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九 望遠の楯
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僕は空気を読む、ということが苦手だ。苦手なものは数多くあるけれど、中でも最も不得手と言ってしまっていいだろう。けれど――
「……えっと、その、真奈ちゃんって、呼んでもいい、かな?」
「ご自由に。私も梓さんと呼ばせてもらっていいですか?」
「え、も、もちろん、いいよ」
「ありがとうございます」
梓と真奈さん――二人の間に横たわる空気が、鋼鉄の塊めいて重々しいことはわかる。一体どうしてこんな状況になってしまったのか。
(……やっぱり、あの時の真奈さんとの会話が原因なんだろうか)
きっかけは真奈さんの、
『せんせーって友達一人もいなそうだよね』
という一言だった。流石に失礼だと思った僕は、少し強めに、
『そんなことはないよ。大切な友達が一人いる』
と反論した。すると真奈さんは、
『じゃあ、その友達ってどんな人? 教えて、せんせー』
と聞いてきた。僕は真奈さんにまず梓の名前を教えた。そして梓がどれだけ美しく可憐で、また穏やかで優しいかを語彙の限りを尽くして伝えた。梓は僕にとって女性の理想像なのだ――僕は梓の紹介をそのように結んだ。その結果真奈さんがどうなったかというと、
(梓に会わせなかったらホテルに無理矢理連れ込まれたって警察に言う、だもんなぁ。頬を痙攣させながら言ってたし、間違いなく真奈さんは本気だっただろう)
「……えっと、その、真奈ちゃんって、呼んでもいい、かな?」
「ご自由に。私も梓さんと呼ばせてもらっていいですか?」
「え、も、もちろん、いいよ」
「ありがとうございます」
梓と真奈さん――二人の間に横たわる空気が、鋼鉄の塊めいて重々しいことはわかる。一体どうしてこんな状況になってしまったのか。
(……やっぱり、あの時の真奈さんとの会話が原因なんだろうか)
きっかけは真奈さんの、
『せんせーって友達一人もいなそうだよね』
という一言だった。流石に失礼だと思った僕は、少し強めに、
『そんなことはないよ。大切な友達が一人いる』
と反論した。すると真奈さんは、
『じゃあ、その友達ってどんな人? 教えて、せんせー』
と聞いてきた。僕は真奈さんにまず梓の名前を教えた。そして梓がどれだけ美しく可憐で、また穏やかで優しいかを語彙の限りを尽くして伝えた。梓は僕にとって女性の理想像なのだ――僕は梓の紹介をそのように結んだ。その結果真奈さんがどうなったかというと、
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