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一章
二十一話 テスターミーティングⅠ
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「こんにちは、キョウ。迎えに……!?」
約束の時間より少し前、家の前でエリスとハティとで早めの食事を取っていたところに迎えに来たアラマキさんが、庭に入ってくるなり固まっていた。
そういえば、アラマキさんはライノス襲撃の顛末については話を聞いていたみたいだけどハティを実際に見るのはコレが初めてだったか。
うんうん、わかるぞ。
コイツを突然目にしたらやっぱり固まるよな。
俺も全く同じ様な反応だったからものすごく理解できる。
「こんにちわー」
「――あ、ああ。こんにちはエリスちゃん」
エリスの挨拶で硬直が解けたアラマキさんだったが、その顔はあからさまに引きつっていた。
まぁ、長閑な……とは少々言い難い村の雰囲気だけど、平和な村の庭先で自分の数倍はある狼が居たら誰だってビビるよな。
「大丈夫ですよアラマキさん。ハティはこれで居てかなり賢いんで」
「ああ、うん。話には聞いていたけど、聞きしに勝るとはまさにこのことだね……」
ちょうど食べ終わるところだったので、自分の食器を片付けたエリスがハティの背中によじ登っていた。
ちなみにハティの食事は夜のうちに自分で取ってきていた。
狩場で腹を満たした後、牛か何かの後ろ足を2本持ち帰ってくるようで、それをこちらの朝食や昼食に合わせて齧っていた。
最初はこの巨体を維持するだけの餌の確保をどうしようかと本気で悩んだが、実際には自力で解決してくれる手のかからないワンコだった。
「ご覧の通りこちらに対して敵意は持ってないし、死にかけた俺を救ってくれたりするうちの新しい家族なんで、あんまり怖がらないでやってくれると助かります」
「ああ、うん……がんばってみるよ」
初見はビビっちまうのは仕方ないよな。
むしろ、このリアリティでこのサイズの狼が眼前に迫ってきてビビらないほうがちょっとおかしいと思う。
心臓に毛が生えてるっていうかなんというか。
「それにしてもこんな高レベルのモンスターをテイムするなんていつの間にそんなスキルを?」
「いえ、テイムスキル持ってないっす」
「え?」
「たまたま森のなかで遭遇した時は、俺も死を覚悟したんですけどね。なんか背中乗っけてもらってそのまま懐いて家で暮らしてるんです」
「テイムモンスターではなく?」
「ええ、僕のスキルツリーに関連しそうなスキルって乗っけてもらった時に恐らく追加された【騎乗】のスキルだけですよ」
「そんな事が……? いや、このゲームはまだ不明なパラメータが多すぎるし或いは……?」
何やら長考モードに入ってしまったようなのでこちらの準備を手早く終わらせる。
何か装備が必要なわけでもないので食器を洗い流してこちらの準備も完了。
「さて、エリス。俺は出かけてくるから留守番お願いな」
「はーい。行ってらっしゃいキョウ」
「ハティ、留守の間エリスを頼むな」
「ウォン!」
よし、これなら任せても平気だろう。
ハティの頭をなでて後を任せる。
「さて、こちらの準備はオッケーです行きましょうか」
「あ、ああ……そうだね、行こう」
アラマキさんの家の中から村人たちからは見られないように特殊なエリア転移を行いミーティング会場とやらに到着した。
普段がリアリティ高すぎて、こういう転移とかシステマチックな部分に安堵を覚えるのはゲーマーの性だろうか。
ミーティング会場は湖畔のロッジ、といった感じの避暑地にはもってこいなイメージのエリアだった。
10分前だが、エリアには既に10人ほど集まっている。
全員参加とは聞いていないが、ALPHAのテスターは20人前後と聞いているので、少なくとも半分以上はこの場に来ているということか。
遠くで別のプレイヤーと話している田辺さんのT1を見つけたが、視線と手振りだけで返してきた。
あの人は運営側だから色々と他のプレイヤーから情報を集めたりするので忙しいんだろう。
詳しく見た感じ、どのプレイヤーもそれなりに高レベルなのか良い装備に身を包んでいる人が多い。
アラマキさんも2ヶ月やっていると言っていたし、New World一本でガッツリテスターやってる人はレベル3とか4に到達していてもおかしくはないか。
俺もああいう装備に身を包んでモンスターとガツガツやり合いたいんだがなぁ。
現実はヤギやサイに命がけの大バトルである。
俺のプレイ方法が下手くそなのか、スタート地点の当たりが悪かったのかは判らんけど今の俺ってファンタジーMMOというよりもリアルで過酷なスローライフゲームなんだよな。
過酷なスローライフってどういうことだよって自分で言っておいて思う所だが、実際そうなのだから困る。
今までの俺のプレイで感じたファンタジー成分ってオババの治癒魔法とハティだけだしな!
少し考えにふけっているうちにアラマキさんは別の職人系と思われる装備のプレイヤーと親しげに話していた。
リアルの知人か、あるいは職人プレイヤー同士のコミュニティでもあるんだろうか。
ゲーム内の知り合いがT1とアラマキさんしか居ない俺はこういう場所だとボッチ一直線だ。
せめて俺以外の後発組が分かれば、同期として色々話が合わせられるんだが……
そんな事を考えていたら突然肩を叩かれた。
「よう! まさかまたお前と同じゲームがやれるとはな、キョウ」
振り返るとそこに居たのは筋骨隆々といった感じの大男。
なんか暗黒騎士っぽい感じの格好いい鎧にグレートソードとショートソードを二本差しで身に着けた、実にファンタジーといった出で立ちだった。
……誰だろう。
こんな体格の人に俺知り合いいたっけか……?
そしてふとプレイヤーネームに目が留まる。
SAD。
……SADだと?
「おまえ、まさか伊福部か!?」
「おいおい、一応ここはゲーム内なんだから本名はよしてくれよ」
「お、おう、すまん。つい驚いて口走っちまった」
伊福部 幸治
俺と同期で同じ会社に入社したゲーム事業部のデバッッガー兼、テストプレイヤーだ。
入社の切っ掛けも全く同じ。
同社の出した格闘ゲームの公式大会の決勝で優勝した伊福部と準優勝だった俺が大会後にスカウトされたのだ。
当時の自分は弱小の外受けデバッグ会社の平社員でしかなかったので喜んで飛びついた。
「簡単な事情は田n……T1から聞いてるよ。よくその状況で参加する気になったもんだぜ」
「お前も俺と同じ状況になれば、多分俺と同じ選択したと思うぜ? 寝たきりで病院の天井のシミを数える以外何も出来ないくらいならどんなデカイリスクがあろうが、俺は自由に動けるネットゲームを選ぶ」
「かなり危険なんだって聞いたぜ?」
「既に『ただ生きてるだけ』の状態になれば、危険だとかどうでも良くなったよ」
「相変わらず変な方に覚悟決まってるなぁお前」
実際、植物状態だとか言われてしまえば『巫山戯るな!』とか『何で俺がこんな目に!』とか怒りというかやるせなさを感じるのは事実だ。
だが、どういった所で現状どうにもならないから、結局開き直っちまうんだよな。
一言で表すのならこうだ。
『もう、どうにもならないんだから仕方がない』
そんな状況で、ネットの中限定とは言え自由に動き回れるなんて知らせられたんだ。
ゲーマーであるこの俺に。
大げさでも何でも無く天秤に命を乗せるだけの価値がある。
「こちらはSADさんのフレンドさん?」
「フレンド……というか元同僚だな。理由があって会社をやめちまったがゲームの腕は互角だったからよく公式大会とかで張り合ってたんだ」
「へぇ、リアルライバルってやつですか。SADさんが互角とか相当ですね」
「ぜひ一度戦りあってみたいですね。テスターの人数が少なくてPvPってほぼ発生しないからぜひ戦ってみたい」
「そうだねー。このゲームはモンスターもありえないくらい賢いし、NPCも実際のPvPレベルで対策とか普通に撮ってくるんだけど、やっぱり対人ゲースキーとしてはぜひプレイヤーとも戦ってみたい」
伊福部……SADの後ろから現れた3人は俺を囲むと興味深そうに眺めてきた。
装備が似通ってるって事は同じ街かなんかで購入した装備か?
「改めて紹介すると、コイツはキョウ。俺の元同僚だ。ゲームの腕に関してはDDの大会動画でSAD vs KYOで検索すればいくらでも出てくると思うぜ」
「KYOって、あのザック使いの!?」
「あの、なのかは判りませんけどザック使いのKYOです」
「うっわ、レジェンドプレイヤーじゃないですか。あなたのプレイスタイルに憧れて俺も一時期ザック使ってたことあるんですよ」
また懐かしい呼び名を……
DD――デッドドライヴというハイスピード対戦格闘ゲームの大会で俺とSADは壇上……つまりトップ8の常連だった。
自分らで呼んでいたわけではないが、DDの大会では俺やSADを含めた数人が常連トッププレイヤーとして数年に渡って壇上を占拠しており、一般プレイヤーから『レジェンド』なるこっ恥ずかしい呼び方をされていたのだ。
「おいロイ、いきなり話し込むなって。紹介が終わらねーよ」
「おっとすまん。つい興奮しちまってな」
あの当時は結構対戦動画とかネットに上がってたからなぁ。
ちなみに公式大会で直接決勝で戦った時の戦績は2対2で完全に互角だ。
「で、コイツラはALPHAで俺とパーティ組んでやってる連中な。このゴツイ盾持ちはロイ、杖持ってるのがカイウス、弓持ってるのがリリティアだ」
「どうも。SADの元同僚のキョウです。つい数日前からテスターとして参加することになりました。よろしくおねがいします」
「俺はロイ、実は俺も社内のテスターなんだ。折角だから早く追いついて一緒にパーティ組んでみようぜ」
「ええ、まだ始めたばかりで何時追いつけるか判りませんがその時はぜひお願いします」
さっきとは口調が違う……って事はプレイヤーの設定に合わせてをロールプレイしてるのか。
モニター越しのネトゲだとちょっと寒々しく感じてたが、このゲームはまさに自分がプレイヤーになりきってる訳だからこういう遊び方も全然有りだな。
というかちょっと面白そうだ。
「私はリリティア。私は外部のテスターで3D格闘メインのプレイヤーなんだけどたまたま声がかかって、MMO形式のゲームをガッツリやるのは今回初めてなの」
「カイウスです。ロイやSADと同じ社内テスターです。元々MMO好きなので今回声がかかって即参加したクチです。ゲーム内で出会うことがあればよろしくおねがいします」
「はい、こちらこそ出遅れ組ですが、その時は是非」
取り敢えず無難に挨拶を返しておく。
こういう時は変に印象づけたりせず無難なのが一番いいのだ。
「12時となりました。これよりテスターミーティングを始めたいと思います」
気がつけばもう時間になっていた。
「おっと時間だ、積もる話はミーティング終わってからにしようぜ」
「だな、向こうに集まるみたいだ。行こう」
約束の時間より少し前、家の前でエリスとハティとで早めの食事を取っていたところに迎えに来たアラマキさんが、庭に入ってくるなり固まっていた。
そういえば、アラマキさんはライノス襲撃の顛末については話を聞いていたみたいだけどハティを実際に見るのはコレが初めてだったか。
うんうん、わかるぞ。
コイツを突然目にしたらやっぱり固まるよな。
俺も全く同じ様な反応だったからものすごく理解できる。
「こんにちわー」
「――あ、ああ。こんにちはエリスちゃん」
エリスの挨拶で硬直が解けたアラマキさんだったが、その顔はあからさまに引きつっていた。
まぁ、長閑な……とは少々言い難い村の雰囲気だけど、平和な村の庭先で自分の数倍はある狼が居たら誰だってビビるよな。
「大丈夫ですよアラマキさん。ハティはこれで居てかなり賢いんで」
「ああ、うん。話には聞いていたけど、聞きしに勝るとはまさにこのことだね……」
ちょうど食べ終わるところだったので、自分の食器を片付けたエリスがハティの背中によじ登っていた。
ちなみにハティの食事は夜のうちに自分で取ってきていた。
狩場で腹を満たした後、牛か何かの後ろ足を2本持ち帰ってくるようで、それをこちらの朝食や昼食に合わせて齧っていた。
最初はこの巨体を維持するだけの餌の確保をどうしようかと本気で悩んだが、実際には自力で解決してくれる手のかからないワンコだった。
「ご覧の通りこちらに対して敵意は持ってないし、死にかけた俺を救ってくれたりするうちの新しい家族なんで、あんまり怖がらないでやってくれると助かります」
「ああ、うん……がんばってみるよ」
初見はビビっちまうのは仕方ないよな。
むしろ、このリアリティでこのサイズの狼が眼前に迫ってきてビビらないほうがちょっとおかしいと思う。
心臓に毛が生えてるっていうかなんというか。
「それにしてもこんな高レベルのモンスターをテイムするなんていつの間にそんなスキルを?」
「いえ、テイムスキル持ってないっす」
「え?」
「たまたま森のなかで遭遇した時は、俺も死を覚悟したんですけどね。なんか背中乗っけてもらってそのまま懐いて家で暮らしてるんです」
「テイムモンスターではなく?」
「ええ、僕のスキルツリーに関連しそうなスキルって乗っけてもらった時に恐らく追加された【騎乗】のスキルだけですよ」
「そんな事が……? いや、このゲームはまだ不明なパラメータが多すぎるし或いは……?」
何やら長考モードに入ってしまったようなのでこちらの準備を手早く終わらせる。
何か装備が必要なわけでもないので食器を洗い流してこちらの準備も完了。
「さて、エリス。俺は出かけてくるから留守番お願いな」
「はーい。行ってらっしゃいキョウ」
「ハティ、留守の間エリスを頼むな」
「ウォン!」
よし、これなら任せても平気だろう。
ハティの頭をなでて後を任せる。
「さて、こちらの準備はオッケーです行きましょうか」
「あ、ああ……そうだね、行こう」
アラマキさんの家の中から村人たちからは見られないように特殊なエリア転移を行いミーティング会場とやらに到着した。
普段がリアリティ高すぎて、こういう転移とかシステマチックな部分に安堵を覚えるのはゲーマーの性だろうか。
ミーティング会場は湖畔のロッジ、といった感じの避暑地にはもってこいなイメージのエリアだった。
10分前だが、エリアには既に10人ほど集まっている。
全員参加とは聞いていないが、ALPHAのテスターは20人前後と聞いているので、少なくとも半分以上はこの場に来ているということか。
遠くで別のプレイヤーと話している田辺さんのT1を見つけたが、視線と手振りだけで返してきた。
あの人は運営側だから色々と他のプレイヤーから情報を集めたりするので忙しいんだろう。
詳しく見た感じ、どのプレイヤーもそれなりに高レベルなのか良い装備に身を包んでいる人が多い。
アラマキさんも2ヶ月やっていると言っていたし、New World一本でガッツリテスターやってる人はレベル3とか4に到達していてもおかしくはないか。
俺もああいう装備に身を包んでモンスターとガツガツやり合いたいんだがなぁ。
現実はヤギやサイに命がけの大バトルである。
俺のプレイ方法が下手くそなのか、スタート地点の当たりが悪かったのかは判らんけど今の俺ってファンタジーMMOというよりもリアルで過酷なスローライフゲームなんだよな。
過酷なスローライフってどういうことだよって自分で言っておいて思う所だが、実際そうなのだから困る。
今までの俺のプレイで感じたファンタジー成分ってオババの治癒魔法とハティだけだしな!
少し考えにふけっているうちにアラマキさんは別の職人系と思われる装備のプレイヤーと親しげに話していた。
リアルの知人か、あるいは職人プレイヤー同士のコミュニティでもあるんだろうか。
ゲーム内の知り合いがT1とアラマキさんしか居ない俺はこういう場所だとボッチ一直線だ。
せめて俺以外の後発組が分かれば、同期として色々話が合わせられるんだが……
そんな事を考えていたら突然肩を叩かれた。
「よう! まさかまたお前と同じゲームがやれるとはな、キョウ」
振り返るとそこに居たのは筋骨隆々といった感じの大男。
なんか暗黒騎士っぽい感じの格好いい鎧にグレートソードとショートソードを二本差しで身に着けた、実にファンタジーといった出で立ちだった。
……誰だろう。
こんな体格の人に俺知り合いいたっけか……?
そしてふとプレイヤーネームに目が留まる。
SAD。
……SADだと?
「おまえ、まさか伊福部か!?」
「おいおい、一応ここはゲーム内なんだから本名はよしてくれよ」
「お、おう、すまん。つい驚いて口走っちまった」
伊福部 幸治
俺と同期で同じ会社に入社したゲーム事業部のデバッッガー兼、テストプレイヤーだ。
入社の切っ掛けも全く同じ。
同社の出した格闘ゲームの公式大会の決勝で優勝した伊福部と準優勝だった俺が大会後にスカウトされたのだ。
当時の自分は弱小の外受けデバッグ会社の平社員でしかなかったので喜んで飛びついた。
「簡単な事情は田n……T1から聞いてるよ。よくその状況で参加する気になったもんだぜ」
「お前も俺と同じ状況になれば、多分俺と同じ選択したと思うぜ? 寝たきりで病院の天井のシミを数える以外何も出来ないくらいならどんなデカイリスクがあろうが、俺は自由に動けるネットゲームを選ぶ」
「かなり危険なんだって聞いたぜ?」
「既に『ただ生きてるだけ』の状態になれば、危険だとかどうでも良くなったよ」
「相変わらず変な方に覚悟決まってるなぁお前」
実際、植物状態だとか言われてしまえば『巫山戯るな!』とか『何で俺がこんな目に!』とか怒りというかやるせなさを感じるのは事実だ。
だが、どういった所で現状どうにもならないから、結局開き直っちまうんだよな。
一言で表すのならこうだ。
『もう、どうにもならないんだから仕方がない』
そんな状況で、ネットの中限定とは言え自由に動き回れるなんて知らせられたんだ。
ゲーマーであるこの俺に。
大げさでも何でも無く天秤に命を乗せるだけの価値がある。
「こちらはSADさんのフレンドさん?」
「フレンド……というか元同僚だな。理由があって会社をやめちまったがゲームの腕は互角だったからよく公式大会とかで張り合ってたんだ」
「へぇ、リアルライバルってやつですか。SADさんが互角とか相当ですね」
「ぜひ一度戦りあってみたいですね。テスターの人数が少なくてPvPってほぼ発生しないからぜひ戦ってみたい」
「そうだねー。このゲームはモンスターもありえないくらい賢いし、NPCも実際のPvPレベルで対策とか普通に撮ってくるんだけど、やっぱり対人ゲースキーとしてはぜひプレイヤーとも戦ってみたい」
伊福部……SADの後ろから現れた3人は俺を囲むと興味深そうに眺めてきた。
装備が似通ってるって事は同じ街かなんかで購入した装備か?
「改めて紹介すると、コイツはキョウ。俺の元同僚だ。ゲームの腕に関してはDDの大会動画でSAD vs KYOで検索すればいくらでも出てくると思うぜ」
「KYOって、あのザック使いの!?」
「あの、なのかは判りませんけどザック使いのKYOです」
「うっわ、レジェンドプレイヤーじゃないですか。あなたのプレイスタイルに憧れて俺も一時期ザック使ってたことあるんですよ」
また懐かしい呼び名を……
DD――デッドドライヴというハイスピード対戦格闘ゲームの大会で俺とSADは壇上……つまりトップ8の常連だった。
自分らで呼んでいたわけではないが、DDの大会では俺やSADを含めた数人が常連トッププレイヤーとして数年に渡って壇上を占拠しており、一般プレイヤーから『レジェンド』なるこっ恥ずかしい呼び方をされていたのだ。
「おいロイ、いきなり話し込むなって。紹介が終わらねーよ」
「おっとすまん。つい興奮しちまってな」
あの当時は結構対戦動画とかネットに上がってたからなぁ。
ちなみに公式大会で直接決勝で戦った時の戦績は2対2で完全に互角だ。
「で、コイツラはALPHAで俺とパーティ組んでやってる連中な。このゴツイ盾持ちはロイ、杖持ってるのがカイウス、弓持ってるのがリリティアだ」
「どうも。SADの元同僚のキョウです。つい数日前からテスターとして参加することになりました。よろしくおねがいします」
「俺はロイ、実は俺も社内のテスターなんだ。折角だから早く追いついて一緒にパーティ組んでみようぜ」
「ええ、まだ始めたばかりで何時追いつけるか判りませんがその時はぜひお願いします」
さっきとは口調が違う……って事はプレイヤーの設定に合わせてをロールプレイしてるのか。
モニター越しのネトゲだとちょっと寒々しく感じてたが、このゲームはまさに自分がプレイヤーになりきってる訳だからこういう遊び方も全然有りだな。
というかちょっと面白そうだ。
「私はリリティア。私は外部のテスターで3D格闘メインのプレイヤーなんだけどたまたま声がかかって、MMO形式のゲームをガッツリやるのは今回初めてなの」
「カイウスです。ロイやSADと同じ社内テスターです。元々MMO好きなので今回声がかかって即参加したクチです。ゲーム内で出会うことがあればよろしくおねがいします」
「はい、こちらこそ出遅れ組ですが、その時は是非」
取り敢えず無難に挨拶を返しておく。
こういう時は変に印象づけたりせず無難なのが一番いいのだ。
「12時となりました。これよりテスターミーティングを始めたいと思います」
気がつけばもう時間になっていた。
「おっと時間だ、積もる話はミーティング終わってからにしようぜ」
「だな、向こうに集まるみたいだ。行こう」
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