文明トカゲ

ペン牛

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三 雷鳴の猫

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(そん、な。だって、僕達はあいつからずっと離れるように逃げて――)
 あいつは、簡単に僕達の前に回り込めるのか?
 だったらどうしてすぐに捕まえない?
 あいつは――そうか、あいつは、
(僕達を絶望させて、少しずつ追い詰めていくつもりなのか)
 その場から走り出そうとすると、右腕に強い負荷がかかった。
「梓! 早く逃げないと――」
「――どうやって?」
 梓の声には、絶望が満ちていた。
「私達、あの黒い影から逃げてたのに、いつの間にか前から歩いてきてて、つまりあの黒い影は、いつだって私達に追いつけるってことでしょ?」
 梓の目を見る。
 心の折れた人間の目だった。
「梓――!!」 
 梓は動かなかった。まだ遠くにいたと思っていた黒い影は、今や手の届く距離にいる。
「――っ!!」
 意味があるとは思えなかった。でも、僕は自分を止めることができなかった。僕は、梓を黒い影から隠すように抱きしめた。これで、これで梓が一秒でも長く生きられるようにと。直後、自分の体が少しずつ、水を垂らされた角砂糖のように削られていく感覚があった。痛みはない。そのことが、あまりにもおぞましかった。
(――あず)
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