなのに。
トヴァイスは馬鹿にしたように鼻を鳴らすと慇懃な礼を崩さずに誕生日会から姿を消した。
失敗は明らかだった。サガルの努力は何の意味もなかった。トヴァイスに一目を置かれれば、この先の活動だって楽になったはずだった。サガルの名前を呼ぶ、カルディアの声で全てが泡と消えた。
――父様に会えるかもしれなかったのに……!
誕生日会が終わり、廊下でカルディアがサガルに話しかけてきた。それを全部無視した。居ないもののように扱った。
サガルは誕生日会で苦汁を舐めた。トヴァイスに見限られ、散々な陰口を叩かれたのだ。誕生日どころではなくなった。サガルが繋げるはずだった商談も二、三駄目になってしまった。
カルディアのせいとしか思えなかった。
サガルは今でも思う。
そのままカルディアのせいだと決めつけて、避けていればよかったのではないかと。
そうすれば、カルディアの誕生日に人は死ななかったのではないか。
「こりゃあ凄い! 過去も未来も現在も、ありとあらゆる情報がここに集まってますね」
蘭王の喧しい声に眉をひそめる。頭痛がずっとしていた。夢の中なのに、と思いながらも重たい頭を手で支える。
さっきまで見ていたのはサガルの話だったか、それとも、蘭王とフィリップの話だったか。ギスランとヴィクターの話だった?
とにかく、頭が痛い。ここに来てはいけないと、誰かが警鐘を鳴らしているようだった。
「危険を冒して、お姫さんの頭の中に来た甲斐がありますよ! それで、次はなにを見ます? 為替の動きが知れるものがいいのですが」
煩わしい蘭王に構わず辺りを見渡す。透明な箱のような場所だ。扉には、いくつも映像が映っていた。鏡面のようで、小さくカルディアの顔が反射して見える。
鏡面に映し出される映像は過去のものもあれば、現在、未来のものまであった。死に神に会いに行くまでの土の下で見たものに見た目はそっくりだ。
夢は記憶の継ぎ接ぎという。その影響だろうと一人納得した。
「夢見って本当にあるんですねえ。お姫さんのこの頭の中さえ分かれば人生上手く行くでしょうね。そのぐらい、価値のあるものですよ、これ」
「……お前、夢の中でもうるさいのね」
「ふふ、興奮してるだけですよ。それに、俺は家じゃあ大人しい男そのものでね。商人として、気張っているだけです」
「へえ、そう。……どうせ、夢なのだから、寛いだら? 夢のこと、起きて覚えていないでしょうし」
「そうですか? ならば、遠慮なく」
蘭王の纏う雰囲気が、不穏なものに変化する。退廃的で、どろりとした毒を思わせる。
いつのまにか蘭王は煙管を口にあてていた。夢のなかの蘭王は現実の彼を忠実に再現しているようだ。ゆったりと長い息を吐き出すと、甘い臭いが鼻に付く。
夢のくせに妙に現実感があった。
「助かった。あの喋りはたるくていけない。胡散臭くてお前を口説けぬしな」
「……口説く?」
あくせくと商人のように振舞っていた蘭王はいなかった。仮面の向こう側から、野心に燃える瞳を見た。ゆったりと口元は微笑んでいるのに、やけに挑発的だ。この顔をした男は好ましい。野心的な性根を隠そうともしていない。
「この国を出て、俺の妻になれ。どこでも好きなところに連れて行ってやる。海を越えた先や願うならば本国にでも」
「……どうして、私が」
「利用価値があるからだ。この能力はどんな女よりも都合がいい」
「夢のことに、よく言うわ。こんなの全てデタラメよ」
鏡の向こうで、ギスランが誰かの話している。腕が六本ある少年だった。
こんなものが現実のはずがない。
「いいや? 少なくとも俺とフィリップの会話は本物だった。一言一句違わない。惜しむらくはこの記憶を正確に現に持ち運べないことだが……。まあいい。やりようはいくらでもある」
「私を妻にする理由はないでしょう」
「お前の能力に惚れた。抱きたい。それでは駄目か?」
蘭王の言葉は強烈だが、中身がない。抱きたいと言いながら利用したいと言っている。
この男は一度肌を味わったら、要らないと捨てるような男だと思う。
リストやギスランとはまるきり違う。でも、どうしてこんな時にリストやギスランの顔が頭をちらつくのだろう?
分からないことに蓋をするように胸に手をあてる。どくどくと心臓の音が聞こえた。
「本音とは思えないもの」
「偽らざる本音だとも。俺は男だぞ? 女を欲するのは普通だ。お前の婚約者は、禁欲に励んでいるようだがな。何度も同衾して処女であるとは驚きだ」
「なっ……! なんでそれを!?」
「今、ばれた。分かりやすい女だ。そのようでは酷い男に弄ばれ、いいように捨てられる」
ふうっと煙を浴びせかけられる。苛立ちまぎれに煙を手を振り霧散させた。
なぜこんな奴に遊ばれると予言されなくてはならないんだ。自分の身ならば守れる。
「お前は酷い男そうだものね。避けることにするわ」
「おや、この俺を味あわずとも良いと? 殊勝なことだ。愛人程度に扱っても構わんと言うのに。俺はお前に心底興味が湧いている。体が疼くなら相手してやるのもやぶさかではない」
「一生そんなことはないわよ」
にやにやと野卑な笑みに頬が引き攣る。この男のペースに完全にのせられていた。経験の差だろうか、完全に遊ばれている。
「それは寂しいなあ。これでも、いい男であると自負しているのだが?」
「……お前は、まだいいわ。でも、商人のお前は嫌い。騒がしいし、無遠慮だわ」
「俺とてあれを好いているわけではない。だが、ああいう道化を好む奴らは多いからなあ。ほら、先程見たサガルのように、見世物を好む残虐さを人は持っているものだ」
いつそんなものを見た?
思い出せない。記憶の混同が著しい。適当に頷くと、蘭王は見透かす様に笑った。
「人を馬鹿にするのは楽しいだろう? それに、ケチをつけるのもたまらない愉悦だ。他人と自分の差異を見つけ、貶す。俺も好きだ。そういう奴らから金を毟り取るのが」
どきりとした。他人を批判して、悦にいる。そんな経験をしたことがないとは言えなかった。だって、他人を見下すのは楽しい。優越感を抱くのは、気分がいい。
「道化を演じるあれも、俺だ。二面性だけは受け入れて貰わなくては。商人は存外、大変な職業でな」
ふと蘭王が思い出したように目を光らせる。
「……そういえば、先程、テウだったか? そいつと喋っていたあの男、俺にはトデルフィ公爵に見えたが。なぜリストと名乗ったのだろうな? あの貴族も俺と同じ二面性を?」
「……さっき? そんなことを喋っていたかしら……?」
たたらを踏みそうになる。夢のせいか、記憶が途切れ途切れにしか思い出せない。
「水色の髪の先が、赤く色付いて綺麗だった。幻覚を使ったのか、歳も分不相応なほど若返っていたな。なぜ、そんなことをする必要が?」
「……なぜ? それは……。私にはわからないわ」
「分からないのか? だが、トデルフィ公爵とは既知のはずだろう?」
「私が……?」
トデルフィ公爵とは誰のことだったか。それすら判然としない。頭がうまく回らないのだ。それに強烈な喉の渇きのせいで、足の感覚がない。
「……なにやらさっきからぼうっとしているな。お前が夢見を知らないという理由はこれか? 無意識にこの場所を拒絶しているのか?」
蘭王はカルディアに意味ありげな視線を向けた。だが、その視線の意味さえ、生温い頭はよく分からない。
「まあ、いい。次を見てみるとしよう。ここは楽しい。俺はここが気に入った。毎日でも入り浸りたいぐらいだ」
「次からお前の出番なんてないわよ」
最悪な夢だ。
頭痛がさらに激しくなる。意識が混同していく。目の前が揺れて、頭から足元に倒れこむ。ぐわんぐわんと視界が揺れている。蘭王の姿はもう見えない。目の前が真っ暗だ。
――お腹が空いた。
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