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転
#25.遺言
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七日目の朝。やっと待ちに待った音が聞こえてきた。
地上の蓋が開けられた音だ!
トンットンットンットンッ。誰かが慎重に階段を下りて来る。
トトトトトトトン。異臭を感じたからか、途中から足音が早くなった。
俺はもう意識も朦朧としていて、水で腹を膨らませながら、ただただベッドに横になっているだけだった。
カギで鉄格子が開けられ、慌てて入って来たのは、奴の息子だった。
奴の息子はまず鉄格子の真ん前で倒れたままになっている自分の父親を見て驚いて駆け寄ったが、腐敗も始まっており息が無い事を確認すると、部屋を見回して俺と目が合った。
服も与えられずに覇気なくベッドに横たわっている俺を見て、奴の息子は更に驚いた様だった。
奴の息子とは、赤ん坊の時から思春期位まで、毎月と言っていい程頻繁に会っていた。その後大人になってからもポツポツとだ。向こうも当然俺の事をよく知っている。
「あの…櫂叔父さま…ですよね?」
俺は最後の気力を振り絞って声をだす。
「あぁ、そうだ。
もう一週間も何も食べてないんだ。先に何か食べ物をくれ。」
「えっまっ待ってくださいね!
父から指示があったんですが、すぐ必要になると思わず、上に置いてきてしまって。」
奴の息子が慌てて持ってきたそれはストロー付きの牛乳と柔らかいパンだった。
俺はそれをむさぼり食った。いっぺんに食べてはいけないとは解ってはいたが、とてもではないが我慢が出来なかった。
流石にあと一日二日放置すれば死ぬだろう俺にわざわざ会いに来て、今更毒殺したりはしないだろう。
わざわざ手を汚さずとも、そのまま餓死させた方が自然に見えるのだから。
俺に食料を渡すときに、俺の首に付いた首輪と、俺の両胸のピアス。大きな絆創膏も尽きてしまってむき出しになった家紋の烙印を見て事情を悟ったのか、奴の息子の顔は盛大に引きつっていた。
モールスが摘発されてもうすぐで一年が経つ。
奴の息子が第一発見者になってしまったのはまずかったか?もしかしたらこのまま死人に口なしとばかりに消されるのか?と一瞬身構えたが、どうやら父親から遺言があったらしい。
哲也は自分の死期を悟って毎日自動送信のメールを設定していた。
もし朝起きた時にまだ生き永らえていたら、その日の分の送信設定を取り消すという作業を毎日やっていたのだ。
だから哲也が死んでからは、送信取消が出来なかったメールが息子の元に毎日来る様になっていた。内容は全て同じだが、ただ一つ。暗証番号の所だけが変化する。
メールは七日で一ループとして設定していたらしい。なんとも手が込んだ事を考えたものだ。
メールを要約するとこうだ:
・俺が取消の電話を掛けない限り、このメールが初めて来た日を一日目と数えて七日目に必ず俺の別邸に来ること。
それは早くても遅くてもいけない。事は重大なので、自分が来れない場合には、信頼できる人間を必ず向かわせる事。
・地下室への鍵は金庫の中にしまってある。金庫の暗証番号はこの先七日間に分けて記載する暗証番号を正しい順番に並び替えれば開く。
今日のパスワード:三番目の数字は7だ。(翌日のメールには七番目の数字は1だと届く。)
一回でも間違えれば絶対に開かない金庫だから、絶対に押し間違えるなよ?お前は詰めが甘い所があるからな。俺が死んで、今後一人になったら気を付けろよ?
・すぐに飲める牛乳と柔らかいパンを持参する事
そのほかにも沢山の俺に関係する遺言がそのメールには書かれていたらしい。
今後の俺の処遇まで全て決まっているとの事だった。
なんだよ。何が心中だよ。最初からぴったり一週間で助けが来るようになっていたんじゃないか。
俺が死ぬか死なないかのギリギリのラインを見極めて、素知らぬ顔で冷蔵庫の中身も置いてたのかよ。
俺が餓死するか無理心中させられるのかと散々コイツを恨み、一週間という長い長い時を過ごして、最後に息子に間一髪で救い出される所まで、実は計算済みだったのかよ。
しかも、今後の処遇まで勝手に決めてるだと?ふざけるな!お前の思い通りには絶対にならないぞ!
奴の息子は流石経営者だった。
事を荒らげない様に救急車は一切呼ばずに、口が堅い部下を何人か引き連れて地下室まで下りて来たかと思うと、俺を病院まで搬送してくれた。
いや。もしかしてこれも全部アイツの指示なのかもしれない。
運び込まれた病院は、思っていたよりも規模が小さいな。きっとお抱え病院の個室に押し込まれたんだな。
表沙汰にしない様に細心の注意を払っている事が伺い知れる。
まぁ、無駄だがな。元気になったら絶対に警察に駆け込んで全部暴露してやる。
いや。凛空が無事かを確認するのが先か。
悔しいかな。もし凛空が無事だったら、後々の凛空に対する復讐が怖いから、奴の所業を暴露する事は出来ない。
もし俺だけだったら捨て身になれるのに。
あぁ、そういえば既に自由の身となっていて俺の心配事から外れてしまっていたが、蒼空も居た。ツガイの事で頭の中がいっぱいになってしまっていた。
ダメだ。やっぱりむやみに事を荒らげる事は出来ない。
くそっ!そこまで折り込み済みかよ。
とにかくまずは凛空の無事を確かめなければ。
俺は信じないぞ。凛空が自殺してもう既にこの世に居ないなんて、絶対に信じないぞ。
蒼空が自由になった今。
もう一度君と、蒼空と三人で笑い合いたい。
地上の蓋が開けられた音だ!
トンットンットンットンッ。誰かが慎重に階段を下りて来る。
トトトトトトトン。異臭を感じたからか、途中から足音が早くなった。
俺はもう意識も朦朧としていて、水で腹を膨らませながら、ただただベッドに横になっているだけだった。
カギで鉄格子が開けられ、慌てて入って来たのは、奴の息子だった。
奴の息子はまず鉄格子の真ん前で倒れたままになっている自分の父親を見て驚いて駆け寄ったが、腐敗も始まっており息が無い事を確認すると、部屋を見回して俺と目が合った。
服も与えられずに覇気なくベッドに横たわっている俺を見て、奴の息子は更に驚いた様だった。
奴の息子とは、赤ん坊の時から思春期位まで、毎月と言っていい程頻繁に会っていた。その後大人になってからもポツポツとだ。向こうも当然俺の事をよく知っている。
「あの…櫂叔父さま…ですよね?」
俺は最後の気力を振り絞って声をだす。
「あぁ、そうだ。
もう一週間も何も食べてないんだ。先に何か食べ物をくれ。」
「えっまっ待ってくださいね!
父から指示があったんですが、すぐ必要になると思わず、上に置いてきてしまって。」
奴の息子が慌てて持ってきたそれはストロー付きの牛乳と柔らかいパンだった。
俺はそれをむさぼり食った。いっぺんに食べてはいけないとは解ってはいたが、とてもではないが我慢が出来なかった。
流石にあと一日二日放置すれば死ぬだろう俺にわざわざ会いに来て、今更毒殺したりはしないだろう。
わざわざ手を汚さずとも、そのまま餓死させた方が自然に見えるのだから。
俺に食料を渡すときに、俺の首に付いた首輪と、俺の両胸のピアス。大きな絆創膏も尽きてしまってむき出しになった家紋の烙印を見て事情を悟ったのか、奴の息子の顔は盛大に引きつっていた。
モールスが摘発されてもうすぐで一年が経つ。
奴の息子が第一発見者になってしまったのはまずかったか?もしかしたらこのまま死人に口なしとばかりに消されるのか?と一瞬身構えたが、どうやら父親から遺言があったらしい。
哲也は自分の死期を悟って毎日自動送信のメールを設定していた。
もし朝起きた時にまだ生き永らえていたら、その日の分の送信設定を取り消すという作業を毎日やっていたのだ。
だから哲也が死んでからは、送信取消が出来なかったメールが息子の元に毎日来る様になっていた。内容は全て同じだが、ただ一つ。暗証番号の所だけが変化する。
メールは七日で一ループとして設定していたらしい。なんとも手が込んだ事を考えたものだ。
メールを要約するとこうだ:
・俺が取消の電話を掛けない限り、このメールが初めて来た日を一日目と数えて七日目に必ず俺の別邸に来ること。
それは早くても遅くてもいけない。事は重大なので、自分が来れない場合には、信頼できる人間を必ず向かわせる事。
・地下室への鍵は金庫の中にしまってある。金庫の暗証番号はこの先七日間に分けて記載する暗証番号を正しい順番に並び替えれば開く。
今日のパスワード:三番目の数字は7だ。(翌日のメールには七番目の数字は1だと届く。)
一回でも間違えれば絶対に開かない金庫だから、絶対に押し間違えるなよ?お前は詰めが甘い所があるからな。俺が死んで、今後一人になったら気を付けろよ?
・すぐに飲める牛乳と柔らかいパンを持参する事
そのほかにも沢山の俺に関係する遺言がそのメールには書かれていたらしい。
今後の俺の処遇まで全て決まっているとの事だった。
なんだよ。何が心中だよ。最初からぴったり一週間で助けが来るようになっていたんじゃないか。
俺が死ぬか死なないかのギリギリのラインを見極めて、素知らぬ顔で冷蔵庫の中身も置いてたのかよ。
俺が餓死するか無理心中させられるのかと散々コイツを恨み、一週間という長い長い時を過ごして、最後に息子に間一髪で救い出される所まで、実は計算済みだったのかよ。
しかも、今後の処遇まで勝手に決めてるだと?ふざけるな!お前の思い通りには絶対にならないぞ!
奴の息子は流石経営者だった。
事を荒らげない様に救急車は一切呼ばずに、口が堅い部下を何人か引き連れて地下室まで下りて来たかと思うと、俺を病院まで搬送してくれた。
いや。もしかしてこれも全部アイツの指示なのかもしれない。
運び込まれた病院は、思っていたよりも規模が小さいな。きっとお抱え病院の個室に押し込まれたんだな。
表沙汰にしない様に細心の注意を払っている事が伺い知れる。
まぁ、無駄だがな。元気になったら絶対に警察に駆け込んで全部暴露してやる。
いや。凛空が無事かを確認するのが先か。
悔しいかな。もし凛空が無事だったら、後々の凛空に対する復讐が怖いから、奴の所業を暴露する事は出来ない。
もし俺だけだったら捨て身になれるのに。
あぁ、そういえば既に自由の身となっていて俺の心配事から外れてしまっていたが、蒼空も居た。ツガイの事で頭の中がいっぱいになってしまっていた。
ダメだ。やっぱりむやみに事を荒らげる事は出来ない。
くそっ!そこまで折り込み済みかよ。
とにかくまずは凛空の無事を確かめなければ。
俺は信じないぞ。凛空が自殺してもう既にこの世に居ないなんて、絶対に信じないぞ。
蒼空が自由になった今。
もう一度君と、蒼空と三人で笑い合いたい。
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いくつかのコメントを拝見し、大変申し訳なく思っております。
私は現在日本語を勉強しており、この文章はAI作品ではありませんが、
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もし読んでくださる中で日本語のおかしな点をご指摘いただけましたら、
本当にありがたく思います。
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